ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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15『女好き、魚人に会う』

「追いつけそう?」

 

何とか見える、くらいまで離されてしまったメリー号を見据えてウソップに尋ねる。

 

「追いつくのは難しいだろうな、ただこのまま追っかけていけば大体の位置は掴める筈だ」

 

「そっか、よかった」

 

「……」

 

「ヨサクもジョニーも、さっきからどうしたの?」

 

ついさっきから、明らかに口数が少なくなった二人に声を掛ける。

手配書と睨めっこをしている二人は明らかに怯えているようにも見えた。

 

「…もしかしたら、ナミの姉貴はとんでもない奴の所へ向かっているのかもしれません!」

 

「とんでもない奴?」

 

「この航路だと、間違いありません!このままだと、間違いなく“アーロンパーク”にたどり着く!」

 

アーロンパーク…。

聞いたことはあるんだけど、何だっけな。

 

偉大なる航路(グランドライン)が海賊の墓場と呼ばれるのは君臨する三大勢力のせいだと思いやすが、その内の一つの勢力が…王下“七武海”」

 

「しちぶかい?」

 

代表してヨサクが説明してくれるようだ。

 

「簡単に言えば世界政府公認の七人の海賊達っす」

 

「何で海賊が政府に認められてるの?」

 

海賊は海賊何だから、昼のフルボディみたいな対応が本当は正しいのだ。

 

「“七武海”は未開の地や海賊を略奪のカモとし、その収穫の何割かを政府に収めることで海賊行為を許された海賊達なんでやす。他の海賊達に言わせりゃ“政府の(いぬ)”に他なりやせんが、奴らは強い!!何を隠そう、ゾロのアニキを討ち負かしたあの“鷹の目のミホーク”も!!王下七武海の一角を担う男なんです!!」

 

「…あんなのが、あと6人も…!」

 

「問題はその七武海の中の一人、魚人海賊団(・・・・・)の頭、“ジンベエ”!」

 

「魚人かー。イリスは興味引かれるだろ?何たって人魚だぞ人魚」

 

「あー…機会があれば行ってみたいな」

 

今は、ナミさんだ。

…でも人魚か、確かに気になるなぁ…。

 

「ジンベエは七武海加盟と引きかえにとんでもねェ奴をこの東の海(イーストブルー)へ解き放っちまいやがった…、そいつが、アーロン。かつて“七武海”の一人ジンベエと肩を並べた魚人の海賊!アーロンパークとはそのアーロンが支配する土地です!」

 

「…そっか。そう言えばナミさんが見ていた手配書…。思い返してみればアーロンって書いてた気が…」

 

「そうなんですよ、確かに姉貴はアーロンの手配書ばかりじっと見てた。そしてアーロン一味が最近また暴れ出したってことをあっしらが口走った直後…ナミの姉貴は宝持って船を出したんです。これはもう偶然とは思えやせん」

 

ふむ…。となると、そのアーロンってやつに弱みを握られている説が濃厚かな。

 

「あっしらの予想では、ナミの姉貴とアーロンは裏で繋がってたんじゃないかと」

 

「うん、私もそれは思う」

 

「てめェのことだから、バカみたいにナミを信じるとか言うのかと思ったぜ」

 

さっきまで重症で寝てたくせに普通に座ってるタフ剣士は何なの。

 

「信じてるよ、疑ったことなんかない」

 

私は迷いなく即答した。

当たり前だ、私のナミさんだよ?

 

「オイ、行き先がわかったならルフィに伝えなくていいのか?」

 

「…なら、あっしが戻りましょう!最後まで姉貴を信じ抜くイリスの嬢ちゃん…いや、イリスの姉貴に感動しやした!任せてください!」

 

「ヨサク平気かよ、船もねェのに」

 

「この辺はパンサメの生息地だから心配いらねェ!ちょっくら行ってきやす!」

 

そう言ってヨサクは海に飛び込んで、宣言通りにパンダのような色合いのサメを掴んで来た海を戻っていった。

 

「それにしても、アーロンか…。ナミさんを下さいって言えば大丈夫かな?」

 

