ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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151『女好き、ヒーロー作戦』

「その後10年…“フカボシ”、“リュウボシ”、“マンボシ”ーーー3人の王子を筆頭に、王や姫もモニターで呼びかけ…その努力で再び国民の署名は大きく集まっておる…!これがここ16年程のこの島の差別との戦い……そして、魚人海賊団の成り立ちじゃ…。お前さんの故郷を苦しめたというアーロンは、つまりわしの弟分なんじゃ…!責任を感じとる…!何かあればどこにでもわしらが飛んで行くつもりじゃったが、アーロンは近くの海軍を買収し「海軍本部」に情報が届かん様に手を回しておった…」

 

「そっか…」

 

そういえば…アーロンと手を組んでた海兵もいたっけ。ネズミ?みたいなやつ。

 

「何なりと処分は受ける覚悟じゃ…!わしは殺されても文句は言えん…!!じゃが、もう少しだけ待って貰いたい、今は国がこの様な状況で…」

 

「何か勘違いしてない?ジンベエさん。私は確かにアーロンを許す事はこの先一生…何が起ころうともあり得ないわ。…だけど、そんな酷い渦の中……私は一生分の幸せを手に入れる事が出来たの」

 

「……」

 

「あんたは別に黒幕でもないし、何よりルフィの友達なんでしょ?結果としては私とイリスを会わせてくれた大恩人とも言えるし…魚人だからって恨みはしないわ。だから、私の人生に勝手に謝らないで!私は今…最高に幸せよ、誰よりもね」

 

心からそう思っているのだろう、今のナミさんの幸せな笑顔を見て…ジンベエは顔を伏せて体を震わせた。

やっぱりナミさんって最高なんだなぁ…海峡なんて異名はやめて恋のキューピットジンベエにしない?だめ??

 

「…何ちゅう…勿体ない言葉……!!かたじけない…!!」

 

涙を流してそういうジンベエにこれ以上何か言う人など誰もいなかった。それ程までに追い詰められていたのだろう。…自分の選択で、誰かが不幸になった事実に。

だからその件でのジンベエが抱えていた心のモヤを今ナミさんが払ったんだ。どこからどう見てもパーフェクトなナミさんがね!

 

「あんたしらほしって言うの?正に絶世の美女ね、勿論イリスの嫁に来るんでしょ?」

 

「あ、あの…それはまだ…その…!」

 

「何が何でも嫁にするよ、私は人間でしらほしちゃんは姫だから、私の嫁になれば差別も減るでしょ」

 

「てめェそんな事考えてねェだろ」

 

うぐ…そうだけどね?普通に可愛いから嫁にしたいだけなんだけど、建前っているじゃん?ね?

 

「ーーーでは、すまん…時間を取った。竜宮城におる者を確認するが…ホーディとその一味が攻めてきて、国王と兵士が捕らわれ、お前さんらの仲間達が4人動向不明。今ある情報ではここまで…」

 

4人…ゾロとウソップ、ブルックに…あ、パッパグか。

 

「ニュ〜…ジンベエさん、ホーディの計画通りなら今頃国中もっと酷い事になってるハズだぞ…」

 

「そうか、ハチ!お前魚人街におったのならホーディの計画を知っとるのか…!?あの男…軍を出た後魚人街で何か企んでおるとはふんどったが、わしの前では決して尻尾を出さなんだ」

 

ホーディの計画か…。…私がブッ飛ばせばホーディ自体を潰すのは簡単だけど…それだと魚人に手を上げる人間の構図になっちゃうよね…オトヒメ王妃の思いを無駄にはしたくないな。人妻じゃなけりゃ過去に戻って嫁にしたい所だよほんと。あ、娘さんは貰いますね。

 

「…ホーディはアーロンさんを超える程の“人間嫌い”、魚人族の恨みと怒りだけを食って育った様な男なんだ…。だけどあいつには明らかにアーロンさんと違う所がある…!アーロンさんは人間を蔑むけど、同族の魚人には手を上げない“種族主義者”。でもホーディは人間と仲良くしようとする魚人にまでも容赦なく手をかける…!!」

 

…確かにアーロンは仲間内でわいわいしてる雰囲気だったな。その辺は割り切ってたって考えたらあいつは大人だったって訳だ。

 

「今年は4年に一度の「世界会議(レヴェリー)」が開かれる年だろ…署名も沢山集まって…!今回いよいよネプチューン王が世界に対して「魚人島移住」の意思を伝えに行く予定だ…」

