ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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12『女好き、女好きに会う』

2日後ーー。

 

「着きやしたっ!!海上レストラン!!ゾロのアニキ!ルフィのアニキ!ウソップのアニキ!ナミのアニキ!イリスの嬢ちゃん!」

 

「ちょっと私女なんだけど」

 

「私はこの中でも年は上なんだけど…」

 

「どーーーっすかみなさんっ!!」

 

ばんっ!と効果音でもついてるかのようにジョニーとヨサクが腕を広げて海上レストランを指差す。

 

その姿は、一言で表すならば船を背負った魚。

まるで船らしからぬその見た目は、船体に大きく書かれた『バラティエ』という店名も合わさりレストランとしては分かりやすくていいのかもしれない。

 

意気揚々とバラティエに船をつけようとする私達だったが、その横に海軍の船が現れた。

 

「か、海軍の船!?」

 

「まさか…撃ち込んじゃこねェだろうな……」

 

撃ち込んできたら弾き返してやる。ナミさんに何かあったら海軍の船だろうとボロボロにバラして海に捨ててやるからな。

 

「あ…だれか出てきた…!」

 

ヨサクの言葉通りに、船内からデッキに男が姿を見せる。

何か拳につけたメリケンを見せつけてくるんだけど、挑発でもしてるのだろうか?

 

「俺は海軍本部大尉“鉄拳のフルボディ”。船長はどいつだ、名乗ってみろ」

 

「おれはルフィ、海賊旗はおととい作ったばっかりだ!!」

 

「お…お…おとといきやがれっ!」

 

「うっはっは!それいけるぜ相棒っ!」

 

案外余裕だなこの二人。

 

「そういやてめェら二人は見たことがある。政府の機関によく出入りしてるよな。確か…小物狙いの賞金稼ぎ、ヨサクとジョニーっつったか…ついに海賊に捕まっちまったのか?」

 

このフルボディの挑発に二人は乗ってしまい、飛び掛かったのだがそこそこ強かった彼に一瞬でボコボコにされて戻ってきた。戻ってきたというか、吹き飛ばされてきたというか。

 

「んもうフルボディ、弱い物いじめはそれくらいにして早く行きましょ」

 

扉の向こうから女の人の腕が伸びてきてフルボディを引っ張る。

おい!フルボディてめェ許さん!いや、でも私にもカヤやナミさんがいるし!

 

ふん!とナミさんの腰に抱き付くと呆れた顔をされた。あ、私の身長だと丁度おっぱいに顔が…。

 

「こら」

 

脳天にゲンコツが飛んできました。痛い。

 

「運が良かったな海賊ども、おれは今日定休でね…ただ食事を楽しみに来ただけなんだ。俺の任務中には気を付けな、次に遭ったら命はないぞ」

 

そう言ってフルボディは奥へ引っ込んでいく。

 

「誰がナミさんを殺すって!?私があなたを先にブッ殺してやる!!出てこーーいっ!!!」

 

「ちょちょっ!あんた何言ってんの!」

 

ナミさんに止められたので大人しくしよう…。でもあいつの顔は絶対忘れない。

 

「ん?」

 

吹き飛ばされたジョニーの懐から何やら写真付きの用紙が数枚落ちているのを発見して、自分の足元に落ちてきたナミさんが拾う。

 

「!…ジョニー、なにこれ?」

 

「ああ…そいつぁ賞金首のリストですよ、ナミの姉貴」

 

?…気のせいかな?ナミさんの雰囲気が変わったような…。

 

「ボロい商売でしょ?そいつらぶっ殺しゃその額の金が手に入るんです。それがどうかしましたか?」

 

「ナミさーーー」

 

「おいやべェぞ!!」

 

ナミさんにどうしたのか尋ねようと思ったのだが、ウソップの慌てた声で詮索は一時中断した。

あの憎きフルボディが大砲でこちらの船を狙っているのだ。

 

「よしルフィ、任せた」

 

「おう!!」

 

こちとらそんな弾で沈むような柔な根性してないっつの!

飛んできた大砲の弾の前にルフィが立つ。大きく息を吸い込んでゴムの特性を生かし、風船のように膨らんだ。

 

「ゴムゴムのっ…風船っ!!」

 

目論見通りルフィはその大きく膨らんだ体で大砲を受け止めて、反動を利用して砲弾を返す。

 

「よっし!フルボディの船を沈めてやれっ!…あっ」

 

「どこに返してんだバカッ!!」

 

ゾロの怒声が響くが、仕方なし…。

ルフィの返した砲弾は、フルボディの船に当たる事なく全く見当違いの方向へ飛んでいき、あろうことかバラティエに直撃したのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ルフィ連れてかれちゃったけど、大丈夫かな?」

 

「もう結構な時間経ってるな。雑用でもさせられんじゃねェか」

 

「バカ正直に言うからでしょ…元はと言えば海軍が悪いのに」

 

「見に行くか!メシくいがてら!」

 

ウソップの提案にみんな頷く。お腹も空いてるし…。

ちなみにヨサクとジョニーは軽く応急処置して船内で寝かせてある。

 

そうしてバラティエの店内へと足を運ぶと、中は結構荒れていた。ん?ここって大砲の着弾位置とは違う場所だと思うんだけどな…。

穴が空いてる天井とか、壊れてるテーブルやイス。何なら血が床についてるし…。

 

「な、なにが?」

 

「さァな、どっかの海賊が暴れたりしたんじゃねェのか」

 

