ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

117 / 251
112『女好き、シャボンディ諸島へ』

サンジがヘッドーーーデュバルを蹴り飛ばしてからも、私達が優勢だっていう流れは変わらなかった。

1度サンジが不意を突かれてトビウオライダーズに海に引きずり込まれ、あわや溺死してしまう所だったのを、海中での速度がトップクラスだという人魚…そう、ケイミーちゃん!彼女がサンジを助けてくれたのだ。

いやー、流石ケイミーちゃん!ただそんなに速いなら海獣に捕まるのももうやめて欲しいんだけどね!

 

それからサニー号の上に巨大な錨をトビウオ何匹もの力を使って運ばれて落とされそうになったのは、私が適当に落ちてきた錨を蹴り飛ばして事なきを得ていた。

その後も、フランキー曰くサニー号の秘密兵器…『ガオン砲』を敵のアジト目掛けてぶっ放して、その余波でトビウオライダーズの殆どを撃ち落としたり…まぁ、正直に言えば相手にならなかった。

最終的にデュバル自身がモトバロに乗って突撃を掛けてきたのもルフィが止めて、しかもその際ルフィの気迫に圧されてモトバロが泡を吹いて倒れるという事態も起こった。

私達はそれを見た事がある…私の“覇王色の覇気”と同じ現象だったからだ。

でも普通に考えたらルフィが覇王色を扱えるのは当然か、だって海賊王になる男なんだし、王の資質くらいはあって当然だよ。ルフィ自身は覇王色を使ったって自覚が無かったから、また発動しようにもうんともすんとも言わないみたいだけど。これは通常状態の私と同じだね。

 

そして肝心のデュバルは、サンジが顔面を顔の造形が変わるほどボコボコに蹴り倒して気絶させた。

凄く痛そうだけど、整形が出来る蹴りって何…凄すぎる。

 

 

 

 

 

 

 

「お、美味しい…。悔しいけど、美味しい…!!」

 

そんなこんなで今は、気絶したデュバルとトビウオライダーズを放置してシャボンディ諸島へ向かっていた。

サニー号の横を屋台船が並行して進んでおり、その中で私達はハチの作ったタコ焼きを食べているのである。

ナミさんを酷い目に合わせた奴の一味のクセに…美味いんだよねぇこのタコ焼き!!

 

「…確かに美味い。オイ黒足、お前コレの作り方学んでおけ」

 

「ペローナちゃんの為なら喜んで〜!!」

 

「う〜ん!美味しいわ、今まで食べたタコ焼きの中で1番よ。タコちゃん流石ね」

 

「ニュ〜!そうか?ありがとな!…そ、それで、どうだ?ナミ…その、味は…」

 

こ、ここでナミさんに聞きに行くんだ…。割と勇気あるなぁハチ。

 

「…これで何かが許されるって訳じゃないわよねェ…」

 

「い、いやっ!勿論そんな、そういう意味で言ったんじゃねェよ!?味はどんなかなーって…ホントに!」

 

あたふたと6本腕を忙しなく動かしナミさんの返事を待つハチ。

ナミさんはそんな彼をじっと見ながら、タコ焼きを楊枝で刺してその可愛いお口に放り込んだ。

 

「……すっごく美味しい!」

 

「!」

 

「ニュ〜!そうか?そうか?」

 

笑顔でハチにそう返すナミさんを見て、私はナミさんの器の大きさに目を見開く。

そりゃ、彼女が最高に良い女だって事は私が1番良く知っている事だけど、まさかアーロン一味の幹部にまでそんな器の大きさを発揮できるとは流石に思っていなかった。

許した訳じゃ無いだろうし、この先一生許すこともないだろうけど…多分、ハチって奴の人柄を少しは見直した結果なんだと思う。どっちにしてもナミさんは最高だ!

 

「ふぅ、ふぅ…。イリスちん!これチーズタコ焼き!あーん!」

 

「え、いいの?ありがとう!あーん」

 

私の隣に座るケイミーちゃんがタコ焼きを私の口元に持ってきたので、パクリと一口で頂く。うーむ…ケイミーちゃんのふーふーと合わさって最強のタコ焼きが生まれてしまった様だ…!

 

「ひひへおほォイヒフ」

 

「ルフィ、飲み込んでくれないと何言ってるのか分かんないよ…」

 

「にしてもよォイリス、だって」

 

何でウソップは解読できてるんですかね?

