ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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インペルダウン編
121『女好き、大監獄に侵入する』


『九蛇城』

 

 

「ハンコック、承諾してくれるかな」

 

「可能性は低い。…じゃが、あの子もおぬしらには恩を感じておる、もしかするかもしれニュな」

 

最悪軍艦奪うから負い目は感じなくていいけどね。そもそも無理言ってるのは私達なわけだし。

 

「ニョン婆様!!」

 

「どうしたエニシダ、慌てて…」

 

後は門を開けて中に入り、あの皇帝の広間に行くだけ…だったのだが、私達が門を開ける前にエニシダと呼ばれたスタイル抜群お姉さんが息を切らして慌てて外へ飛び出してきた。

ニョン婆を今から呼びに行くつもりだったらしく、だったら丁度いいねとルフィと頷き合う。

 

「何があったのじゃ」

 

「それが…!蛇姫様が原因不明の病で倒れてしまわれて……!!」

 

……え。

 

「や、病…って…ハンコックが!?そ、そんなに重いの…!?よ、容態は…」

 

「落ち着け。…わしに心当たりが…無い事も無いが…まさかな。一応見に行こう」

 

そんなの、ハンコックにお願いしてる場合じゃない…!原因不明だなんて…まずは彼女の体を考えてもらわないと…!

 

 

そうして、相変わらずルフィに背負われたまま皇帝の広間へと辿り着いた私は、ニョン婆に少し外に出てくれと頼まれて部屋のベランダの様な場所に出る。

外から窓越しに見ただけでも分かる…苦しそうで、本当に今にも死んでしまいそうな…!だ、だめだめ、こんな考えは…。でも心臓の辺りを押さえているんだよね…嫌な想像ばかりが膨らむというか…。

 

「大丈夫なのか、蛇女」

 

「大丈夫そうには…。…え、立った!?…しかもこっち来る!?」

 

ニョン婆と少し言葉を交わした後、足取りは重そうで、体をふらつかせてはいるが間違いなく私達の居るベランダに向けて歩いて来ていた。

そして遂に扉を開けて外へ出て来る。

 

「何か用か…?イリス」

 

「え、あ、うん…頼みがあるんだけど…大丈夫なの?体…」

 

「わらわは病になど支配されぬ…!申してみよ」

 

本当に大丈夫なのだろうか…。支配されるのは嫌だと言っていたし、ただ無理しているだけなんじゃ…。

 

「今度処刑される白ひげんとこのエースっていう海賊はおれの兄ちゃんなんだ!エースを助けたい!…でも海賊船じゃ間に合わねェんだって」

 

「…ごめん、体が大変な時にこんな事、本当は言いたくないんだけど…。強制招集の船に乗って私達をエースのいる「監獄」まで送ってもらう事って…出来る?」

 

私がそう言うと、部屋の中から窓が開いてそこからソニアとマリーが顔を勢いよく顔を覗かせた。

 

「何を身勝手な事を!!そなたら、姉様の心のキズを知ってなおあの忌まわしき土地へ行けと言うの!?」

 

「ごめん!…本当に酷い事を言ってるとは思う…だけど…!」

 

「…“七武海”の招集に……応じろと言うのね…」

 

私が最後まで言葉を紡ぐ前に、ハンコックは私の目を真っ直ぐに見つめ、更にその頰を上気させて言った。

…え、何ですかその顔は…あ、あれ、私、別に鈍くないから分かるけど…その表情まさか…!

 

「そなたがそれを望むなら…わらわは、何処へでもゆきます… ♡」

 

「あっ……、うん…あ、ありがとう………、まじか」

 

まじでか…!

窓の向こうでニョン婆と姉妹2人が騒いでいる。ハンコックの病は“恋煩い”だとか…。

……どうやって堕とそうかと考えてた人が、なんか勝手に堕ちてた件について。

ま、まぁ…いっか!これでハンコックを嫁にも出来るし、体も何ともなかった訳だし、エース救出にも乗り出せるし。

 

ただ何というか…あっさりし過ぎててドッキリを疑うレベルだよ。ハンコックのキャラでドッキリなんてしなさそうだから疑う余地ないけど。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

目的地が急ぎのインペルダウンへと変更になった事もあって、船を明朝ではなく今すぐ出してくれる事になったので船の前でハンコックを待ち待機している。

まだ体が動かないんだけど…クールタイムやっぱり長いなぁ…!

