ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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146『女好き、出会いの人魚姫』

「さァ着いたぞ、ここがおれんちだ!!」

 

「おお!おっきい!」

 

四異界や沙彩の話もほどほどに、私達はパッパグの家へと辿り着いていた。あんまり長く沙彩の事を話した所で今はどうしようもない事だ。ビッグ・マムに会いに行く理由が出来たってくらいかな。

 

パッパグの家はなかなか独創的なデザインだけど、その大きさはかなりのものだ。まるで貝のタワーとでも称せばいいだろうか。

「お帰りなさいませ、ご主人様」とか言われてるし…あの人は男だけど、私もあんな感じのメイドが欲しいと思いました、まる。

 

「アレは何だ!?」

 

「1階は「クリミナル」のお店なの!誰か騒いでるね!」

 

確かに店内からは騒がしい声が聞こえてくる。…だけど私の耳がその声を間違える訳もなし!私はダッシュで扉の前に向かって入口の扉を勢いよく開けた。

 

「ナミさーーん!!!無事で良かったぁ!」

 

「あ、イリス!!」

 

そのままナミさんの胸にダイブする。ンフフ…極楽ぽよん!

 

「キャハっ!イリスちゃんも無事で良かったわ」

 

「ミキータもね!ロビンとペローナちゃんは…居ないか」

 

ここに居るのはナミさんとミキータだけっぽいけど、2人が無事だと分かったのは良かった!ロビンとペローナちゃんはどこに居るんだろうか。

 

「何してたの?」

 

「ああ、それが…あ、ルフィ…!あ〜〜!!ケイミーじゃない!久し振りね!」

 

みんなも店の中に入ってきて、ナミさんとミキータはケイミーちゃんとの再会を喜び合っていた。

 

「む、ムッシュパッパグ!いい所に…!少々困ったお客様が…」

 

「ちょっと、ここあんたのお店なんだって?何よこの値段、ボッたくり!?まけてよ!」

 

ギューっとパッパグの頬をつねりながら言うナミさんに店員の魚人が狼狽えていた。いや…うちの正妻お金にはちょっと…。

 

「水くせぇ事言うな!おめェらには2年前の大恩がある。何でもタダだ、好きなだけ持ってけ!」

 

「え?ホント!?」

 

好きなだけって言うならほんとに好きなだけ持っていくけどね!

あ、あれ可愛い!これも可愛い!これも、あれも…。

 

「ムッシュ、お店空っぽです!」

 

「手加減ナシだな!!」

 

ふっふっふ…あのねぇパッパグ、日本にはこんな諺があるんだよ。……口は災いの元ってねェ!ハッハッハ!!

 

私だけじゃなくて、他のみんなもタダと聞いて袋一杯に服を詰め込んでたからなぁ。海賊にそんな事言うのが悪い!

 

「アレ?何でしょう、店の外が騒がしいですね」

 

ブルックがそういい、みんな外に目を向ける。外は沢山の人が忙しなく走り回っており、「あの方がー!」とか「あの方よー!」とかよく分からない事を言っていた。とにかく緊急事態って事かな。

 

「ムッシュ〜〜!!大変です!!」

 

慌てて店の関係者が外からパッパグを呼びつけ、外に連れ出して空を指さした。私達もパッパグに続き上空を見上げる。

……くじら?上に誰か乗ってるっぽいけど…。

 

「りゅ、竜宮城からあの方(・・・)が…!!」

 

「あ、あァ〜っ!?あ、あの方は…!!?」

 

パッパグも口を開けて驚き、ケイミーちゃんも何であの方がここに!?と動揺している様子だ。

町の人達も全員動揺しており、国の一大事なのかと疑われ始めている。そんなにやばい人なの?あのひげもじゃ。

 

やがてひげもじゃは私達の近くまで降りて来て、一緒に来ていたサメに話しかける。

 

「おいメガロ、この者で間違いないんじゃもんな?」

 

「あれ?あのサメ…海中で見たわよね…」

 

えーっと…あんなサメ居た?全く覚えてないんだけど…。

 

「おい!“麦わら”の人間達っ!お主らを竜宮城へ招待するんじゃもん!!」

 

「え、竜宮城!?」

 

えー!?じゃあそこには人魚姫がおりますよねぇ!?行く行くー!もうめっちゃ行きたい!!今すぐ行こう早く行こう!!

