ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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偉大なる航路(グランドライン) 女ヶ島編
117『女好き、男子禁制の楽園(パラダイス)


「ーーーーて事は、この先のエース救出の為に私は何処かへ飛ばされてると」

 

「そゆこと」

 

夢の中でナミさん模型にペイントを重ねながら王華の話を聞いていた。

話の内容は勿論、私の体が空を飛ばされている理由についてだ。

 

「ルフィと同じ所に飛ばして貰ったから最高の島だよほんとに。そんでその島からエースを救出に行くって流れね。…だから早くこのペイント、もっとスキルアップしないとダメだよ!」

 

「へーい……因みにこのペイント、もしその“作戦”とやらで上手く出来なかったら…」

 

「そうだねー…エースの救出自体はこのペイントが無くても大丈夫だけど、その後を考えた時にこの方法で助けた方が良いんだよ。ルフィには申し訳ない事をするんだけどね」

 

気になる…。教えてくれても良いと思うけど、王華が作戦内容よりもまずは実行できる腕を上げてから、と言うのでこうして頑張っているのだ。

 

「でも最初に比べればかなりマシにはなってるんじゃない?伊達に夜中中ずっと無残な塗られ方をしたナミさんを見て泣いてた訳じゃないね」

 

「もう、確かにその通りだけど!…あっ、手が滑っ…、あー!!ごめんなさいナミさん〜ッ!!」

 

む、難しい…!ごめんねナミさん…。

 

「それで、ナミさん達は無事なんだよね?」

 

「うん。あんまり詳しく教えちゃうと私達の流儀に反するから言えないけど、無事だよ」

 

流儀…ただ未来を知りたくないってだけなんだけどね。知った上での冒険や夢なんてつまんないし、私は暗闇を手探りで進んでいく方が好きだ。どうしても光が必要になれば自分で照らしてみせる。

緊急時は別です。

 

「…よし」

 

ナミさん達が無事だと分かればやる気も出てくるってものだ。私は瞳に炎を宿して、目の前に現れたもう1人のナミさん模型に色を付けていくのであった。……あッ…手が滑っ。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

くまに飛ばされてから2日後ーーーー。

 

 

「ーーーーぐぇ!」

 

ベコン!と地面に叩きつけられた衝撃で目を覚ます。叩きつけられたと言ってもあんまり痛くはないし…私が落ちた跡が肉球型だからくまの能力で衝撃を軽減したんだろう。便利な能力だな…。

 

「ふげっ!」

 

私に続いてルフィも空から降ってきた。ルフィも私と同じで寝てたっぽいね。顔が寝起きだから分かる。

 

「…生きてた。どこだここ…」

 

「私も居るよ、ルフィ」

 

「え!イリス〜ッ!!良かった、じゃあみんなここに飛ばされたのか!?」

 

「あー…それはどうも、違うみたい…」

 

変に希望を与えてしまって申し訳ないけど、とにかくみんなは別々の方向へ飛んでいったとルフィには伝えた。

つまり、この島には居ないという事だ。王華からの受け売りだけどね。

 

「それに…見てこれ」

 

ガサゴソとポケットの中を漁ってある物を取り出しルフィに見せる。

 

「あ…!そうだ、ビブルカード!!それがあればまたみんなと会えるな!!」

 

バーで別れる時にレイリーに貰ったビブルカード…これがあればまた集まる事は出来る。あの時はレイリーを見つける為に貰った物だけど…状況が状況だからあの時以上に有り難みのある紙になったね。

 

「うん。…ただ、ここがどこなのかさっぱり分かんないんだよね…ジャングルっぽいけど…」

 

あと、くまの事とか…。

王華がくまと話して、わざわざ願いを聞き入れてルフィと同じこの場所に飛ばしてくれたって事は…くまは味方なの、かな?

黄猿から仲間を全員逃してくれたって事だし…次会ったら1つくらいは感謝の言葉でも送りつけてあげるとしよう。

 

「とにかく歩いてみる?いつかは海岸とかに出ると思うし」

 

「それしかねェな。それにしても腹減った…」

 

「…あ、これワライダケじゃない?」

 

懐かしいなぁ、と地面からワライダケを引っこ抜いて傘の表面を眺める。私の住んでた無人島にもあったキノコだけど、名前は後からサンジの持ってる食材図鑑を見て知ったんだよね。

 

「確か、こうして…」

 

かつては石を研いだり木の枝を尖らせたりしていたけれど、今では小太刀がある!じゃーん!

