理由は次の150話が殆ど魚人島の回想だからですね。私もおさらいしたかったし、書いた方が物語に入り込めるかと思って一応執筆したらめっちゃ長い説明になったんで、これを1話扱いするのはどうなのか、と思って同時投稿にしました。読まなくても問題ないと思いますけど、読んだ方が物語の補完が出来ます!
「わー…綺麗な場所だね…」
あれから数10分、私達は“海の森”へとやってきていた。
海の森というだけあって海の中に存在しているから、私達はメガロが浮き輪みたいにつけているシャボンの中へ移動している。
鮮やかなピンク色のサンゴや、海底から生える木…色んな種類の魚など、まるで御伽噺の世界みたいだ。
沈没船もそこかしこに転がっているけれど、その船が魚達の住処になっていたりと、この場所の幻想的な風景を更に深い物としている。…うーん…いい場所だ。
「え〜〜ん…!ありがとうございますイリス様…ルフィ様…、わたくし…ずっとここに来たかったのです〜…」
「うん、すぐにいつでも来れる様にしてあげるからね」
ここへ来る途中にブッ飛ばしたバンダー・デッケン…あいつ、私が思ってたよりタフだったみたいであの後何回も斧や剣を飛ばして来たのだ。
当分起き上がれないと思ってたんだけど…流石に舐めすぎだったかもしれない。
「あ!サニー号!」
ルフィが木が生い茂っている場所の手前に置かれたサニー号を見て指差した。よく見ればサニー号がある場所は巨大なドーム状のシャボンの端の方で、あそこら辺一帯は空気がありそうな感じだ。
「むむ!?おーーい!ペローナちゃーーん!!ついでにフランキー」
「アウ!相変わらず嫁以外には適当だなおめー!」
「私にも適当でいいんだけどな」
はは、何言ってますやら、ペローナちゃん相手に適当な言葉など使えないって!
ドーム状のシャボンの中に入り、メガロから飛び降りてペローナちゃんに飛びつく。
「きゃっ…!おま…いきなり飛び付いて来るな、危ないだろ!」
「きゃ、だって〜!可愛い〜!」
「よーし殺す、今回こそは本当に殺してやる!」
といいつつもペローナちゃんの胸にすりすりしてる私の頭をぺしん、と叩くだけの優しい“殺す”だったけどね。その攻撃で死ぬ生物ってそんないないと思う。
「みんなに紹介するよ、こちらしらほしちゃん、私の嫁」
「あ…しらほしと申します、お嫁にはまだ貰われていませんが…」
「聞いた?“まだ”ね、ま・だ」
「それはまァいいが、ロビンの奴もここに来てるぞ。あのでけェサンゴの森に入ってった」
ああ、あの森ってサンゴなんだ。バカでかいサンゴ礁なのかな?…ってロビンが?何で待っててくれないの〜!!
「おー、ルフィ君、イリス君!見違えたぞ、懐かしいな!」
「あれ?ジンベエ?」
なんかフランキーと一緒にジンベエも居た。でも確か七武海をやめたからここには居られなくなって…とかなんとかケイミーちゃん言ってなかったっけ?
「ジンベエ!お前はいねェって聞いたから会えねェと思ってた!!」
「何じゃ、伝言を聞いてここへ来たんじゃないのか」
伝言…?全く聞いてなかったけど。
あれ、そうなるとやっぱりしらほしちゃんって素晴らしいよね?自分が行きたかった場所が私達にも意味がある場所だったなんて…!
「ジンベエ親分様!」
「やあー、しらほし姫もご一緒とは…ご無沙汰しており………、しらほし姫ェ〜〜っ!!!?なぜここに!!?」
「ふふん、攫ってきた!」
「何しとるんじゃ!!そんな事をすればこの魚人島全てを敵に回す事になりかねんぞ!!」
「だからなにさ、私は私のやりたい様にやる。だから嫁のやりたい事をやった、それだけだよ。敵になるってんなら相手してやる!10年も閉じ込められて、行きたい場所にも行けないなんて放っておけるわけないでしょ!!」
ぷんすかと怒りながら言えばジンベエはうぐ…とたじろいだ。彼だってしらほしちゃんの境遇に何も思ってない訳じゃない筈だ。閉じ込めておくのは簡単だけど…それでしらほしちゃんの自由が無くなるのは私は我慢ならないんだ!