 

「まさか…それを阻止するのが狙いか!」

 

「ニュ〜…いや……阻止だけじゃ終わらねェ……」

 

「うわ!森からでっけー電伝虫!」

 

チョッパーが言うように、森から大型の映像電伝虫が姿を現した。

モニターが作動して、パッと空中に映像が浮かび上がる。

 

「あ、あいつだわ」

 

「ホーディ?」

 

「キャハ、そうよ」

 

ふーん…対してオーラ感じないし、ぶっちゃけ弱そうだ。

態度だけは一丁前の雑魚…は言い過ぎか。

 

『あ〜…全魚人島民、聞こえるか?俺は…魚人街の「新魚人海賊団」船長…ホーディ・ジョーンズだ。魚人島リュウグウ王国国民に伝えたい事がある。ーーーこの国は1度…崩壊する!そして生まれ変わる…!新しい王は俺だ!』

 

乗っ取りかぁ…。国を乗っとるって問題に立ち合い過ぎなんじゃない?私達って。

アーロンは国じゃなくて島だったけど似たようなものだし、クロも乗っ取って遺産を奪おうとしてたんだっけ。ワポルもそうだし、クロコダイルは見るからに乗っ取ろうとしてたし、エネルは乗っ取った後だった。悪人ってとりあえず何かに成り代わるのが好きなんだなぁ。しかも大体が不当な方法だし…せめて正攻法で王になればいい物を…。

 

『人間との“友好”を望む者はこの国から消えろ!ーー直に「魚人街」から新しい住民達がここへ移住して来る…!共に人間達を嫌い…共にこの島の変改を望んでいる。お前達は見たハズだ、大好きなオトヒメ王妃の“死”を!!人間を信じ、笑顔で歩み寄っても人間はまたお前達を裏切るだろう!何故それが分からねェ!!お前達はネプチューン一族に唆され、死へ続く道を歩かされてるだけだ!目を覚ませ!!…これを見ろ…!』

 

アップで映っていたホーディからカメラを引き、その後ろで縛られていた人物の姿が露わになる。

そこにはネプチューン王と兵士達が鎖で縛られて動けなくなっていた。

 

「お父様…!!」

 

『かつての“大騎士”ネプチューンも歳を取った…!』

 

「…あの王様が捕まってる原因は私達にあるっていうか……ゾロにあるっていうか…」

 

「何をして来たんじゃお前達っ!!」

 

えーっ!?とジンベエが驚きに身を任せて突っ込んでいるが、恐らくナミさん達を捕らえようとして反撃されたんだろう。そこに都合悪くホーディ達が攻めてきて、まぁ漁夫の利を取られたって訳だ。多分。

 

『旧リュウグウ王国との決別の時だ。3時間後ギョンコルド広場にて、この無能な王の首を切り落とす!!』

 

「!!」

 

口元を手の平で覆い隠したしらほしちゃんの肩に飛び乗って、ぽんぽんと肩を叩いた。

大丈夫だと言い聞かせる様に…とりあえず安心してもらおうと咄嗟にした事だけど思いの外効果はあったのか、しらほしちゃんは私の顔を見て涙を引っ込める。

 

『ここは竜宮城…いいものが見つかった。10年前…オトヒメ王妃が命懸けで手に入れた“天竜人の書状”!破棄すればもう2度と手に入る事はないーー、そしてこのでけェ箱にはこの国の過半数を超える署名……!ジャハハハ、こんなにも人間達と手を取り合おうってバカが居るとは。ここに名を書いた者達は俺の新しい王国に反発する者達……つまりこれは、“裏切り者”のリストだ!!1人1人…処分していくとしよう』

 

本気で頭イカレてるんじゃないだろうか。裏切り者って…誰もあなたの味方なんて最初からしてないでしょ。

出たよコレ、思春期特有の俺は特別だぜーって奴でしょ。その気持ちは私もまぁ分かるけど、せめて20までに卒業しようよ。

…あ、私21だった。

 

『そして最後に、海賊“麦わらの一味”!!これを見ろ!』

 

「へっ?」

 

ゾロ、ウソップ、ブルック…!?なんか体縛られて小さな檻の中入れられてるんだけど!

檻は天井から吊るされてるし…なんか下から水迫ってきてない!?てか捕まってるじゃん!