その小太刀で傘の表面だけを薄く切り取り、ルフィにはい、と渡した。

 

「ワライダケは傘の表面に微量の毒があって、それが笑いを引き起こす原因だからね。こうすればただの美味しいキノコだよ」

 

「ホントか!?いやー、イリス結構頼りになるなー!もぐ…」

 

「ふっふっふ…無人島生活16年を舐めて貰っちゃ困るぜお兄さん」

 

仕留めた獣の血抜きなんかもそれなりに上手い自信がある。サンジ?あれはもう別格ね。上手過ぎて比べるのが恥ずかしいレベルだから。多分私の料理の腕を100倍に上げてもサンジには敵わないんだろうなぁ。そういう倍加は出来ないけども。

 

という訳で歩きながら食糧調達の時間だ。ルフィは採って直ぐ食べようとするから「それだけはやめて」と必死に止めながら進む。見た事無いキノコだって沢山あるんだから、あんまり何でもかんでも食べられちゃうと後の処理に困る。仮にアミウダケを食べられたらお仕舞いだ…。

 

「あ、崖だ」

 

「登る?迂回する?それとも、ここで一旦休憩しちゃう?」

 

巨大化させた手の平に一杯詰まったワライダケをルフィに見せながら言うと、彼は腹の虫を鳴らせて頷いた。さっきから腹減ったって言ってたもんね。それにこの崖かなり高いし、登ろうと思ったら体力使うよ。

 

「フゴ…!」

 

「ん?」

 

背後から聞こえた鼻を鳴らす様な声に振り向けば、そこには巨大な猪が居た。

…おー、ラッキー。本日のメインディッシュがあちらから来てくれるなんて!

 

「ゴムゴムのォォ!巨人の(ギガント)(ピストル)!!」

 

「はやっ!」

 

私が動くよりも先にルフィが猪へ攻撃を仕掛け、一撃で沈めていた。何ならオーバーキルと言っても良い。猪潰れて無いだろうね…。

 

幸いにも猪の原型を残しつつ仕留めてくれていたので、私自慢の血抜きを行った後に調理を開始した。

…と言っても水も何も無いジャングルの中…適当に火を起こして丸焼きにしただけなんだけど。キノコも毒の処理を行なって同じように焼いて食べた。サンジの料理が恋しい〜…。

 

 

「で、崖だけどこれどうする?」

 

「登れば良いんじゃねェか?確かに結構高ェけどよ」

 

食べ終わった後、私達はまた崖を見上げながら話す。

ルフィの言う通り、登るのが1番速いかな。それに高い所へ上がれば今よりずっと場所の把握がしやすくなるのは間違い無いし。

 

「じゃあ登るってコトで、先に行っーーー」

 

「何者だ!!!」

 

「え?」

 

「ん?」

 

登ろうと崖を掴んだ瞬間、ジャングルの中から声が響いた。声は1人…だけど足音は3人かな。

草木を掻き分けて現れた3人組の女の子達が、私とルフィを警戒して弓矢を向けている。…中央の金髪ちゃん好みだな。可愛い。それに人が居るって事は一応ここは無人島ではないと証明されたね。まさか私達と同じでただの遭難者って事は無いだろうし。

 

「島では見ない顔だ、侵入者か!?」

 

「うーん、でもこの島に侵入出来るとは思えないわ〜」

 

「“私もそう思うの巻”ね」

 

…それにしても、なんて個性的なんだ。

中央の金髪ちゃんと、〜の巻、とか変な喋り方をしてるゴツい体格の人は体にヘビを巻いてるし、最後の1人は巨人族とまでは行かなくても大きい体格の持ち主だ。

 

「何だお前ら!ここが何処か知ってんのか?教えてくれ!」

 

「惚けるな!ここが何処か分からずに来る人間が居るか!!」

 

「本当に分からないんだよ、私達もさっき飛ばされてきたばかりで…」

 

「飛ばされる?それは相当な腕力の人なのね〜」

 

天然かこの大きい女性は!…いやそりゃそうか、私の説明が足りなかった。

 

「飛ばされるっていうのは、悪魔の実の能力でって事で…」

 

「悪魔の実?何だそれは」

 

