「結構沈んだねー」
「光も届かなくなってきたわ。「受光層」を抜けて「薄明層」も終わりって所ね。1000mは越えた筈よ」
1000mかぁ…体出したら水圧で潰れちゃうのってどんくらいだろ?
「6時の方角なんかいるぞ!海獣…?いや、船だ!こっちへ突っ込んでくる!」
「ん?」
見聞色で見れば、確かに後ろからそれなりのスピードで突っ込んできていた。これ、船を何かが引いているから速いのか。
「うわ…!」
「海賊船だ!」
どん!と報告の直後に船に衝撃が走ってバランスを崩す。
ぶつかってきやがったなこんにゃろ…!シャボンが割れたらどうしてくれるの!
「船を押し付けてくる!!まさか、シャボン越しに乗り込んでくる気じゃ…!」
「逆に乗り込んで全滅させて来てもいいよ。行こうか?」
「まぁ、あんたならそれでもいいけど…、いや、ちょっと待って…アレ、モーム?」
モーム?だれ?
「あんた、アーロン一味のモームでしょ!?」
ナミさんにモームと呼ばれた船を引く牛っぽい海獣は、ナミさんと、それからルフィとサンジを見て何故だが震え上がった。
「野郎共ォ、俺に続いちゃえ〜〜!!」
「わー!!誰か船に入ってきたァ〜〜!!」
「ケヒヒヒヒ!!こいつらが呆気に取られてる内にィ〜〜船内皆殺しにしちゃいや〜〜がれェ〜〜い!!ケヘヘヘ!」
あ、こいつカリブーじゃん。さっき広場に居た奴。
俺に続け、的な事言ってるけど、あなたがこっちに入った瞬間にモームが逃げてったから船は離れてあなた以外誰も来てないけどね。
「さァ挨拶代わりにィ〜〜!!ガトリング
やっと気付いたのか、後ろを見て目ん玉飛び出させて驚いていた。
うーん、別に危険性がないならこのままにしておいてあげてもいいけど、こいつ海兵を簡単に殺そうとしたり、今も皆殺しとか言ってたからなぁ…、万が一ナミさん達に危害を及ぼされたらたまったモノじゃないし…とりあえずシメとくか。
「ねえ、ちょっと!さっき船を引いてた海牛どうしたの?」
「おっとォ……こりゃあ…ん〜カ〜ワイ子さん〜、アンタァ…“正妻”だなァ〜?…うごッ…!?」
「…人の女を見て舌舐めずりしないでくれる?ねぇ」
ガシ、とカリブーの首を掴んで甲板に押し付ける。メキ…と奴の首が軋み、ゴフ、と血を吐いた。
「あ、あ…!いや、ち、違うんだ…!お、俺はただ、そこの女がえらく別嬪さんだなァって思っちゃっただけなのよォ…!…ヒ…ッ」
少し首の拘束を緩くしてやればペラペラとしょうもない言い訳を始めた。私が臆病で良かったね、首をへし折られずに済んで。
(い、一騎当千の女王…!俺は何を血迷っていたんだよゥ…!こ、こんな怪物に、か…敵う筈がなェよォ…!)
「殺しはしない。寝ててよ」
「や、やめ……!ウギャッ!?」
バキィッ!と顔面にたっぷり加減した拳を叩き込み、とりあえず気絶させた。私が誰だか分かってナミさんにそういう態度取ったのだとしたら逆に凄いよ、別に強い訳でも無かったし。
「ちょっとイリス、気絶させたらモームの事何も聞けないじゃない!」
「ふーんだ、そんな事よりみんなの安全だし」
「いや今のはいつもの短気だろ」
短気って言うけどねゾロ!ナミさん達に少しでも危害を加えそうな奴がそこに居たら倒すでしょ!今回は雑魚だから助かったけどさ!
「海獣どっかに居ねェかな〜」
「さっきの船みたいに引かせるの?」
「おう!い〜い考えだろ!?」
確かに手懐ける事が出来たら今より早く魚人島に着きそうだ。
いい感じの海獣見つけたらカリブー叩き起こして方法聞こ。
「おいナミ!
「なーに言ってるのウソップ、違う方向へ進んでるって事はそうする必要があるって事だよ」
「その通りよ、多分イリスは私を信じてるだけで分かっては無さそうだから一応説明するけど、この指針より少し南西へ進むのが正しい航路なの。まっすぐ進んでも海流に攫われて下降しきる前に海山や海底火山に突き当たっておしまいだって」
へぇ…つまり不思議海流って事だね!
