というわけで、最初落ちた道に戻って右へ曲がった先の道に進んだんだけど、そこには何と鞭を持った目隠れえろえろボディお姉さんが居ましたとさ。やほーい!
「イリス、本当に申し訳ないんだけど今は…」
「う…分かってるよ?分かってるんだけどぉ…!」
私の腕の中には今にも死んでしまいそうな程衰弱しているルフィが居るんだ、今はハーレムの事は一旦忘れなければ…!
「いやん♡署長は何をしているのかしら?取り逃してるじゃないの〜!」
「ちょっと!次会った時には嫁にするからね!私のこの顔!!忘れないでよね!!!じゃ!!」
「は…?…ん〜♡意味は分からないけど、この扉は通せないわっ!行きなさいカワイ子ちゃん達!!」
ドSっぽいお姉さんの周りにいる動物…巨大な人型のシマウマやコアラが私と王華に向かって走ってくる。あーもう、動物に用は無いんだよ!来るならお姉さんが来てよね!!
「邪魔!!」
ボゴッ!と1番速かったシマウマを蹴り飛ばして後に続く動物達へぶち当てた。
流石に一撃でやられるとは思ってもいなかったのか、お姉さんの額から汗が流れる。
「じゃあね!」
もっとゆっくり話したいけど今はそうも行かない。彼女が私を認識出来ない速度で後ろへと回り込み、その分厚い扉を蹴破ってその先の階段を下へと降りていく。
後ろから慌てて追いかけて来ている様だけど、私達に追い付けるとは思えない。
「…で、今のうちに聞いておくけど
「今から向かうレベル5には…ていうか、5.5だったかな?とにかくそこにね、フルネームは覚えてないけどイワンコフっていうインパクト抜群のおと…いや女?まぁ性別を乗り越えた奇跡の人が居るの。その人がルフィを治療できるただ1人の存在なんだけど…治療にはほぼ1日かかるから…」
「なるほど、その間に使用可能になるって訳ね」
それなら良かった…作戦を台無しにしたと思ってたから気分も落ち着いて来たし。
…お、階段が見えて来た。じゃあこの先がレベル5か。
「ごめんねっと」
扉を守る看守達を軽く攻撃して気絶させ、扉を蹴破って先に進む。
さーてと、次はどんなフロアかなー…って……、
「さっっむ!!!!倍加倍加!」
え、寒い!!ちょっと待って…私後もうちょっとで能力切れるけど!?死ぬけど!??
何ここ…吹雪いてるけど、ほんとに屋内!?さっきのフロアと真逆すぎて体が混乱してるよ!レベル3みたいにかなり広い空間だし…まるで外みたいだ。
「後からボンちゃんが助けに来てくれる筈だから見つけやすい所で倒れてた方が良いよ、囚人の檻の傍とか」
「イワンコフって人の所へは行かないの?」
「場所が分かんないんだよね、そこは原作通りに行った方が無難だと思う」
そうするのにボンちゃんが必要って訳だ。王華も出してから結構時間経ってるから疲れて来たし、それを伝えて中に戻ってもらうことにした。
次に来てもらう時はエースを救出したすぐだっけ、タイミングが大事らしいから気は抜けない…!
「…ん?お…?誰だ姉ちゃん、新しい看守か?」
「こりゃ良い女じゃねェか…ま、どうでもいいがな、どうせ死ぬんだ」
王華を戻して歩く事少し、ようやく檻を発見したのでその前にルフィを置いて座り込んだ。
…ボンちゃん…お願い、早く来て…!ルフィが死んじゃう…!
「ぁ……」
丁度私の能力も解け、力を入れられなくなりボテっと雪の中に倒れ込む。
…さむい…こんなの…幼児体型には厳し過ぎるよ…って誰が幼児体型だ!
