ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

158 / 251
153『女好き、嫁達の力』

「イリス様…っ!」

 

「イリス君…!もう出てしもうたかーーーじゃが、今のは致し方なし!急げお前達(・・・)!」

 

「ムッヒ!何だ…誰に話しかけてるっヒ!!?」

 

ジンベエがその場でそう声を張り上げれば、イカの魚人が周りを見渡してそう言った。

 

「大丈夫よ、始めから急いでた!」

 

「ムッヒ!?」

 

私の隣から、スーっと天使が現れる。ナミさん…!流石、速い!

 

「イリスが泣いてる女の子を前にしてジッとしてられる訳ないもの。蜃気楼(ミラージュ)解除!」

 

「うわっ!女が急に出てきたっヒ!!」

 

「これでいい?ジンベエちゃん。「天竜人の書状」!あと、錠の鍵はロビンに」

 

「上出来じゃ、ようやった!」

 

ナミさんがピラ、と紙を見せて王や王子達の鎖を繋いでいた錠もロビンが外す。

 

「うおー!!出れたァ!!!」

 

「「「麦わらのルフィも居た〜〜!!!?」」」

 

よっこらせ、とメガロの口から出てきたルフィを見て国民達が騒めく。

更に上空には、デンによって取り付けられたシャボンで空中航海してきたサニーと、その隣に王が乗っていたクジラが泳いでいた。救出組も間に合ったみたいで良かった良かった。

 

「行くぜおめェら!!ガオン砲…発射ァ!!」

 

「ぎゃあああ!!海賊船だァ〜〜!!?」

 

ガオン砲を壁にぶち当て、その周りに居たホーディの部下を吹き飛ばす。その隙にクジラが王と王子を背負ってその場から逃げ出した。しらほしちゃんも連れてけよー!…あ、そうか、私の近くが1番安全って事だね?うんうん、それは確かにその通り。

 

「よっと」

 

空から落ちてきたサニー号を片手で受け止めて、そっと地面に下ろす。みんなも船から続々と降りてきた。

船の下は竜骨がどうこうで傷めちゃマズいんだよね。アダムって木なら大丈夫だろうけど、念のためね。

 

「い、イリス…?さらっとやってるけど、それ一応船よ?」

 

「ふふん、凄いでしょ?」

 

ドヤ、とナミさんにいいとこ見せれたから満足!若干引いてる?あはは、まさかそんな、はは。

 

「麦わらの一味…全員来た!!」

「おい!!麦わらのルフィ〜!!お前らは本当にこの島を滅ぼすのか!!?」

「なぜ竜宮城を占拠した!!?」

「人魚達を誘拐したのはお前達なのか!?」

「答えてくれ!!お前達は魚人島の敵なのか!?味方なのか!!?」

 

「敵か、味方か?そんな事、お前らが勝手に決めろォ!!」

 

「私は味方だよ〜!しらほしちゃんが助けてって言ったんだから、死んでも守るよ〜!!」

 

国民達に大きく手を振る。特に美女に!あ、あの子も可愛い!

 

「女王〜!!だったら頼むぞ〜!!」

「麦わらァ!魚人島を守ってくれ〜!!」

 

「でも最優先は女の子だからね!!男共は引っ込んでろ〜〜!!!」

 

「何を〜!?そんなこと言うなら何があっても姫様をお守りしろや女王!!」

「俺の嫁も頼む!」

「俺の娘も!!」

 

 

「なんか変に打ち解けてねェか、あいつ」

 

「2年前からあった“自信”が更に強くなったんだろ。どれだけ強くなってんのか興味あるな」

 

ウソップとゾロがそんな事を言っているが、私は2年前から変わらず守りたいものを守るだけだ。守れる幅を、掴める手の平を大きくする為に2年間必死に修行した。それは私だけじゃない…みんなもでしょ?