ルフィとふむふむ、と知ったげに頷いておいた。昔からそういう頭使う事は苦手なんですね、私。
間違いなく前世の王華のせいだわー、私が頭悪いのも王華が悪いわー。
「でも
「1つだけある…!みんなコートでも羽織った方がいいわよ、ここから先寒くなるから」
「寒い?」
「これから行くのは深海でしょ?お風呂の湯は上が熱くて下が冷たいから、海でも同じ事が言えるのよ、イリスちゃん」
ふーん…確かに混ぜないと上だけが熱くて下の方が冷たいよね、お風呂って。
「ただ温度差があるだけではありませんよ?海の下層部は「深層海流」と呼ばれる私達は普段目に出来ない巨大な海の流れがあるのです!それは今ここにある「表層海流」とは全く別の動きをする海流です」
ううーん…ま、そういう航海術はプロに任せて、私はその愛しい愛しいプロの邪魔になる怪物や障害物をブッ飛ばす係に全力を出しますかね。
とにかく深海は冷たい。更にもっと冷たいトコは海流が下に向かうから、下を目指すためには冷たい場所に行くしかないってコトだね。うん、やっぱり不思議海流だ!分からん!
「オイナミ、そう言ってる内に見えてきたぞ」
「ホント!?」
「そんな事よりいつの間にペローナちゃん、ナミさんの事名前で?私の事もイリスって呼んでよ!」
「イ・ヤ・だ!」
ぐ…なんて強情な…!
…おお、これが下に流れる海流か…!
確かに寒くなってきたな、私は寒さ耐性倍加で大丈夫だけど、みんなはいそいそとコートを着始めた。ルフィとゾロ、フランキーは私と違って倍加出来ない筈なんだけどなんで何も羽織らないの…。
「あれが下降流のプルーム…!」
「これじゃまるで海中の…巨大な滝だ!!」
「ず〜〜〜っと下まで海が落ちてく!!ものスゲースピードだぞ!」
下が見えないなぁ…、ん?なんかでかいタコが居る。
「ぐ…ゥ…!お、い…!麦わらの一味…!直ぐに引き返せ、やべェぞ…!!」
「あ?…思ったよりタフだね、もう起きてきたんだ」
カリブーの奴がフラフラと覚束ない足取りで歩いてきたと思ったら引き返せと言ってきた。なーにが引き返せだ、お前を餌にあのタコ釣るぞおらぁ。
「下をよく見ろ、怪物が居る!…
「あれは…!!」
「うわあァ!!クラーケンだァ〜〜!!!」
クラーケンかぁ。何隻も船を握り潰してるっぽい。ここ数日でここまで降りてきた船を潰してたのか。
…怪物ねぇ。
「引き返す必要ある?」
「女王ォ…!お前さんそれはヤベェよォ…!いくらお前さんが強いと言っても、奴には敵わねェ…!よ〜く聞いちゃいやがれ…!奴の残した数多くの伝説の1つに…」
「うるさいなぁ…ちょっと黙ってて。私が居る以上、この船は絶対安全だよ」
コキ、首を鳴らしてついでにカリブーの顔面を蹴り飛ばす。いきなり蹴り飛ばされたカリブーはヘブッ!?と声を上げて壁に激突した。
「さて…今日はタコパだね」
「待て、イリス!!」
小太刀を抜いた時、ルフィから声がかかった。
どうやらあのタコに船を引かせたいらしい。…ふーむなるほど…確かに良い考えかも!
