ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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115『女好き、『冥王』シルバーズ・レイリー』

「おー」

 

赤逆髪…キッドだっけ、強いなぁ。ニットのローも変な能力使って海軍をボコボコにしてるし、とんでもない強さだ。私も負けてらんない!

 

30倍灰(さんじゅうばいばい)終衝徨(しゅうしょうさま)!」

 

「うおッ…!?」

 

思い切り地面を殴って地震が起きた様な揺れを起こす。衝撃で地にはヒビが入り立っているのもやっとの海兵の姿も見れる。…よし、夢の中で適当に開発した技だけど成功して良かった。

 

「“女王屋”!俺達の足場まで奪う気か!」

 

「あ、ごめん。…あと何その呼び方!許してあげるから手前にハーレムって付けて!」

 

揺れる大地の上では味方の邪魔もしてしまうのは確かに盲点だった…。それでもただ地震が起きただけで止まる様な連中では無いようで、動きが鈍った海兵を次々に倒していく。

やがて私達を囲っていた向こうの陣形は大きく崩れ、逃げる隙が出来てきた。

 

「麦わらの一味を逃すな!あいつらが主犯だ!!」

 

「悪いけど、そう簡単に私達の主は渡せないわね。サンダーボルト・テンポ!!」

 

「「ウギャアアアアア!!!」」

 

「ネガティブホロウズ!!離れてろお前ら!!特ホロウズ!!」

 

「「グギャアアアアア!!!」」

 

え、えぐい範囲爆発攻撃だね…クレーターが凄いことになってるし。

 

「見ろルフィ!トビウオライダーズだ!」

 

「ん?あっ、トビウオ!」

 

サンジが指差す方向には、離れた位置から私達に手を振っているデュバルの姿があった。案外頼りになるね、トビウオライダーズ。

ここに居る海軍を全滅させる事は容易だけどそんな事で手間取っていたら後が大変だ。大将が来るまでの時間稼ぎをされちゃ敵わない。

 

「みんな!包囲は崩れてる、急いでトビウオに乗って!!もう1発さっきの“地震”行くよ!!」

 

「おう!急げお前らー!!」

 

「私も連れて行ってもらおう。何やら私に用があるようなのでな」

 

用…?冥王とか呼ばれる程のお爺さんに用がある人なんてこの一味には誰も居ないと思うんだけど。…今はいいか!

 

30倍灰(さんじゅうばいばい)!!終衝徨(しゅうしょうさま)!!」

 

さっきと同じように地面を殴って揺れを起こし、その間に私を含めた一味全員とケイミーちゃん一行+冥王がそれぞれトビウオに乗って急いでその場を離れたのだった。

…こんな状況でコーティングなんてやって貰えるのかなって不安になってきたよ…コーティング師すら見つけてないし…。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「じゃあまた!ホント気軽に呼んでくれよ!!若旦那達が無事魚人島へ出航出来る時までおれ達が手足となるからよ!!」

 

「おう!ありがとなお前ら!」

 

トビウオライダーズに送ってもらって『シャッキー'SぼったくりBAR』という店の前に到着した私達は、レイリーに促されて中へと入った。

どうやら最初ショッピングモールに行く為に別れた時にルフィ達はここへ来ていたらしく、中にいたシャクヤクという店主とは顔見知りみたいだ。

 

「…で、その冥王さんが私達…ルフィに用があるって?」

 

一旦店を閉めてくれたシャクヤク…もといシャッキーさんに軽く頭を下げて、私達はソファーやカウンターに座り込む。

 

「ニュ〜女好き、違ェぞ、レイリーがおれ達の探していたコーティング職人だ」

 

「えっ、こんな強い人がコーティング職人!?」

 

私は驚いて声を上げる。

戦闘は確かにしていないけど、覇王色の覇気の規模…それからオーラがどこからどう見ても強者のソレだった。最近は良く強敵と相見えるからそういうのが分かるようになってきたよ。

 

「フフ、イリス、彼は『冥王』シルバーズ・レイリー。海賊王の右腕とまで呼ばれていた男よ」

 

「へぇ、凄い人なんだね。……………え?」

 

「「え〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!?」」

 

「か、かか海賊王の船にィ〜!?」

 

ポロリと何を言い出すかと思えばとんでもない情報を口にしたロビンにみんなが口を開けて驚く。そ、そりゃ強い筈だよ…納得は出来たけど…どうして海賊王の右腕がコーティング職人なんかやってるのかが疑問なんだけど!

 

「ああ、副船長をやっていた、シルバーズ・レイリーだ。よろしくな」

 

「「副船長!!?」」

 

右腕って言われてるならそうなんじゃないかとは思ったけど、実際にそうだと言われたら衝撃が凄い…!

