ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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122『女好き、まだまだ序盤の大監獄』

ハンコックのお陰でなんとか大監獄に侵入した私とルフィは、エースが投獄されているという地下を目指していた。

これは王華から事前に聞いていた事だけどどうやらインペルダウンは海の中に建っているそうで、下の階に行けば行くほどレベルとやらが上がって監獄されている囚人達の凶悪さも上がっていくそうだ。

で、通常はレベル1から5までしか無いらしいんだけど、実はその先にレベル6と呼ばれる表沙汰になる事はない階層があるみたい。

エースはそのレベル6に居るらしいから、地下6階かな?今が地下1階だからまだまだ道のりは長そう。

 

「それにしても広いね、この監獄」

 

「地下ってどう行くんだ?」

 

まだレベル1だと言うのにこの広さ。迷路みたいに道が複雑に分かれており、壁にはずらりと檻が並べられていた。

王華も下へ降りる道筋までは覚えていないらしい。そりゃそうか、そこまで詳しかったらそりゃ好きを通り越してソムリエだよ。

でも何か穴を飛び降りるとか何とか言ってたから、その穴を探さないといけない。

 

「ちょっとちょっと、お前達なんで外に出てるんだ?」

 

「ん?」

 

その穴を探す為に走り回っていた私とルフィを見て檻の中の囚人が声をかけてきた。

 

「何でって…そもそも外から来たし」

 

「バカ言え、侵入なんざ出来るワケねェだろ。脱獄中か?お前みたいな嬢ちゃんがインペルダウンに…何したんだ」

 

「何もしてな……い事はないけど、だから外から来たんだって」

 

まぁ信じなくても良いけど。

見ず知らずの囚人とお喋りしてる暇もないし、多分そこから出して欲しいんだろうけど…残念だったね、今は忙しいから。

 

 

……ぁぁあ……!

 

 

「…?」

 

…なにか聞こえない…?

 

 

「ぁぁぁああ……!!」

 

 

「…誰かの悲鳴だ…こっちに来る!」

 

声が聞こえてくる方の道をルフィと見れば、その先からゴリラの様な何かの集団に追われている人を見つけた。しかもその人囚人服着てるし、脱獄囚かな。

 

「ブルゴリだ!逃げろ殺されるぞ!」

 

「どうも、心配してくれてありがとう。よしルフィ逃げるよ、戦ったら騒ぎになっちゃう」

 

「ああ。けどよ、これもう騒ぎになってねェか?」

 

「……騒ぎの中心が私達じゃないから大丈夫でしょ、早く離れよう!」

 

もうブルゴリとやらもそこまで来てるし…うわ、脱獄囚真っ二つに斬られた!

 

「斬られたァ!走りづらっ!」

 

「…って、なんだバギーか」

 

「あ!?誰が素敵な赤っ鼻だって!!?…て、てめェは…!」

 

とにかく逃げよう、このままじゃハンコックとの約束が守れなくなっちゃう。

ルフィと一緒に走り出せば、その後ろをバギーもついてきた。ちょ、せめて後ろのゴリラ達なんとかしてから来てくれない!?

 

「ちょっと!前からも来てるんだけど!」

 

「オイバギー!何でここにいんだよ!騒ぎ起こさねェって約束したのに巻き込みやがって!」

 

「麦わらとガキ…!おれだって好きで騒いでんじゃねェ!たった今「バギーのこっそり脱獄大作戦」が台無しになったトコなんだ!!」

 

こっちが知るかそんな事!…もう…!前と後ろで完全に挟まれちゃったじゃん!!

 

「…ハンコックとの約束を台無しにしやがってこの野郎…!ルフィ、仕方ないから倒すよこいつら!」

 

「ああ、騒ぎはもう起きちまってるしな!」

 

「このスットンキョー共め…!あァあァわかった、やったらァ…やりゃいいんだろ?ド派手大作戦に変更じゃァ〜〜!!」

 

「のった!」

 

「そもそも騒ぎ起こしたのあなただから、ちゃんと反省してよ、ね!!」

 

私に飛びかかってきたブルゴリの顎をアッパーで殴り飛ばし意識を飛ばす。数はまだ多いけどルフィも居るし…バギーは戦力になるか知らない。

 

「ゴムゴムの銃乱打(ガトリング)!」

 

全部で5匹居たブルゴリも、最初のアッパーとルフィのガトリングで全部地に伏した。因みにバギーは1匹に手こずってたから、もしかしたら素の戦闘力は大したことないのかもしれない。

 