と、その時後方からモームがまた船を引っ張って突っ込んで来た。
カリブーはそれを見てコリブー!助けに来てくれちゃったのかァ〜とか喜んでたけど、その船は一瞬でクラーケンに握り潰されていた。
乗ってたコリブー含む船員達はみんなクラゲの様にぷかぷか海上へと上がっていく。…この深さだし、海上までは結構距離あるからなぁ。助けてあげたいけどあれは無理かな…ごめんね、助かる事を祈っておくよ。
「こっちにも攻撃来たぞォ!!」
「ギア…3!」
「やめろおめェら!でけェ攻撃はシャボンが割れる!!」
「だったら私に任せて」
ス、と迫りくるタコ足に銃の形をした指を向けた。
あのサイズなら、これくらいかな。
「
ドォン!!と飛んで行った漆黒の弾丸が、シャボンを突き抜けてクラーケンの足に直撃して弾き飛ばした。
うし、足は健在だね。運んでもらうのに消し飛ばす訳にはいかないし…加減しないと。
「あ!忘れてた!!イリス、それ教えてくれ!」
「覇気を飛ばす」
「おォし!」
今の説明で満足してる辺りがルフィらしい。実践しようと私のマネして指を銃の形にしてるけど、中々難しいようだ。そりゃあ私も頑張ったからね…エースの
「お前はどこまで化け物染みた力を身につけりゃ気が済むんだ…オイロボ、クー・ドなんやらで逃げる事は出来ねェのか?」
「そりゃ1つ問題がある。クー・ド・バーストやガオン砲は大量の空気を発射する兵器だ。ここは海中、空気量は限られてる!空気を飛ばせばこの船のシャボンが萎んじまう!」
「逃げなくていいじゃん。戦おうよ」
別にここからでもさっきみたいにちまちまやれば勝てるし。そりゃ、外に出る方法があるなら1番いいけど。
「っ…く、仕方ねェ…そんなに戦いてェんなら策を授けちゃうぜ!一騎当千の女王!」
「ん?」
そういうとカリブーは船のシャボンを少し千切って人が入れる程度の大きさのシャボン玉にした。
それを4個作り、それぞれ私やルフィに渡してくる。
「その中に入っちゃえば、この船のコーティングと同じ効果を受けられるのよォ〜!これが即席、バタ足コーティング!!」
「へぇ、クソ野郎だと思ってたけど役に立ったね。でもそういう事ならやっぱり私はいらない。ルフィとゾロとサンジで行ってくれない?」
「なんでだ?イリスも居た方が楽だろ」
私が自分の分のシャボン玉を再度船のシャボンにくっつけて元に戻しながら言えばルフィがシャボン玉に入りながらそう言う。
「いや、このカリブーとかいう奴残してはいけないかなって思ってさ、別にあのタコくらいなら私要らないでしょ?」
「イリスちゃんが居てくれた方が楽だが、それも一理あるな。じゃあイリスちゃん、ナミさん達を頼んだぜ」
「ん」
そう言って3人はシャボンを纏って海へ飛び出して行った。ナミさんが命綱は付けなさいよ!と怒ってる。そんな顔もすんごい可愛い。
***
結果として、クラーケンはルフィの
…んだけど、その後運悪く近くの滝みたいな下降流に飲まれてしまい、私達もそれを追って下降流に飛び込んだのだ。
かなりのスピードで落ちてしまった船だけど、ナミさんの的確な指示もあって何とか無事に下まで辿り着く事が出来た。
フランキーによるとここは深海7000m程だろうとの事。
そして1番厄介なのが…落ちた3人が未だに見つからないという事だ。
「流石深海だねぇ、見たこともない魚でいっぱいだよ。ほら、このクラゲとか綺麗な手してるし、毒持ってそう!」
ハハ、と笑いながら船に入れてきたクラゲの触手を掴む。お、ピリッとする!私がピリッとするって事は…常人なら1発で即死するレベルの毒持ちだね!
「と、友達になりてェのかな?おれも握手してみようかな…」
「はは、触った瞬間に死ぬだろうから絶対に触らないでね」
「ななななんでイリスは触れてんだよ!!あぶねェ、触るトコだった!」
毒耐性倍加ですね。
それに修行中に毒持ち生物にもすっごい襲われてたし、その時何回か死にかけたからなぁ、普通に毒耐性付いてるのかも。マゼランの毒を1回喰らってるのも大きいね。
「…ん?そういえばカリブーは?」
「あー、そういや居たな!すっかり忘れてた」
「別に良いだろあのキモいのは、ほっとけ」
「下降流の時に落とされたんじゃないかしら」
じゃあその時落ちたか…もしくは…隠れてるか。
ハァ…もし後者だとしたら面倒だ、今度こそボッコボコにして息の根止まる寸前まで行かないと。どれどれ、見聞色に反応は…、
とか言ってればフランキーが樽の中に隠れていたそいつを見つけて逆に樽の中に閉じ込めた。
抜け出せる場所が無いくらい厳重に隙間を埋められ、樽がじたばたと暴れる。
「俺に見つけられて良かったなァお前、イリスなら今頃四肢のどれかは失ってるだろうよ」
「私を何だと思ってるの?そりゃ半殺しの予定ではあったけどさ」
樽の中からヒィっと声が聞こえた。
それよりコイツ
…さて、バカの拘束も済んだところで…本格的にルフィ達を探すとしますか。