「まず無理だろうな、どこの馬の骨とも知れねェ海賊にくれてやる馬鹿はいねェだろ」

 

「はは、言えてるね」

 

最悪は倒してでも貰うんだけど。

 

 

そして、数時間後。

私達はついにアーロンパークへたどり着くことに成功した。

 

まだ島についてはいないが、外から見る感じだと昔ながらの和風なお城って感じかな。天辺にノコギリザメの頭みたいな飾りがあるけど。

 

「着きましたが…問題はこれからっす。まずナミの姉貴がどこに船をつけたかを…」

 

「乗り込もう」

「斬り込むか」

 

「何でそうなるんですか!!?」

 

「アホかてめェら!まだ何の手掛かりも掴んでねェんだぞ!!」

 

「手掛かりならある、あそこにメリー号は止まってるよ」

 

私が指を差す方向を見るが、ウソップ達は目を擦るだけだ。もちろん視力10倍チートを使ってるから出来ることなんだけど。

私が言う方向に船を進めると、ウソップ達にも見えるようになるくらいメリー号が大きくなってきた。

 

「お、ほんとにありやがる!」

 

「でも、おかしな所に停まってるっすね、ここにあるココヤシ村から少しずれてる」

 

「まずはメリー号に船をつけよう。まだナミさんもいるかも知れない」

 

そうしてメリー号に近づいて行くと、小さな港が見えた。

本当に船を停めるためだけにあるような港だが、何とそこには魚人がいたのだ。

 

「私はここで降りるよ、ウソップ達はメリー号をよろしく」

 

「俺もここで降りる。メリー号は頼んだぞウソップ、ジョニー」

 

「へ、へい…」

 

よっ、と港におりてウソップ達を行かせると、3人組の魚人と目があった。

 

「見かけねェ人間だな。この島に何の様だ?」

 

「あ、すみません、私イリスって言うんですけど」

 

「あぁ、ご丁寧にどうも」

 

「「何頭下げてんだ!」」

 

ばしっと後の二人に頭を叩かれていた。

 

「人を探してまして…オレンジ色の髪で、美人で私の嫁っぽい顔してる人なんですけど」

 

「こいつ頭いかれてんな、とりあえずアーロンさんのとこに連れていくか」

 

そうだな、と頷き合う3人には悪いけど内心ガッツポーズ。

いかれてんなは余計だと思うけど、アーロンに会えばナミさんの事は聞けるだろう。何故かそういった確信があるのは、忘れている前世の記憶が影響してるのかな?

 

私とゾロはこれ幸いと大人しく魚人達に連れていかれる。

重たそうな門を開けると、アーロンパークへと到着した。城の前はまるで学校や市民プールのように長方形で水場があり、海と繋がってることから普段はここに船を停船させているのだろうか。

 

そして肝心のアーロンは椅子に座って地べたに座らされた私達を見下ろしている。

 

「ここに何の用だ、人間」

 

「嫁を探しにきたんですけど、知りませんか?オレンジ髪の美人」

 

「シャーッハッハ!何?俺の耳がおかしくなったのかもしれねェ、もう一度言ってみてくれねェか」

 

「だから女を一人探してるっつってんだろ!半魚野郎(・・・・)!!」

 

なんでゾロさんはそうも攻撃的なんですかね。

 

「ホウ…下等な人間が言ってくれる…一度は許すが半魚(・・)ってのは二度と口にするな!俺達魚人(・・)は海での呼吸能力を身につけた“人間の進化系”、魚の能力分てめェらより上等な存在なのよ…!」

 

確かに強そうだ。筋肉やばいし、牙も鼻のギザギザも刺さったら痛そうだ。ウソップの鼻もあんくらいギザギザなら強そうなのにね。

 

「天性に持つ数々の人間を越える能力がその証!『万物の霊長』は魚人だと頭に叩き込んどけ!!人間が魚人に逆らうってのは、“自然の摂理”に逆らうも同然だ!!」

 

「そのバカみたいな持論は聞き飽きたわ、アーロン」

 

「ナミさん!!」

 

アーロンの後ろからナミさんが現れる。よかった、やっぱりここにいたんだ!

