「…ありゃなんだ、お前の知り合いか?イリス」
「…んー…私っていうか、王華の」
というか今回
「…エースは助けた、黒ひげは倒した…!何なら白ひげだって死なずに済んだ!…今回も私の勝ちでいいかな?青キジ」
「…あー…まァ…癪だがそうなるな。その上最後にとんでもない敵を残していくとは…」
「ちょっと、安城さんに関しては私別に悪くないじゃん!」
「イリス、安城さんの事は後で考えよう…!今はこの場から逃げる事が先決だよ!」
王華に肩を叩かれてハッとする。また忘れるとこだった…ここ敵地の真ん中だ!
「エースはある海賊の船に預けてきたから。それと、イリスの今後もその海賊に託してきた」
「えぇ!?急展開だね!…じゃ、そゆことなんでまたね青キジ!」
「俺も疲れた…帰って寝たいんだが、立場上はお前達を見逃せねェんだ」
「今更!?」
共闘までしといて何言ってるのこのノッポめ!
「グララララ…!!なら最後に置き土産だ、海軍本部!!…ぬゥん!!」
ガン!!!と大気を殴り、ヒビを入れて衝撃波を発生させてマリンフォードの街並みをぶち壊す。デンジャラス過ぎでしょ…。
「じゃね!私と戦う気が無いならまた会ってもいいよ!」
「そうか、なら海軍やめるか?」
「冗談でしょ!?」
転生してハーレム作ってたら海軍大将のお気にになってた件。
…訳わかんねェ…なんだこれ。
…黒ひげ捕獲を手伝ったからか、周りの海兵も逃げる私達を捕まえようかどうしようか迷っているようだ。
王華もこの世界から黒ひげという脅威が無くなった時、どういう風に運命が転ぶかは分からないって言ってたっけ。
「ほら、掴まっててね白ひげ」
「こんな白ひげ見たくなかった…」
白ひげが能力で広場を真っ二つに割ったせいで、私達は飛んで向こう岸まで渡らなきゃいけなくなったから飛べない白ひげを抱えて飛ぶ。
王華が何か言ってるけど…白ひげだって伝説だとか四皇だとかの前に1人の爺ちゃんだからね。幾らデンジャラスでバカ火力でも労らないとバチが当たるよ。
「こっち側はまだ戦ってるのか…向こうでは黒ひげとか安城さんとか色々あったのに…」
スタン、とこっち側の広場に降り立って辺りを見れば、そこではまだ戦争が繰り広げられていた。
逃げ回る海賊を追い回す海兵…、海兵達を率いているのは赤犬か…彼からは海賊に対する並々ならぬ思いを感じるんだよね…。ああいう真っ直ぐな人ってのは強いんだよ。私達からすれば厄介この上ないんだけど。
「行くよ王華…!海軍を止めよう!」
「…いや、私達の役目はもう終わったよ。…ほら」
未だに争いは止まる事を知らず、戦争が収束する目処も付いていないにも関わらず王華は大丈夫だと言った。
そんな彼女が指を差す先には…赤犬の前へと滑り込んだ1人の海兵の姿があった。
私はその男を知っている。1度だけ…ウォーターセブンで見た海兵だ。確か、名前は…!
「そこまでだァア〜〜〜!!!!」
「…コビー…!!」
そうだ、あの時の若い海兵…!
そんな彼が、赤犬の前に立って両手を広げる。まるで後ろの海賊達を守るかの様に。
「もうやめましょうよ!!もうこれ以上戦うの、やめましょうよ!!…命が、もったいだいっ!!!目的はもう果たしてるのに…!戦意のない海賊を追いかけ、止められる戦いに欲をかいて…!今、手当てすれば助かる兵士を見捨てて…その上にまた犠牲者を増やすなんて、今から倒れていく兵士達は…!まるでバカじゃないですか!!?」
「……!!…すご…!」
そうか…ルフィが気にいる筈だ…!自分のずっと上の立場の人間に、殺される覚悟であんな台詞を吐ける人なんだ…!!コビー…。ちゃんと覚えておかないと、いずれ絶対、私達の前に立ちはだかる強い海兵となるだろうね…!
