ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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148『女好き、初めての外とタイプじゃない男』

竜宮城から出て魚人島のシャボンへと入った私達は、しらほしちゃんの案内で“海の森”とやらに向かっていた。

案内されたら誘拐じゃないような気もするけど…細かいことはこの際置いておこう。とにかくこれは誘拐なんです。

 

「もう竜宮城は抜けたからメガロから出てもいんじゃない?」

 

「い…いえ、わたくしまだこの中の方が…」

 

「そっか」

 

メガロ…苦しそうだけどもう少し頑張って!しらほしちゃんの為だから!

 

「どうだ?10年振りの外!」

 

「ドキドキします…わたくし、とても悪い事を…」

 

「悪ィわけねェだろ、外出るだけでよー」

 

「それにしらほしちゃんは私に攫われてるんだから仕方ないよね」

 

はぁ…とはいえ座る場所ミスったかも。しらほしちゃんはメガロの口の中だし、私はメガロの頭上に座ってるからこれじゃ可愛い顔が見えない…。

 

「この様な事を…冒険というのでしょうか?」

 

「そうだね、ドキドキするのならそれは冒険だよ。…それで、海の森って何なの?」

 

「お墓です。建ってからまだ1度も訪れていないお墓があるのです…!10年間ずっと…1番行きたかった場所です」

 

お墓か…じゃああんまり触れない方が良さそうだね。10年ってのがしらほしちゃんが硬殻塔に軟禁されだしたのと同じ時期になるから…何かしら関係があるのかもしれないし。

不用意に突いて傷付ける様なマネだけはしたくない。

 

「…?なんか飛んでるなァ、遠くて良く見えねェけど…イリス見えるか?」

 

「んー?」

 

ルフィが指差す方向を視力倍加して確認すれば、かなり遠くにシャボンをつけた海獣が数体空を飛んでいた。

背には沢山の魚人が乗っており、何かお祭りでもあるのかと納得して視線を外す。

 

「魚人達だね、なんか一杯いた」

 

「ふーん」

 

自分で聞いててなにその返事は!興味ないなら聞くなー!

 

「はー。…あ、そうだ」

 

よっ、とメガロの頭から飛び降りて、腕を伸ばしメガロの歯を掴んで口の中に降りた。よしよし、これでしらほしちゃんと顔を合わせながらお話しが出来るね。

 

「しらほしちゃんの髪ってほんとに綺麗だよね。どんな手入れしてるの?」

 

「小さい頃からのお気に入りのブラシがありまして、髪を梳くのはずっとそれでやっているんです。それ以外には特に気にかけている事はありませんが…私はイリス様のお髪の方が好きですよ」

 

「えへへ、ありがと、髪の手入れには気を使ってるんだー。私って結構体動かす方だからせめてお手入れくらいはキチンとしてあげないとね」

 

髪の話で言えば王華も凄いけどね。あの純白の髪はなかなかだと思う。

 

「そういえばもう何も飛んでこないけど…武器が飛んでくる頻度ってどれくらいだったの?」

 

「えっと…数時間に1度の時もあれば数分おきに何回も来られたり…決まってはいません」

 

「気分って事か。…ますます腹立ってきた、美少女の命は世界より重いってのに」

 

そんなにしらほしちゃんが好きなら正々堂々とアピールしたらいいのに。

さくらを使ってしらほしちゃんを襲わせて、間一髪の所で助けるとかでもいいじゃん、それだって作戦なんだしさ。いやそれも腹は立つけど…ただ思考放棄して殺そうってなってるのだけはほんとにムカつく。

 

「私ならしらほしちゃんを泣かせたりしないよ?どうかな、私の嫁になるってのは」

 

「ふふ、イリス様にそう言って頂くのは不思議と悪い気がしないですね。励まして下さりありがとうございます」

 

「本気なんだけど…」

 

私の夢の話もしたんだから、ただの励ましじゃない事くらい分かりそうな物だけど…やっぱりかなり純粋な子なんだね。

例えるなら真っ白なハンカチってとこかな。よし、魚人島を出る頃にはそのハンカチに大きく黒ペンキで『イリス』って書く事にしよう。そうしよう。

 

そんな感じで楽しく話しながら海の森を目指すこと数分、マーメイドカフェの上も通り過ぎて、今はサンゴが丘の海岸付近上空までやってきていた。

でもなんか下が騒がしい…どうしたんだろ?…あ!