 

「…そう恐ェカオすんな!お前は別さナミ!我らがアーロン一味の誇る有能な“測量士”だ、実に正確ないい海図を作ってくれる!」

 

「あんた達とは脳ミソの出来が違うの、当然よ!」

 

「測量…!?おいナミ!何でお前がコイツらと仲良くやってんだ…!」

 

「何だおめェの知り合いかよ」

 

「バカ言わないで、ただの獲物(・・)よ。今回はこいつらからたっぷりお宝を巻き上げさせてもらったの。途中まで追ってきてたのは知ってたけど、まさかここへ辿り着けるとはね…」

 

近くにきてゾロの前でしゃがみ込んで言うナミさん。

あれ、私とは全然目すら合わしてくれないんだけど。

 

「これがてめェの本性か!?」

 

「……そうよ、驚いた?私はアーロン一味の幹部、もともと海賊なの」

 

「そうだ!そして私の嫁でもある!!」

 

「ッ…!」

 

ナミさんは一瞬私を見たかと思うとすぐに視線を逸らしてしまう。

えー、何これ放置プレイか何か?

 

「シャハハハハ…まんまと騙されてた訳だな。こいつは金の為なら親の死さえも(・・・・・・)忘れる事の出来る冷血な魔女の様な女さ!!」

 

「……!!」

 

ナミさんの表情がほんの僅かではあるが変わった。

何かを堪える様な顔は、次の瞬間には元通りになる。

 

「…なるほど」

 

親を殺した海賊を憎く思ってるって言ってたナミさんの言葉に嘘なんかない。バギーの時、ナミさんは自分の命をかけてまで海賊のようになるのを拒んだんだ。

なら、嘘をついているのは、親の死さえも忘れる事が出来るという部分!つまり…ナミさんはアーロンに冷血で非道な人間だと思われる必要があったわけだ。

そしてその理由は、アーロンこそが、ナミさんの思う憎き海賊だからと言うことに他ならない。

 

何かしらアーロンに弱みを握られてるんだろう。何をさせられてるのかまではわかんないけど。

 

「よし、ここは一つこいつらをぶっ飛ばして…ごふっ…!」

 

ナミさんの武器である三節棍で顔面を強打されて地面に倒れる。

やっぱり結構力ありますね…ナミさん…。

 

「はぁ…はぁ…こいつらを縛ってブチ込んどいて!後で私が始末するわ」

 

そう言ってナミさんは後ろに下がっていった。

それと同時に魚人が外から入ってきてウソップがココヤシ村に逃げ込んだという情報が入ってくる。

アーロンもそこに用があるといって足早に出ていってしまった…。

 

その後すぐにナミさんの指示通り縄で縛られた私とゾロは牢屋のような部屋に押し込まれた。

 

「…やっぱり、ナミさんには何かある」

 

「あのナミがお前の顔を本気で殴るくらいだからな、そりゃそうだろ」

 

「絶対私を守ってくれたんだよね、いやー、でもアーロンに弱み握られてるのは確実だから、やっぱりアーロンを潰すのが一番早いと思うんだけ」

 

「バカな事言わないで」

 

私の言葉を遮るように部屋にナミさんが入ってくると、縄をナイフで切ってくれた。

 

「ほら、さっさと逃げて!アーロンが帰らないうちに」

 

「ナミさんは?どうするの?」

 

「私のことはもう名前で呼ばないで、私もあんたの事を名前で呼ばないから」

 

「ははは、何言ってるの、ナミさんが私を名前で呼んでくれた事何か元々無いよ?」

 

「………いいから早く逃げなさい」

 

苦虫を噛み潰したような顔でナミさんは部屋を後にした。

さて、じゃあ私も行こうかな。

 

「どこに行くんだ?」

 

「ナミさんをストーカーしようかなって、ゾロは?」

 

「俺はここに残る。逃げろって言われてもここ以外行くとこもねェしな」

 

なるほど、確かにそうだ。

 

「じゃあ私は行くよ、じゃ」

 

ゾロに手を振って外に出る。

幸い視力倍加を使えばまだ見える距離にナミさんは居たので、バレないように後をつけるのであった。

 

 

 


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