本来ならここでバギーに知恵を借りたい所だけど、生憎その知恵は王華から既に貰っている。バギーが下の階へ続く穴とやらを知っていればまた別だけど…。

 

「お、お前ら少しは腕を上げたようだな…」

 

「どうも。所でバギーさ、下の階に行く道知らない?私達エースを助けに来たんだけど」

 

「エースを助けに来ただァ!!?……!し〜〜〜っ!!見つかる…!」

 

「おめェが叫んだよな、今」

 

知らないなら別に良いんだけど…。これ以上騒ぎを大きくする前にバギーからは離れよう。

 

「…え、ちょっと待て麦わらァ〜〜っ!!」

 

「ばっ…!」

 

何故か突然大声をあげてガバッとルフィに飛び付いたバギーの声で、近くに居た看守に見つかってしまった。

やば…、見られたか!?

 

「このバカっ鼻が!逃げるよ!!」

 

「だァれが赤っ鼻じゃい!!ま、待て麦わら!そ、その腕輪素敵だな!くれよ!」

 

「何だいきなり!」

 

バギーは走りながらルフィの腕輪をまじまじと見ている。それがどうかしたの?確かスリラーバークの宝物庫に眠ってた宝の1つじゃなかったっけ、ナミさんが宝じゃないからあげるみたいな事ルフィに言ってたってやつ。

 

「それくれたらエースの所への行き方を教えてやるよ〜!」

 

「いいのか!?じゃあやるよ!」

 

信用していいのかはわからないけど…ここは乗るしかない。どうせ闇雲に走り回っても分からないんだから。

 

「よっしゃ!じゃあまず敵を振り切る、おれの足を持て!」

 

「これか!」

 

バギーの足首とその上の体が分かれて、足首の方をルフィが持ち上げた。するとバギーの体は宙へ浮かび、私達の前を飛んで移動する。

 

「全速力で走れ!レベル2入口へ案内する!」

 

「レベル2!?違うよ、おれが行きてェのはレベル5!」

 

「違うよルフィ、レベル5に行く為にはレベル2から順番に下へ降りないといけないの」

 

エレベーターとかあったら便利なんだけどね。いや、もしかしたらあるにはあるのかも…ただ看守達職員しか使えないってだけで。

 

「そうだ!そしておれはレベル4までしか降りてねェからそれ以下のフロアは分からねェ…案内できるのはレベル4までだ!」

 

「いや、それで充分!何も分からないよりずっと早いでしょ…!」

 

…と言う事はバギーは弱いからこのフロアに居るのか、なんか可哀想。

私が捕まったとしたらどこに行くのかな、やっぱりレベル5?それとも6?ふふーん。

 

「なんかお前急に親切になったな」

 

「ぎゃははは!そりゃおめェ、キャプテン・ジョンの財宝のありかを示すトレジャーマークをくれるってんだか……はっ!!」

 

慌てて口を押さえるバギーだけど、聞こえてるよ。というか別にそれが財宝のありかとか別に私とルフィはどうでもいいし。

 

「そうか〜、この腕輪宝の地図みてェなもんだったのか、じゃ、これ先にやっとくよ」

 

「え?」

 

私達の方へ振り返って間の抜けた声をあげる。その状態でも前に進めるんだ…、その先壁があるんだけど気付いてるのかな?

 

「おめェ…今くれたらおれァこのままトンズラこくかも知れねェぞ!?」

 

「そうか!でもお前案内してくれるって言ったじゃねェか!」

 

「それに私達から逃げられる訳ないでしょ」

 

さっきのブルゴリ戦を見る限りだと、私やルフィがバギーに遅れを取るなんて事は無さそうだし。

 

バギーは1人百面相を浮かべて、恐る恐るルフィから腕輪を受け取りーーー、

 

「ボケバブオゥ!!!」

 

「ん!?その壁破ると近道か!?よし、任せろ!!」」

 

「違ギャアァア!」

 

案の定後ろ向きに飛んでいたバギーは先の壁に気付いておらずそのまま背中から直撃した。

更にそこへルフィの勘違いが発動し、バギーの体を押して壁を突き破る。

 

「…!まず…」

 

ドン!と床を思い切り殴って辺りに砂埃を散らせた。

突き破った先のこの部屋、看守室なのか看守が何人も居てビックリした…!ルフィが壁を壊した時の埃でもある程度の視界は潰せただろうけど、やっぱりやるなら徹底的にやっておかないとバレたら面倒だし。

 

「止まれ麦バガァァァアア!!」

 

「うおおおお!!」

 

こらバカ!声出したら…!

