「このままメガロが間違えて私達呑み込んだらどうなるんだろ、あはは」
「空島でよ、ノラってヘビ居ただろ!あん時みたいになるんじゃねェか?やー…いつかもっかい行きてェな、空島!」
そうだねー…もう2年も経ったんだし、アイサちゃんの成長も気になるというか。
ーーーと、いう訳で只今絶賛メガロの口の中で待機中であります。
今は広場に向かっている最中で、もう1時間くらい経ったんじゃないかな。ルフィと話してたら時間経つの早いんだよねぇ、コミュ力オバケだし。それにナミさんもロビンも居るのだ、私にとっては楽園だよ!
「ヒーローかぁ…ルフィはイヤって言うけど、やっぱりヒーローってカッコよくない?ていうか、ぶっちゃけ私達って行く先々で誰かのヒーローになってる訳じゃん?」
「カッコいいけどよ、ヒーローになるのは違ェだろ。なんか調子狂うんだよ」
「確かに国民に応援されながら戦うのは私達らしくないかもね。お礼言われる為に助ける訳じゃないんだから」
そうだろ?とルフィは同意を求めてくるので頷いておいたけど、お礼を求めずにただ困ってる人を助けるって…それこそヒーローだと思うんだけどな。
私は困ってる女の子しか助けたくないから、その点で言うとヒーローとは無縁だね。
「私にとってはイリスはヒーローみたいなものよ、私達はヒロインでしょ?」
「ナミさん達の前なら私はいつでもヒーローだし、可愛くてカッコいい主人であり続けるからね!うへへ!」
うへへとか言ってる時点でカッコいいからは遠のいているとか、そんな事は気にしない、気にしないったら気にしない。
「あ、あれはお父様…!?」
「いやー…あれはどう見ても……そ、そうじゃな、あれはネプチューン王…!」
「ん?」
外で何か進展があったのかな?と思ってメガロの口の中からこっそり覗けば、前方にネプチューンの形をしたバルーンが浮いて「わしじゃもーん」って音声が流れていた。
ああ、どっからどう見てもしらほしちゃんを捕まえる罠…まさか本当にこんな罠を仕掛けてるなんて…。
しらほしちゃんは迫真の演技でそのバルーンへと近づいて行く。本当にネプチューンだと思っているのなら純粋過ぎて可愛いと思います。
…よし、そろそろ覗くのはやめよう。万が一にもバレちゃ話にならない。
「っと…!」
「おお?」
メガロの体が揺れているのか、中に居る私達にもその揺れが伝わってきた。ジャラジャラと鎖の音が聞こえるから…不意を突かれて鎖で巻かれてるって所が。不意って言ってもわざとだから不意も何もないけど…。
って、しらほしちゃんの素晴らしい柔肌にクソみたいな鎖巻きつけてるんじゃないの!?ぐぐぐ…!!お、落ち着け私ぃ…さ、作戦でしょ…!!作戦…作戦…!
「イリス、おめェほんと堪え性ねェな!なはは」
「私が悪いんじゃなくて、私をイライラさせるのが悪いんだよ」
いやほんとに。だって私は嫁関連じゃないとそんなに怒ったりしないし。身長?ふふん、今や150にもなった(146だから四捨五入)私がたかだか身長をいじられた程度で怒るわけないじゃん。
「っ…な、なに…!?」
今度は強い衝撃が私達を襲う。まるでメガロが地面にでも落ちたかの様な…。って、そうか、縛られたからそのままどこかに連れてこられたのか!
……うん、周りに物凄い人の数の気配を感じる。と言うことは、ここが広場だろう。
「ホーディ船長!しらほし姫とジンベエが罠にかかりました!!」
「お父様…!お兄様達…!!」
…見聞色はこういう時便利だ。周りの状況がよく分かる。
ここがギョンコルド広場なのは間違いない。これだけ広い空間…周りはサンゴの壁に囲まれてる場所で、その壁の上には沢山の人が集まっているのも分かった。恐らく国民達だろう、広場に続く道が封鎖されて直接入れなかったから上から見に来たんだ。
で、しらほしちゃんやジンベエの正面…つまりは広場の中心で王座の様な物に座っている小物オーラが…恐らくホーディ。その周りにポツポツと敵意を持った気配も感じるから…これが新魚人海賊団の幹部達だろう。
そしてホーディの後ろには縛られて磔にされてるネプチューン王や王子達の気配も感じる。…明らかに弱っている…しらほしちゃんが取り乱すのも無理はない。
「これは幸運だ!ジャハハハ!!危惧していた2人が一気に捕まるとは!こんなムシのいい話があっていいのか!?ジャハハハ!」
「何じゃいホーディ…!さっきとまるで様子が違うな…!!」
見聞色じゃ顔までは分かんないから様子って言われても分かんないな。気配は…確かに強くなってるけど。
「ジャハハハ…さァこれで必要な顔は出揃った!思ったよりた易い作業だったな…ーー後はどう動くのか分からねェのが“麦わらの一味”。今頃竜宮城の入り口でも探して途方に暮れてる頃だろう…仲間の“死”に怒り、ここへ現れても迎撃の準備は万端だ」
…、この中に居ても聞こえる、足音。
それだけの数の人達が今この広場に入ってきてきた。さっきから見聞色で分かってはいたけど…どうやって集めたんだ…こんな数。
「武器を使える魚人族、7万人!ここ1ヶ月で海中で捕らえた人間の奴隷、3万人!!閉ざされた「魚人街」から移住してきた、締めて10万人の無法者共だ!!!」
『ウオオオオオオオ!!!!!』
空気が震えてる…この外に今、10万人の戦力が居るって事か。
「更に、地上の“協力者”から新たに得た人間の奴隷、10万人!!合わせて20万人の戦力だ!!そいつも人間…いつかは殺すが、今はありがたくこの駒を頂いておくとしよう」
20万て…広場埋め尽くしてるんじゃないの?