「王華、私、コビー助けてくる!」
「あ、ま、待って!大丈夫だから!…ほら、見聞色で探ったら…」
「…?」
王華に言われて見聞色を使えば、強大な気配を持った何かがコビーの元へと凄い速さで向かってきているのを感じた。
白ひげは目を薄めてその者が来る方向をじっと見ている。
赤犬がコビーへと拳を振り上げ、本気で殺そうとマグマとなった腕を振り下ろす
…だが、その拳はコビーへ届く事は無く…私達が感じた強大な気配の持ち主が剣で受け止めていた。
「…あの人は?」
「四皇…“赤髪のシャンクス”。ルフィに麦わら帽子を預けた人で…ついでに言えばエースとイリスの今後を頼んだのもあの人」
「ぶっ…!…え、え!?」
今後を頼んだって…四皇じゃん!!
しかもルフィに麦わら帽子を…!?絶対何かあるでしょその人!!
「ーーーこれ以上を欲しても、両軍被害は無益に拡大する一方だ…!まだ暴れ足りねェ奴がいるのなら来い…!!俺達が相手をしてやる!!全員…この場は俺の顔を立てて貰おう」
シャンクスはそう言って足元に落ちていたあったルフィの麦わら帽子を拾い、それを懐かしそうに見た後バギーへ放り投げた。ルフィへ届けてくれとでも頼んだのだろうか、あのバギーが素直に言うことを聞いてる姿はなかなか新鮮だ。
…もしかしたら宝で釣ったのかもしれないけど。
「エースの弔いは俺達に任せて貰う。戦いの映像は世に発信されていたんだ…!これ以上、そいつの死を晒す様なマネはさせない!!」
「奴の死体は既に無い!!仮に残っていたとしても、こいつの首を晒してこそ海軍の勝鬨は上がるの…」
「構わん!!」
シャンクスの言葉に突っ掛かった中将の言葉を、元帥…指揮官であったセンゴクが言葉を被せて止める。
「お前なら…いい。赤髪…責任は私が取る」
「すまん」
「…負傷者は手当てを急げ…!!戦争は……!!終わりだァ!!!」
…戦争が……!!
「……はぁ…!!!…終わっ…たァ…!!」
その瞬間、私の隣に居た王華は消え、私の身長は元に戻って崩れ落ちた。緊張の糸が切れた瞬間これか…!でも、本当に……本当に何もかも上手く行って…良かった……!!!…何もかも、では無いかもしんないけど。
「…ぐ…っ…ぅ」
おぉおおおォ…ん…!は、反動が…や…やばい…!身体中が痛いなんてもんじゃない…苦しい…!あがが…。
「…この戦争の1番の立役者は、間違いなくお前だろう…。戦いは海軍の意に反して世界に発信されている、もう政府がお前を“逃げ足”などと称する事も出来ねェな。グラララ…!」
「ほ、んと…?それ、めっちゃ嬉しいかも」
…あ、やば…意識が……。
まぁ……いいや、…今は意識が飛んでくれた方が……楽でいい…。
…このまま死なないよね??ね??
***
王華部屋。
「…ここに来たって事は……死んではないかー、よかった〜…」
「心底安心してるね、死にかけてはいるんだけど」
「死んでないからおっけーおっけー」
どか、っとソファーを出現させてそこに座る。
はー…何か色々やり遂げたから夢の中だってのにどっと疲れが…。
「…そいえば、ルフィって大丈夫なの?エースの事とか…」
「…うーん、とりあえずハンコックにはルフィに付き添ってあげてって言ってるから療養場所とかについては問題ないと思うよ。それにエースの事は乗り越えるから大丈夫…ルフィだよ?」
「…実は死んでません、助けてましたって言ったら、1発くらい殴られるの覚悟しとこ…」
流石のルフィでも怒りそうだよね…。はぁ…。
「シャンクスは2年間、どういう修行つけてくると思う?」
「2年?…ああ、そう言えば2年間修行期間に入るんだっけ。…2年……、2年…も、会えないのかァ…!ナミさん達に…!!ウウ…死ぬゥ…!」
「あれ、質問の答えが返ってこないなー…」
これから2年もナミさん達に会えないなんて…悲しいなんてモンじゃないよ〜…!