 

「引き続きよろしくルフィ〜」

 

「いいけどよ…イリス背負ってたら蛇女が羨ましそうに見てくるんだよ。お前いつの間に口説いたんだ?」

 

「いや…それが私にもさっぱり…」

 

口説きに行った覚えは無いんだよね、ほんとに。

 

「イリス、またね」

 

「ん」

 

見送りに来てくれていた人達の中からマーガレットが出てきて私の頰にキスを落とす。それだけで頰を赤く染めていたから慣れてないんだろうな、と予想。

なんかそういう反応は新鮮で可愛い。

 

「…あ、ハンコック」

 

「じゃあ、私はこれで。…蛇姫様とも仲良くね!」

 

「うん、またね!」

 

動けないので手は振れないけど、心の中で思い切り振っておいたから伝わってる…と思いたい。

 

それにしてもハンコックが登場しただけで周りが凄い騒がしくなったね、どんだけ人気あるの。

あ、かなり大きめのコートを着てるから、あの中に隠れろって事かな。…ぐ、ぅう…!だとしたら、ルフィこの野郎ハンコックに抱きつくって事じゃん…!ルフィじゃなければ即刻この場でボッコボコにしちゃう所だよ…。

 

「出航じゃ、用意を」

 

「はい!」

 

近くの者にそう言って船に乗り込むハンコックの後をルフィがついて行く。そしてみんなに見送られながら私とルフィは女ヶ島を後にした。…最後の最後まで女ヶ島ではルフィの方が人気あったのが悔しい!そりゃマーガレットっていう素敵な女性を嫁にできて、なんか分かんないけどハンコックも嫁に出来そうなのは嬉しいけどさ!

あと、パレットと絵の具もしっかり受け取った。これが無いとダメみたいだからね…何でか分かんないけど。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「上手いこと行って良かった、ありがとうハンコック」

 

「そなたの為ならば、わらわは例えこの世の地獄にだろうと飛び込んでみせます…♡」

 

ちょっとお礼を言っただけなのに何だコレ。

 

今、私達は何とかハンコックのコートに隠れて軍艦に乗り込む事が出来ていた。結局体は動かせないままだったから、その点でもルフィに世話かけちゃったけど。

ハンコックにと用意された部屋でようやく体を外に出し、備え付けられていたベッドで横になっている。

 

「なー、監獄まで何日かかるんだ?」

 

「ここからなら4日と言った所じゃ。風向きによって半日程度の誤差はあるのは覚悟しておけ」

 

「4日か…」

 

と言うことは、私が王華と練習できるペイントも後4日が限度か。

“作戦”に関してもそれまでに詰めておかないといけないし…今は寝た方が良さそうだ。

 

「ごめん、ちょっと寝るね。騒いじゃダメだよルフィ」

 

「おお」

 

本当に分かってるのかな。ご飯食べたら、「ぶへー食った食った!」とか大声で言うんじゃ無いの??

 

…まぁ、いっか。気にしてたら寝れないし。

 

「そなたの安眠はわらわが保証する。ど、どうせなら子守唄を歌っても…よいぞ?」

 

「……ぐー」

 

「……もう少しゆっくり眠れ、バカ者…でも、そんな所も素敵じゃ…♡」

 

 

 

 

 

 

『王華部屋』

 

 

「てな訳で、後4日だけど…そろそろ作戦を教えてくれてもいんじゃないの?」

 

「んー…」

 

ゴロゴロと寝転がって漫画を読みながらお菓子をボリボリ食べてる王華にため息を吐きながら問う。そりゃこの空間では体に悪影響はないかもしれないけど、なんていうか人としてどうかと思う。

 

「そうだね…じゃ、話そっか。うーん…何から話したものか…」

 

「普通にペイントの練習してる理由から教えてよ」

 

「あー、それはね、()()()()()()を塗る為だよ」

 

……はい!?