 

「はいコレ書状」

 

「ありがとうございます皆様…!これはお母様が残して下さった魚人島の希望…!」

 

「はは…、違うよ。あなたのお母さんが残したのはそんな紙1枚なんかじゃない」

 

「え?」

 

パチクリと瞬きするしらほしちゃんに笑いかけた後、また振り返って20万人の軍勢と向き合った。

 

「本当にオトヒメ王妃が残したかったのは…しらほしちゃんの様な優しい子だよ」

 

「…ですが、わたくしが勝手に真実を胸の内に隠していたばかりに…」

 

「いいんだよ、しらほしちゃんはそのままで。憎しみの連鎖を断ち切るにはあなたの様な心の優しい子が居ないとぜっったいに無理だからね。だから…後は私達に任せて。しらほしちゃんが守り抜いてきたこの大きな優しさを…耐え忍んだ年月を、今度は私が守り抜くからさ」

 

「……っ、はい!…ありがとう、ございます…っ、え〜〜〜ん!!」

 

何があろうと、しらほしちゃんの10年を無駄にはしない。

私を誰だと思っているんだ…どこの誰が付けてくれたのかは知らないけど“一騎当千の女王”だよ?…私の嫁の努力を無駄にしようとする様な輩は、この名において苦しみを与えてくれるっての!

 

「“よわほし”、思ったほど弱く無かったけど泣き虫だな!」

 

「あんなトコで10年間も命を狙われてたら誰だって泣きたくなるっての。…ん?あいつも結構タフだなー…仕留めたつもりだったんだけど」

 

ボゴォン!とホーディを埋めた筈の壁から音がし、煙の中からホーディが現れた。ボリボリと薬みたいなの食ってるし、強化薬かなにか?

 

「ハァ…ハァ…ッ!ジンベエ…!まんまと引っかかった様だ…あんたが大人しく捕まってる時点で気付くべきだった…!グハ…っ、ぐ…」

 

でも相当ダメージはあるみたいだ。足取りは覚束ず、既に肩で息をしている。

 

「ハァ…ッ、ハァ…!…人間達と、仲がいいんだなァ…!お前みてェな奴が俺は1番嫌いなんだよ!共に魚人街で育ったハズのフィッシャー・タイガーも…弟分アーロンも“人間”にやられちまったってのに、その仇を討つ所か張本人と肩を組むとは……ッ、…ネプチューンにも劣らねェ、とんだフヌケ野郎だ…!!俺がこの島の王になれば全てを変えてやる!今年開かれる世界会議(レヴェリー)は絶好のチャンスだ!!世界中の人間の王達をマリージョアで血祭りに上げ、恐怖の「海底帝国」の伝説は幕を開ける!」

 

こいつ今ビビにも手を出しますよって宣言したんだよね?バカでしょ、何でそんなに死に急ぐの?そんなに私にボコされたいの?Mなの?

 

「世界中の人間共を海底に引きずり下ろし奴隷にしてやる!やがて魚人族に逆らう者は居なくなる、海賊の世界も同じだ!!見ろ、この腕に覚えのある海賊達の姿!!これがお前達の未来だ、麦わら!!女王!!俺こそが真の海賊王(・・・)に相応しい!!」

 

海底で捕まえたという3万人の奴隷を差して言うホーディ。…あちゃ、海賊王がどうとか言い始めちゃった。

お陰で私がお前をブッ飛ばすのはお門違いになっちゃったじゃん…いらん事言ってんじゃないっての。

 

「ジャハハハハハ!!吹けば飛ぶ様なたった10とちょっとの海賊に何が出来る!こっちは20万人だぞ!!やっちまえ!“新魚人海賊団”!!」

 

 

「「「ウオオオオオオオオオオ!!!!!!」」」

 

 

「……“海賊王”?」

 

ルフィが四方八方から向かってくる海賊達に向かってゆっくりと歩を進め…カッ、と目を見開いた。

ルフィを中心に衝撃波の様なオーラが全方位に広がり、バタバタと私達に向かってきていた海賊達が意識を落としていく。

 

「な、何だコリャ〜〜!!?」

「何もしてねェのにどえらい数やられたぞ!?」

「よ、4分の1はやられたか…!?5万人!!?」

 

「おー、やるね、ルフィ」

 

「覇王色の覇気…!使いこなせてんじゃねェか」

 

「たった2年でここまで…!!」

 

残り15万人か。私も減らしてあげよう。

 