 

「い、イリスちん、このお方はこの国の王…ネプチューン王様だよ。私でも生で見たのは初めてで…」

 

「そっか、じゃあいい機会だから一緒に行こう!」

 

ケイミーちゃんを横抱きしてぴょん、とメガロと呼ばれたサメに飛び乗った。

ネプチューンは自分用のくじらに乗ってるから私はこっちのサメでいいや。みんなもメガロに乗り込み、そして空へと泳いでいく。竜宮城は空にあるのか、なかなかロマンがあるね。

 

「ほっほっほ、そのサメ…メガロは娘が大層可愛がっておるペットじゃもん!あの時はメガロが帰って来んと泣いて手に負えなんだ…!クラーケンに襲われとったとは危ない所よう助けてくれたもんじゃもん!」

 

「良かったねメガロ。所でお父さん、娘さん下さい」

 

「やらぬわ!!お父さんと呼ぶでない!!」

 

へーん、別にいいもんね、ダメなら奪うまでだし!

 

「い、良いのかな、私まで招待されちゃって…!」

 

「友人も構わんじゃもん。娘のペットを救ってくれたお礼に宴を開こうかと思っとるし、そうなると人数は多い方が楽しいじゃもん」

 

「それにケイミーちゃんを突き返す様だったら私がこのおっさんブッ飛ばしておくよ!」

 

「バババババカおめー!ネプチューン様だ!」

 

海賊に様も何もあるかっての。王様がなに?未来のお父さんでしょ。家族に物怖じしてられるか!

そう考えたら私の家族って多いな…モリアが父親に居る時点で相当やばい家族構成になりそうだ。

 

「ああ、言い忘れていたがお前達の仲間を既に1人招いておる。そやつが今さっさと酒盛りを始めてしまっとる。宴はみんなでやる方が楽しいと言うのに…身勝手な男よ!」

 

「ゾロかー」

「ゾロね」

 

酒と身勝手と男で特定余裕だよ…。

あ、竜宮城見えてきた。あのシャボン玉に包まれてるのがそうだよね。

 

「他の仲間達も直に兵達が捜し出して城へ招くので安心するんじゃもん!」

 

「私達みたいに逃げ出しちゃったら捕まえるの困難な人達ばかりだけど大丈夫かな…」

 

今の私達の状況から考えれば、普通兵士達が近寄って来るのは捕まえに来たんだって思うよね…。ペローナちゃんは変な所でおっちょこちょいだけど、ロビンは絶対捕まらないと思う。

 

「ねー、ところでおじいちゃん」

 

「海神ネプチューン様だくらァ!」

 

「そうだよナミさん、おじいちゃんじゃなくてお父さんだよ」

 

「あ、そうね」

 

「お前らマジで何なんだよ!もう恐ェよ!!」

 

騒がしいヒトデだなぁ。人魚姫を嫁にするんだから海神だろうがネプチューンだろうがお父さんでしょうに。

 

「何じゃもん。あとお父さんではない!」

 

「ここは深海1万mなのに、この魚人島のある場所だけどうして明るいの?」

 

確かにそれは私も気になってた事だ。最後土石流から逃れる為に海溝に飛び込む前は確かに真っ暗だった筈なのに…。その更に下へと潜った途端明るくなったんだからもう意味が分からない。

 

「ほっほっほっ、魚人島のある場所が明るいのではない…世界で唯一光の差すこの海底に…遠い昔魚人達が住み始めた。それが魚人島!ここには地上の光をそのまま海底に伝える“陽樹イブ”という巨大な樹の根が届いておる…!」

 

「光を…!?つまり、1万mを超える光る根っこを持つ樹があるって事…?」

 

「そうとも、学者達は何かと理屈づけておるが、地上で受けた光をその根に灯す神秘の樹じゃもん。その樹の根の呼吸は更に空気をも海底へと供給する…!」

 

へぇ…サニーに使われてるっていう宝樹アダムと何か関係ありそうだね。

 