おー…う。そう来たか…。

確か悪魔の実って貴重で、存在自体を知らない人も居るんだったよね…、最近はそんな人居なかったからすっかり忘れてた。

 

「ここは凪の帯(カームベルト)に囲まれた女ヶ島(にょうがしま)だ…!何か目的があって侵入したに違いない!」

 

「とは言ってもね…知らないトコだし」

 

女ヶ島って名前しか知らないから、どんな島かってのも分からないんだよね。その辺は王華にも聞いてないし。

 

「男子禁制の島、女ヶ島(にょうがしま)だ!聞いた事はあるだろう」

 

「え」

 

にょ…女ヶ島って……え、もしかして、女の島って書くの…?…く、くぅう…!!

 

「あのさ…」

 

…き、

 

「…因みに、村とか、ある?」

 

「“国があるの巻”ね」

 

「女の子、だけ?」

 

「そうよ〜」

 

き、来たーーーーーーッ!!!!!楽園じゃん!!え、私女だから入国していいかな!?いいよね!!うひょーー!!!!王華が言ってた最高の島ってこういう意味だったのか!!

 

「私、女!入国、望む!!」

 

「どうしてそんなに変な喋り方なんだ…」

 

だって女の子だけの国って…!うひょひょ!!

…それに、確かに欲望もあるけれど、もしかしたらこの島に美咲達が転生している可能性だってある訳だ。女だけなら確率も高い…と思ってる。

 

「でもマーガレット、入国自体は別に良いんじゃない?そもそもこの島には男は入って来られないし…」

 

「“そもそも男を見た事が無いの巻”ね」

 

「え?お前ら男見た事ねェのか?」

 

ルフィの言葉に3人は頷いた。…男子禁制って、禁制の度合いが私が想像してたより遥かに高いのかもしれない。

これはルフィにこっそりと自分が男だって言わないように言っとかないと…。

 

「じゃあおれで初めてだな!男を見んのはよ!!」

 

「え…」

 

「あ」

 

早ーーーーーーい!!!!フラグ建てたのは私かも知れないけど…でも、でも早いよ!!ビーチフラッグしなくていいから!!

 

「今…何と?」

 

「い、いとこ!従兄弟を見るのは初めてだねって事!ルフィちゃんにはさっきの男がいとこに聞こえたんだよね!!ほら、ルフィちゃんと私って実はいとこだから…!!」

 

「何言ってんだ、ルフィちゃんって気持ち悪ィ…おれは男だぞ!!!」

 

「!!!!」

 

バッ!と3人はバラけて周りに飛び散り、ギリギリと弦を引いた。

…ルフィ……流れで察して欲しかった…!でもそれをルフィに求めるのも確かに酷だった…!!私が悪いか…いやそれも腑に落ちないけど!?

弓矢の先端は私にも向いており、ルフィのせいで私まで男疑惑が掛けられているみたいだった。どう見たって女でしょ!見てよこのプリティフェイス!!

 

「男だと…!?何故男がこの島に居るのだ!!」

 

「だからさっきから言ってんだろ、おれ達は空を飛んで…」

 

「真面目に答えろ!!」

 

「わっ!」

 

放たれた矢を体を逸らして躱し、躱したルフィはその矢が砕いた岩を見てギョッとする。

…あの矢、覇気(・・)を纏っていたね。この人達…まさか覇気使い…!?

 

「ま、待って!本当なんだって!!本当に何にも知らないの私達!この島が男子禁制って事も知らなかったし、凪の帯(カームベルト)に囲まれてるって事も知らなかった!もし出て行けっていうのなら大人しく出て行くから攻撃するのはやめて欲しい…!私もルフィもあなた達を傷付ける気はないから…!あ、でも船を1隻貰えると凄く助かるかな。あと、私は女だから!!」

 

「…もしその言葉に偽りが無かったとしても、私からどうぞと船を与える事は出来ない」

 

「良いじゃねェか船くらい。ちっさいんで良いからよ、出来れば航海士も」

 

「“注文が増えてくの巻”ね…」

 

そりゃー私達が船に乗り込んで出発した所で漂流するのがオチだからね。特に私達はナミさんのお陰で難易度ヌルヌル航海をしてきたから…今更そんな知識皆無で海へは出られないというか…。

 

