ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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131『女好き、対峙するは三大将』

「…あの、すいません、私が悪かったんで…」

 

「まァ落ち着け…別に取って食ったりしねェよ。捕まえはするが」

 

「既に捕まってる様なものなんですけど!?」

 

 

はい、という訳で実際に逃げ出してみた所、あっという間に周りを氷の壁に囲まれて閉じ込められたという状況ですね!

そんなに広くないし、見たところ直径5メートルってとこかな!ハハ!!ガッデム!!!

 

そんな狭い空間に青キジと2人?死んだんじゃないかな…私…。

ていうか何でこの中明るいの…氷で外の光塞いでる筈じゃん…え?光を通す?氷ですもんね、そうですよね…!じゃあ何でエニエス・ロビーで同じ様に閉じ込められた時は真っ暗だったんだよォ…!!

 

「…えーっと、とにかく話を聞いてくれない?私、どうしてもしなくちゃならない事があって…」

 

「“火拳”が死ぬ未来でも見たか?」

 

…まぁ青キジならそう言ってくるよね…。ここはどう返せば…黒ひげの事を話しておこうか…?

 

「エースは関係ないよ、それはルフィが何とかする」

 

とりあえずエースの事は誤魔化しておこう。バレたら都合の悪い情報だけを隠して…後はさもこっちを本命かの様に話せばいい。嘘も混ぜながら話してみよう。

 

「この戦争に…黒ひげが来てるの」

 

「…黒ひげ?」

 

「そ。インペルダウンにも来てたし…レベル6の囚人を何人か引き抜いて、自分の仲間に加えて何処かに潜んでるの」

 

今はまだ居ないだろうけど…戦争の終盤には必ず現れる。それは王華が言っていた事だから間違いない事だ。

 

「そいつらの奇襲で多くの命が無くなる。…それは、あなた達海軍も同じこと」

 

「まー…なんだ、その話は分かった」

 

お、なかなか幸先良い!エニエス・ロビーで青キジにある程度私の事教えておいて正解だったなぁ…後はこのまま畳み掛けて黒ひげを倒す手伝いをして貰えるよう話を持っていって…。

 

「だが、それとお前さんを捕まえるのは別の話だ。居ると分かった以上はこっちで対応出来るだろう」

 

「へ?」

 

「俺からしてみれば、お前を野放しにしておく方がよっぽど危険に思える。黒ひげは後で対処するとしよう」

 

えぇえええ…!この人私の事買い被りすぎなんじゃない!?1回あなたに勝っただけじゃん…!しかも情けで!

 

「ちょ、ちょっと待って本当に!あなたは黒ひげを甘く見てる様だけど、下手打ってやられてるのがあなた達の未来だからね!?」

 

そんな未来無いけど!!

でももっとずーっと先の未来は知らないよ?海軍どころかこの世界そのものを脅かす存在になるかもね!

 

「悪いが、俺は別に黒ひげを甘くみちゃいねェよ。元より奴からは得体の知れねェ臭いが漂っていたんだ…警戒はしていた。だが…俺は奴よりもお前を危険視していると言うだけの話だな」

 

「なんでそんなに私を買ってくれてるのかは知らないけど、お願いだから見逃して!…なんて言っても仕方ないのは分かってるんだけど!」

 

逃げ場は無いし、戦うしかないか…?

この戦争に参加するって決めた時から覚悟はしていたけど、まさかこんなに早く青キジと戦う事になるとは思ってもみなかったな…ていうか戦いたくない。

 

「悪いけど… 女王(クイーン)化は使えないからこのまま相手させてもらうね」

 

「姿は“それ”で構わねェのか?」

 

「構うよ、出来れば本気を出したいけど…それは後にとっておかないと本当に困る」

 

「俺を相手にして先の事を考えてんのか、やっぱりお前は面白ェ奴だな、イリス」

 

…さて、どうしたもんかな。話し合いは失敗に終わったし、かと言って本当に青キジと戦うって訳にもいかない。だって死ぬし。

 