 

「ちょ…死んじゃダメじゃん!」

 

「あはは、正確にはエースの死体風蝋人形ね。あの戦争にはイリスがインペルダウンでやらかさない限りMr.3も参戦するの」

 

Mr.3…バロックワークスのあいつか!その言い方だと上手いこと事を運ばないと無理って事なんだよね。それこそ原作通りか、もしくはそれ以外の方法でMr.3を戦争に参加させないと…。

 

「政府からすればエースは何がなんでも殺したい存在。だったらお望み通り形だけでも殺させてあげようよ。そしたらみんなエースが死んだと思い込むし」

 

死を偽装するって事かぁ。何がなんでも殺したい存在ってのが気になるけど…王華が何も言わないって事はそんなに重要な情報ではないのか、もしくは話の流れで分かることなんだろう。

 

「でも、それってその場に居る全員を騙すんでしょ?私…ルフィを騙したくない」

 

「堪えて。じゃないと本当の意味で助けるなんて無理だよ、死を偽装しないと海軍は…この世界はいつまでもエースを追い続ける。最終的にバレるのは仕方ないとしても、その頃にエースがもっと強くなっていれば今回の様に捕まるなんて事もそうそう無いだろうし」

 

釈然としないけど…納得するしかないのだろうか。

 

「だけどさ、その蝋人形と本物のエースを入れ替えるなんて出来るの?」

 

「出来そうなタイミングは1度だけ…ある。…私がその時その場に出ていれば分かるんだけど……こればっかりは賭けだね。とにかく私を出すのは、というか女王(クイーン)化するのはエースを解放するまで待って」

 

「死ねってか」

 

「そうするしかないの!」

 

えー…海軍の最高戦力が揃ってるんだよ…?…王華がそういうならそうするしかないんだろうけどさ。

 

「…で、エースを助けた後にも大仕事が残ってるからね」

 

「まだ何かあるの?」

 

私がそう聞けば、王華は顎に指を添えて唸り出した。

 

「…んー…、これは、その時のイリスの判断に任せるよ。多分OKしてくれると思うけど」

 

「出た…またお預け?」

 

「ごめんごめん。だってこの世界の今後を変える程の事だから…。あ、それはエース救出も同じ事か」

 

この戦争だけでどれだけ動くんですか運命さん…。

 

「エース救出に関しては大体分かったよ、とにかくエースの身柄を解放してから王華を呼んで、その時Mr.3が近くに居ればいいんだね?」

 

「そ。そこからのタイミングは私が指示を出すから安心してね。…じゃ、作戦も分かった所で…」

 

「はいはい…始めますか、ペイント練習」

 

後4日…時間も無い。

誰にも見られない様にペイントするには、例えば地面を殴って砂埃が舞ってる時に速さを100倍すれば大丈夫だろうけどクオリティは必要だ。

…死体をじっくり見られればバレるけど…その辺は大丈夫なんだろうか。まぁ…色々考えている事を信じよう。

 

Mr.3の確保方法とかもしっかり聞いておかないとダメだし、これから忙しくなるね…!

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「……ん」

 

パチ、と目を開けてもぞもぞと体を動かす。…よし、動くね、体。

…なんか隣にハンコックが寝てるのが気になるけど…いや寝てないなこれ、ガン見されてるなぁ!

 

「…お、おはよう」

 

「……おはようございます…♡」

 

始めの態度からは考えられない赤面顔にグッと来る。可愛い顔も出来るのかこの人…!無敵か…!

何とか堪えて上半身を起こし、床で寝ているルフィに掛け布団を放り投げた。何も無いのは流石にどうかと思うし…。

 

「…あのさ、ハンコックって私の事好きなの?」

 

「愛しています…♡」

 

おお…。め、珍しい…。私からのアプローチが殆ど無く、逆に向こうからグイグイ来るなんて初めてじゃない?嫁になってからならミキータもこんな感じ…いやもっと激しいか、ミキータは。

 

「だったら私の嫁にならない?ハーレム女王を目指してて…ハンコックが入ってくれたら嬉しいなぁ」

 

「わ、わらわでいいのか…!…こ、これは、まさか…結婚!?…これから宜しくお願いします…あなた♡」

 

チョロ過ぎるーーーー!!!初めの威厳は何処に行ったんだろう…誰だこの人!!

