「うへへ…お肌すべすべだねぇ、鱗も肌触りさいこーだねぇ」
「うふふ、そうでしょう?お手入れ頑張ってるの」
「私の髪は?」
「私の尾はー?」
うひょひょー!みんな、頭の天辺から尾びれの先までさいこーです!!ふんす!!
「私イリスー!みんな可愛いから私の嫁に来ないー!?」
「お嫁さんは遠慮しまーす!私はルリス、名前似てるね!」
遠慮された…。い、いいもん!後で堕とすし!
「イリスとルリス…ほんとだ!これってもう運命じゃ!?」
「遠慮しまーす!」
「くそう!!」
このシュノーケル美女め!覚えてろぉ…この島を出る頃にはメロメロにしてやるからなぁ!
「私はメロよ、人間なのに私達を嫁にしたいなんて変わってるのね」
青いロングストレートの髪に花飾りをつけた美女がそう話しかけてくれた。はぁ、それってあれでしょ?シャボンディ諸島であった人間だとか魚人だとかの差別的な話でしょ?
下らないよね。種族が違うから差別なんてさ…だったら私は生まれた世界が違いますけど??ねぇ王華。
ま、私がそう思ったところで魚人島の考えは分からないし、あんまりこの話には触れないでおこう。
「おれ、ここに住む〜〜!!」
鼻を膨らまし、目をハートにしたサンジが人魚達とはしゃいでるのを横目で見る。…あの調子を見る限りだと鼻血はもう大丈夫なのかな?だったら良かった、せっかく夢の場所に来たってに鼻血噴いてお休み〜じゃ報われないよね。
「そういやなんでイリス泳げてんだ?そこ水の中じゃねェのか?」
「色々あって水は克服したの。能力は使えないけど…」
「え!?克服出来んのか!?よし、じゃあ俺も飛び込んで…」
「やめとけルフィ!イリスがおかしいだけだ!」
おいコラウソップ。
誰だってあんなバカみたいな修行すれば克服出来るよ…、でもエースは結局多少マシにはなったけど私みたいに体を動かしたりは出来ないままだったっけ。
何でなんだろ…私が食べたのって悪魔の実じゃないのかな?なんてね。
ルフィは不満そうにしながらも飛び込むのはやめ、水の中に足をつけてバシャバシャと動かす。
「なーケイミー、おれこの魚人島で必ず会いてェ奴がいるんだ!」
「ふーん、誰?人魚姫?」
「いや…ジンベエだ!」
ジンベエかぁ!あの人には2年前色々と世話になったなぁ。インペルダウンでもマリンフォードでも、あの人が居なくちゃ色々と危なかったし。
「おいルフィ、「ジンベエ」ってまさかおめー、七武海の!?」
「頂上戦争で一緒に戦ったんだよね、強かったよ」
「お前ら七武海何人と知り合いなんだよ!!もうそこまで行くと恐ェよ!」
何人とって…顔を見たってだけなら全員知ってるとしか。…あ、でももしまた七武海の入れ替えが起きているのなら分からない人も居るかもね。
「ジンベエはどこに居るの?」
「えーと…ジンベエ親分は今この島には居ないの」
その言葉にルフィがえぇ!と声を上げた。どうやら2年後に魚人島で待っていると話をしていた様だ。
「戦争の時七武海をやめたでしょ?だから「魚人海賊団」だった人達はこの島に居られなくなって…ジンベエ親分と一緒に魚人島を出て行ってしまったの」
「え〜〜っ!!じゃあジンベエには会えねェのか〜〜!?」
「詳しく話せば長くなるけど、戦争の後この島にも色んな影響がでて…」
と、その時、慌てたようにメダカの五つ子達が宙を泳いで私達のそばに寄ってきた。
王国の船がくる…とかなんとか。
「誰が乗ってるの!?メダカちゃん達っ!」
ケイミーちゃんがちゃん付けなんて珍しい…それほど焦ってるのかな?
「まだわからない!」
「珍しい王国の船っ!」
「ここには滅多に来ない船」
「…もしかして、“不法入国”のイリスちん達を捕えに来たのかも!」
…あ、あー…そうか、私達って入口から入らなかったから…。
まあ、でも海賊だし…その辺は別にいっか。
ケイミーちゃんに隠れるように促された私達は、それぞれ岩の影に隠れる。…あ、サンジが可愛い人魚さんに抱かれて隠れてる!!ぐぐぐ…私もそうすれば良かった!!