「地上に陽が差せば海底も明るく、地上の夜には光を失う。何の慈愛か…我々もまた、当然という顔をして太陽の恵みに生かされておるんじゃもん!」

 

「ふーん…おっさん、ハラへった」

 

「ほっほっほ…もう着いたぞ、これが入口じゃもん」

 

案の定ルフィはあんまり興味無さそうだ。正に花より団子だなぁうちの船長は。

 

それにしてもこれか竜宮城の入口か…。竜宮城自体が魚人島と同じくシャボンで覆われてるから、魚人島が体、竜宮城が頭の雪だるまみたいだ。

魚人島を覆うシャボンから竜宮城を覆うシャボンへ移動する為の入口が今頭上にある輪っかだろう。この中に入って上に行くという訳だね。

 

ネプチューンがその輪っかの近くにあるインターフォンをピンポーンと鳴らせば、音声機から『はい』と声が聞こえた。

 

「わしじゃもん」

 

『こ…国王様っ!只今通路を降ろします!』

 

降ろす?…うわ、すご…輪っかの所まで水が流れて来たんだけど。

そうか、魚人や人魚はこれさえあれば上に行けるのか…便利だね。

 

「シャボンをしっかり張るんじゃもん」

 

「はーい」

 

私達がメガロの体に浮き輪の様に巻かれているシャボンの中に入れば、ネプチューンとメガロはその輪っかに入り上へと泳ぐ。

 

「凄いね、ウォーターセブンで見た水のエレベーターみたい」

 

「あれと違って上へは自力で登ってるんだけどね」

 

「流石魚人って感じだな」

 

そして、さほど時間をかける事なく登り切った私達は目の前に大きく聳えるその城を見てまた感嘆のため息をついた。

パッパグの屋敷がノミの様だ…詳しくは分かんないけど、細部の意匠1つ1つが拘り抜かれているっていうのは素人目でも分かった。

 

「王が戻られたぞ、門を開けよ!」

「ネプチューン王がお戻りに〜!!」

「どこへ行かれたのかと…!!」

 

ネプチューンが到着した事で城正面入口のおっきな門が開かれていく。…おお、中も凄い豪華だ!兵士の数もとんでもないし…まさに王の城って感じ!

 

「我が城じゃもん!ゆるりとしてゆけ!」

 

「何がゆるりとしてゆけですか!まったくあなたと言う人は!!ご自分の立場を弁えもせずまた勝手に城外へ!!護衛兵も引き連れず下界へ降りるなど言語道断!!何かが起きてからでは遅いのです、今この国がどういう情勢にあるのかあなたはーーー」

 

我が城でめっちゃ家臣に怒られてますけど。

…ん?ルフィ、どこ行くんだろう。

 

「…私も行こ」

 

あの説教長くなりそうだし、それより私は人魚姫を探さないといけないからね!

軽くナミさんの肩を叩いて、ちょっと散歩してくる、と言い残してルフィを追った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ルフィー!」

 

「お、イリス!イリスもんまそうな匂い辿って来たのか?」

 

「え?いやそんな事は無いけど」

 

飯の匂いがしたからふらっとどこかに歩き出したのか…。ん?なら何でこんな所で立ってるの?

 

「この扉が閉まったら匂いが消えたんだよ、多分この部屋が宴会の会場なんじゃねェか?ゾロも先に来てるんだろ」

 

「ああ…なるほど。そうなると人魚姫もここに居るのかな」

 

宴会ってくらいだから参加してる可能性も充分あるだろう。それにしてもこの扉…とんでもなく分厚い。その周りの壁も相当頑丈そうで、宴会の会場だとすればちょっとオーバースペックなんじゃないかとは思う。

 

「それに…」

 

扉や壁に無数に突き刺さる武器の数…剣や斧、槍に(まさかり)、鉄球など種類も豊富にある。なかなか斬新なオシャレ…という訳でも無いとは思うけど…。

まぁ、いいや、とにかく入ってみよう。

 

「おじゃまー」

 

ギイイっと扉を開き、ルフィと一緒に中に入る。うわ…真っ暗…宴会場じゃないみたい。

仕方ない、ここは暗闇耐性を倍加して……。……ん!!?