「う…?ゲホ…ッ!…なんだ、ここ…寒ィ……」
「ルフィ…?良かった、意識が…!」
「イリスか…?悪ィ…よく目が見えねェんだ…」
マゼランの毒か…!くそ…私には他人を倍加させる術が無いからルフィを直接助けてはあげられないんだ…私が油断しなければ…もっと早く
「体が痛ェ…でも、エースを助けねェと…!」
「動かない方が良いよ…!マゼランの毒まみれなんだから」
「けどよ、イリス…ッ、早く行かねェとエースが…!」
そうだよね…私は王華に聞いたから知ってるけどルフィは不安だよね…。少しくらいの情報なら教えても大丈夫かな。
「さっき
雪に埋れながらこんな事言ってもダサいだけなんだけど、ルフィは私の事が見えてない様なので大丈夫大丈夫。
ルフィも私の言葉には納得してくれたのか、動き出そうとする体は止まっていた。…ボンちゃん、いつくるのかなぁ。
それから数分後の事だった。誰かに化けていたのか囚人服ではない格好に身を包んだボンちゃんが私達の前に現れたのだ。
まさか私達が檻の外に居るとは思ってなかったのか檻の鍵を持って一瞬固まってたけど、すぐに切り替えてその鍵は囚人達に放り投げる。どうするかの決断は彼らに投げた訳だ。
「ボンちゃん…ありがとう」
「何言ってんのよ、当然じゃな〜い?あちし達…
友達の為とは言ってもここまで出来る人などそうは居ない。だからルフィはこの人の事を気に入っているんだろう。
ボンちゃん自身もこのフロアの寒さで体を震わせているのに、私とルフィをソリに乗せて引っ張って周る。
このフロアに居る囚人達に聞いて周る情報はどうやらエンポリオ・イワンコフという人の場所らしい。…なるほど、王華がボンちゃんが居ればイワンコフは何とかなるって言っていたのはそういう事か。
「…ダメね、みんなイワさんの事は知らないみたいだわ…!だけど諦めたりしない…まだ聞いてない人は居るわ…っ!!…ねェあなた達!イワさんって人を捜してるのよう!知らないかしら!?」
「イワさん…?…あァ…それは分からねェが、あっちの林に今使われてねェ看守室があんだ…あの辺から妙な男が出てくるのを見たぜ…」
「ホント…!?」
ようやくまともな証言か…。少々罠臭いけど行ってみる他無いだろう。
ボンちゃんは私達のソリを必死に引っ張っていく。やがて話に出た林へと辿り着くと、周りからぞろぞろと狼が姿を見せた。
…やっぱり、あの証言は嘘か。
…ああ、私の体は貧弱過ぎるね…ボンちゃんがこんな必死に、ルフィだってマゼランの毒と格闘していると言うのに…私はただこの寒さだけで体が限界を迎えてるみたい。
まだ体は震えてるかな…?それすらも分からないや…確か震えが止まったらマズいんだっけ…、…痛っ…狼に噛まれたのかな…動けないんだから襲うのはやめてよね…。
…あ、痛みが消えた。…でも噛まれてる感覚はする。…コレ、まずいヤツじゃ…。
だ…め…!意識が…保てなく…なって…、…ぁ……気を失う訳には……ぅ……。
寒さと痛みに体が限界を迎えたのか、私の意識は途絶えてしまった。
1番ダメージが少ない私が1番最初にダウンするとは…情けないな…私。
***
王華部屋
「あれ、イリスどしたの?」
「寒過ぎて気絶した」
「ああ…まあその体じゃ仕方ないよ、小学生には酷過ぎる環境だよね…」
張っ倒すぞこの…!この…!!
「とりあえずボンちゃんが私達を見つけてくれてイワンコフ探してるんだけど、どこに居るのか分からないんだよね」
「私も覚えてないけど…イワンコフが居るフロアはレベル5.5だよ」
さっきも思ったけど、5.5って何…。
どうしてレベル5だけそんなのがあるんだろう。
「その状況で気絶したなら、多分起きた時にはもうイワンコフのトコだと思うよ」
「…なら良いんだけど…」
「どしたの?
その通りだけどさぁ…と言うと王華は冗談だよ、と軽く笑う。
「マゼラン倒したのも王華だし…」
「でも私を呼べるのはイリスだけだよ?私はイリスの技みたいなとこあるじゃん」
「何言ってるの、王華は王華でしょ」
ただ私の中に居るってだけで生きてる人間なのに技扱いは出来ないよ。
王華を呼ぶのは
「……そりゃハーレム築けるよ。元が私とは思えない…」
「?」
何をボソボソ言っているのやら。
王華ははぁ、とため息をついた後、パチンと指を鳴らして私の後ろにソファーを出す。ほんと便利だねこの空間。
「せっかくだからもうちょっとこの先の話詰めようか、例えばインペルダウンからの脱出法とか、マリンフォードのエースを救った後の話とか」
「…救った後か」
本来は助からない人を助けるんだから、後々の事を考えるのは私の仕事って事かな?
そう思って王華に尋ねればそれは違うと首を振る。
そもそもエースは簡単に捕まるような人じゃないそうで、今回捕まってしまったのはとある海賊が原因だとか。
そういえば、インペルダウンに来る前の話し合いでエースを救った後にも大仕事がどうとか言ってたっけな…。
「ここから先の話は作戦に関係無かったから最初は話さなかったけど…今は時間があるから話しておくよ。インペルダウンも後は流れに従うだけで脱出出来るだろうし、作戦の詰め込み過ぎで理解できなくなるなんて事も無いから」
「ん、それで?」
「…さっき話した、エースが捕まる最大の要因を作った“とある海賊”。名前は…マーシャル・D・ティーチだったかな、黒ひげって呼ばれてるよ。多分ジャヤで1回会ってると思う、パイがどうとか、人の夢は終わらねぇ!…とか言ってる大男居なかった?」
……あー…え、あの人が黒ひげ?
…そうか、だからルフィと好みが正反対だったのか。主人公であるルフィとは真逆だと言う事を分かりやすく表現したかったんだね。まぁそれはONE PIECEの話だけど。
「その黒ひげも今回の戦争に姿を現すの。ていうか、何ならイリスはこの大監獄で会うと思う」
「そうなの?」
「だからその時は黒ひげと戦わないでね」
「分かった。…ん?その時は?」
私が首を傾げると、王華は真剣な顔で私の目をじっと見る。
「マリンフォードで、私は黒ひげを倒そうと思ってる」
「……!!」
黒ひげを…?
