143『女好き、びば魚人島』
「魚人島の料理には何の肉が入ってんのかなー…」
「魚とかは食べてなさそうだね。…ん?」
私達が魚人島への入口を探している時、近くに巨大な気配を何個か感じ取った。巨大な気配って言っても強さじゃない、大きさの問題だ。
「何を人間なんぞに従わされてんだ、クラーケン!!」
「わあああ!!何すんだスルメ!もう一息運んでくれよ!!」
私の感じ取った巨大な気配の主、それに乗っている魚人がスルメを一喝すれば、スルメはサニー号をポイっと捨てた。
恐怖で縛られてるのか…可哀想に、それじゃ奴隷と何も変わらない。
「誰だコイツら…!」
「わああああ!!?海獣の群れだァ〜〜ッ!!」
チョッパーがサニー号の前に集まる巨大な気配…海獣達を見て叫んだ。
キリンとかサイとかゴリラとかが海に適応しましたって見た目をしてる。こいつらみたいな見た目の海獣は修行中に何頭か見たっけな。
「カッコいいな〜海獣!誰か乗ってるぞ!」
「魚人だね、3人くらい居るよ。とりあえず倒そうか?」
「どうしてあんたはそう直ぐに手を出そうとするの…」
簡単な話、見聞色で相手の色が見えるだけの事だよ。コイツらからはあんまり好きな色が見えなかったから倒そうかなって。
まぁでもナミさんが言うなら私は従うけどね、だってナミさんの言う事だし、私からすれば神の啓示かなって。
とか考えてたら海獣に乗る魚人の1人が口を開いた。
「お前達…“麦わらの一味”だなァ…よく知ってるとも…かつて“アーロン一味”の野望を討ち砕いた海賊達。ーーーそれで済めば答えは簡単だったが…!よりによって2年前、あの憎き“天竜人”をぶちのめしたとも聞いている…!まるで我々の敬愛する「魚人島の英雄」フィッシャー・タイガーの様に…。ハモハモハモ!まったく、扱いに困る」
ハモの魚人かな。それっぽいよね、ハモハモ言ってるし。
「なァ、教えてくれ…!お前達は敵なのか、味方なのか。我々「新魚人海賊団」の『
「それより、私も教えて欲しい事があるんだけど」
私の体から覇気が溢れてるのを見たミキータがナミさんに伝えると、ナミさんは慌ててフランキーと何やら話していた。
…ここは深海1万m…そりゃ、私だって本調子で戦える訳じゃない。だからここからの離脱を提案しているのだろう。
私が今から取る行動を一早く理解したからこそナミさんはそれだけ早く行動出来たのだ。あのハモの魚人の肩に入れられた…アーロンと同じ刺繍。それを見て一瞬だけど怯えた目をしたんだ。…ナミさんが。
それを見たんだ…もう私に神の啓示も何も通じる事は無いと思っていい。
「あなた達とアーロンって…関係者?」
「関係者だとォ?そんな簡単に言うな…!あの方は我々新魚人海賊団の先駆者だ!!イリスとやらがあの方の野望を壊してなけりゃ、今俺達は“上”で人間共を淘汰してやってた所だ!!」
「そっか。じゃあ…堕ち…っ、ろ!!?」
「な…!?うっ…!」
「おわっ!?」
い、いきなりクー・ド・バースト〜!?腹貫いてやろうと思った
「ちょっと…!私今からあいつらボッコボコにする所だったのに!ナミさん…!」
「怒ると周りが見えなくなる所も好きだけど、こんな深海であんな海獣に四方八方から襲われちゃ対処出来ないでしょ!ケンカなら魚人島で幾らでもやっちゃっていいから!」
むぅ…!別に負けはしないけど…万が一は確かにあるかもしれない…。
へんだ、今度あいつら見かけたらボコボコにしてやる。なーにが新魚人海賊団だ!せめてアーロンの思想を切り替えてまともに海賊やってれば仲良く出来たのに!!…まともな海賊ってなんだ?
「んっ!」
そのまま魚人島を囲う巨大シャボンにサニー号が突っ込んだ。
そのシャボンを突き抜けた時、サニー号を覆うシャボンは巨大シャボンに持っていかれてコーティングが剥がれてしまう。
「コーティング無くなったけど大丈夫なの!?」
「しかもシャボンは二重構造!普通の船ならこの空気の層で落下する…!!」
巨大シャボンの中にもう1つ巨大なシャボンか…!
「もう1発激突するぞ!しがみつけェ!」
「よし!来い!……っ、ゴボッ…!?」
「うわああ!?ゴホボボバボ!!?」
う、海!?シャボン突き抜けたら海って…それは流石に対処しきれない…!
「ガバボ…!」
くそ、能力者は私を含めて7人も居るってのに…!
しかも潮の流れ早いし…!せめて嫁達だけでもこの手にィ…!!ふんぎぎ…!!くそ!能力が使えないから…!!