「ホーディっつったな、お前はおれがブッ飛ばさなきゃなァ。お前がどんなとこでどういう“王”になろうと勝手だけどなーーーー“海賊”の王者は、1人で充分だ!!…悪ィイリス、あいつ貰うぞ」

 

「いいよ、仕方ないし。…じゃあーーー残りも寝てろ」

 

今度は私を中心に放たれる覇王色の覇気が、とてつもない程の広範囲に広がって更にバタバタと奴らを気絶させた。

 

「な、なんだ!?今度は半分以上倒れたぞ!!?」

「10万人は倒れたか!?残ってるの5万人!!?」

「一瞬で15万人やられたのか!!?何したんだあいつら!!」

 

「やば、減らしすぎたかな。せっかくみんなの成長を見れるいい機会だと思ったから加減したのに…」

 

「これで手加減してんのかよお前…もうおれはお前が怖ェよ」

 

失礼な、味方なんだから頼もしいでしょ?

 

「キャハ、確かに減らしすぎよイリスちゃん。せっかくイリスちゃんに私の成長を見てもらおうと思ってたのに」

 

「ごめんごめん、残り5万で許して…っていうか、こいつら船長含めて大した事ないから成長は分かんないかもね」

 

「私は手加減しなくていいから残り5万もさっさと倒して欲しいって思うんだが…見せ場なんていらねェだろ」

 

「まぁまぁ、そう言わないの、本当はペローナだって闘いたくてうずうずしてたんじゃないの?みんなそうよ、どこまで強くなったのか…実戦練習には丁度良いわ」

 

ナミさんがクリマタクトを構えながら言った。クリマタクトって言っても、私が最後に見た形状とはまた違ってるけどね。

 

「こんな広場の真ん中で…でかい弱点を守りながら戦えるならやってみろォ!!撃水(うちみず)!!」

 

ホーディがしらほしちゃんに向かって水滴を弾丸の様に飛ばした。

ああ…アレか、シャーリーやネプチューンを攻撃してた技の正体は。

 

だけど私が手を出すまでもなく、ジンベエが同じ撃水(うちみず)をホーディの飛ばしたソレにぶつけて相殺させる。

 

「フン…何をして力を得たのかは知らんが、ヒヨッ子の「魚人空手」じゃ」

 

「やるね、ジンベエ」

 

「お前さん程じゃないわい」

 

そりゃどうも。

 

「ヒヨッ子かどうか…もう1度良く見てみろ!!撃水(うちみず)!!」

 

「お」

 

もう1度良く見てみろ、とか言いながら私を狙うんかーい。不意打ちって言うんだよそれ。

 

ホーディの放った撃水は私の顔面に直撃し、べちゃっと水鉄砲が当たったかの様な音を立てて終わった。

濡れた髪の毛からポタポタと水滴が滴り落ち、肩から水が服にまで入ってきて気持ち悪い。

 

「もー…しらほしちゃんが居るからカッコつけようと思ってわざと食らってあげたのにさ、こんな濡れるなんて思わないじゃん!弁償してよ!この服シャンクスが買ってきてくれたやつなんだからさ!」

 

「…な…ッ」

 

直撃したのにピンピンしてる私がそんなにおかしいのか目を見開くホーディだが、何を不思議に思う事があるのだろうか、単純に火力不足なんだよ、分かりやすいじゃん。

 

「え、シャンクス?」

 

くる、とルフィが私に振り返ったが、その視線は一旦無視した。

そりゃルフィが気になるのは当然、シャンクスもルフィの事を凄く気にしていたし…。だけど今はホーディに集中して貰わないとね、あとたった5万人だし、ちゃっちゃとボコして終わろう。

 

「さぁて、始めるよ!!」

 

小太刀を出して長さを倍加させる。

 

「イリス、それもしかして妖刀か?」

 

「流石ゾロ、分かる?…分かるか、この見た目じゃ」

 

私が抜いた小太刀は、刀身がドス黒く真っ赤に染まった危険な見た目のモノだった。

ベックマンにやるよ、みたいな軽いノリで貰った奴だけど、最初は一振りするのすら苦労したよ、逆に私が操られそうになっちゃって!