お楽しみポヨンが…寝る時周りから漂ってくる良い香りがァ…!!
「…はぁ……、え…?シャンクスの修行?さぁ…実戦かなぁ」
「うーん…私が頼んだ時、修行するならうってつけのアイテムを持っているとか何とか言ってたんだよね…それが気になって…」
アイテムか…。飲んだだけで力倍増!とか?
「ていうか、それより安城さんだよ。あの人絶対おかしいよね」
「…まぁ、そうだね」
この場合でのおかしいは、前世との差異だ。
前世の安城さんは確かにヒステリックな人だったけど、あそこまで狂気に満ちてはいなかった…と思ってる。
「これは私達だから分かることだけど…もしかして…」
「うん。…あの安城さんは、こっちの世界で生まれた人格なんだ。私の知るクラスメイトの安城 零は多分、私と同じ様に心に閉じ籠ってるんじゃないかな」
私は王華の影響を受けてハーレム女王を目指す様になった。
目指す夢はポジティブなもので、私の人格自体は至って普通の女の子として育った。…なに王華、何か言いたい事あるの?お?
ゴホン…だけど、安城さんは?例えば夢が王華を殺す事で…その思いを引き継いで人格が形成されてしまったとしたら……あんな風になるのも、分からなくもない、か…。
「安城さんと……、レイとでも呼ぼうか、この世界で生まれた人格の彼女がどういう関係かは大体推測出来たね。…合ってるかは知らないけど…」
「ま、問題は人格云々より能力だよ。私はあの時
黄猿より速いとか、ぶっちゃけ想像したくない。
例えばスピスピの実の速さ人間!!…的な能力なら速さに特化してるんだなぁで納得出来なくもないけど…それなら銃弾を跳ね返したあの技が納得行かない。
「何かを弾く能力とかは?」
「くま…。…あ、でもあり得るかも…!くまだって瞬間移動してるし!」
「一応候補の1つね。…後は…例えば取り込んだ物の力を使えるとか」
「ああ…銃弾を取り込んだから銃弾を返せたし、移動も銃弾の速度で移動できるって事?でもそれじゃ私達が目で追えない理由にならないよね…」
そうなんだよね…銃弾は目で追えるし。
なんか当たり前のように言ってるけど、銃弾を目で追えるって凄いな私。
「これ以上は考えてもしょうがないか、あれだけの情報じゃ何とも言えないし」
「まぁね。…イリスはゆっくり休みなよ、せっかく戦争も終わったんだから」
「ん」
確かに、身も心も神経擦り減らしてボロボロだよ…。得た成果はかなりのモノだけど。
だけど王華もこう言ってるんだし、ゆっくり寝かせて貰うとしよう。
今日は本当に疲れたな…よくよく考えなくてもインペルダウンから戦争まで動きっぱなしってヤバいよ。バテない方がどうかしてるっての。
…シャンクスの修行か…。…レイがめちゃくちゃ強いかもしれなくて、しかも命を狙ってくる可能性がある以上は私はもっともっと強くならなくちゃいけない。
…四皇だろうと、海軍大将だろうと軽々倒せる女になって…また2年後、ナミさん達と航海するんだ。
だから…私はどんな修行でも乗り越えてみせる…!来るなら来い…!スパルタなんかに負ける私じゃない…!!
待ってろ2年後ぽよん!!2年後ブライズ!!!!