「おっかねェ店じゃねェだろうな…」

 

バラティエに対して不信感が募るが、周りの客は気にもしてないし…まぁ、なんかあったんだな。くらいに思っておこう。

適当な場所に座って料理を注文する。その際にルフィの事を尋ねたら、どうやら一年も雑用としてタダ働きをしなくちゃならないとか…。

ちなみに出てきた料理は前世でも食べた事ないくらい美味しかった。オススメで頼んだらお子様ランチが出てきたこと以外には不満はない。

 

「お前ら、おれを差し置いてこんなうまいモン食うとはひでェじゃねェか!!」

 

船長改め雑用ルフィがぷんすかと怒りながら私達の座るテーブルへとやってきた。

 

「ごめんねルフィ、肉頼んどくよ」

 

「ん?イリス気が効くなァ〜」

 

追加で肉を注文しておこう。この前クロから助けてもらったお礼だと思って。

丁度近づいてきたコックがいたので頼もうかと思っていると、そのコックは両手を広げてポエムを唄い始めた。

 

「ああ海よ、今日という日の出逢いをありがとう。ああ恋よ、この苦しみに耐えきれぬ僕を笑うがいい」

 

「は?」

 

おっと、思わず声が…。

 

「僕は君となら海賊にでも悪魔にでも成り下がれる覚悟が今できた。しかしなんという悲劇か!僕らにはあまりにも大きな障害が!」

 

これ、口説いてるんだよね。

え、誰を?……ナミさんを!?

 

「障害ってのァ俺の事だろうサンジ」

 

料理長みたいな調理帽子をかぶった右足が義足の長髭のおじさんが、ナミさんを口説いていた金髪のくるくる眉毛をサンジと呼ぶ。

 

「いい機会だ、海賊になっちまえ。お前はもうこの店にはいらねェよ」

 

…サンジか、そういえば麦わらの一味のコックってサンジだっけ?くるくる眉毛だった気がする…。

 

でも!今後仲間になるとしてもこれだけはハッキリしておかねばならない!!

 

「黙って聞いてればぺらぺらと人の女口説いてくれるね!障害?一番の障害はそもそもナミさんは私の嫁ってことだよ!!」

 

「ちょっとあんた、今はそういう雰囲気じゃないでしょ!空気読みなさいよ…!」

 

「離してナミさん!軽々しく人の女に手を出すことがどれほどの重罪かこのくる眉に教えてやる!表出ろ!!私が相手だァーーーーっ!!」

 

私は本気で怒っているつもりなのだけど、サンジは困ったように笑うだけだった。

 

「ああ、君のお姉さんは確かに綺麗だ…!取られたくない気持ちも、分かる!だけどレディがそういう言葉遣いをするのは感心しないな」

 

「誰が妹だ!!くっ!離して、なんでゾロとウソップまで私を押さえるの!離してよ!こいつは私が直々にぶん殴ってやんなきゃ気が済まないの!!」

 

「お、落ち着けって!どうどう!」

 

「てめェも似たようなモンだろ!飯が食えなくなるからじっとしてろ!」

 

ぐ…似たようなモンって…。確かにその通りだから私は若干のショックを受けながらもイスに座り直す。

 

「最後にこれだけは言わせてもらうからね、私は19歳だし、ナミさんは本当に私の嫁!」

 

「…本当ですか?」

 

「んな訳ないでしょ、年齢の方は本当よ」

 

ちくしょう。

 

私が矛を納めたことでサンジは料理長のような人とさっきの『いらねェ』発言の撤回を求めて喧嘩を始めた。

サンジは副料理長らしく、自分の腕には自信があるようだがそれでも料理長は頑なだった。

 

「てめェが俺を追い出そうとしてもな!!俺はこの店でずっとコックを続けるぞ!てめェが死ぬまでな!!」

 

「俺は死なん、あと100年生きる」

 

それは言い過ぎとしても、サンジからは並々ならぬ決意のような物を感じた。

…これ、本当に麦わらの一味に入ってくれるの?ここからどうやって行動すればいいんだろう。

 

 

***

 

 

「先程は失礼。お詫びにフルーツのマチェドニアを召し上がれ。食後酒にはグラン・マニエをどうぞお姫さま方」

 

「わあっ、ありがとう、優しいのね」

 

「そんな…」

 

「…ぐ、…ふぐゥ…!」

 

「お、落ち着けよイリス、今のナミはただの社交辞令のような物だ!むしろイリスと喋ってる時のナミは自然体!な?どっちが近い関係かなんて言うまでもないだろ?」

 

ウソップの言葉に少し冷静さを取り戻す。でもまずい、サンジは何だかんだ言ってもイケメンの部類に入るんだ…!何回もアプローチされたら流石のナミさんでも…!

 

「…はぁ、あんたもいい加減懲りたらいいのに、言っとくけど私があんたに振り向く可能性は1%もないわよ」

 

「0%じゃないなら諦めません!!」

 

「…はぁ」

 

ナミさんは俯いてため息を吐いた。

今の私には、このため息の理由を私がしつこいからだとしか思えなかったが…。

 

「…私も、そろそろまずいかもね」

 

赤い頰を隠すように俯いてるナミさんに、私が気付くことはなかったーー。

 

 

そして、その2日後…。

事件は突然起きる。

 




女となると暴走するのがこの二人の共通点です。
大きく違うのは、サンジは女の人には絶対手を出さないのに対してイリスにそんなポリシーはないと言うことですね。

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