「私達の国、アマゾン・リリーにある船は“遊蛇(ユダ)”という獰猛な毒海ヘビが引く1隻しか無いのだ。それは海王類すらも近寄るのを恐れるから、海へ出る時も遊蛇(ユダ)ならば快適に出航出来るだろうが…」

 

「じゃあ、申し訳ないんだけどその遊蛇(ユダ)の船に乗せてよ。また出て行く時についでで良いからさ」

 

私の言葉にも3人は難しい表情を変えず、ただ首を振るのみ。

 

「その船の出航を管理しておられるのが、我が国の皇帝なのだ」

 

…おう…なるほど。つまり…男子禁制のルールを自ら引っ張ってる人が唯一の船を管理しているから、ルフィの存在を教えるしか方法が無いというわけか。そしてそんな人がルフィを船に乗せるわけがない…と。

ルフィは女です!って言っても肝心のルフィが口を滑らせそうだし。

 

「何とかその、皇帝の人に口添えして貰うことって出来ない?私達本当に危害を与えるつもりはないから…。ほら、小太刀も外すよ」

 

腰に付けてある小太刀を外し足元に置く。

万が一皇帝の機嫌を損ねてこの楽園と敵対する事になっちゃったら泣くよ私は。どうせなら円満に円滑にうひょひょパラダイスをしたいもん!!

 

「“嘘を言ってる様には見えないの巻”よ」

 

「マーガレット、何とか蛇姫様を説得出来ないの〜?」

 

「ううん…」

 

下心満載の交渉だけど、少しずつ信用してもらえる様になってきたかな…。

 

「蛇姫様って?」

 

「ああ、この国の皇帝だ。またの名を海賊“ 女帝(じょてい)”ボア・ハンコック。この国は彼女と2人の妹君によって固く守られている」

 

「そのハンモックって奴も海賊なのか!」

 

「ハンコックね。お世話になるんだから無礼はダメだよ」

 

…いやでも、もし可愛かったら…うん、嫁にするしかない。女帝?知りませんねェ…既に一国の姫君を嫁にしてるんだから今更なんだよねェ…。

でも今は何も知らない女帝より、目の前のマーガレットって呼ばれてる女の子だよ。嫁にしたい…いや、する。

 

「で、さっきのマーガレットの反応を見るに…蛇姫様への説得は厳しいの?」

 

「…蛇姫様は国中の誰もが憧れる女性。強くて気高く、世界一美しい。…だが、掟に関して最も厳しいのも蛇姫様だ。男の入国を許して貰えるとは…すまないが…」

 

ふぅむ…マーガレットが蛇姫様なら話は早そうなのに…。

この際海を凍らせて歩いて進もうかな、でも凪の帯(カームベルト)の海王類に囲まれて勝てるとは思えないんだよね…。女王(クイーン)化をするにしても時間制限があるんだし。

 

「……私達も、お前達が悪い者では無いという事は分かった。…出来る事ならば蛇姫様へ願いを届け、叶えてあげたいとは思う。だが…掟を破れば罰を受けるのは私達なんだ。…これ以上は情が移る…!」

 

そう言って手に持つ矢を再び私達に向けてきた3人を前に、私とルフィは一瞬目をパチクリさせた後、視線を交わしてニヤリと不適に笑った。

 

「ごめんねマーガレット、仲良く手を取り合う事が難しいのなら…この国は私が貰う事にしたから」

 

「は!?」

 

「な、何なの〜!?」

 

「と…“とんでもない事を言い出したの巻”ね…!」

 

お互い海賊で、意見が噛み合わないならやる事は1つだ。前世ならば刑務所行きの狂気の沙汰も、今世の海賊イリスには関係の無い話…思い通りに事が進まないなら無理矢理言う事聞かす他無いじゃんね!

 

「これでマーガレット達の罰にはならないでしょ?私達が勝手にこの国制圧するから、捕まえたいのなら適当に追いかけてきてよ。じゃあね!」

 

軽く手を振ってさっき行き止まった崖をジャンプして登り始めた。かなり高いから一度の跳躍では上まで登りきれないし、指を崖にめり込ませながら上がるしかない。…おわっ、下から矢が飛んできた!

 

制圧と言っても、勿論その女帝と話してからだ。もしその人が話の分かる人なら良し…ルフィを見て問答無用で攻撃を仕掛けてくる様なら…その時は一暴れさせて貰うよ!

 

 

 


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