 

『この島のどこかでモニターを見てるだろう…!魚人族の“怒り”、アーロン一味の野望を砕いた人間達よォ!!この部屋も国王の処刑が終わる頃には水で一杯になる…下等な生物“人間”はこれだけで死ぬんだよなァ…!?』

 

でも確かに…アレだいぶ危ない状況だね。ゾロの腰に刀も見えないし、がっしり鎖で縛られてるから解けないだろう。いや、ゾロなら筋肉で壊せそうだけどね?ふん!みたいな感じで。少なくとも私は出来る、筋肉では無理。

 

『懸賞金4億ベリー“麦わらのルフィ”!懸賞金10億ベリー“一騎当千の女王イリス”!!お前達の首は地上の人間達への見せしめに丁度良い!!ーーーさァ!旧リュウグウ王国の大掃除を始めるぞ!!3時間後、この国はプライドある魚人島に生まれ変わる!!』

 

それだけ言ってモニターは切られた。…ああ、シャボンディ諸島で言ってた10億ってやっぱり聞き間違えじゃなかったんだ。

 

「おれもイリスもいつ懸賞金上がったんだ?それに10億って何したんだよイリス!」

 

「ええ…特には何も…」

 

「上がったのはお前らだけじゃねェぞ、モリア様の下からお前らの船に居場所が変わったせいで私まで賞金首だ」

 

「私とミキータ、ロビンも上がってるわ」

 

私の懸賞金が上がったからナミさん達も上げられたんだね…。

ちなみにペローナちゃんは2000万、ミキータは1億、ロビンは2億、そしてナミさんは3億5000万らしい。やばい。

 

ペローナちゃんが他の嫁達に比べて低めの額なのは私の嫁だと認識されてないからか。あとは彼女の強さを政府が理解してないってのもあるだろう。ホロホロの実も相当怖い能力だからね…。

 

「それより、お義父さんが危ない…!助けに行かないと…」

 

「お前父ちゃん多いなァ」

 

嫁の数だけいるからね、そりゃね?

 

「まァ、売られたケンカは買うぞ!」

 

「私も。…だけど、そう簡単な話じゃない…だよね、ジンベエ、ハチ」

 

しらほしちゃんの肩から飛び降り、今すぐホーディの下へ向かおうとしたルフィの肩を掴んで止める。

 

「ニュ…そうだ。ホーディが今のリュウグウ王国で最も恐れてるのはしらほし姫の“才能”だ。この先あいつがどれだけ理想的な魚人島を作っても「海王類」を操り攻めてこられたらひとたまりもねェ…!国王はその攻撃の盾にする為の人質だ…!ニュ〜…ホーディは姫自身を捕まえその力を利用しようとは思ってねェ、その力の存在自体を恐れてるからだ。だから姫の命を狙えるデッケンと手を組んだ…!厄介なものは全部消すのがホーディだ…!」

 

「…けれど、わたくし…“力”の話は聞いていますが、まだ海王類様とお話させて頂いた事はございません…!!本当にその様な力があるのかどうかも、まだ……!!」

 

「そうか、ではその話はホーディに伝わらん様にせねば…、恐れて貰うのは結構な事じゃ」

 

それにホーディが1番恐れるべきなのはこーーんな可愛いコの能力なんかじゃなくて…私だよ。

自分で言うのもなんだけど、私ってすっごく強くなってるからね。

 

「それに私達がホーディ達と戦っちゃうとまた魚人の残党が“人間”を恨むと思うし…」

 

「じゃあどうすんだよ、ゾロ達も危ねェんだぞ!」

 

「んー…どうする?いっそ私が誰にも視認出来ないスピードでホーディボコしてこようか?出来るよ?」

 

「…いや、わしは今回の件…逆に考えればチャンスじゃと思っとる」

 

チャンス?