よし、シミュレートしよう。

まず1、体温の熱を倍加させて氷の壁を溶かして逃げる。

 

…1番無難かな、でも溶かすまでにちょっとは時間かかるし、その間青キジが黙って見ているとも思えない。とにかく候補の1つってだけだね。

 

2つ、体温の熱をマイナスに倍加させて青キジの能力に対抗する。

絶対零度レベルまで体温を落とす事で青キジに凍らされる事が無くなるかもしれないという希望的推測の案。

前世ならともかく、今世ではそんな法則ぶち抜いて凍らされそう…というか絶対零度とかこの世界存在するの?光の速さで動いてる人が居る世界だからこの案はあんまり当てには出来ないね…。

 

3つ、時間を稼ぐ。

これはもう話をしまくって時間を稼ごうって案だけど、青キジが興味を唆られる様な内容じゃないと意味が無い。

黒ひげの情報すら私より優先度低かったんだから…もう何話してもダメな気がする…3も無理そうだね…。

 

「じゃあここは無難に…!!」

 

「まーた捨て身役かぁ!」

 

神背(ヒューマ)を発動して青キジへ突撃させた。ほんとごめん!

その隙をついて手の平の大きさと体温に今出来る最大の倍加を付与し壁を溶かす。

あーもう!何この氷!一般的な人間の体温って36度とかでしょ!?それの30倍だよ!900だよ!!何で溶けるのこんなに遅いのか教えてくれないかな!?

 

「アイスタイム」

 

いやーー!!“私”が一瞬で凍らされちゃったけどぉ!!?

まぁ…だよね!勝てる訳ないよね、ごめんねほんとに!

 

氷箱(アイス・ボックス)

 

「ちょ…」

 

せっかく解凍していた氷の壁の上に新しく壁が1枚追加された。血も涙もないとはこいつの事だよほんと…!

 

「本気を出すつもりは本当にねェのか?このままだと間違いなく死ぬぞ」

 

「そうは言ってもね…!こっちにも事情ってモンがあるの…!!私だって死にたくはないよ!」

 

もう…こればっかりは仕方が無い…!この戦争がいつ終わるかは分かんないけど…!

 

全・倍加(オールインクリース)30倍灰(さんじゅうばいばい)!!」

 

「!…あの時の変化とはまた違うようだな…身体を大きくして素の力を上げたか」

 

私のタイムリミットは、後1時間…!こんな所で捕まってる場合じゃない…!!

 

巨大な腕(グランデ・アルム)!!去柳薇(さよなら)ァ!!」

 

この狭い空間で、思い切り巨大な腕を振り回して氷の壁にぶち当てる。

よし…なんとか壁を壊せた…!青キジがエニエス・ロビーで見せた鎧を纏う前に離れないと…!!

 

 

「た、大将青キジに捕まったハズの逃げ足が出てきたぞ…!」

「いや、あれは逃げ足か!?姿が全然違う…!!」

 

まだ捕まってないっての!

せっかく不意を突いて脱出が叶ったんだ…このチャンスは無駄にしない!

 

「あららら…もうかなり作戦進んでる様じゃないの」

 

「…!!パシフィスタが…こんなに…!」

 

ずらりと並ぶ何10体ものパシフィスタを見て目を見開いた。その先頭には戦桃丸が立って指示を出している。

ルフィ達が苦労してやっと1体倒せるレベルなんだから、そんじゃそこらの海賊じゃ太刀打ち出来ないだろうな…!

くそ、改めてこの戦争の規模がどれ程のものかを見せつけられた気分だ。

例え私が女王(クイーン)化を使ったとしても…タイミングを測らなければ戦況は左右されないだろう。

 

「……?」

 

それに…何だ…?さっきまでとは回りの雰囲気が全然違う……。

 

「オヤッさァん!!?本当かよォ〜〜!!!」

「おれ達を売ったのかァ〜!!?」

 

「何の話…?…!!…白ひげ…腹が…!」

 

何がどうなってるの…!?

ちょっと氷の壁に阻まれてる間に事が起きたのか、白ひげの腹から血が溢れ出ているし…!周りの海賊達からは白ひげに対する悲痛な声が響いてるし…!!