「…噂通り、女が絡むと途端に引かなくなるんじゃな、イリス君」
「違う、嫁の間違いだよ。それに心配しないで、デッケンの攻撃なんて…ん?来たね」
遠くから斧が飛んできているのが見え、しらほしちゃんの前まで跳んで反射空間を生み出す。
「何回来ても同じだ!“倍返し”!」
空間に吸い込まれた斧が、威力を2倍に増加させて空間から飛び出しどこかへ飛んで行った。
…ま、どこかへじゃなくてその攻撃をした人に、だからデッケンの所へ飛んで行ったんだけどね。マトマトの実の効果も跳ね返したからあの斧はデッケンの元までまっすぐ飛んで行った筈だ。
さっきから同じ手順で跳ね返してるんだけど攻撃の手は緩まないから…多分返した斧に斧をぶつけて相殺してるんだろう。あー…でも私が返した斧の方が威力高いから相殺は無理か、何とか頑張ってるんだろうなーと予想。
「てな訳で、姫様の安全は私が必ず守り通すから心配しないで大丈夫!」
「…ふーむ……納得しかねるが…一先ずは承知しよう。しかしイリス君、今のカウンター技は“狂神”の使う技と似ておるようじゃが…」
「うん、だけどごめん、私もよく分かってないの、上手く説明は出来ないや」
本当は予想出来てるけど…下手に確実性の無い情報を与える必要もないでしょ。ここは誤魔化しておこう。
「ああ、マーメイドプリンセス…あなたの前ではまるで僕は無能なる画家…!僕の絵の具ではあなたの輝きを描けない♡ああ僕のキャンパスにあなたの美は収まらない♡」
「あ、戻った」
いつものサンジだ…良かった、これで鼻血を吹き出す事もないか…。
その時、サニー号から1人の人魚が姿を現す。とはいえ男だから騒ぐ様な事でもないけれど。
「誰?」と知ってそうなフランキーに尋ねれば、どうやら彼はフランキーの師匠、トムさんって人の弟らしい。名をデンといい、破れた船のコーティングをしてくれているんだとか。それは本当に助かるね。
「あの、イリス様…、わたくし、少しあちらに行って参ります。…えっと…その、もし宜しければ、ご一緒して貰えませんか?」
「?うん」
しらほしちゃんが見る方はシャボンの外側…そこに小さな建物があった。シャボンから出るのなら、とジンベエが渡してくれた小さなサンゴのカケラを首を傾げて見つめる。
「何これ?」
「それはシャボンを生み出すサンゴ…バブリーサンゴじゃ、外に出るのなら持っていけ」
「へー、そんな便利な物があるんだね、ありがと」
シャボンを千切るだけじゃないんだ、簡易シャボンって。
早速使い方を教えてもらい、筒状になってるサンゴをキュッと軽く握れば穴からシャボンが出てきたのでそれに入る。おー、すごい。
そのまましらほしちゃんに連れられて小さな建造物の前までやってきた。…ああ、そっか…ここお墓か。
そういえばしらほしちゃんも海の森はお墓だって言ってたよね。
「…ごめん、言いたくないなら言わなくて良いんだけど…このお墓って…」
「…はい、わたくしのお母様…オトヒメお母様が眠っているお墓です。10年前…お母様が亡くなったあの日から…わたくしはあの方に命を狙われ始めました。それもあってお母様の葬儀も出られず…先程の部屋で、イリス様が私を攫って下さったあの瞬間まで…わたくしは、ずっとここに来たいと願っていました」
ですから、としらほしちゃんは頰に涙を流し、それでも微笑みながら私の体を手の平で掬って持ち上げた。
「…本当に、ありがとうございます…!…わたくし、ずっと…ずっとここに来たくて…っ…、う、うえ〜〜ん…!」
「…だったら、今は私にお礼なんて言ってる場合じゃないでしょ」
耐え切れずに表情を崩して泣き出したしらほしちゃんの肩に跳び乗り、その豊満なぽよんを支える水着の様な服の肩紐を掴んで座った。
「10年間…溜めに溜めたしらほしちゃんの想い…全部ここでお母さんに伝えてあげなきゃ」
「……はい…っ!」
そして、今度は穏やかな表情で指を組み、祈る様なポーズで静かにお母さんのお墓と向き合うしらほしちゃんを見て、私は強く自分の心に誓う。
10年間…言葉で表すのは簡単だ。だけど実際その年月の間、ずっと…ずっと我慢してきた女の子がここに居る。
母と死に別れ、葬儀も出られず…伝えたかった言葉1つ…何も話せないもどかしい日々を送って来た子が、ここに居る。
…だから私は、デッケンを死んでも許さない。
私が何の為に2年間修行を重ねたと思っているんだ、私が私であるためだ。
じゃあ、私が私であるとはなんだ。…そんなの決まってる…嫁を、幸せにしてこその私だ!だから私は何が何でもしらほしちゃんを救ってみせるし、しらほしちゃんが願うなら根深い差別の問題だって解消してみせる!…どんな敵も、障害も乗り越える為の2年だったんだ、何だってやってみせる…!