 

「ルフィ君、わしとお前の関係は何じゃ?」

 

「友達!!」

 

「そうとも、この造作もない関係を築けず、魚人族と人間は長年往生しとる!闇雲に戦ってはならん。やるのならホーディをブチのめす凶暴な人間にならず…この島のヒーローになってくれ!!」

 

ジンベエはそう言うが、ルフィは嫌だ!と即答した。えー…私はヒーローになって人魚達に感謝されてお礼のうはうはタイムしたいんだけど…。

 

「おれ達は海賊だぞ、ヒーローは大好きだけどなるのはイヤだ!お前ヒーローって何だか分かってんのか!?」

 

ジンベエは首を傾げる。なんかルフィが熱弁してる…しかもヒーローについて。

 

「例えば肉があるだろ!海賊は肉で宴をやるけど、ヒーローは肉を人に分け与える奴の事だ!おれは肉を食いてェ!」

 

「何よその基準…」

 

呆れ顔のナミさんも素敵だ…!でもルフィが言ってることも理解は出来るなぁ。

 

「じゃあ肉は食わせてやるから言う通りにせい!」

 

「分かった!」

 

「解決!?」

 

ルフィっぽいけど何とも雑な解決…。まぁとにかく理解はした。私達がヒーローとなりホーディを倒せば、人間への認識も変わって寄り添いやすくなるとかそんな感じでしょ。

 

「簡潔に言えば…わしがお前さんに助けを求める。それを助けてくれたらええ。まずわしとメガロはあいつらにわざと捕まり広場へ侵入する!その間メガロの腹の中からこっそり抜け出し、敵の持つ「天竜人の書状」と「国王の錠の鍵」を盗み出すんじゃ。出来るものはおるか?」

 

「盗みならナミさんがサイコーだよ。私の心も一瞬で盗んだからね。あとはロビンかな…適任だと思う」

 

それにしてもメガロの腹に潜むのは決定なんだ。当のメガロは勘弁してくれ、みたいな顔してるけど。

 

「そうね、私とロビンに任せて」

 

「…で、ロビンはどこ?私まだ姿見てないから早くロビンのぽよんに飛び込みたいんだけど…」

 

とか言ってたら、噂のロビンが森の中から歩いてきた。おー!ロビン!!

 

「遅れてごめんなさい。話は聞いていたわ…その役目は任せて」

 

「ロビーン!」

 

ぽよん、とロビンの胸に飛び込む。あーふかふか!ふかふかだよこのおっぱい!

聞いていたってアレかな、耳をどこかに生やして聞いたのかな。

 

「…よし、王を解放出来たらわしがルフィ君に助けを乞う。メガロの腹の中からルフィ君が堂々と現れればわしら全員共謀者である事が皆に分かる。姫様は広場の外、八方安全な場所に待機しており、「書状」を受け取り解放した王達と共に逃げてくれ。一方それ以外の者達は今すぐ竜宮城へ急ぎ仲間救出、全員揃ったら広場へ急行してくれ。竜宮城の仲間救出の方法についてじゃが……何とかしてくれ」

 

「雑か!こっちの作戦!!」

 

「あーそれとジンベエ、私も広場に行っていい?メガロの腹に隠れてさ」

 

「そうじゃな…お前さんが居てくれたら心強い。ルフィ君だけでも問題はないじゃろうが、万が一があってはならん作戦じゃからのう」

 

その場にホーディもデッケンも居るのなら私がそこに行かない理由が無い。ゾロ達を救出するのにそう何人も要らないだろうし…何よりもデッケン達をブッ飛ばしたいんだ。

 

「して、この作戦の様な事が起きれば、国民(ギャラリー)はどう思う、お前達」

 

「ニュ〜、ジンベエさんは「魚人島民」も「魚人街」の連中も皆一目置く存在」

 

「うん、親分が国王様を助ける為にイリスちん達に命を預けたと分かったらみんなイリスちん達の事応援するよ!」

 

ジンベエってやっぱりすごい人なんだね。ルフィはやっぱりヒーローとして持ち上げられるのにはイヤそうな顔しているけど…最終的にはジンベエの頼みだからと納得してくれた。

 

「なら、早速行こう」

 

「俺達はどう竜宮城まで行けばいい?」

 

「その事なら任せてくれ。これでもシャボンの扱いは慣れている」

 

サンジの質問にはデンが名乗りを上げてくれた。この島で宙を泳ぐ魚達みたいにシャボンの浮き輪でも作ってくれるんだろうか。

…まぁ、そっちは任せたよ。サンジ達…!

 

「…じゃあ、頼んだよメガロ」

 

「シャー…」

 

仕方ないなぁ、みたいな感じで開けたメガロの口の中にナミさん達と一緒に入った。うひょひょ、最高!

 

えー…ホーディがネプチューンを殺すのがギョンコルド広場だから…ここからだと1時間くらいか。間に合うとは思うけど…急いでね、メガロ…!

 

 

 

 

 


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