今となっちゃ私の意思に素直に従ってくれるけどね、私を所有者と認めてくれた証拠だろうし。

 

「世界に1つだけの小太刀の妖刀…その切れ味は鉄をも豆腐の様に斬り裂く…とかなんとか。じゃあ、行くよ!」

 

私が抜いた小太刀に尻込みしてその場に留まってる奴らの中に、フッと消えたかの様に一瞬で移動して刀を構える。

 

「一閃!!」

 

「グハ…ッ!?」

「い、いつの間に…ッ…」

 

横振りの剣撃を一閃…それで20人くらいはダウンさせたかな。

うんうん、なかなか悪くなかったね、剣の腕はゴミみたいな私だったけど、シャンクスに色々教えて貰えて良かったよ。

 

ルフィ達もそれぞれ海賊達の軍団に突っ込んでいた。やっぱりみんなめっちゃ強くなってるね。

 

「な、何だこの女…!攻撃が当たらねェ!!」

「遠隔操作形か!?近くに操縦者が居るかもしれねェ!!探せ!!」

 

「ホロホロホロ…私が本体だ、覇気使い以外が私に勝てる訳ねェだろ!ネガティブ・ホロウ!」

 

えっ、ペローナちゃんって本体を幽体化させる事が出来る様になったの?それ強すぎじゃん!…ん?なんかペローナちゃんこっち来てるけど。

 

「ちょっと私を守れ。幽体化出来るのは1分が限度だ、次に使うのに10分くらい時間がいる」

 

「え、それ序盤で使ってよかったの?でも凄いね、1分も無敵なんて強すぎだよ!」

 

「そ、そうだろ、ホロホロホロ!…………褒めてくれた…」

 

ペローナちゃん?私倍加で耳良いからボソっと言ったそれ聞こえてますよ?可愛すぎじゃない?ねぇちょっと神様可愛すぎじゃないこの女の子ねぇ。

私に褒めてもらいたくて序盤から新技披露って何ですか?誘ってる?誘ってるよねもう。

 

「色んな意味でやるわね、ペローナ!私も負けてられない。…私だって、2年間必死に努力してきたの…!」

 

相手が振り回す剣をステップで華麗に避けたナミさんが、クリマタクトを3分割してその内の1本を持ち、棒先を相手に向けた。

 

「ウェザリアの天候の科学…ナメないで!突風(ガスト)ソード!!」

 

「ブホォ!!?」

 

おお!棒からまるでレイピアの突き技の様に放たれた、回転する高速の突風がナミさんを斬りかかった奴だけではなくその後ろにいた連中までも巻き込んで吹き飛ばした。

かっこいい!

 

千紫万紅(ミル・フルール)巨大樹(ヒガンテスコ・マーノ)

 

「おいおい、何だアレ!?」

「脚!!?」

 

うわ…なんだあの綺麗なおっきい脚は!!…ロビン!?

 

「ストンプ!!!」

 

ロビンが生み出した巨大な脚になす術なく踏み潰されていく海賊達。破壊力えげつない…あとえっち…。

 

「キャハ…!みんな強くなってる…私も2年間の成果…見せなきゃいけないわね!」

 

「くそ!こいつさっきからひらひら避けやがって…!」

「おれ達が攻撃する場所が分かってるみてェだ…!」

 

「キャハ!正解よ!見せてあげるわ…私の本気!10万キロ!」

 

10万!?え、10万キロってなんトン!?100トン!?

 

衝撃(インパクト)・プレス!!!」

 

空高く飛び上がったミキータの踵から、とんでもない威力のブーストがかかってまるでミサイルの様に地面に直撃した。

地面はメキメキと割れ、かなりの規模のクレーターが出来上がり周りには100を軽く超える数の海賊達が転がっている。

 

「…いたた、これ使うと足が痛くなるのが難点ね…。まだまだ修行が足りないわ」

 

クレーターの中心からふわりと浮かび上がったミキータが私に大きく手を振ってきたので振り返しておく。

みんな、2年前とは比べ物にならない強さだね…!…ぶっちゃけコレ私いらないな!?

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。