「あれ、王族のゴンドラ!」
「でもまさか王族の誰かという事はないでしょ、こんな島の隅っこへ竜宮城からわざわざやって来ないわよ…」
あれがこの国の王族の船か。
…船が空を飛んでる…飛行船かな。でもエネルのバカ野郎が作ってたマクシム?とは構造が全く違うね、浮力はシャボンだし、移動は船を引く巨大なリュウグウノツカイに任せてるみたいだから。
その船が入り江の近くまでやってきた時、船の上から陽気なラッパの音が鳴り響いた。
「ネプチューン三兄弟様のォ、御成ァ〜〜〜〜り〜〜〜〜〜!!!」
「三兄弟…?」
ボソッと呟いて陰から顔を覗かせれば、その王子達とやらが姿を現した。
真ん中に居るのは、銛を持ったいかにも戦士って感じの男。その左には何か歌ってる男、そして右には口を開けて陽気に踊っている男。
そしてその全員に共通しているのが、とにかく体が大きいという事だった。
「やあ入り江の娘達…1つ尋ねたい事があるのだ」
真ん中の戦士然とした男が口を開く。…この世界でよくある様な裏では圧政を敷いてますよ、みたいな雰囲気…というかオーラは無さそうだ。普通に良い人なんだろう。
だけど人魚達にキャーキャー黄色い声を上げられてるのは許せん…!!なーにが王子だ!私は女王だっての!!
「不法入国者の報告を受けているのですが、ここへ来てはいませんか?」
「来てたら言ってくれミファソラシド〜〜♪来てなかったら仕方なミレド〜〜〜♪」
歌うまい…、訳分からんタイミングで歌い出したのにも関わらず耳が安らぐというか…プロですかね?
「い…いいえ!ここへは誰も来ていませんが……そんなにも重要な人物なのでしょうか!?」
「王子達がわざわざ降りて来られる程の!?」
「ウム…まあ…まだ私の思う者達と確定ではないのですが…。ふむ、そうか…どうもありがとう、他を当たってみよう。国境警備隊の見間違いか…。遊戯中、邪魔をしましたね…」
「いえ、そんな事!」
王子達のキャラは気になる所だけど、私達を探していたのは間違いなかったみたい。隠れててよかった…。
後はこのまま…彼らが何処かに去ってくれるのを待てばーーーーー
ブッハァ〜〜〜ッ!!!!
「あ…っ」
「サンジ〜!!?」
し、しまった…!!美女の胸に挟まれて、押し殺してた興奮が爆発したか…!!?
天高く噴き出した噴水の様な鼻血は、人魚の形を作ってそれはもうアートの様な…って言ってる場合じゃないんだけど!!
「今の血の量やべェぞサンジ!!」
「ほんとにもう…!何やってるのサンジ!!」
今ので王子達にも見つかったし…どうする…!?いやでも、まずはサンジをどうにかして貰わなくちゃ…!
アンモナイツと呼ばれた兵隊達が私達の下まで歩いてくる。…ここで交戦するのは簡単だけど…それをしちゃうとサンジを助けてくれなくなるかもしれない…!交渉は医者のチョッパーに任せよう。
「ちょっと待ってくれ!不法入国は悪かったよ、でも捕まえるのは後にしてくれ!誰か、献血してくれねェか!?このままにしてたらもう数10分で仲間が死んじゃうよ…!!血液は「S型RHー」、ちょっと珍しいけどこの中に誰か居ないか!?それとも魚人や人魚は流れる血が違うのか!?」
「おい!頼むよ誰か、お願いします!サンジに血ィやってくれェ!!」
!…ルフィが敬語使うなんてめっちゃ珍しい…。
でもそれだけ緊急事態なんだよね…!
「私からもお願いします…!!誰かいませんか!?」
「…チョッパーちん…!人魚も魚人も人間と同じ血液だよ!輸血も出来る……だけど…!」
…なんだろう、ケイミーちゃんにしては歯切れが悪いというか…。
……いや、待てよ…?普通に考えればそれって無理なんじゃないの…?
アンモナイツの兵隊達も、そして入り江の人魚達も誰も言い出さないのは何故なのか。単にその血液型じゃないから?ならなんでみんな言葉を失ってるのか…口を開こうとした人が慌てて閉じたのは何故なのか…それは…きっと…!
「ハモハモハモォ!!!」
「あ…?」
「人間共がァ〜!!バカ言ってやがるぜェ!クソみてェな“下等種族”のてめェら人間に血をくれてやろうなんて物好きはこの魚人島にゃあ居ねェよォ!!そんなものを差し出せば
こいつ…海獣連れてたやつか。隣にいる2人の魚人もあの時居た奴だね…なんだ?わざわざ殴られに来てくれたの?