えー!なんか超有名人に会ったみたいでテンション上がる!

 

「何でそんな大物とタコが知り合いなんだ」

 

「ハチはな…20年以上前に私が海で遭難した所を助けてくれた」

 

「この人の命の恩人なのよ、まだ子供だったけどね」

 

どこで誰が誰と繋がってるか分からないもんだねー…。まさか私達が海賊王の乗ってた船の副船長と知り合うとも思ってなかったし。

 

「しかしよ、ゴールド・ロジャーは22年前に処刑されたのに副船長のあんたは討ち首にならなかったのか?一味は海軍に捕まったんだろ?」

 

サンジの問いにレイリーは意味ありげに笑みを浮かべて、持っていたグラスをカラン、と鳴らした。

 

「捕まったのではない…ロジャーは自首したのだ。政府としては力の誇示の為…あいつを捕らえたかの様に公表したかもしれんがな」

 

「自首…!?なんで!?」

 

「我々の旅に限界が見えたからだ…。あの公開処刑の日から4年程前か…ロジャーは…不治の病に罹った。誰も治せない、手の打ち様のない病に流石のロジャーも苦しんだが、当時海で1番評判の高かった灯台守でもある医師…双子岬のクロッカスという男だけがその苦しみを和らげる腕を持っていた。我々は彼に頼み込み“最後の航海”に船医として付き添って貰い、ついにその3年後ロジャーの命を取り止めつつ、不可能と言われた偉大なる航路(グランドライン)制覇を成し遂げたのだ」

 

く、クロッカスって…双子岬の花頭の…!ブルックの海賊団とも縁のあるあの人だよね!?どうなってるのこの世界…割と狭い?

 

「と言うことはあのおっさん海賊王の船員(クルー)だったのか!!」

 

「そういえば数年船医をやったって言ってた。その3年間海賊をやってたのね!」

 

「キミらが会ったという事は…まだ元気でやっとるか!クジラを可愛がっていてね。クロッカスは何やら探したい海賊団が居ると乗船を承諾してくれたのだが」

 

それブルックの事じゃん!本人も気付いたのか涙を流して感謝しているし…。

はー…と体を寝かしてミキータの膝に顔を埋める。情報量が半端ないっす…くんかくんか、素晴らしいニオイ。

 

「で、海を制覇した後は?」

 

「そこからだ、ロジャーは世間から“海賊王”と呼ばれる様になった。何もずっと海賊王だった訳じゃない…死にゆく男に称号など何の意味も無い、だがロジャーは喜んでいたな。何事もハデにやらかす事が大好きな男でね…宴もそう、戦いもそう…己の先の無い未来にも一計を案じ楽しんでいる様に見えた」

 

ルフィに似てるな…。彼もどこかそんな節がある。別に死に急いでいる訳ではないけれど、死を恐れず…逆に苦難を楽しんでいるかのような。

 

「やがて「船長命令」によりロジャー海賊団は人知れず解散し…全員バラバラに、1人…また1人姿を消した。共に命を懸けた仲間達は今やどこで何をしているか殆ど分からない。ーーーそして解散から1年が過ぎた頃…ロジャーは自首し、逮捕され…あいつの生まれた町、“ 東の海(イーストブルー)”のローグタウンで公開処刑が発表された。あの日の広場には…今海で名を挙げている海賊達の若き日のそうそうたる顔ぶれが並んでいたと聞く…。海賊王の処刑に世界が注目していた、…私は行かなかったよ。あいつの言った最後の言葉はこうだ…」

 

 

ーおれは死なねェ(・・・・)ぜ……?相棒…ー

 

 

死なない…。そうか、海賊王が最期に放った、たった一言…確か…。

 

「『おれの財宝か?欲しけりゃくれてやるぜ…探してみろ、この世の全てをそこに置いてきた』…世界政府も海軍も驚いたろう。他の海賊達への見せしめの為行った公開処刑…残り数秒、僅かに灯った“命の灯”を奴は世界に燃え広がる“業火”に変えた。あの日ほど笑った夜は無い…!あの日ほど泣いた夜も…酒を飲んだ夜も無い…!我が船長ながら…見事な人生だった…!!」

 

「…なんか凄い話聞いちゃったみたい。…ちょっとイリス、そろそろこっちに来なさい」

 

「どうぞ、ナミちゃん」

 

ぐい、と引っ張られてミキータの膝枕から反対側のナミさんの膝枕へと切り替わる。くんかくんか…。

 

「まるでこの海賊時代は、意図してロジャーが作ったみてェだな…」

 