 

「誰だ!?2人居るぞ!」

 

バレたじゃん!…こりゃ私もすぐに気付かれるね、仕方ない。

 

更にこの部屋の壁も突き破って、私達はその向こうへと飛び出した。

うわ…っ森…?ていうか床無いし…!落ちるー!

 

「何だここ…!監獄の中に…森!?」

 

真っ赤な森が眼下に広がる。私達はそこへ落ちながら森を見渡していく。

 

「下にいっぱい人も居るぞ…!」

 

「囚人達だ、ここはただの森じゃねェ!樹の葉っぱは刃物の様に切れる“剣樹”、下に敷き詰められた草は針の様に体に刺さる“針々草”!足元に放たれた毒グモや獄卒達に追われ森を駆け回る囚人達は葉に切られ、草に切られ、血に染まり切り裂かれる痛みに苦しむ…!総じてレベル1紅蓮地獄!!これがインペルダウンだ!!」

 

真下の囚人達から助けてくれ、痛い、苦しいと声が聞こえる。まさに地獄だ…これでレベル1…!

さっきの迷路みたいな道にあったのはただの牢獄で、真のインペルダウンじゃ無かったって事だ。

 

「このままじゃ下に落ちるけど…!」

 

「そうだ、いいんだ!このまま落ちるぞ!」

 

「何で!?切れるじゃねェか!」

 

「おれなら切れねェ!黙って掴まってろい!おれの足を下に投げろ!」

 

バギーの指示でルフィが足を放り投げる。それは地に生える針々草に切られながらも全くの抵抗無しに歩き出した。

こういう時はバラバラの実って便利だね。私ならそのまま落ちてもダメージ無かったと思うけど…もしアーマー貫通されたら痛いじゃ済まないだろうし大人しくバギーに掴まっておきます。

 

「ぎゃははは!足さえつきゃこっちのモンだ!」

 

「うわっ」

 

そこら中に針の木が生えてるからバギーの背中の上で避けなきゃいけないのがね、速いから良いけど。

 

「このフロアから下へ降りるのに階段はいらねェ、階段への扉を開けるカギもいらねェ!紅蓮地獄にゃ苦しみから逃れる為の“逃げ道”が用意されてんのを思い出した」

 

「逃げ道?地獄なのに?」

 

「見ろ、ここだ!誰もここからは逃げようとはしねェがな」

 

空を飛んでいたバギーの体が止まった。前方には下へと続く大きな穴がぽっかり空いており、底が見えない程深く、そして暗かった。

 

「…成程、レベル2への抜け道か」

 

それは確かに誰もここから逃げようとはしないだろう。地獄から逃れる為に大地獄へ行くバカなど何処にも居ない。

 

「視力倍加に、暗闇耐性倍加と……。んー、至って普通の床が見えるね。さっきの迷路道と似たような石畳の床だよ」

 

「そうか、よし、行こう!」

 

ぴょん、とバギーの背中から穴へルフィが飛び降り、私もバギーを掴んでそれに続いた。

1人で残ってトンズラこく予定だったのか私の胸倉を掴んで怒ってるけど…宝の地図分の働きはしてもらわないとこっちだって困るんだよ。

 

「ゴムゴムの〜…風船!!」

 

肉眼でも下の階の明かりが見える様になって、ルフィが風船を使用して落下の衝撃を殺してくれた。

…ここがレベル2…、最初の迷路と何が違うんだろ。

 

…だけど、この階には用がある。

王華の話では、どうやらこのフロアにMr.3がいるそうだ。私は何としてでも彼を見つけ出さないといけないんだけど…その辺の牢屋を片っ端から見ていってたんじゃ日が暮れちゃうよね。

 

「や、やべェ…このレベル2はな、魔界の猛獣フロアっつってとんでもねェ怪物達が解き放たれてんだよ!」

 

「ふーん…例えばあんな感じ?」

 

私が指を差す方には、ヘビの頭をした巨大なニワトリが姿を見せていた。バギーが言うにはこいつはバシリスクというらしい。

 

「とにかく逃げよう!下の階へ続く道さえ分かればあんな奴の相手をする必要ないし!」

 

あとMr.3と!

 

「バギー、レベル3へはどうやって行けばいいの!?」

 

「あ!?知らねェよんなモン!この腕輪さえ手に入りゃ後はトンズラこくつもりだったんだ!嘘に決まってんだろガキ!」

 

「はぁ!?性根腐ってんじゃないの!この赤っ鼻でデカっ鼻!!」

 

やいのやいのと言い争いながら逃げてたら、遂には行き止まりまで追い込まれてしまった。

くそ…せめて周りの牢屋のどこにMr.3が居るのかが分かれば…!