 

「はは…よろしくね?」

 

本当に嫁になったのか不安になるくらいあっさり入ったなぁ…。

ま、チョロくてもなんでもいっか、ハンコックみたいな美人が嫁になってくれたんだから。

 

…ルフィを邪魔者扱いしたい訳じゃないけど、こうなっちゃうとイチャイチャしづらいね。大事な作戦が控えてるし、変に気持ちを浮つかせない意味ではこの場にルフィがいてくれて助かったかも…?

 

 

 

 

 

そして、出発してから4日が過ぎ…ついに私達はインペルダウンへと到着した。

来た時と同じ様にハンコックのコートの中に隠れてこっそりと侵入する。

 

それにしてもここ、バスターコールより軍艦の数が多い…流石は大監獄だ。

 

ハンコックとサロメ、そして案内する中将モモンガがインペルダウンの門を潜り、ハンコックがボディチェックを受ける事になった。

更にこれより奥へ向かう際には海楼石の錠をつけるらしく、当たり前ではあるが厳重な警備だと思う。

そんなことより私達にボディチェックが入る事をこっそり知らせてくれたハンコックが、あせあせっ、みたいな擬音が飛んでそうな感じだったのが可愛かった。

 

「ようこそ、我がインペルダウンへ!…あァ間違えました、“我が”ってちょっと野心出ちゃった。私はまだ(・・)副署長のハンニャバルです!よろしくお願いスマッシュ」

 

「モモンガだ」

 

ここからだと声だけしか聞こえないけど、また何ともキャラの濃い人が現れたね。

 

「署長のヤロ…署長のマゼランはLEVEL4の署長室におりマッシュのでお立ち寄り頂きマッシュ!案内はこちらの副看守長ドミノと私で…」

 

「時間がない様ですのでさっそくこちらへ!中将殿はあちらで、失礼ですがボディチェックを」

 

お、美人な雰囲気がする声だ。気になる…けど今出る訳には行かない。我慢だ…我慢…。

 

「客人は個室でのチェックです、ご安心を。それからそのマントは外して頂きます。1番物を隠し易いアイテムですので、ここでお預かり致します。疑う訳ではありませんが不審な行動をとられません様に…インペルダウンの内部には至る所に“監視電伝虫”が這い回り監視モニターに映像を送り続けています」

 

個室に入ったのか…それは運が良い!

ハンコックも今が好機と見たか早速ドミノと周りの電伝虫を石にして私達をコートから出した。石にされる前後の記憶が飛ぶらしいから私達がバレる事はないだろうし…その能力ほんといいね。

 

「イリス、ルフィ、どうやらわらわが送ってやれるのはここまでの様じゃ。この先は能力も使えず…マントも取られては隠しきれぬ。…もっとそなたの力になりたいが…」

 

「充分助かってるよ、私とルフィだけじゃ暴れでもしないとここまで来るのは不可能だったと思う」

 

「そ、そうか…♡…コホン、ここは人を逃さぬ為の要塞じゃ、絶対に騒ぎだけは起こしてはならぬぞ!捕まれば2度と外へ出られなくなる…!そなた達は強いが…暴れない!そう約束して欲しい…!」

 

「…分かった、本当にありがとうハンコック!いつか絶対この恩は返すよ!…じゃ、行ってくる」

 

ガシっとハンコックの手を握ってお礼を言い、ルフィと一緒に部屋の天井にぶら下がった。

なんか固まっていたハンコックも復活し、電伝虫とドミノの石化を解除する。…ドミノ可愛いな、サングラス取ってくれ〜!

 

…さて、ここからはしっかり気を張っておかないとね。見つかったらアウトらしいし、私も女王(クイーン)化を今使う訳には行かないから…。

 

「…行きますか」

 

「おう」

 

エース救出作戦…開始だ。まずはMr.3を探さないとね。

 

 

 


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