「暑い…おれ、暑いのダメなんだ…」
「チョッパーちゃん程じゃないけど、確かに暑いわね…どうしたのかしら?」
さっきまで寒かったくらいなのに、何だかいきなり暑くなってきた。今度は暑さ耐性倍加に切り替える。
「前方、視界を奪われた…!暑いっ!何だこれ…煙か!?」
「海底から煙ぃ?…あ、もしかして…言ってた海底火山?」
私が呟けば、ナミさんは頷いて慌てた様に船から下を覗く。
「熱水鉱床…!ここは海底の火山地帯よ!活動の跡がある…!!」
「うわ、噴火したら痛そうだね」
「痛いでは済みませんよイリスさん。あ、今のは痛いと遺体をかけて…」
「んな事言ってる場合か!!早くここから離れるぞ!!」
フランキーが慌てて舵を取り、私はいつ噴火しても良い様に火山の噴火口を見ている。
最悪、腕を伸ばして手の大きさを倍加すれば吹き出る火山から船を守る事は出来る。代償に腕は爛れるだろうけど、これも私なら治るし問題はない。
とまぁ、こんな感じで警戒していた訳だけど、幸い噴火する様な事態には至らなかった。
別の問題として深海海獣がひっきりなしに襲ってきたけど、このレベルの獣なら片手間の
「だいぶ深海も進んだけど…まだルフィ達見つかんないね」
「死んでんだろ、こんなトコにただのシャボンで取り残されて生きてられるか」
ペローナちゃんの言う事も尤もだけど…それは常識の話だからなぁ。ルフィに常識は通用しないし。
「あれ何だ?ものすげェ光ってるけど!魚人島かな!?」
チョッパーが船の前方に現れた強い光を指差す。
うっ…こうも真っ暗な所にあんな光を持ってこられると、私の暗闇耐性倍加も意味なくなっちゃう…!
「何か見えるか?」
「まだ眩しすぎて何も…もっと近付けば分かるかも…」
近付けば近付く程眩しくなる一方だ…。本当に何だこの光…!
「あ」
「しまった!!」
その光の丁度目の前にやってきた時、私達はその光が何なのかを理解した。
私達の真下…そこで口を大きく開けて、巨大なアンコウが今か今かと待ち構えていたからだ。
「アンコウだっ!ダマされたっ!!」
「深海のハンターに釣られましたね!マズイ!!」
チョウチンアンコウ!知識にあるものより遥かにでかいけど、この世界だとあれくらいのサイズ普通か!
「まぁ、問題ないんだけどね。
覇気の弾はアンコウの体を貫き、船を食べようとしたアンコウは痛みに悶えた。ついでにペローナちゃんがネガティブ・ホロウズで戦意喪失もさせる。
ネガティブ・ホロウは図体が大きい相手には通用しづらいらしい。何回も当てないとネガティブになってくれないのだとか。確かにそんな感じではあるね。
「アンコロォ…!!」
「次は何?」
巨大な岩の陰から声がして、その声の主がアンコウの光に照らされた。
…でっかい人。こんな奴マリンフォードに居たなぁ…逃げたけど。
まぁあいつとは違うだろう、オーラがそこまで凶悪じゃない。
「おいおい…!人の姿をした海の怪物といやあ…海坊主かァ!!?」
海坊主が腕を振り上げて攻撃態勢をとる。
「ギャー!船をひっくり返されるぞ!!」
「心配要らないわ、ウソップ君。海坊主の狙いは私達じゃないみたいよ」
「な、何で分かるんだよォ!」
ミキータの宣言通り、海坊主はこの船ではなくアンコウをガンッと殴って躾けていた。船は食うな、キャプテンバンらーれっケン様に怒られる、と。
ら、とかれ、とか言ってるのは単に口調の問題か。…それよりミキータ、それが分かるって事は見聞色の覇気を使えるんだ…!
『死人に口なし、欲もなし…♪烏も飛べねえ黒国じゃあ〜』
「……?」
次から次へと色んなことが起こるものだよね。
この“唄”はどこから聞こえてきてるんだ…?