倒す事に関しては別にこれと言って意見はないけど…そもそも倒せるのだろうか。
「マリンフォードには白ひげが居るし、海軍も集結してる。黒ひげもまだ成長段階だし私達でも充分倒せる…とは言えないけど、手を貸してくれそうな人なら居る!…と思う。…だから私はそこで、黒ひげを倒したいの」
王華がどうしてこうまで黒ひげに拘るのかは分からないけど、倒したいのなら倒そう。
どの道碌な海賊じゃない事は確かなんだし…倒しておいて損はないと思う。
「うん、いんじゃない?倒せるんでしょ?」
「だけど…黒ひげはONE PIECEの中でもかなり重要なキャラクターだよ。マリンフォードで倒して…例えば海軍に身柄を拘束させるとすれば、この先どんな展開になるかは私でも…」
「でも、倒したいんでしょ?」
倒した方が良い敵を倒せるチャンスなら、それをみすみす逃す必要なんてない。
未来が変わるだとかは変わってから考えよう。この先私達の進む道が原作からどれだけ逸れようが…最終地点は私のハーレム女王だ。
ルフィだって何が起ころうと最後は必ず海賊王になってる筈だ、だったらマリンフォードで黒ひげを倒しても問題はない!
「黒ひげを倒した方が良い理由は聞かないよ、この先関わらない人の情報を聞いたって意味ないし」
「…ぷっ、あはは!後先考えないのは本当にイリスの怖い所だよね!」
「言っとくけど、その後先考えてない行動を提案したのは王華だからね?」
だけど黒ひげを倒す方法だけは聞いておこう。何だかんだ言っても奴はエースを捕まえた張本人らしいし…弱いなんて事は絶対あり得ない筈だ。
その時には王華も居るだろうし今聞く必要も無いだろうけど、せっかく時間もあるんだし、とそこまで考えて王華に尋ねた。
「方法?…んー、黒ひげは“ヤミヤミの実”の闇人間で、能力者に触れるとその人は黒ひげに触られてる間能力が使えなくなるの。あとこれはまだ原作でも判明してない事なんだけど、黒ひげはどういう訳か能力者の能力を奪う事が出来るの、原作ではそれで白ひげの能力を奪って2つの悪魔の実の力を手にしてた…かな」
ふーむ…本来なら悪魔の実の能力は1人1つが限度…その限界を突破出来るだけでも異質さが伺えるね。
「だけど黒ひげには弱点があってね、闇だから何でも吸引するけど、それは相手の攻撃も一緒で…例えばパンチを撃つとする」
王華がシュッ、と前に拳を突き出す動作をする。
「この時に発生する衝撃は壁に当てても今みたいに空を切っても、全てを対象にぶつける事は出来ないよね?多少の衝撃は逃げるし、私達もミスをする。だけど黒ひげに限ってはそうじゃない…何故ならその逃げる衝撃すらも奴の闇の体は吸引してしまうから。だから普通の人よりもずっと攻撃が良く通るって訳」
更に、と王華は拳を元に戻し人差し指をピン、と立てた。
「黒ひげは敵の攻撃を必ず1発目は無防備に貰う。それは油断だったり慢心だったり…まぁ奴の性格上の弱点かな。だからイリス…私達はその1発で勝負を付ける必要があるの。もしくはその1発を起点にする」
「…だね」
黒ひげの能力…その話を聞く限りだと私は奴に捕まったら終わりだ。能力が使えなくなる?死刑宣告じゃん。
「1番良い流れは、白ひげ、私達、海軍大将、エース、ルフィvs黒ひげかな。でもそんなのまず不可能だからとりあえず海軍は青キジだけでも説得出来ない?」
「無理でしょ」
高望みし過ぎでは?
…あんまり青キジとは顔を合わせたくないけど、文句も言いたいし!勿論逃げ足関連の!だから丁度良いっちゃいいのかも。
「とりあえず整理するよ?私はこれからインペルダウンを脱出してマリンフォードへ向かう。そこでエースを最初聞いた作戦で助けて、その後に今話した黒ひげ討伐作戦を実行する。青キジを仲間につけれたら尚よし…でいいんだよね?」
「うん。…ふふ、本当に原作とは全然違う所を目指そうとしてるね」
「そりゃそうだよ、わざわざ敵を逃す必要なんてないでしょ」
じゃあ作戦は詰められたって事で、余った時間はペイント練習でもしてようかな!
出来る様になったとは言ってもまだまだ甘い実力な訳だし、せっかく時間があるんだから出来るとこまでやる!
早速立ち上がって目の前にナミさん人形を生み出し、地獄のペイント特訓へと自ら身を投げるのであった。
…はー…人形見たらほんとに思うけど……ナミさんに会いたい。みんなに会いたい〜…!