「…イリスちん、ちょっと待ってて!」
「え?」
急に現れた魚人3人をぶっ飛ばしてやろうと拳を構えた時、ケイミーちゃんが私にそう耳打ちして海に飛び込んだ。
待っててって…何をする気なんだろう。
「ダラダラと大量に血を流し、何も出来ずに死に絶えればいい…!この国には古くからの法律があるのさ!!「人間に血液を分かつ事を禁ず」!!」
「…は、それは何とも下らないね」
「下らないだと…?これはいわばお前ら人間が決めたルールだ!!長い歴史において我らの存在を化け物と恐れ…!血の混同をお前達が拒んだ!!魚人島の英雄“フィッシャー・タイガー”の死も然り!種族構わず奴隷解放に命を張った男が…後の流血戦の末、血液さえあれば確実に生きられた命をいとも簡単に落とした!心なき人間達に供血を拒まれ…死んだ!!」
知らないよ…、魚人にもバカがいる様に人間にだってバカは居るんだから、そんな一部のバカの話だけで人間を知った気になられても困る。
…とはいえ、人間ってのは自分達と違う物は徹底的に差別してきた生き物だ。前世でも白だとか黄だとか黒とかで散々言い合ってる問題がある。あれだって私に言わせれば下らない問答だよ、色とか関係なく、そこに居るのは一個人の人間だってのにさ。
「そんな部下1匹の命なんか諦めて、お前ら俺達と“魚人街”へ来い!!「新魚人海賊団」船長“ホーディ・ジョーンズ様”がお前らをお呼びだァ!!」
「そのなんちゃらに伝えとけ、“お前が来い”ってね」
その男に指を向ければ、奴は分かりやすく慌ててバズーカを構えた。さっき
「力ずくで連れてくぞォ!!
パァン!と撃たれたバズーカの中から飛び出して来たのは私達を纏めて覆える程の網で、斬り刻んでやろうと小太刀に手をかけたのをルフィに視線で止められた。
「
「おー、流石」
飛びかかってきた網ごと後ろの魚人3人を殴り飛ばし、その直後に襲ってきた奴らの仲間の海獣も視線を合わせただけで怯えさせ動きを止める。覇王色か…ルフィもかなり洗練されてるみたいだ。
…にしてもあの右端のタコ魚人…いや人魚か?あいつだけルフィのパンチ見切って受け止めてたし、その上…、…ありゃ只者じゃないね。私やルフィから見れば石ころみたいな感じだけど。
「イリスちん達〜〜〜っ!!」
「ケイミーちゃん!!」
何で上から声が?…ってケイミーちゃん!?それ乗ってるの王族のゴンドラって言ってたやつじゃない!?
「サンジちんを乗せて町へ行こう!町の港には人間の人達がいっぱい居る!急いで!!」
「待ちたまえ君っ!リュウグウ号は王子達の…」
「ごめんなさい!サンジちんを助けたら必ず返しますっ!!」
そんな事して平気なのかは分からないけど、まぁいい…!平気じゃなかったら私が守れば良いだけの話だ。それにあの王子達はこれしきの事じゃ何も怒ったりはしない気がするし。
私達はサンジを抱えてリュウグウ号とやらに飛び乗る。船内に入るのは申し訳ないので、私達はリュウグウノツカイの頭にサンジを寝かせて座り込んだ。
「お願いリュウグウちん!町まで!」
「モス!」
泣き声可愛い。
「…ごめんね、私が同じ血液型なら拒否なんて絶対しないのに…」
「お前が謝る事じゃねェだろ!元々はコイツのやましい気持ちから始まってんだ、見ろよこの顔、少しニヤけてやがる!」
「サンジー!良い加減にしろよー!何も考えるな!本当に一刻を争う状態なんだぞ!!」
一刻を争う状態になる経緯が残念すぎる…。とにかく、このまま町に出て人間を探さなくちゃいけないって事だね…!
「しかし、シャボンディで2年前にお前が受けた“差別”といい根っこは深そうだな…!下心の鼻血が笑えねェ大ごとになるなんて…」
「うん…。話は別なんだけど、町に着いても少し心配なの、献血者がすぐ見つかるかどうか……ここ1ヶ月人間の人達が全然この島にやって来なくなって…ルフィちん達は久し振りのお客さんなんだよ」
私が何で?と尋ねるとケイミーちゃんは分からないと首を振った。
…いや、何で、じゃないか…どう考えてもあのクラーケン、スルメが原因だろう。
そしてそのスルメを無理矢理働かせてるのが新魚人海賊団とやらで…うわ、犯人分かっちゃった。
「私達がここに来る道中でクラーケンを見たよ、新魚人海賊団にコキ使われてるっぽい」
「じゃあまさか…その人達がここに来る筈だった人間の邪魔を…?」
「可能性の話だけどね」
ほぼ確定だけど。
まぁ、それ自体は私にとって…引いては麦わらの一味にとってはどうでも良い事だ。だけど新魚人海賊団はこの手で捻り潰してやるから…結果としてここに辿り着く人間は以前と同じ数に戻るよね。ホーディ・ジョーンズか…アーロンよりかは強そうな名前してるし、退屈な戦いにならない事を期待しておこう。