地上の協力者ってのが気になるけど…!
「公共の広場でバカ騒ぎして…品のないコ達ね!お調子にお乗りでないよ、ホーディ・ジョーンズ!!」
国民達の中から1人、その人は一歩前に出てホーディに対して声を上げた。
…この気配、シャーリー…!良かった、起き上がれるくらいには体調良くなったんだ。
「懐かしい顔だ…。てめェ何の用だ、マダム・シャーリー!」
「粋がってるお前に一言云わせて貰いたくってねえ、…「ある人達が…魚人島を滅ぼす」と出たんだよ、私の占いでね」
「実質、滅ぼす事になるかもな。そこに俺が映ってたのか」
「いいえ。…この島を滅ぼすと出たのは…“麦わらのルフィ”と“尊い…”じゃなくて、“一騎当千の女王イリス”だよ…!」
なんか今ちらっと心の声出なかった?明確に私のファン名乗ってくれてるのシャーリーが初めてな気がする。
「…何が言いてェんだ!」
「分かる事はこれだけ。
「そ…そうか!マダムの占いは外れない、あの話は裏返せば…最終的にホーディがこの島に君臨する未来はないって事だ!!」
誰かがそう言った瞬間、ホーディはシャーリーに向かって何かを飛ばし…それがシャーリーの胸を貫いた。
…シャーリー……!!気配はそんなに弱まってない…大丈夫だとは思う…けど、まさかそんな簡単に手を出してくるなんて…!!ホーディ……ッ!!!
「ふー…!フゥ…!」
落ち着け…落ち着け…!怒るな怒るな怒るな!今出て行ったら作戦台無しだ…!
「イリス」
「…!」
ぎゅ、とナミさんとロビンが私を抱きしめてくれた。明らかに様子がおかしくなった私を見てそうしてくれたんだ…。ルフィは分かんないけど、ナミさんとロビンは外の状況を知る手段は無い…私が取り乱せば取り乱す程不安を誘うだけ…!
だけどナミさんもロビンも、自分の不安などお構いなしに私を落ち着かせようと行動に出てくれた。…いや、そもそも不安など感じていないのかもしれない。だって…抱き締められた事で感じる2人の鼓動は、いつもと何も変わらないから。
…バカでも分かるよ。私が居るから、2人は緊張も不安もないんだって。だから私が取り乱すのは……2人に失礼だ。信じられてる、だというのにこんな情けない姿は見せられない!シャーリーだって深手を負った訳じゃない…今はとにかく落ち着け…!
「バカバカしい…!何への当てつけだシャーリー!腹いせか!?俺はお前の兄とは違う!そりゃあガキの頃は…
……。
「……はァ?」
「よわむしの母ちゃん…!?あいつが殺したのか…!」
よわむしって何だルフィコラ。
…それより、何だその事実…。オトヒメ王妃を殺したのは人間何じゃ…!
…いや、人間が殺したと言ったのは、確かホーディ…!!こいつだ…!!
国民達もここに来て知る驚愕の事実にどよめきが広がる。混乱が起きればマズい…まだ出ちゃダメなの…!?早く呼んでよ、ジンベエ!
そりゃ落ち着くとは言ったけど、私にだって限界はあるからね!ていうか嫁関連なんだからかなり沸点低い自信ありますけど!!!
「イリス、私達はもう行くわ」
「あ、うん…2人とも、お願いね」
ナミさんとロビンの仕事は天竜人の署名の奪還とネプチューンやフカボシ達の救出解放。かなり大事な役回りだけど、2人なら必ず成功させるだろう。
ナミさんは自分とロビンに蜃気楼をかけ、メガロの口から誰にも気付かれずに出て行った。全く心配するなというのは無理だけど、不安はないかな。…抱き締められてた事で感じてたぽよんの感触が無くなったのはかなり悲しいけど…!
