「シャッキーのバーってどこだっけ…」
「オイオイ、俺は知らねェぞ」
シャボンディ諸島に降りて、結局場所が分からずその辺を歩き回る私とエースだったが、一向に目的の店は見えてこなかった。
そもそも何番グローブだっけ?それすら覚えてないのに探すなんてやっぱ無謀だったかなぁ。
いやでも無謀は好きだし!(適当)
「その辺で暴れて海兵呼んで貰って、バーの場所教えて貰う?」
「騒ぎは起こさねェんじゃなかったか?それは最終手段に置いておけばいい。それよりイリス、腹減ってねェか?いつもならもう食ってる時間だろ」
「あー…確かに。でも私お金持ってない」
「金なら俺が持ってる。奢ってやるよ飯くらい」
それならどこか適当な店にでも入って奢ってもらおうかな!
せっかくシャボンディに来たんだからサンジのご飯が食べたいけど…このままだとみんなを見つけるのは夕方とかになりそうだし。
「というか…」
私達の周りに転がる何10人もの無法者を見て眉を潜める。
「ここってこんなに治安悪かったっけ。ていうかどこ歩いててもいきなり攻撃されるんだけど」
「炎の
「今のエースを捉えようと思ったら大将引っ張ってこないと無理だろうね。大将でも1人じゃ厳しいな…三大将は絶対必要かも。ま、全員で来ても白ひげも居るし…海軍側に勝ち目ないね」
「へへ、てめェら、今すぐ金目のモン全て置いて……け……ーーーーーー」
「また1人追加かー」
ばた、と倒れる男の体を跨いで先へ進む。
軽く威圧しただけで倒れるくらいの小心者が、人様からモノを盗もうとするなっての。
「…ん?あっちなんか騒がしいね。何だろ」
「ならあっちに行ってみよう。騒がしいならルフィが居る可能性が高ェだろ」
「流石兄貴、ルフィの事良く分かってるね」
「まァな。あいつの事なら大体何でも知ってる」
そういうエースの自信を裏付ける様に、騒ぎに近付けば近づく程人も増え、皆口々に麦わらのルフィがどうだの一騎当千の女王がどうだの話していた。
…いっきとうせんのじょおう?
「ガハッハハ!!こりゃめでてェ!まさかあの麦わらの一味の傘下に入れるなんてよ!!」
「船長はあの麦わらのルフィだぜ!!イカレた男だが、海賊王候補の1人に必ずなる男だ、勝ち馬に乗るたァこの事だ!」
「一騎当千の女王も忘れるな!アイツが居れば大将すら怖くねェ!!!」
「…ナニコレ」
広場みたいな所に出たと思ったら、そこにはかなりの数の海賊達が興奮し切った状態で集まっていた。
数で言えば…200人は下らないか。
「オウおめェら!おめェらも麦わらの傘下に入ったのか?」
「あー……えーっと…まぁそんなとこ。これ、麦わらのルフィが仲間を集めてるんだっけ?」
「ったりめェだろ!このチラシを見ろ!」
近寄ってきた海賊に適当に話を合わせて、渡されたビラを見る。
麦わらの一味、仲間募集…。加入条件は懸賞金7000万以上…etcっと。
「へェ、ルフィもやるなァ、偽物が現れる様になったか」
「あん?何言ってんだあんちゃん、近くに偽物が居るってのかァ?」
あなた達を集めてる人の事だよ、とは言わないでおいた。その方が楽しそうだし。
「エー……んー……、お兄ちゃんの偽物とか居ないの?」
「ブッ……お、おま……、あーいや、そ、そうだなァ…見た事ねェな…ハハ」
テンパリ過ぎでしょこの兄貴。『エース』なんて目の前に人がいる状況では言えないっての。
2年の期間の中で、エースが義兄妹の盃を交わそうという提案を持ちかけてきた時はあった。それ以前からも私に甘すぎるというか、シスコン気味だったし…その盃は断らせて頂いたけどね、酒だから。
ルフィに対しても凄く優しい兄ちゃんみたいだから、女の私となると接し方がよく分からないのかな?そういえば1度エースの親の話を一緒にしたんだっけ…その時からなんだよね、私に甘くなったの。
「ゴールド・ロジャーがお父さん?聞いたよ、海賊王が父親なんて凄いよね。それがどうしたの?」って言ったら笑い出して…あの時のエースは今考えてもよく分からない。
「お!おめェら見ろ!!船長のお出ましだ!!!」
「どれどれ」
ルフィの偽物ってくらいだし、そりゃもうとんでもなく強いオーラを放ってる男で…。
「待たせたなァ!!野郎共!!!そして周りを見てみろ!!知らねェ顔ばかりだろうが、おめェらは全員この先俺の子分!!“麦わらの一味”の
………はァ?