 

「青キジィ!!!」

 

今度は海軍側から青キジを呼ぶ声が響いてきた。

 

「おっと…センゴクさんに呼ばれたようだ…仕方ねェか、一旦場は預けておこう」

 

「そんな場は封印しても良いからね!」

 

海軍側にもトラブルがあったのか、あんなにも急いで青キジを呼び戻すなんてね。私はラッキーだけど。

この戦争もかなり混戦を極めてきてるみたいだ…何故か白ひげに不信感を抱いてる人達が気になるけど…。

 

「うわ…!!」

 

急に地面が揺れ、倒れないようにバランスを取りながら周りを見れば、この島を取り囲んでいた波の氷が白ひげの能力によって粉々に粉砕されていた。

一体何の能力だろう…いくら何でも破壊力が尋常じゃない気がするんだけど。

 

「海賊なら!!!信じるものはてめェで決めろォ!!!!」

 

「退路が…!」

「あの軍艦を使えば、おれ達逃げられるぞ…!!」

「じゃあやっぱり、オヤッさんはおれ達を裏切ってなんかいなかったんだ…!!!」

「すまねェ…オヤッさん…!!」

 

白ひげの大声で我に返ったのか、不信感を抱いていた海賊達が白ひげに許しを乞うように謝り出した。

 

良く分かんないけど、つまり白ひげの信用を損ねるような何かを海軍側が起こして、それを上手く白ひげが捌いたって所かな。

捌いたと言ってもその代償は大きいけどね…白ひげの腹に穴が空いたのは痛手なんてモノじゃないハズ。

 

「俺と共に来る者は、命を捨ててついて来い!!!」

 

「「「ウオオオオオオオ!!!!!」」」

 

「行くぞォ!!!!!」

 

そう言って白ひげは船から氷の地へ飛び降りた。ついに動くのか…四皇が!

 

「構えろォ!!暴れ出すぞ!!世界最強の男がァ!!!」

 

海軍の司令塔の男がそう叫ぶ。

私も青キジが面倒だとか言ってる場合じゃないね…!

 

「後々、ある意味で世界最強になる女もここに居るってのを忘れないでよね…!30倍灰(さんじゅうばいばい)…!!っ…うえ!?」

 

じ、地面が傾いて…!じ、地震!?いや…これはそんな生半可なモノじゃない…!島ごと海も傾いてるんだ!

当然こんなバカげた事をしでかしたのは白ひげだよね…世界最強は伊達じゃないか。

 

氷の大地も所々が割れ、下手をすれば下の海に落ちかねない。彼の船員(クルー)達は早々に避難していた様だ。教えてよ…。

 

「何だ…!?壁!?」

「今度は何だ!!」

 

私達を囲む様に大きく、そして分厚い壁が地面から生えてくる。四方八方を壁に囲われたみたい…、これじゃ処刑台すら見えやしない…!

…ん?一箇所だけ壁が上がってない所があるね…!そこに巨人族が倒れているから、あの人がストッパーとなって壁の上昇を止めているのか。

 

「よく見れば海兵も後ろに下がってるっぽいし」

 

だからセンゴクって人は青キジを呼んだのか…納得はしたけど、困ったね…。

 

30倍灰(さんじゅうばいばい)去柳薇(さよなら)!!」

 

ドゴォン!!!

 

…ダメだ、この壁、30倍でもビクともしない。かといってあの一箇所だけ壁が上がってない所から進軍したって、待ち構えられて袋叩きにされるのは目に見えてるし…!

 

「打撃がダメなら斬撃はどうだ…!ぶっ壊れろ!!30倍灰(さんじゅうばいばい)去羅(さら)……ば!?」

 

あっぶない!!

なんか熱を感じて上を見れば、巨大な拳型のマグマが隕石の様に無数に降ってきていた。

去羅波(さらば)を使う直前だったから、狙いを壁からそのマグマに切り替えて何とか起動を逸らすことに成功した、…けど、逸らしただけだ、相殺とまではいかなかった。

これほど大量に落ちてきている拳マグマの内、たった1つ…それすら逸らすのがやっとなんて地獄かここは!