「ゴブボァ!!」
な、ナミさん達が離れて…っ!うぐ…!くそ!!伸びてよ私の腕…!……ぐ…っ。
ナミさん達に追いつこうと必死に泳ぐも、流れが速すぎて私にはどうする事も出来なかった。
流石に動きすぎたか…酸欠で意識が朦朧としてくる…。
ナミさん…ミキータ…ロビン…ペローナちゃん…、必ず迎えに行く。…だから、ちょっとだけ……待ってて………ーーーーーーーー。
***
「ッナミさん!!!!ッていっつァ!!?」
「ふぐ…!い、っ…!?」
オオオオオ……飛び起きて早々ガチンコするのは久々の感覚…、だ、誰…?
「ご、ごめん…!思いっきり頭突きしちゃって…!」
「う、ううん…平気だよ…!」
…うん?聞いたことある声…というか、すっごく癒されるこのカワボは…!
「ケイミーちゃん!!?」
「そうだよ!久し振り、イリスちん!」
う…うわー!また一段と可愛さにも美しさにも磨きが掛かっちゃってるぅ!
「ごめんねー…イリスちんの寝顔があまりにも綺麗だったから、もっと近くでみようと思って…」
「今から寝ます」
「ちょっと待てい!」
ガシ、とウソップに止められた。なんだ居たの。
サンジもチョッパーも居るね、あとまだ気を失ってるけどルフィも。
「可愛いね」
「可愛い!」
「可愛くない!」
「可愛いんじゃない?」
「可愛いから何!?」
「…えっと、ありがとう…?この子達は?」
なんか私の前をシャボン?の浮き輪か何かに乗ってふわふわ浮かんでる小さな人魚達が私の顔を見てそう言ってるので一応お礼を言っておいた。五つ子…だよね、5人ともそっくりだし。
「私のお友達!メダカの人魚の五つ子ちんだよ」
「イチカです」
「ニカです」
「サンカです」
「ヨンカです」
「ヨンカツーです」
「ゴカで良いだろそこは!!」
ウソップの突っ込みが刺さる。でもこの子達可愛いね、小動物みたいで。
そんな事を言ってる間にルフィも起きて、五つ子達が乾かしてくれた私達の服を持ってきた。
…流石にここでは着替えにくい。
「イリスちんはあっちねー」
「あ、うん」
ケイミーちゃんに引っ張られて奥の部屋へと向かう。男連中と一緒に着替えるのは流石に無理だと思ってたのを察してくれたのかな…ありがたい。私だって乙女だからね。
「はい、この部屋なら脱ぎやすいでしょ?」
「気を利かせてくれてありがとう、助かったよ」
うんしょ、と服を脱いでケイミーちゃんに渡す。なんか夫婦みたい、ふへへ。
「それにしてもびっくりしたよ、まさかこんないきなりケイミーちゃんに会えるなんて。私達を助けてくれたんでしょ?」
「お友達と一緒にね。それに、今回は私が悪くて…!迎えに行くって思ってたのに時期を1ヶ月間違えちゃってたの…!」
「ううん、大丈夫だよ、こうしてちゃんと辿り着いたし。ナミさん達は?」
「サンジちんは、とりあえず海底まで流されたのは自分達だけだからナミちん達は無事だって言ってたよ」
それなら良かった。ゾロもフランキーも居るし、あっちも大丈夫そうだね。
「……」
服を着た所で、私が抜いだ服を持って待っていたケイミーちゃんと目が合う。彼女はどうかした?とでも言うかの様に軽く表情を和らげて首を傾げた。
「…ちょっとごめんね」
「わ…っ…ん…っぅ」
ぐいっ、と腕を引っ張りそのまま強引にキスをして、ケイミーちゃんの鱗をするっと撫でる。
なんか、仕事帰りに脱いだスーツを受け取った妻、みたいな感じのケイミーちゃんに興奮しちゃった。
「ん…」
舌でケイミーちゃんの口をこじ開け、隠れていた彼女の舌を絡めとって口内を犯していく。やばい…スイッチ入りそう。だってケイミーちゃんとこういうことするの初めてだし…。
彼女の唇はぷるんと柔らかくて気持ちが良いし、舌はしっとりと湿っていて吸い取りたくなる。
…本当は続きをしたいけど…。
「ぷは…、ん、ごちそうさま」
「あ、えと…あはは、なんか、照れるね。あ、暑いねえここ…!」
パタパタと真っ赤になった顔に手団扇を煽る彼女に笑いかける。見るからに慣れてなさそうなケイミーちゃんに無理矢理するのはなんか言い表せない気持ちよさを感じた…あのまま最後までしたかったけど…今はナミさん達との合流だって急がなくちゃいけない状況だ。
「急にごめんね?でも次する時はもっと先までやるから」
「…うん…!よ、よろしくお願いします」
ぐ、と握り拳を作って頑張るジェスチャーを取るケイミーちゃん。いちいち可愛い。もしかして今すぐ襲われたいのかな?ん〜??