「そこはまだ、答えかねる…ロジャーは死んだのだ。今の時代を作れるのは、今を生きてる人間だけだよ…!あの日、広場でロジャーから何かを受け取った者達が確かに居るとは思うがね…キミのよく知るシャンクスもその1人だろう」

 

「え?おっさんシャンクス知ってんのか!?」

 

ルフィらしいけど、海賊王の右腕におっさんって凄いな。

それはそうとナミさんの匂いが素晴らし過ぎて話があんまり入ってこないんだけど。後で王華に改めて確認しとこう。

 

東の海(イーストブルー)ならバギーという海賊も知らんか?」

 

「「バギー…」」

 

嫌そうな顔でその名を言うナミさんとゾロ。そりゃ…あのイカレ赤っ鼻にはそれなりの事されたからなぁ。

 

「アレは2人共ウチの船で見習いをやっていた」

 

「えーーーーーっ!!シャンクスは海賊王の船に居たのか!?」

 

シャンクス…ってのはともかく、バギーが!?小物臭半端なかったんだけど…海賊王のクルーでも見習いならあんな感じなのか…な?

 

「10年程前か…この島でばったりとあいつに会ってな。トレードマークの麦わら帽子と左腕が失くなってた。ワケを聞くと嬉しそうにキミの事を話すんだ」

 

ルフィと知り合い…しかも話の流れ的にルフィに麦わら帽子を託したのはそのシャンクスって人か。…こりゃ間違いなくONE PIECEのキーパーソン…下手に関わってルフィ達の冒険をぐちゃぐちゃにしない為にも、私はそのシャンクスって人には近寄らないでおこう。

 

…というフラグじみた願望は当然後々回収されるのだが今は別の話。

 

 

「シャンクスが君に話していない事まで私がべらべらと喋る訳にはいかんのでな…とにかくここまで良く辿り着いた…!“新世界”であいつはキミを待ち侘びているだろう」

 

「…そうか!そうかな!おれも会いてェなァ〜〜〜!!!」

 

「ーーーさて、状況も状況、船のコーティングの依頼だったな。私も今の本職を果たすとしよう」

 

それについてハチがコーティングは高ェぞと言うと、レイリーはハチの友達からは金は取らないと言ってタダにしてくれた。流石海賊王の右腕、太っ腹過ぎる。

 

「レイリーさん、質問が…!」

 

少し難しい顔をしたロビンがレイリーに問いかける。

 

「“Dの意志”って…一体何…?空島で見た歴史の本文(ポーネグリフ)に古代文字を使ってロジャーの名が刻まれていた。彼は何故あの文字を操れたの…!?あなた達は900年前に始まる“空白の100年”に世界に何が起きたのかを知ってるの!?」

 

「………ああ、知っている。我々は…歴史の全てを知った。ーーーだがお嬢さん、慌ててはいけない…キミ達の船で1歩ずつ進みなさい。我々もまた…“オハラ”もまた…少々急ぎ過ぎたのかも知れん。キミ達に今ここで歴史の全てを私が話しても、今のキミらには何もできやしない…!ゆっくりと世界を見渡して、その後に導き出す答えが我々と同じとも限らない…!…それでも聞きたいと言うならば、この世界の全てを今、話そう」

 

ロビンはそれを聞いて、少し笑って目を閉じ首を横に振った。私もナミさんの膝枕から離れてロビンの隣に行き、腕を引っ張ってソファーに座らせその上に自分も座る。

ロビンにとっては夢の全てが目の前にあるといっても過言では無い。今の決断は…彼女なりに考え抜いた結果だったのだろう。心労も計り知れない。

 

「いずれ全てが見えて来る…キミの故郷、オハラの事は気の毒だったな…だがロジャーはあの文字を解読出来たわけじゃない。我々は海賊。天才クローバーやオハラの学者の頭脳に敵うハズが無い…。あいつはな…“万物”の声を聞けた…それだけの事」

 

万物の…?なんか凄い事言ってるのだけは分かるけど、スケールが大き過ぎて理解が追いつかない。

…私も何かを倍加したら動物の声を聞けたりしないかなー。そんな機能が元より存在しないから何を倍加しても無理なんだけど!!