 

「おーーい!!サンジ!チョッパ〜〜!!鼻血はもう大丈夫なの〜!?」

 

「あ、イリス!ルフィ!!」

 

喧騒の中心に居るのはサンジとチョッパーだった。近くに身体中包帯だらけで倒れてるハチも居るし、魚人達に囲まれてるけど。

囲まれてるのはアレだね、私達が人魚を攫った犯人にされてるからだよね。でもごめん、私今人魚姫攫ってるからその疑いは真実になっちゃったんだよねぇ。

 

「お友達ですか?イリス様」

 

「海賊の仲間!黒いのがサンジで、角生えてるちっこいトナカイがチョッパー」

 

「トナカイ…?」

 

「ああ…えーっと、しらほしちゃんの言ってた体中が毛で一杯の動物だよ。でもチョッパーは凄いから言葉を話せるの」

 

ヒトヒトの実とかの説明はややこしいから省いておいた。チョッパーが凄いのは変わらないし、まぁこの説明でいいでしょ。

 

「見ろ!こいつらの船長が来たぞ!!」

「人魚誘拐グループのボスだ!!」

 

人魚誘拐の主犯は私だけどね。

 

「ちょっと降りるね、ハチが気になる」

 

「は、はい…お早くお戻りになられて下さい…イリス様がおそばに居られないと、ふ、不安で…」

 

「…え、誘ってるの?純粋なのは良いけど可愛すぎるのも罪だよね」

 

え?と目を点にするしらほしちゃんに手を振って、一旦地上に飛び降りた。ルフィもハチに気付いていたのか私と同じタイミングで飛び降りて来る。

 

「ハチー!やっぱりお前か!どうしたんだそのケガ、誰にやられた!?」

 

「それが教えてくれねェんだよ!おれ達に島を出ろの一点張りで…」

 

教えてくれない?…何でだろ、何か深い事情でもあるのだろうか。

傷に関してはチョッパーが見てくれてるから心配いらないだろうけど…さて、この周りの魚人達はどうしたものかな。私達に向けて来る敵意が尋常じゃないし…。

 

「や、やっぱり間違いねェ、船長の麦わらと…女王だ…!」

「女王って言うとあのマダム・シャーリーのお気に入りだろ!?」

「だが女好きだとも言われてる…!人魚を誘拐する動機は充分あるだろ!?最終的にはしらほし姫を誘拐する気なんじゃ…」

「そんなバカな…!それは不可能というもの!姫はビッグキスの人魚、更に海神ネプチューンの愛娘、そんな事夢に描いても誰が実行するってんだ!」

 

「あっはっはっは!!だってよイリス!」

 

「何がおかしいのさ、ルフィ…」

 

私が言わなきゃルフィだって絶対同じ提案してたクセに…!…あ、やば、メガロの限界が近そう…。

 

「ウ…ウプ…!オ、オエェ…」

 

「きゃ」

 

「あ」

 

「「「え」」」

 

…あーあ、メガロ、しらほしちゃん吐いちゃったから見つかったじゃん。

いやー、それにしてもなんて可愛いんだろうしらほしちゃん。民に見つかっちゃって困った顔してるのがなんともまぁ可愛い。好き。

 

「「「し、しらほし姫様ァ〜〜!!!?」」」

 

サンジが振り返って石化してる…。ハンコックを見た時と同じ反応だね…、という事はハンコックとしらほしちゃんって系統は違うけど美しさは同等って事か、サンジレーダー分かりやすくていいね。

 

「人魚姫誘拐事件だァ〜!!!」

「今正に誘拐されている〜〜!!?」

 

「あ……、う、うえ〜ん…!すみませんイリス様ぁ…見つかってしまいましたぁ…!」

 

「へーきへーき。見つかったモンは仕方ないじゃん、切り替えてこ。だから泣き止んで、ね?」

 

しらほしちゃんを見上げて身振り手振りで何とか泣き止んで貰おうと言葉を紡ぐ。泣き顔も可愛いけど…やっぱり泣いて欲しくは無いから。

 

「っ…うえ!?」

 

「よし…!捕えたぞ!!女王!!!」

 

い、いきなりロープで縛られたんだけど!?しらほしちゃんに集中してたから周りなんも警戒してなかった…こんなロープいつでも千切れるけど、どうしようかな…。

 

「ぶへっ。ちょっと…あんまり手荒に扱わないでよ、私はか弱い女の子なんだよ?」

 

いつの間にかルフィ達も縛られており、私達を一ヶ所に固める様に押し飛ばされた。とはいえ…別にこの人達に恨みなんてないし、反撃はしなくていいだろう。しらほしちゃんを思っての行動なんだから私としては良くやったと褒めてあげたいくらいだ。

 

「あ…イリス様っ!あ、あの、違うのです、皆様…!イリス様とルフィ様はわたくしを…」

 

「もう大丈夫ですよ姫様!こいつら全員打ち首に…」

 

「…ん?おい、お前ら!何か飛んでくるぞ!」

 

ルフィが上空の一点を見つめてそう言う。何だろう…んー…?でっかいサンゴに…誰か乗ってる…?