『死人の指に宝石ゃいらぬ、闇じゃ無念も見えやせぬ…♪」』
うわ…!ゴースト
「お〜…良い雰囲気の船じゃねェか、アレに乗ってる奴は分かってるな」
「お、お前本気で言ってるのか!?あの船だぞ!どこからどう見たってゴースト
「だから良いんだろ、何言ってんだネガっ鼻」
本気で何言ってんの?みたいに首を傾げてるペローナちゃんに私達は苦笑いを溢す。そういえば彼女の趣味趣向はこういう系だった。
『探せ、探せ、沈んだ宝はおれのものォ…おれは世っ界一の大〜金〜持ーちー…♪キャプテン、バンダー・デッケンだァ〜!!』
『『ウオオオオオ…』』
深海でゴースト
「脆そうな船だし、
「や、やめとけイリス、呪われるぞ…!!」
「そうですよ!アレは本物です、あの帆を見て下さい!有名な船…「フライングダッチマン号」!」
フライングダッチマン号?
続くブルックの説明によれば、その船はこの世にあってはならない船らしい。
ある大嵐の日、突然錯乱した海賊船船長が部下を次々に嵐の海へ投げ込み皆殺しにし…神にさえツバを吐いた。その船長の名は“バンダー・デッケン”…船の名は「フライング・ダッチマン」。
彼は神の怒りを買い、永遠の拷問を受けながら海を彷徨い続ける事を運命づけられた。との事。
そして今目の前にある船こそが、そのバンダー・デッケンの船だという。
「なるほど…分かった!とりあえず沈めてみよう!」
「話聞いてたのかオイっ!」
ビシッ、とウソップの突っ込みが刺さった。聞いてたけど…別に私が攻撃を遠慮しなくちゃならない理由じゃなかったし。
そもそもあんな怪しい船、とりあえず落としとけば何とかなるんだよ。
「ワダツミ…アンコロ…船は食っちゃ宝が取れねェ…叩き落とせ!」
「わかったら!!」
拡声器でも使ってるのか、妙に響く声が耳に届いた。
その言葉でワダツミと呼ばれた海坊主は標的を私達に定める。
「フランキー!クー・ド・バーストを…!」
「いや、必要ないよ」
ワダツミの拳を
私の体から溢れ出る覇王色の圧がワダツミにも見えているのか、奴は体を震わせて戦意を喪失させたようだ。…そりゃそうだ、いくらワダツミがバカっぽく見えても戦ってはいけない相手くらいは見分けつくだろう。それに覇王色で分かりやすくしてあげたんだから尚更だ。
「おおーーーい!!お前ら〜〜〜!!」
「あ、ルフィ!サンジ!ゾロ!無事だったんだ!」
「さっきすんげェ覇気感じたぞ!イリスか!?」
流石ルフィ、ばれてる。
それよりルフィ達を運んでるクラーケンが気になる所だ…ちゃんと手懐けれたみたい。
「コラー!何をしているワダツミ、怯えてないでやり返せ!!」
「酷な事を…怯える事が出来るのだって立派な防衛だと思うんだけどな」
やり返したって手も足も出ない事を理解したからワダツミは何もしてこないんだって事をあの船に乗ってる奴は分かってないんだよね、多分戦闘とかした事ない人なんだろうな…バンダー・デッケン。
「それより3人共どうしたの?1つのシャボンに入って」
「おれとサンジのシャボン割れちまってよ、ゾロんち逃げ込んでたんだ、あはは、死ぬとこだった!」
割とシャレになってない〜…。
とにかく急いで3人を船に入れて、今にも割れそうなシャボン玉から解放してあげた。
ルフィが船に戻った事で、クラーケンが自分の頭の上にサニー号を乗せる。成程、モームと違ってタコならこうした方が船を引きやすいのか。
…もう引くって言い方はおかしい気もするけど。
「呆れた…本当に手懐けちゃったわけ?あの怪物ダコ…」
「おう!上級者の航海をするんだおれは!な!スルメ!」
「それイカじゃん!」
どうしてルフィって技のネーミングセンスはピカイチなのにこういうのとなると何処か別の方向へと行っちゃうんだろう。
ネーミングセンスで言えばナミさんもアレだけど、ナミさんは可愛いから全て許される。私が許しちゃう♡