 

 

その後はウソップがレイリーにひとつなぎの大秘宝、ワンピースが本当に最後の島にあったのか、と言うのを聞こうとして凄く怒ったルフィに止められていた。

そりゃそうだよ、それこそがルフィの夢…さっきのロビンと一緒で誰かに教えて貰うようなモンじゃない。それ(・・)が本当に存在するのか、本当に最後の島にあるのかなんて事は…行けば分かるのだから。その為の冒険だ。

 

「…で、どうしようか。レイリーがコーティング作業してくれるなら…私達も追われてる身、いつまでもここに居ちゃ迷惑だよね」

 

「キャハ!イリスちゃん、デートしましょ!またショッピングモールに…」

 

「身を隠すんだよアホかてめェ!頭ん中どうなってんだこのハッピーが!」

 

ペローナちゃんがミキータの胸ぐらを掴んでぐらぐら揺らして怒ってるけど、元々の腕力がそんなに無いからかミキータも苦笑いだ。

 

「じゃあ俺達ァ適当にバラけて仕上がりの時間にそこへ集合でいいだろ」

 

「チョッパー、ゾロに薬を!集合とか言い始めた!ゾロが絶対迷わずに集合地点に辿り着ける強力な薬をお願い!!」

 

「くっ……無ェ…!!」

 

「よし、斬る」

 

やば、ほんとに刀に手を掛けた!最近のゾロの剣は30倍でも防げるかどうか分からない程澄まされてるからここいらでやめておこう。

 

「シャッキー、あれがあったろ」

 

「ええ、1枚あるわよ」

 

あれ?

レイリーの言葉でシャッキーが奥へと引っ込み、何やらガサゴソと何かを引っ張り出してきてレイリーに渡した。

 

「私もフダツキの身なのでな、41番GR(グローブ)からどこかへ移動して作業すると思う」

 

「あ、それってビブルカード?」

 

「ほう、知っているなら話は早い。コーティング作業には3日貰おう、命を預かる作業なのでそれが最速なんだ。そうだな…3日後の夕刻と決めようか、私はその時何番GR(グローブ)に居るか分からんが、ビブルカードの導く先でコーティングを済ませ君達を待っている。魚人島への海中航海に備え必要な物を買っておくといいだろう」

 

「ああ、ありがとなおっさん!」

 

…と言う事は、ケイミーちゃんともちょっとの間お別れか。

 

「ケイミーちゃん、また3日後ね。…それと、今度こそ私の嫁になって!」

 

「…えへへ、うん、もうはぐらかさない…。イリスちん…私、イリスちんのお嫁さんになりたい!」

 

…!!

ビックリした…ぶっちゃけまだ返事は貰えない物だとばかり思ってたから…。

 

「んーー!やったぁ!すっごく嬉しい!ケイミーちゃん、これからはお嫁さんとしてよろしくね!」

 

「…うん…!ほんとにありがとね、イリスちん!私、イリスちんのお嫁さんに相応しくなれる様に頑張る!3日後も魚人島に案内するね!」

 

「はは、相応しいかどうかで言えば充分過ぎるんだけど…うん、もっと磨いてくれるなら願ったり叶ったりだよ。3日後よろしくね!」

 

「じゃあなー!!」

 

そう言って私達はぼったくりBARを後にした。シャッキーさんも3日後に見送りに来てくれるそうだから、それなりに騒がしい船出になりそうだ。どうせトビウオも来るだろうし…。

 

 

「じゃ、散らばる?私としてはナミさん達と一緒に居て守ってあげたいんだけど…」

 

「おめェらが固まりゃ目立つだろうよ。特にイリス、おめェは女王の異名で6億の賞金首…大将も狙うならまずはその首だ。守りてェなら離れる方がいいかもな」

 

「うーん、確かにフランキーの言う事も一理あるよね…」

 

今は町から離れた道を皆で歩いている所だが、いつまでもこうしていれば見つかってしまうだろう。

かと言って適当に班分けも出来ない。1人1人で散らばるのも良くない…もし見つかった時の事を考えれば、1人だと絶望的だ。

 

「だったら私、ルフィ、ゾロ、サンジは分かれるべきだよね。戦力を固めるのは良くない。4班で動こう」

 

「だな。この中だとヘボコックが1番戦力的には低い。フランキーとロビンはそこに入れるか」

 

「マリモより俺が弱いだと!?ロビンちゅわんはともかく、フランキーはてめェにやるよ!俺はペローナちゃんとナミさんとミキータちゃんで良い!!」

 

欲望にまみれてるじゃんか…。私以外全員美女が集まっちゃうし、却下で。

 

「…ん?誰か居……る…。って……え?」

 

私達の通る道を塞ぐ様に、見知った顔の大男がそこに立っていた。

 

まるでクマかと見紛う程の巨体と、クマ耳帽子…そして機械的な感情の見えない瞳。無表情の顔……間違いない、こいつは…!!

 

「どうして、ここに…!!バーソロミュー…くま!!」

 

王下七武海、暴君バーソロミュー・くまがそこに居たのだ。

…でも今は前と違って万全だ!来るなら来い…邪魔をするならぶっ潰してやる!!!

 

 


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