 

「ん、ぷはあ!にしてもよ、お前今回長くねェか?」

 

「ああ… これ(・・)ね」

 

これ、とは今の私の状態を差している。起きている事態に関しては別に慌てる様な事では無い…というか逆に嬉しい誤算なんだけど…。

 

「分かんない。でも普通ならとっくに切れてるハズなんだよね…“ 全・倍加(オールインクリース)”」

 

そう、何故かまだ全・倍加(オールインクリース)が解除されていなかったのだ。この技の制限時間は3分であり、今は使用してから1時間は経っている。

考えられる原因としては、そもそもの制限時間が3分ということ事態に何かしらの要因があったという事。そしてその“要因”も王華関係だと思えば納得が行くし。

一時全・倍加(オールインクリース)が使用できなかった時の理由が、王華の見た目に近付くからだった筈だ。ならこの技の制限時間が3分だったのも心が無意識のうちに王華へと近付くのを拒否していたのかもしれない。だから色々と乗り越えた今となっては制限を設ける必要が無いって事かな。

 

「あ」

 

とかなんとか考えてたら元に戻ってしまった…。制限時間はきちんとあるのね…1時間って所かぁ…これじゃあまだ普段から使用しておく訳にも行かないか。

 

「よくわかんねェけど、また強くなったんだなイリス!よーし、おれも負けねェ!うおおお!!」

 

バクバクと物凄い速さでタコ焼きを消費していくルフィだが、それと強さに果たして関係があるのかは謎である。

 

「オーーイ!!おめェらァ〜〜〜!!!若旦那〜〜〜!!!」

 

「ん?」

 

後方から凄い水飛沫の音と聞き覚えのある声に首を傾げる。

あの声…デュバルとトビウオライダーズ?でも確かサンジがボコボコにして顔を変えた筈だし、もう私達に用があるとは思えないんだけど。

 

「待て待て〜っ!!挨拶ナシってそりゃないぜーー!!ハンサム…あっ、間違えた!!デュバルだぜーっ!!」

 

「うわ、想像してたよりだいぶ顔変わってるじゃん」

 

ちら、と船から顔を出して後ろを見るとやはりデュバル達がモトバロやトビウオに乗って追いかけてきていた。

敵意は全く感じられない所か、逆に感謝されそうな程の雰囲気を纏っているし…いやそれにしてもアレほんとに同一人物か?

 

「いや〜!黒足の若旦那!!ボッコボコに顔面蹴られたあの後、意識を取り戻して俺達も〜びっくり!」

 

なんか船の横に停めて話し始めたんだけど…。内面的な意味でもさっきの奴と同じとは思えない…。

 

「こん〜なハンサムにして貰っちまって!もう自分でウットリ♡コレ女子が放っとかねェべよ。人生バラ色ぬらっ!みたいな!アハハハハ!すぐにでもまたのんびり田舎に帰りてェとこなんだが、恩人達に恩も返さず帰った日にゃあ寝覚めが悪ィってんでね!この海域は初めてだろ!?何か俺らでお役に立つ事があれば、何なりと申し付けて欲しいん…だ!」

 

「慣れてねェならウインクすんなよ…」

 

顔を面白い程歪ませてウインクするデュバルにサンジが呆れ顔で呟いた。片目開いてないし、白目だし…。

ナミさんとかはめっちゃ上手いよねウインク。というか一味の女性陣はみんな上手い。私も出来るし。

 

「不満がねェんならそれで結構。頼みがあるとすりゃ、もう二度と俺達の前に現れるなって……聞いてんのかよ!!」

 

「いっそ白馬に乗りたい…」

 

サンジの話の途中で手鏡を取り出してうっとりと自分の顔を眺めるデュバルに部下達が慌てて話を聞く様に促す。ダメだこのヘッド。

 

「そうかそうか…え?ハンサム?」

 

「言ってねェだろそんな事一言も!!」

 

「頭おかしいんじゃねェか、1発ゴースト撃った方が良いかもな」

 

「でもそれは可哀想じゃない?どんな理由があれあの顔がコンプレックスだったのなら、それが無くなればテンション上がるものだよ。私だって身長伸びたら泣いて喜ぶかも」

 

確かにちょっとヤバイ人になっちゃったけど、少しくらいは大目に見てあげよう。

 

「あ…」

 

「ん?」

 

デュバルとタコ焼きのタレをハンカチで拭っていたナミさんの目が合う。

 

「照れ臭いが受け取ったぜ…お前の投げKISS(キッス)

「ひゅーひゅー!」

 

「してない!!タコ焼きのたれ拭いてただけよ!どんな前向きな幻覚見てんのあんた!!…よ、良かったわ、イリスが能力使えない状態で。ほんとに」

 

はは、ナミさんも大袈裟だなぁ。別にあの程度じゃ私は海に沈めてやろうとしか思わないよ。

え?どんな理由があれ、私の正妻にそういう話を持ち掛けた時点で罪だよ?