…我慢するけどさ…。
……気合で…!!!
「お待たせー」
「お、やっと着替えたか、遅いぞイリスー!」
「男共と違って女には女の着替えってのがあるの」
ぶちゅこらかましてただけですけど。
「ケイミーちゃん、ここはどこなんだ?」
「ここは“人魚の入り江”の海底!町の「
「女子寮?…マーメイドカフェって?」
「私が今ウェイトレスしてるお店だよ、美人な人魚がいっぱい居るよ?」
あ、やばい、サンジが震えだした。…お…自力で押さえたっぽい。
魚人島では鼻血を噴いて倒れたりしたくないとの事。そりゃそうだ。
「上に行ってみよーよ!お友達紹介するね」
ケイミーちゃんのお友達かぁ、それはそれは美人揃いなんだろうなぁ!ぐへへ…楽しみ過ぎる…!
ケイミーちゃんに連れられて私達は簡易シャボンに入り外に出る。おお、すっご…海の中だ。
玄関の前には、背に人が腰掛けられそうな台が付いてるカメがいて、その台も大きくシャボンで覆われている。
「カメちん、上までよろしくね」
「ウミガメエレベーターかぁ」
シャボンに書いてある文字を読み上げ、私達はそのシャボンに入って柔らかいクッションが敷かれた台に座る。
見渡す限り海だし、その中に幾つも明かりのついた部屋が見えて、ここは魚人島なんだな…と実感した。
「ここは海中のサンゴマンションね。私の寮は家賃も安いから最下層、光の入る最上階は1番値段が高いの」
「へぇ…。……」
これが人間ならば、間違いなく最下層の光が届かない場所が1番高いんだろう。
じゃあどうしてここでは最上階が1番高いのかって言われたら分かんないけど、光が届く、届かないが理由なのかも。
「そういやハチとパッパグは?」
「はっちんは1年程前に大ケガしちゃって!もうほとんど良いって聞いてるけど、はっちんは元々「魚人街」の出身だからそこで養生を」
「魚人街?」
ハチの大ケガはサニー号を守ってくれた時のものだから、またお礼を言いにいかなくちゃ。
「う〜ん…少し恐い所でね、イリスちんが一緒なら案内してもいいよ」
「スラム街みたいな感じかな?分かった、ケイミーちゃんの護衛は任せて!」
こっちにはルフィもサンジも居るんだぞ〜!
それに行くならみんなと合流してからになるし、ケイミーちゃんの安全は守られたも同然だね!
「パッパグはね、あの人は超有名デザイナーだから魚人島の一等地、「ギョバリーヒルズ」におっきな屋敷を持ってるの。今日もハマグリ届けに行くから一緒に行こっ!」
「お前飼い主だろ、一緒に住まねェのか?」
「えへへ、私にはあの町は身分違いで…ハマグリもこの辺のが美味しいし!」
身分違い〜??
…よし、いつか無人島を開拓して私の国を創ってやる。そこでは身分も何も無い!私の嫁は私の嫁!素晴らしきハーレム女王国を築き上げて、ケイミーちゃんも超一等地に住んでもらったりなんかして!!…殆ど私の願望だけど!
「なァ、あのストローみてェなの何だ?」
あともう少しで海上につくという所で、ウソップが海中から海上へ伸びるストローの様なモノを指差してケイミーちゃんに尋ねた。
「島のシャボン職人が加工したウォーターロード。魚達も私達もあれに乗って…、ちょっと見てて!」
そう言ってケイミーちゃんはそのストローに入って海上へ昇った。丁度私達の乗るカメエレベーターも海上につき、近くの足場でカメから降りる。
ウソップの言っていたストロー…ウォーターロードはその名の通り水の道というのに相応しい形だった。
海中から伸びる水の道が空中で孤を描き、そしてまた海中に向かって下りていく。まるで水の虹みたいだ。七色じゃないけど!
「あれ、何で深海に空と雲があるんだろ」
水の道から手を振るケイミーちゃんに手を振り返した時、その向こうに空が見えて首を傾げる。
そもそも光がある理由もよく分かんないよね…。
「おーいケイミー!!」
「あ!みんな!!」
女の子の声!!
サンジと一緒に声が聞こえた背後にバッ!と振り向けば……、そこにあったのは、正しく……楽園…っ!!
「お友達、もう平気なの?溺れてた海賊さん達」
「こんにちは!あんまり恐そうじゃないのね」
「不法入国?ワイルド!海賊って好きよ、私」
「…びば魚人島〜〜っ!!ひゃっほーーい!!」
感動して号泣してるサンジを放って、私は人魚ちゃんが沢山いるその場所…「人魚の入り江」に飛び込んだのだった。
みんな美人だぁあー!!うひゃー!!美女祭りじゃーい!!