……それにしても祈るしらほしちゃんの横顔、可愛いな。
***
「あれ!?ナミさん!ミキータ!それにケイミーちゃんも!」
しらほしちゃんの肩の上で私も祈りを捧げて、みんなの元に帰ってきた時、そこにはナミさん達も居た。竜宮城で拘束どうこうはやっぱり無理だったみたいだね、そりゃそうか、ナミさん達を捕まえるのはそう簡単な話じゃないし。
「ゾロとかは?」
「あー…それがーーーーー」
詳しい話を聞くと、どうやら今竜宮城はかなり危ない状況らしく、新魚人海賊団の船長を名乗るホーディという男を筆頭に次々と魚人達が押し寄せて来たという。あのネプチューン王も捕らえられてしまったらしく、ゾロ達の安否は分からないとの事。
とにかく今の状況を私達に伝える為にここまでやってきたそうだ。
「入れ違いにとんでもない事態が起きてるね…あの時飛んできていた人間は魚人島へ侵入する為の駒だったんだ…」
「お父様が捕まったなんて、そんな事信じられません…!」
う…また泣いちゃった…。泣き顔も可愛いけど泣かせたくないんだよねぇ私は…。
「…すまん…!早くもお前さん達を巻き込んでしまったか……!!」
「…ん?何の事?」
何でジンベエが私達に謝ってるの?イマイチ流れが分かんないんだけど。
「事を急ぐが、2年前…ルフィ君とイリス君の2人に出会った時は今以上にこの話が出来る状況ではなかった。
「ねぇ、さっきから何言ってるのか良く分かんないっていうか…」
「同時に謝罪もさせて欲しい…!11年前…アーロンの奴を
「…!」
私達は目を見開いた。いきなりの衝撃的過ぎる展開に…私の脳が情報を処理できていない。
ジンベエが…アーロンを解き放つ…?でも私から言わせて貰えば、ジンベエとアーロンは考え方からして違う。…仮にジンベエの告白が真実だとしても、何か事情があったとしか考えられない。
まぁ、本人に直接聞くのが早いか。
「どういう事?詳しく話してくれるんだよね。ちなみに、私はあなたの人柄を信じてはいるけれど言葉は選んで話した方がいいよ。ここに居る私の正妻…ナミさんの故郷こそ、そのアーロンに支配された島。ナミさん自身耐え難い苦汁を嘗めてきた1人なの」
「!!」
「…ニュ…ホントだ、ジンベエさん。おれ達はその
「…随分ヒドい目にあわされた様じゃな」
サンジが何を人ごとの様に!とジンベエに突っかかる。ヒドい目で済む内容ではないけれど…今は聞き流してあげよう。大事なのはその先の話なんだから。
「ええ、何があっても今更アーロンを不憫だなんて思うつもりはない。…だけど私は2年前シャボンディ諸島に着くまで、あんなに強い魚人達が人間から迫害を受けてたなんて知らなかった。ケイミーが人攫いに捕まって…それを追ってた時……私は目を疑った。目の前に広がる「シャボンディパーク」が…アーロンの建てた「アーロンパーク」にそっくりだったから…!!」
シャボンディパーク…?そんなのあったっけ。あの時は必死で周りなんて見てなかったから…。
「…ニュ〜……憧れてたんだ…。許して欲しくて言うんじゃねェぞ…ナミ…!アーロンさんは人間が大嫌いで、人間を恨みおれ達はやり過ぎた…でも、ガキの頃から人間達の住む世界に憧れを持ってたのは事実だ。200年前まで魚人と人魚は“魚類”に分類されてたそうだ…200年前にリュウグウ王国は世界政府の加盟国となり、人間達との友好を結んで…王は
レヴェリーって何…。G20とかそんな感じのアレ?
「でも、人間達は魚人族を嫌い続けた。おれの生きてる中で1番酷かった時代は大海賊時代の始まり……!人間の海賊達がこの島で暴れ回る恐怖は今でもはっきり覚えてる……!!」
「そこを救ってくれたのが…今は引退されておるが、白ひげのオヤジさんじゃ…!オヤジさんが魚人島をナワバリだと言った一言で島に平和が戻った。ーーーしかし、人間達の魚人嫌いが止むわけじゃない…!お前さんらもシャボンディ諸島で見たハズじゃ…現実をな」
「…うん」
私達が見たのは魚人も人間も関係ないオークションだったけど、ハチやケイミーちゃんが人間を装ってた事で大体想像はつく。
「おかしな話…1度権力を手に入れた者程変化を恐れるもの。魚人と人間の交友を決めた政府の中枢に近付く程に、差別体質は深く根付いて変わる事はなかった…!そんな折、魚人島ではこの腐った歴史を変えようと2人の人物が立ち上がったんじゃ…。1人は「オトヒメ王妃」…人間と“共に暮らす”事を島民達に説き続けたしらほし姫の母上じゃ。そしてもう1人は奴隷解放の英雄「フィッシャー・タイガー」。人間との決別を叫び…世界の
フィッシャー・タイガー…!確か、ハンコック達三姉妹を助けたっていう人だったような…。
素手で
「その後に元奴隷の魚人達を連れ、「タイヨウの海賊団」を結成する男じゃ…!わしもアーロンも…当然ハチも…その「タイヨウの海賊団」に所属する事になる…!しかし、政府に激しく楯突いた「魚人海賊団」が海に居る事は…同時に人間との友好を実現しようとするオトヒメ王妃の首を締める結果となった…。今を耐え忍び未来を変えようとするオトヒメ王妃に対し…未来を捨てて今苦しむ同族の奴隷達を救い出したフィッシャー・タイガー…どちらが正しいかなどとても決められん…じゃが、わしは……」
ぽつり、ぽつりとジンベエが当時の事を話し始めた。
フィッシャー・タイガーの事を……そして、…しらほしちゃんの、お母さんの事を。