 

「逃げられないのなら、やるしかないか!」

 

「よォし、来てみろ鳥!」

 

Mr.3はこいつを倒してから、後でゆっくり探すとしよう。

ルフィが腕を巨大化させたのを見て私も巨大な拳(グランデ・ハンド)を発動する。

…うーん、手だけってのがなんかなぁ…ルフィみたいに腕から巨大化させようかな。だったら技名は巨大な腕(グランデ・アルム)にしよう。

 

「ゴムゴムの〜!!」

30倍灰(さんじゅうばいばい)!」

 

 

大巨人の双銃(ギカンデ・ピストル)!!!』

 

私とルフィの巨大な拳はバシリスクに直撃し、その巨体を勢いよく吹き飛ばした。

飛ばした先にある部屋へとぶち当たり壁ごと粉砕してバシリスクは倒れる。…ん?この部屋も看守室か?看守が今の衝撃で全員倒れてるね。なんかごめん。

 

「てめェら2人揃って化け物か!?」

 

「ギア3だ…!ハァ…!おれはちっちゃくなってるのにイリスはすげェな…お、戻った」

 

「その分威力はルフィの方があるし、腕の大きさもルフィの方が上でしょ?」

 

まだまだ30倍ではルフィのギア3を越すだけの火力を出せないからね。

…いつかは、誰よりも強くなってみんなを…嫁を守れるようにならなくちゃ。

 

「地獄に…救いの神が降りたぞ」

 

「…あの怪物を倒した…」

 

何やら周りがざわめきだした。…そうか、看守室を潰したから鍵がフリーになってるのか。

バギーはそれを見て一早く行動に移し、看守室の近くに転がっていた鍵の束を拾い上げて檻の中に放り投げていく。

 

「ぎゃははは!!感謝しろバカヤロー共!!」

 

「うおー!自由だァ!!」

「最高だぜあんた!!」

 

…待てよ?これ、結構好機じゃない?このまま囚人達が暴れてくれれば、それこそ騒ぎに紛れて看守の目に私とルフィが映りにくくなるし。

ここにいる囚人だけでもざっと50〜100人規模…なかなかの数だよね。

 

「で、レベル3に行く為の階段とか穴はどこ?」

 

「あァ?知らねェよレベル3への道なんて!こんな迷路みたいな監獄の中全フロア覚えてるわけねブボァ!?」

 

「確かにそうだよね…じゃあここからは適当に探すしかないのかぁ…」

 

「殴ってから納得してんじゃねェよガキャア!!」

 

「オイお前!レベル4まで案内してくれるって言ったじゃねェかよ!!」

 

バギーの言うことを信じた私も悪かったよ…。流石に王華との作戦会議でここまでの話はしなかったし…話し合いは大体マリンフォードを中心にしたからね。

 

ルフィとバギーが言い合いを始め、更にそこに囚人達の喧騒も加わるかと思ったけど何故だか囚人達は元いた檻の中へ戻っていく。

その様子にバギーが慌てた様子で囚人達に問い詰めた。

 

「お、オイオイ!どうしたんだてめェら!」

 

「降って湧いたチャンスに浮かれちまってた…こんなのチャンスでもねェよ!このフロアのボスが… アイツ(・・・)が居る限り…」

 

「まだ檻の中の方が安全だ…!」

 

「アイツ…?まぁいいや、外に出ないならそれはそれでいいから誰かこのフロアを抜ける道知らない?」

 

このフロアに居るなら知ってるんじゃないの?バギーも1からここに来るまでの方法は知ってたし。

 

「このフロアで何か困っているなら力を貸そうカネ?」

 

「……お!!?」

 

「ん?何だそのオーバーなリアクションは。フハハハ…久しぶりだガネ!麦わら、女好き!くしくも貴様等のお陰で自由の身になれた…私は恩を返す男なのだガネ」

 

「誰だ?」

 

何か知らんけどMr.3居たー!!力を貸すとか言ってるし、この人には存分に働いて貰おう!

よーし、後はエースの所へ進むことだけを考えればいいんだよね!そしてあわよくばこのインペルダウンで助けよう。王華はマリンフォードで助けるのが今後の為にはなるって言ってたけど…助けられるのに手を伸ばさないなんて事はしたくない…!

 

 

 


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