「やべェ…本物の麦わらのルフィだ…!」
「俺達ァ本当にあの伝説の男の船に乗れるんだ!!」
はぁん???
あ、あの…あの男が!?
今も広場に海賊達を集めて、高台の上からイキってるだけの小太りなあの男が!!?
「麦わら帽子被ってるってだけじゃん…手配書と違い過ぎる事に違和感とかないの?」
「何言ってんだ、麦わらの一味が消息を絶ってから2年だぞ!見た目くらい変わらァな!」
見た目っていうか色々変わってるんだけど??そもそもオーラが違うよね?
「今おめェらをここに集めたのは
はぁ…バカバカしい、ルフィの偽物を名乗りたいならせめて仲間を“子分”とか言っちゃダメだよ。仲間内で上下関係作るの嫌いなんだからさ。
…ありゃ、ここに大勢の気配が押し寄せてる気配がする。あそこに倒れてる海兵が仲間を呼んだのかな、血を流して倒れてる所を見るに…近くで血のついた剣を握っている舌が長い男がやったに違いない。
助けなくてもこの数がやってくるなら問題ないでしょ、何人か強い気配もするし。
「……ん!?」
「お」
今、懐かしい気配も感じた…!エースも同じタイミングで感じ取った事から…ルフィで間違いない!
偽麦わらの一味の船員と行動を共にしている様で懐かしいその気配は偽ルフィの元へと近付いていた。
「あっちか。行こう、エース」
「もう呼ばねェのか…」
小声でエースに話しかければそんな反応が返ってきた。ガチで落ち込んでる…いや、私も今更お兄ちゃんとか恥ずかしいんだからね!
「船長!あの本物のペットは見つからなかったんですが…アンタの探してた男はコイツでは!?」
「!!!」
船長が探してるとかはどうでもいいけど、私が探してたのはその男だよ!!
宴会用の付け髭とローブで一応変装はしてるっぽい…ハンコックが面倒見てくれたんだね。ハンコック達は私達の島にも何回かやってきていたから、ルフィの事はその時頼んでおいたのだ。白ひげ海賊団も赤髪海賊団も女の子が居ないから、九蛇の人達が来てくれる日は至福の時だったなぁ。
「ルフィ!!」
「あん?」
「いや、あなたじゃなくて」
大声を上げてルフィに近づけば、高台に居る偽物が私に顔を向けてきた。いやほんと誰だこいつ。手配書に寄せる気が無さすぎる。
「?誰だお前、おれになんか用か?」
「誰だって…酷いなぁ、私の顔忘れたの?」
そういって顔を隠していたローブだけ取って、ルフィに笑いかけた。
「……??誰だ?」
「なぬ!?」
…あ、ああ…まぁね、身長も伸びてるし?150センチとなると2年前にやってた
「お前らはこいつ知ってんのか?」
そう言って隣に立つ偽物共に話しかけるルフィに内心大きくため息をつくと同時に、心の底からフツフツとツッコミたくなる衝動が湧き上がってきた。
「いや、そいつらがゾロとサンジに見えるなら私だって分かるでしょ!ねぇ!」
この場にルフィを連れてきた2人の事をゾロ、サンジと認識しているルフィに目眩がしてきた。何をどう見てこの2人がゾロとサンジになるっていうの!!いや、まぁそれはルフィだから良いとしても私は本物なんだけど!?
「イリスに似てっけど、胸あるもんな、小せェけど」
「ンでっしょーー!フフン!この膨らみ…私の宝物!」
ルフィですら私の成長を認識してくれてるなんて…!ありがとう私のおっぱい!ありがとうぽよんの神様!!