あれ、あいつさっきここに来る途中で見た、海獣に乗ってた魚人の1人だね…足が4本ある…何の魚人だろ?

 

「オイ、本当に何か飛んできてるぞ!しかもアレ……!!」

 

「まさか…!?バンダー・デッケン!!?」

 

「ーーーーあ…?」

 

バンダー…デッケン?あいつがそうなの…?

手配書はあったけど、良く顔が見えない手配書だったから気付かなかった…。

 

…よし、ブッ飛ばそう。

 

「見ィつけたぞォ!!のハズだ!!バホホホ!!しらほしィ〜〜!!!」

 

「ずっと姿を暗ましてたあいつがとうとう島に現れた〜〜!!」

「姫様逃げて下さい!ここは俺達が!」

 

ブチ、と縄を引き千切る。あー…縄を無駄にしない為にも大きさを倍加すれば良かったかな。ま、いいか、私海賊だから弁償する必要ないもんねー!

 

「答えろしらほし!YESならば“死”を免れられる!!バホホホ!このおれとォ〜〜!!結・婚しろォ〜〜〜!しらほしィ〜〜〜!!!」

 

しらほしちゃんはちらりと私を見て、胸元で握り拳を作って言った。

 

「…タイプじゃないんですっ……!!!」

 

すっごいストレートな断り方だ。…でも当然でしょ、10年も命を狙われてどう好きになれってんだ。

それよりもう私も我慢の限界だからさ…拳が疼いて仕方ないんだよね!

 

「貴様ァ…おれの10年の想いを踏みにじり、誰と結ばれる気だァ!!!」

 

「私以外に、誰が居るんだ!!」

 

「何ィ!!?」

 

「歯ァ食いしばってね…折れない様にさぁ!!」

 

一瞬で目の前に現れた私に目を見開いたデッケンをブン殴る為、まずは奴の乗ってるでかサンゴを蹴り飛ばして粉々にする。

マトマトとやらでしらほしちゃんを狙ってるのだとすればそのサンゴだって危ない武器だ、壊しておかないと万が一が怖いからね。

さて…。

 

「ま、待て…!拳を下ろせ!」

 

足場を奪われて宙に取り残されたデッケンの前で大きく腕を振りかぶる。殺さない程度に加減して…。

 

「この馬の骨がァ!!!!」

 

「ブフゴォ…!!?」

 

私の放った一撃は、デッケンの顔面を抉って地面へと勢いよく叩きつけた。地面には大きくクレーターが出来ており、もう当分立ち上がってはこれまい。

 

「うーん…全然全力出せないから気持ちよくない…思い切り殴ってやりたい相手なのになぁ」

 

強くなったのはいいけどこれがあるからねー…フラストレーションが中々解放されないもん…。

 

どん!と下に叩き落としたデッケンの上に着地を決めて更に地面へめり込ませた。コイツもバカじゃなけりゃもうしらほしちゃんを狙う事はないでしょ、仮にもう1度狙って来る事があるのなら、その時はもう容赦しない。

 

「メガロ、しっかり!ほら、みんなも急いで!」

 

小太刀でみんなのロープを斬り、未だに苦しそうにしているメガロを叩いて上に飛び乗った。

 

「しらほしちゃんも早く、まだここは海の森じゃないでしょ?大丈夫、冒険にトラブルは付き物だから」

 

しらほしちゃんの指を掴んで引っ張り、メガロに抱きつかせた。ルフィ達も同じく上に乗り、再び空へ舞い上がる。

 

「姫様!何故そいつの腕を取るのですか!」

 

「ごめんなさい皆様…っ!お夕食までには戻りますからっ!」

 

「じゃーねー!しらほしちゃんはまたまた私が貰ってくよー!それとよーく覚えといて!しらほしちゃんを嫁に貰うのはそこで伸びてるデッケンでも、まだ見ぬ未来のお婿さんでもなく…私だ!!はーっはっは!!」

 

「「やっぱりあいつ危険だァ!?」」

 

危険ん〜〜??私のそばが1番安全だっつーの!つまり私の嫁イコール超安心超安全!やっぱり嫁になった方がいいよしらほしちゃん。ふへへ。

 

 

 

 


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