「
ナミさんがハッとしてさっき通ってきた火山地帯を見た。
…あ、これやばいやつ。
「…まずいわ…、海底火山が…噴火する!」
「火山かぁ、ここなら特等席で見れるね」
「んな呑気な事言ってる場合か!!逃げるぞ早く!」
「まぁまぁ、そんな焦らなくても大丈夫だよ、ほら」
船の下を指差してウソップに見せる。そこには必死の形相でサニー号を持って全力ダッシュしてるクラーケンの姿があった。
揺れを最小限に抑えてるあたり出来るスルメだ。
直後、ドォォオン!!!と物凄い音がして火山が噴火した。
私は手を海に出し、巨大化させて爆風を軽減させる。
「イリス…!あなた腕を出しても大丈夫なの!?ここは深海よ!水圧で潰されてもおかしくないのに…!」
「ありがとうロビン、でも平気!」
本当は骨がミシミシ言ってるけど、これは黙っておこう。
うーん…この状態ではこれくらいの強度が限界なのか、まぁ2年前だと間違いなくこの手はぺしゃんこだったろうね。
「水温差で海流が渦巻き始めた!」
「ナミさん、魚人島はどっちだ…ブッ…、こ、こんな時までやましい気持ちが…!?」
サンジ、本当にどうしたんだろう。これは相当重症だよ。
「まだ真っ直ぐ!もう少し……あの海溝へ!!」
「おわああ!!断崖絶壁じゃねェか!ここ飛び降りるのか!?」
「そう!!」
目と鼻の先にある海溝は、もはや下が全く見えなかった。
暗闇耐性を倍加した所で暗闇の先にあるのは暗闇なのだから何も見えないのは当然なんだけど。
「飛び込め!スルメ〜〜!!」
ルフィの指示で海溝へ飛び込んだスルメだが、今度は海溝が崩れて上から土石流が降ってきた。
まるで海の土砂崩れだ、巻き込まれたらただでは済まない。
「そう何度もイリスに見せ場を取られる訳にはいかねェな!必殺緑星!「サルガッソ」!!」
ウソップの放った弾から巨大な海藻が生え、土石流を一瞬ではあるが足止めした。
その隙にスルメは土石流の範囲から逃れ、私達はほっと一息つく。
「やるじゃんウソップ!」
「ネガっ鼻お前!やる時はやるじゃねェか!」
ドヤ顔してるウソップだけど、今回はそのドヤも正しい。もしかしたら私じゃあの土石流は止められなかった可能性だってあるし、ああやって確実にしてくれたのは助かったよ。
「わ…!」
確かに土石流は止められたけど、上からもう1個だけ落ちてきた岩石がスルメの頭に直撃した。スルメはそれで気を失ってしまい、私達はスルメと共に海溝を真っ逆さに落ちていったのだった。
***
「うにゅ!」
とりあえず落下の衝撃でなんかがあっては事だから、嫁達を私の近くに呼んで1人1人の腕を掴んでいたがその心配は杞憂に終わった。
というのも、スルメの身体がクッションとなってそれ程衝撃が伝わってこなかったのだ。
「だいぶ下まで落ちたっぽいけど…」
「う…眩しい…っ!女王、私の前に来い、陰になれ」
「はーい♡」
「…光?なぜこんな深海に…」
「おお〜!!おいお前ら来てみろ!上見ろよ上〜!!ナミ、アレか!?」
ルフィが上の方を指差して、ナミさんが
視線を上に向けたその眩しい光の先にあるのは…大きなシャボンに囲まれている島だった。
「間違いないわ!指針はあの島を指してる…あれが魚人島よ!」
「んんん!来たー!!魚人島!!」
「人魚達の舞い踊る島!美しい人魚姫!!遂に辿り着いたんだ、ガキの頃から憧れた夢の楽園!!…ブッ!」
さ、サンジーー!!!
遂には妄想だけで吹き出す様になっちゃった…こんなんじゃ人魚に会うなんて…!!
「まずは入口を探さないとね。正面に見える口がそうだと思うけど…」
ナミさんの言葉に頷く。サンジには悪いけど、私はこの魚人島で目一杯良い思いさせて貰うんだ!!
人魚だけじゃない…そのお姫様がもし本当に居るって言うのなら…!!ん〜〜〜っ!!!ぜっったい嫁にする!!昂ってきたぁ!!