「お前なかなか良い女だな。数年後が楽しみだ…俺の船に乗れ!!悪い様にはしねェ」
「遠慮しとく、あなた臭いし」
「あ…!!?」
話しかけてきた偽ルフィに、鼻を摘んでシッシッとジェスチャーを送った。別に臭いは感じないけど、この男はどれだけ馬鹿にしても良い気がしたし…。
「…OK、良いだろう。…おめェら!!よーく見とけ!!今から俺がこのクソ女とヒゲの男にする仕打ちは…この俺に逆らうと
「えェ!!」
……ハァ、やっぱり私の偽物も居るのか。
手を怪我してるっぽいけどどうかしたのかな?別にいっか、嫁にしたいとも思わない。外見も好みではないけれど、そもそも彼女から良い女の気配を微塵も感じないもん。
「そこまでだァ!!海賊共!!!」
「あ」
さっきの海兵達の気配がもう到着したのか、思ったより早かったな…。
こうなったらエースとルフィがゆっくり話してるヒマも無さそうだ。
「“麦わらのルフィ”、“一騎当千の女王イリス”及びその子分共!!大人しく降伏しろォ!!この46番
「え、何で海軍におれの事バレてんだ?」
「ルフィがっていうか、あそこの偽ルフィを捕まえに来たんじゃない?」
「え」
偽ルフィを指差せば、近くにいた偽ゾロと偽サンジがびく、と肩を震わせて私から視線を勢いよく逸らした。別に何もしないよ…海軍は知らないけど。
「おれの偽物?え、あれおれの偽物だったのか?」
「そうだよ、ここに居るのはみんな偽物のルフィに騙されて集められたバカ達だからね」
覇気で眠らせて海賊捕獲の手助けをしてあげてもいいけど…この数が隠れ蓑になりそうだから要らぬことはしないでおこう。
「おい!カリブー!!コリブー!!さっきの海兵を盾に出口をこじ開けろ!!」
「大頭ァ、そりゃちょっと出来ちゃわねェ相談だ。コノガキャアよう、「軍隊は呼んでねェ」とウソついたんだよォ。なァオイ」
カリブーだかコリブーだかどっちかは知らないけど、返事した方の奴が倒れて動けない海兵に銃を向けた。
海兵はまだ辛うじて意識あるっぽいけど…銃なんて撃たれちゃ死んじゃうか。
「人殺しを躊躇しないクソは、海軍にしょっ引かれてインペルダウンにでも放り込まれとけ」
私の人差し指が薄らと光る。ルフィはそれを見て目を見開き、私の顔をジッと見てきた。
「別に義理はないけど…救える命は救っておくよ」
中指から小指までを閉じて、親指と人差し指を立て手を銃の形にし、海兵を撃とうとする奴に標準を合わせる。
体に纏わせた“武装色の覇気”を、伸ばした人差し指の先端に集中させてっと…。
「ーーーーーー
直後、私の指先から放たれる弾丸の様な覇気が、正しく弾丸の様な速さで飛んでいき男が持っている銃を弾き飛ばした。
「…え、ど、どうした?」
「今何が起こった?銃が…勝手に飛んだ?」
「弾かれたのか!?…でも銃声なんて聞こえなかったぞ!」
「ま、こんなモノかな」
「なァお前!今の覇気だろ!どうやって飛ばしたんだ、教えてくれ!」
「知りませーん!私の事忘れたルフィに教える事なんて何にもありませーん!!」
全力で思い出そうとしてるけど…そんな思い出さないと分かんない!?私達の間に絆は無かったのー!?
そうこうしてる内に海兵達と集まった海賊とで戦いが始まった。
こっちには麦わらのルフィがついてるんだぞ!とか言ってる海賊達には合掌しとこう、全員お縄だよ君達。
「ギャーー!!パシフィスタも居るぞ!!」
「頂上戦争に投入された海軍の人間兵器が何故ここに!?」
パシフィスタ?ああ、強い気配はあいつらか。5体は居るっぽい。…あ、戦桃丸も居る!ひっさしぶりだなぁ。
「無理だ、大頭ァ!何とかしてくれェ!!俺達あの人間兵器に全滅させられちまう!!」
「あれ!?ルフィの大頭は!?女王もいねェぞ!!」
その“ルフィの大頭”は絶賛しっぽ巻いて逃げてる最中だけどね。
あ、戦桃丸が偽ルフィ達の退路に先回りした。
「うおお!!麦わらの大頭が戦ってくれるぞォ!!」
「やっちまえェ!!4億の力を見せてくれェ!!」
「一騎当千の女王も居るのに負けるわきゃねェ!!10億だぞ10億!!」
「……?何でおめーらが“麦わら”だの“女王”だのと呼ばれてんだ…」
「お、オイてめェ!!俺が誰だか分かってるよな!?ぶっ殺されて…腹わた引き摺り出されたくなきゃあ道を空けろ!!俺はドラゴンの息子で!ガープの孫で!!あの一騎当千の女王を従える懸賞金4億の男!!!」
お、先回りされて逃げ道を塞がれたからやけくそで叫びだしてる。
「あたしは女王よ!!?大将すら相手に出来る戦闘力!従える強力な女達!!10億の懸賞金はダテじゃないってその体に直接教えられたくなければ…」
「“あいつら”はおめェらみてェなカスじゃねェよ!!!!」
ドォン!!!と、偽ルフィと私の偽物の頭を
ほんと、ここに集まったバカ達にも言ってやってよ。
偽ルフィ達が一撃でやられた事で海賊達は目を飛び出させて驚き、ルフィや私の名を叫んだ。
戦闘丸もそれでようやく現状を把握したらしく、パシフィスタに今ブッ叩いた奴が誰だと聞き、ピピピ、と機械音が辺りに響く。
『懸賞金2600万ベリー…海賊“三枚舌のデマロ・ブラック”。600万ベリー…“化狸チャメロ”』
「!!?ニセ者!!?」
「何だァ!?あの野郎共、麦わらのルフィの名を騙って俺達をダマしてやがったのか!?本物が死んだのをいい事に!!」
「畜生!!たった2000万やそこらのクズ野郎に良い様に利用されるトコだった!!」
ルフィが「じゃあさっきのゾロとサンジもニセ者だったのか〜、似てんな〜」とか言ってる。やっぱり1発殴ったほうがいいかな…??