「あの日…人間の海賊に金を渡して狙撃で“署名箱”に火を付けさせた。ーーーそのスキに俺がオトヒメを狙い撃ち、そして雇った人間を撃ち殺し!!犯人に仕立て上げた!!」
「おのれ…ホーディ貴様ァ!!ウッ…!」
磔にされたまま暴れるネプチューン王の体に、シャーリーを貫いたのと同じ技を放つ。
「邪魔だったんだよ!!なァしらほし!人間への復讐を“悪”とし…人間と仲良くしようと島中に触れ回り!それを実現しかけたあの女が目障りだった!!お前の母親は死んで当然の女だった!!だから殺したのさ、犯人は俺なんだよ!!!」
こんの…クソ野郎が…!!
ジンベエ…早くしてよ!こんなの、しらほしちゃんが耐えられる訳が…!!
「……、知って、ました…」
ーーーーーえ。
「何じゃと!!?」
「しらほし…!?」
知って、た?それってどういう…。
「ーーー俺がお前の母を殺したと…知ってたとはどういう訳だしらほしィ…!」
「…事件から数年後…メガロがこっそり教えてくれました…!このコは元々ネプチューン軍のペット。あの日、全てを見ていたのです……!!」
だ、だったらなんで、そのことをもっと早くみんなに…!……、……みんなに、言えば…どうなる?待って…まさかしらほしちゃん…まさか…!
「しらほし姫…!ではなぜそれをわしらに言わなんだ!!」
「言えば…!!誰かがホーディ様をお恨みになると思いましたので……!!それではお母様が悲しまれます…!お母様と交わした、最期のお約束なのです……、犯人様がどちらのどなたでも、決して憎んではいけないと…!!」
「…しらほし…!お前…それで10年前の母上の言いつけを守って…!この事実を、硬殻塔で1人…ずっと抱え込んでいたのか……!!」
親を殺したものを憎まない…そんな事、出来る人が居るの…!?死にゆく母の願いだとしても、母の為に…必死に1人抱え込んでいたっていうの…!?
そして私はさっき、そんなしらほしちゃんを
…バカは私じゃん…!大馬鹿だ、いっぺん死ね!!
しらほしちゃんは……この島に居る誰よりも強い!!私より、ずっと強いよ!
「ジャハハハ!!!」
「笑うな貴様ァ!!」
「メガロォ…!お前よくこのマヌケ女を選んで話をしてくれた!!他の誰かなら俺達の計画は潰れてた。ジャハハハハハ!!いいかしらほし!この世じゃそれを“マヌケ”と呼ぶんだ!お前が俺を憎まなかった事で、これからこの王国は滅びる!
「………っ」
隣でルフィがあたふたし始めた。一体何でかな…?…なんてね、分かってるよ…。私は今……理性がフッ飛びそうなんだから。
「違う…!耳を貸すな姫様!あんたのやった事は間違いじゃない!!!」
「ジャハハハ!!間違い以外の何だ!!?
ショットガンの様に飛んでいく何かが、王や王子達の体を激しく貫く。
国民の悲鳴が聞こえる、しらほしちゃんが泣いてる音が…涙が落ちる音が聞こえる。
「お父様ぁ!お兄様ぁ〜〜!!」
しらほしちゃん…。
ごめんねジンベエ、タイミングで言うとまだ早いんだろうけど…私、どうも堪え性が無いから……、ん?
「おい、海賊麦わらのルフィ!一騎当千の女王イリス!!いつかこの島を滅ぼす気なら今来い!!」
「今すぐここで暴れろォ〜!!」
「島のどこかにいるんならすぐにここへ来ォ〜い!!」
「麦わらァ!!」
「女王ォ!!!」
これは…国民達の声…!
悲痛な叫びだ…ワラにも縋るような、そんな声。
希望なんてもんじゃないと思う、だって私達は海賊…国民からすればホーディ達と何も変わらない。
だけど願うしかない…現状を変えてくれるイレギュラーを。
「呆れたぜ…ワラにも縋るとは正にこの事…。第一シャーリーの占いは今回も外れだ…。血迷ったバカ共を現実に引き戻してやろう!!よく見ておけ、先代国王ネプチューンの頭が飛び散る様をォ!!」
「ウワァ〜〜!!!国王様ァ!!」
「父上ェ!!!」
ホーディが腕を振り上げている。あの何か貫く技を頭に撃ち込もうとしているに違いない。
…ああ、それとこの島の国民達。あなた達がワラにも縋る思いで願ったイレギュラー…それは何ともまぁ運の良い事に…、
「イリス様あ!!お父様をお守り下さい〜〜〜!!!」
「恥知らずのリュウグウ王国は…!!終わりだァ!!死ねェ!国王ーーーーーオゴァッ!!!?」
「大当たりだよ。イレギュラーなら、私の右に出るものは居ないし」
しらほしちゃんの声で外に飛び出し、ホーディの顔面を蹴り飛ばして壁までフッ飛ばした。
…なんだ、デッケンは居ないのか。
「「「え、ええええ〜〜〜!!!?」」」
「あ、あれは…!!」
「「「一騎当千の女王、イリスだァ〜〜!!!本当に現れたァ!!!?」」」
さて……ナミさん達は…もう来てるね。じゃあいっちょ暴れるか…いい加減、我慢の限界だから。