 

「お、い〜〜い匂いの食い物があるぞ!じゃここ食糧庫かな?まあいいや、少し貰おう!」

 

「待って」

 

「ぐェっ…!?」

 

少しだけ開けた扉から差す光で見えた皿に乗った食べ物へとルフィが走り出そうとするのを、首根っこを掴んで阻止した。

だってそうだろう、そのまま真っ直ぐ走っていれば… この人(・・・)を踏みつけてしまう。

 

「何すんだイリス!」

 

「ちょっと、あんまり大きな声出すの起きちゃうじゃん!せっかく可愛い顔して寝てる天使がここに居るっていうのに……」

 

「…う、う〜〜ん……だ、誰か…いらっしゃるんですか…?」

 

「あ」

 

ルフィと私の声でその人は目を覚まし、部屋の灯りを点けた。…おお、明るい所で見るとこれはまた…なんて美少女!!体は私の何10倍も大きいけど!!

淡いピンクの絹の様な長髪や、透き通る様な海の青の瞳…まっちがいない…こんな美少女、人魚姫しかあり得ないでしょ!!

 

「あ、え…お、お父様でもお兄様でもない…!?ど、どちら様でいらっしゃるんですか!?あなた様方は…!!」

 

「見て、ルフィ、私の嫁」

 

「ああ…うん、まー言うとは思ってた、おれ」

 

こんな可愛いんだからそりゃあ嫁にするでしょ!あのおっぱいに顔を埋めたい!いや…体を埋めたい!!

 

あなた方も(・・・・・)わたくしの命を取りに来たのですね!!ですけど恐くなんかありませんよっ!わたくしはネプチューンの娘なんですからねっ!恐くなんか……!!…う、うえ〜〜〜〜ん!!誰か〜〜〜っ!お父様ぁ!お兄様ぁ〜〜!!!」

 

泣いてる顔もなんて可愛いんだ…とか言ってる場合じゃないか。…ん?今あなた方もって言った…?

………誰かこの子の命を狙ってるっての…?

 

「うわああああん!!お父様ぁ!フカボシお兄様ぁ〜〜!!」

 

「おいおいっ!おれは何もしねェよ!何かするのはイリスだから泣くなよ!」

 

「ちょ、今それは私のイメージダウンに繋がるんだけど!!?」

 

「リュウボシお兄様ぁ〜〜!!マンボシお兄様ぁ〜〜!!人間のお方がわたくしの命を取りにお部屋の中にいらっしゃっておられます〜〜!!」

 

…うーん、参ったね…。体格に見合ったかなりの声量だし、ここに兵達が雪崩れ込んでくるのは時間の問題か…そうなると姫様の証言で私達は一躍人魚姫暗殺の犯人だ。

 

それに、この子からすればそりゃ怖いだろう。寝てる間に部屋に知らない人間が2人も居たんだし、それに元々誰かに命を狙われている様な発言もしてた。…私達をそいつの仲間だと思うのも仕方ないか。

 

「っ…!?」

 

「え…!?」

 

その時、私達が開けていた扉の隙間から…斧が飛んできた。かなりの勢いで…誰に?私?ルフィ?…違う…!!これこそがこの子の…人魚姫の命を狙ってるものの正体…!!

 

「こな…クソがぁあああ!!!」

 

人魚姫の胸へと吸い込まれる様に飛来する斧の腹を蹴り飛ばし、壁に激突させた。私からすれば威力の無い低級な攻撃だけど…あんなの戦闘経験すら無さそうなこの子の胸に刺さったら……っ!!

 

「…怪我は無い?」

 

「…え、あ……」

 

急な事で驚いているのか、私の顔と壁に刺さった斧を何度も交互に見る姫様。…何してても可愛いなこの子…、そんな子を……どこの馬の骨とも知らないクソ野郎が、殺そうとしたんだよね…?

扉を開けていた私も悪い…怖がらせて本当に申し訳ないとは思う…!だけど、この斧を投げた奴はぜっったいに許さない…!!投げた事にどんな事情があろうとも、必ず地の果てまでも追いかけ回して……ボッコボコにブッ潰してやる。

 

 

 

 

 


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