 

「お前ら、嬉しいのは分かったからナミ達に変な事すんな。冗談通じねェんだからよ!」

 

「え?ハンサム?」

 

「ペローナ、ミキータ、悪いけどその人気絶させて海に捨ててきて貰っていい?」

 

「キャハハ、お安い御用よ!だけどその前に、ケイミーちゃんが待ってるわよ、イリスちゃん」

 

隣を見ればケイミーちゃんがタコ焼きを刺して待っていた。そうだ、今はケイミーちゃんに食べさせて貰ってたトコだった、あいつらに構ってる余裕は無かったね。

 

「……ふ〜、危ねェ、ナイスミキータ」

 

「イリスちゃんの能力が使えない状態だからこそよ、あの人達は運が良いわ。さて、じゃあ海に沈めて来ようかしら」

 

「待て待て待て!!お前今イリスの奇行を止めたんじゃねェのかよ!…そうだった、お前はイリスの言う事が全てだったな!!」

 

「ニュ〜…女好きの恐ろしさは初めて会った時によく知ってるからなァ、おれも怒らせたくねェな」

 

もう…そもそも私が怒るって、大体身長か嫁関係だからね?特にナミさんが私の嫁って事は世間的にも知れ渡ってるんだから、ちょっかい掛ける方が悪いんだよ!

 

デュバルも雰囲気で色々察したのか、電伝虫の番号をサンジに渡して『人生バラ色ライダーズ』がどうとか言いながら去っていった。

私達もお腹いっぱいにタコ焼きを平らげ、サンジのお茶で一休みがてらケイミーちゃん達も含めてサニー号の甲板に集まる。

 

「そういえば、シャボンディ諸島に行く進路は合ってる?記録指針(ログポース)が無いからちょっと不安で…」

 

「大丈夫、合ってるよ」

 

「そこに行かなきゃ魚人島へは行けねェのか?」

 

「おれ達魚人や人魚なら潜ってすぐに行けるけどな、おめェらは人間だからそのまま潜ると水圧で死んじまう」

 

確かに、潜水艇でもダメだったもんね。と言う事はシャボンディ諸島へ行けば魚人島へ繋がる道があるって事かな?

 

「よーし注目!おめェら何も知らねェみてェだから、この辺の海の事一通り教えといてやろう。誰がだって?おれだよー!」

 

「誰だっけ」

 

「パッパグだよ!!喋るヒトデだぞおれは!忘れようも無いだろ!!?」

 

自分で言っちゃってるけど…まぁ確かに忘れようもない。冗談だよ。

それに海の情報は助かるね。私達何にも知らないから。

 

「まず、“新世界”へ抜けるルートは実は2本ある!ーーだがお前らみてェな無法者にとっては1本に限られる!」

 

「何で?」

 

「何故ならば、1本は世界政府にお願いの上、赤い土の大陸(レッドライン)の頂にある町…「聖地マリージョア」を横切るという手段だからだ。海賊に通行の許可なんか出るわきゃねェ!」

 

あー、なるほど…。

それに陸地を歩いて渡るとなれば、自然とサニーを置いて行かなくてはならない。この船なしで新世界を渡る勇気は無いかな…。何だかんだ言ってフランキーがロマンを詰め込んだこの夢の船はみんな気に入ってるし。

 

「だからお前らの使う航路は、“魚人島”経由の「海底ルート」!!」

 

「でも、海底ルートは危険も多いよ!」

 

「あれ?ケイミー、ケイミー?バトンタッチしてないぞ」

 

「海獣や海王類に船ごと食べられちゃう人達も沢山居るから」

 

パッパグがショックを受けているけど、私からしたらケイミーちゃんに説明して貰った方が幸せだからドンマイ!とだけ心の中で思っておくよ!バトンタッチありがとう!

 

「あれ、でもケイミーちゃん、今船ごとって言った?どんな船を使って海底に行くの?」

 

「この船だよ?」

 

この船…?サニーに潜水機能を取り付けられる職人がシャボンディに居るって事だろうか。

 

「それでね、世界を1周してるあの大きな壁、赤い土の大陸(レッドライン)には唯一小さな穴が空いてる場所があって…あ、でも私達から見ればおっっきな穴だよ!魚人島はそこにあるの!」

 

補足でハチが言うには、魚人島は丁度聖地マリージョアの真下あたりにあるそうだ。潜って1万mの海底にあるそうで、確か空島が上空1万mだったからそれの深海版ってとこだろう。

 

「海底へこの船で行くってどういう事だ?」

 

「これから行く島で船をコーティングするんだよ!」

 

「コーティング?」

 

当然フランキーは誰よりも気になって質問していたが、コーティングという答えに更に疑問が深まったようだ。

 

「ホラ前を見ろ、着いたぞ!」

 

パッパグが船の正面を指差し、私達はそれを追って前を見る。

……!!わ…凄く綺麗で、幻想的…!

泡、だよね。シャボンディ諸島って言うくらいだから泡要素があるんだろうくらいにしか思ってなかったんだけど、実際に目にすれば島中を見渡す限りにシャボンがふわふわと空へ舞っていた。

天高く聳える数多くの木は何故か白黒の縦縞模様で、その全てに番号が書かれている。中には観覧車のようなシルエットも見えるし、アミューズメント施設なんかも充実しているのかも?

…よし、デートするしかない!ペローナちゃんとケイミーちゃんも居るんだし、このデートでケイミーちゃんは完全に嫁にするぞー!!

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。