 

「足場が…!」

 

そうか…狙いは私達の足場か!

元々私達が居るのは海を凍らせた氷の上。エースの居る処刑台の広場に行く為の道を壁で塞いで、退路にすらも壁を張って逃げ道を塞ぎ、氷が溶けた海に落とすつもりなんだ…!

 

「ま、私には効かないけど」

 

無くなった足場を瞬時に凍らせてまた作る。

溶けた所で私の足の温度をマイナスにしていれば問題ない。溶けては凍り、溶けては凍りの繰り返しってだけの話だ。

 

だけどどうしたものか…、今も白ひげがその強大な能力で大気にヒビを入れ、かなりの衝撃を壁にぶち当てても砕く事は叶わなかった。となると私が女王(クイーン)化してもこの壁は壊せないって事だ。

 

 

『作戦はほぼ順調、これより速やかにポートガス・D・エースの処刑を執行する!!』

 

 

「聞いたか今の!!あんな見えもしねェ場所で、仲間をあっさり殺されてたまるか!!」

「オーズの道しかねェ!気をつけろ、敵は必ず構えてるぞ!!」

 

オーズ…?もしかして壁の上昇を止めてるあの巨人族の事…!?

…いや、あの巨人族は血を流してるし、私の知るオーズでは無いんだろうけど。

 

「と言ってもあの道しかないなら仕方ない!私もあそこから…!」

 

「イリス!!!」

 

「わ…!」

 

オーズが開けてある道から突撃しようと走り出した直後、遠くにいるルフィが腕を伸ばして私の腕を掴み引き寄せた。

む、イワンコフもジンベエも居るね。

 

「どうしたのルフィ、何か作戦でも思いついた?」

 

「ああ、頼む、一緒に来てくれ!」

 

「分かった。どこへ?」

 

「作戦の内容は聞かんのか」

 

ルフィの言葉に即頷いた私にジンベエが言うが、内容なんて今はどうでもいい。ルフィがするって思った事を全力で援護するのが仕事だ。

 

「あれは…!オーズが立っタブル…!あの傷でまだ立ち上がるなんて、無茶をするわ!」

 

「だったら丁度いい!やってくれジンベエ!」

 

「全く…!お前さんも充分無茶じゃ…!」

 

そう言ってジンベエは足場が崩れて海になっている場所へ飛び込んだ。ルフィも海の上に丸太の様な船のマストを浮かべ飛び乗り、私もその上に立つ。

 

「うわ…!!」

 

直後、真下の海面がうねる様に盛り上がって1本の海流となり、私達をマストごと天高く持ち上げた。

この技インペルダウンの軍艦を奪う時にも1度見たっけ…!あの時はクロコダイル達の乗る扉を船に押し上げたんだよね。

 

「…!!」

 

そして今回は…!!

 

「よっと!」

 

天高く上がった海流が地面へ落ち、私とルフィも上手く着地を決める。

その海流は私達の行く手を拒んでいた壁すらも越え…即ち、私達が立つこの場所は…。

 

「処刑台の広場…!」

 

多くの人が起き上がったオーズへ意識を向けているから出来た事だ。

今はこっち側に味方は1人も居ない…だからこそ私達がここで暴れに暴れて後続が続きやすい環境を作っておかないと…!!

 

「あららら、またすぐ会えたな、イリス」

 

「堂々としちょるのう…ドラゴンの息子ォ…」

 

「恐いね〜…この若さ…」

 

「……!!!」

 

っていきなり青キジと黄猿!?え、という事は真ん中にいるこのおじさんは赤犬!?三大将揃ってるじゃん…!!

 

「行くぞ、イリス!!」

 

「…了解… 船長(キャプテン)!」

 

大将がなんだ…!もう止まれやしない!

エースはそこに居る…だいぶ近付けたんだ!…って、あ、Mr.3忘れてた!?

 

 

 


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