「ダマす方もバカだがダマされたおめェらも運の尽き、全員わいらが連行する!ーーーーそしてどういう偶然か、
「え!!?」
「そいつを狙え!PX-5!!」
パシフィスタがルフィに向かって光線を放つ。
近くに居た私とエースは軽く横に飛んでビームを避け、ルフィも大きなリュックを庇いながら避けた。だけどその拍子に付けヒゲがポロリと取れて地面に落ちてしまったみたい。
「あっぶねェ!!何すんだ!!リュックには大事な弁当が入ってんだぞ!!」
「全く、そういう問題なの?ルフィらしいけど」
付けヒゲの外れたルフィを見て、手配書と同じ顔だとか何とかでまた辺りが騒めきだした。
私とエースはルフィの隣に立ち、エースはルフィにだけ見える様に軽くフードを捲って「よう」と声を出す。
「え………」
「話は後だ、とにかくここを抜けるぞ、ルフィ」
「あ……え?」
流石のルフィも理解が追いついていない様だけど…せっかくの腕試し、本調子で行ってもらわないと。
「もう…騒ぎを起こせば出航し辛いとかなんとか言ってたけど、やっぱり私達には騒がしいのがお似合いなのかな」
「…お前は……、まさか…!!やはり居るのは麦わらだけじゃ無かった様だな!安心しろ!出航する必要はねぇ。2年前と違ってわいは正式に海兵になったんだ、お前達をここで捕える!!やれ、パシフィスタ!!」
「やるなら反撃するけど…加減は下手くそだよ。そいつらの修理費は出さないからね!」
私を狙って3体のパシフィスタの口からビームが放たれたが、それを避ける事もせずに腕を前に出した。
「“倍”」
ズォオ…と私の前に現れた空間に3本のビームが吸い込まれていく。
「“返し”」
「なにっ!?」
直後、その空間から威力が2倍になったビームがパシフィスタの方へと一直線に飛び、直撃して大爆発を起こした。3体のパシフィスタは当然壊れて地に倒れ伏し、バチバチと小さく放電して動かなくなった。
これは2年前、頂上戦争でレイが使っていた反撃の技と同じ物だ。
私にも使えたのだから…レイも私と似たような能力なのだろう。そしてこの2年の間で彼女の能力についても見当がついている。
因みに今の反撃技『倍返し』だけど、当然弱点がある。
まず第一に私が相手の技を完全に見切らないと成功しない。エース相手だと成功率は低かった。
後、バカ火力は空間に吸い込めない。白ひげの攻撃返せたらかっこいいなーと思って試した瞬間に身体がフッ飛んだ修行中の私…。
例の如く生き物の類は吸い込めないから遠距離攻撃しか反撃出来ないというのもある。それでも便利な技なんだけどね。
「ゴムゴムの…
放心から帰ってきたルフィがPX-5を覇気を纏った一撃で粉砕し、私とエースの隣に再び立った。
「じゃ、まずは船まで行こうか、ルフィ。エースの事は走りながら説明する!」
「っ…ああ、頼む!」
そうしてルフィ達と広場から離れるように走り出せば、前方から本物のゾロとサンジが走ってくるのが見えた。
「オイ!ルフィ!!」
「やっぱりこの騒ぎはお前か!何でてめェは常にトラブルの渦中に居るんだよ!」
うわ〜!ゾロとサンジもだいぶ腕上げたなぁ!気配で大体分かるのが見聞色の良いところだよね!
「ん?」
「!」
そんな2人の前に、残ったもう一体のパシフィスタが現れて手の平からビームを放とうと2人に向けるが…、
「「どけェ!!!」」
2人にそれぞれ致命傷レベルのダメージを負わされ、オーバーキルで爆発した。瞬殺じゃん…やっぱりみんな強くなってる!
ナミさん達はもう船なのかな!?ん〜!!楽しみ!!
2年後イリスの二つ名は悩みに悩んだ結果こうなりました。どうせまた物語が進めば違う呼ばれ方されると思いますけどね!
最初の案は暴虐の女王でしたけど、暴虐要素無いし…かっこいいだけだからボツ。魔王の方とも被るし。
2つ目の案は不屈の女王。なんか…なんかもやっとする。
そして3つ目の一騎当千の女王になりました!まぁ…まだマシかな…うん。
いつかのコメントであった幼女王って異名が天才だったので使いたかったけど、幼女じゃないから泣く泣くボツ…。あの発想は本当に天才だと思いましたね。