ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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155『女好き、最後に泣くのは』

「しらほしちゃん、とにかく上に行こう!シャボンから離せば後は私が何とかする!」

 

「はい!」

 

魚人島から離れる様に上へ上へと泳ぐ。流石泳ぐスピードNo.1の人魚、速いね。

ここまでくればしらほしちゃんにノアが当たったとしても痛くはないだろう。巨体に押されるだけで潰される心配はない。

 

「バホホホ!!どこまで逃げる気だァ!どこに行こうとノアはお前を追っていくぞしらほしィ!!俺の愛も!ノアと共にお前をどこまでも追いかけようッ!!バホホホホホ!!!!」

 

「ほんっとに私をイラつかせるのが得意な奴だなぁ…」

 

…ん?ホーディとルフィも海中に来てるのか。流石に海中戦となるとルフィも苦労しそうだ。

 

「しらほしィ!自由はどうだ!?10年間お前を守り続けた硬殻塔の壁はもう無いぞ!俺のナイフに当たって死ぬのが先かァ!この巨船に押し潰されて死ぬのが先かァ!!バホホホ!!最後にもう1度だけチャンスをやろうかしらほし、イエスならば今からでも命を助けよう!!俺と結婚しろォ〜〜!!!」

 

結婚しろとか言いながら何本もナイフ投げてくる奴が居るか!

くそ…反撃出来ないのがストレスだ!とにかくナイフは弾き落として…!

 

「させるか!!」

 

「!」

 

突然私達とノアの間に2つの影が割り込み、迫り来るナイフを剣で弾き落とした。

…あ、あなた達は…!

 

「マンボシお兄様!リュウボシお兄様!」

 

フカボシ以外の王子達!フカボシは…お、ルフィの方に行ってくれたか、それは助かる…!

 

「お前との結婚なんかおいら達が認めるか!」

 

「我らのたった1人の妹!指1本触れさせんぞデッケン!!」

 

「そうだそうだ!しらほしちゃんは私の嫁だよ!!」

 

「「お前もか!!!」」

 

流石王子、息ぴったりだね。

 

「あいつに取られるくらいなら私が貰った方がいいでしょ?どう?この魚人島を救う代わりにしらほしちゃんを嫁に貰うってのは」

 

「こっちも相当厄介ラシド…」

 

「あ、あの、マンボシお兄様、リュウボシお兄様、私はーーーーー」

 

「バホ〜〜!!?お兄様達ィ!!?今正にしらほしが俺との結婚を決めかけていたのに!!」

 

あーもう!あいつほんとうるさいな!

大体私の嫌いなタイプなんだよデッケンは!身分の差だとか、高嶺の花だとかはどうだっていい、そんな無謀な恋は嫌いじゃないけどね…!好きだって言うのなら、せめて相手を幸せにしてみせるって気概を見せてよ…!ただ不幸にして、自分の物にする為に相手を傷付けて…そんなの、愛でもなんでもない!自分の欲を満たしてるだけじゃん!!

 

「しらほしちゃん!ノア、だいぶ魚人島から離れたよ!そろそろ横に逸れよう!」

 

「それはダメだ!周りは海山が多い…どこかにぶつける事なく海底へ戻さねばならない!ノアは傷付ける事も許されぬ舟ラシド!」

 

「うっさい!このまま真上に上がって、仮にデッケンが能力を解除したらどうなる!?例えば奴が何らかの要因で気絶したら!?その瞬間にマトマトの効果は切れるよ、そしたらノアは真っ逆さまに魚人島に落ちる!!…そうなってもノアを殴り飛ばす事は出来るけど、その衝撃でかなり損傷するのは間違いない!確実にノアと魚人島の両方を守りたいなら、海山でも何でも気にせずぶち当たりながら横に逸れるべきでしょ!!」

 

う…と言葉に詰まるリュウボシの肩にぽん、と手を添えて「ごめん」と一言謝る。

 

「あなた達からすればあの舟はとても大事な物かもしれない、何も知らない私がこんな事言うのは間違ってるのかもしれない。…だけど、私はあんな舟なんかより魚人島のみんなの方が大事だから。…それはあなた達も同じでしょ?」

 

「…そう、だな。…言い伝えに拘り過ぎるのは良くない…我々は過去を乗り越えなければいけないのだから」

 

「それにあんなばかでかい舟、ちょっとその辺の岩にぶつかった程度じゃびくともしないよ。…と言う訳だから、よろしく、しらほしちゃん!」

 

「は、はい…!お兄様、申し訳ありません…!」

 

…ん!?いや、ちょっと待って…!ノアにホーディが入り込んでない…!?

まずい…ホーディがここまで来たのはソレが狙いか…!そりゃそうだよね、自分もろともノアで潰そうとしたデッケンをあんな短気バカが許すとは思えない…っ!

 

あのままじゃデッケンがホーディに殺される!

 

「しらほしちゃん!全速力でノアに突っ込んで!」

 

「え!?で、ですが私がノアに近づけば…!」

 

「大丈夫、しらほしちゃんがノアより上にいる限り、どこまでも上へ上昇し続けるハズ!」

 

まずはホーディをデッケンから遠ざけないと…!デッケンが殺されちゃ面倒だ!

 

「リュウボシ達も来て!しらほしちゃんの護衛!」

 

「当たり前ラシド!任せてくれ!」

 

しらほしちゃんはそのままノアへ急降下し、シャボンの中へ飛び込んだ。デッケンが能力者だからノア全体をシャボンで覆って空気を得ているんだ。こんなでかいシャボン良く用意出来たな。

 

「おお〜!しらほしィ!お前から俺の下へ来てくれるとは!!やはり俺とけっこ」

 

覇銃(ハガン)!!」

 

「バホォ!?」

 

弾丸がデッケンの頰を掠めて飛んでいき、デッケンのすぐ後ろまで迫っていたホーディの肩を貫いた。

 

「ぐゥお…!?き、貴様…ァ!」

 

「お前の相手はルフィでしょ!出てけ雑魚鮫!」

 

「ガッ…ハァ!?」

 

腕を伸ばして腹を殴り飛ばし、シャボンの外まで退場願った。

ダメージ入れ過ぎたかな?あんまり私がダメージ与えちゃうとルフィとの勝負の邪魔になるからね。

 

「バホホホ!!危ねェな、お前がホーディ・ジョーンズを止めなければ、今頃俺は奴に刺されていた!バホホホ!!だから止めたのだろう!俺が死ねば!このノアは魚人島へ落ちるもんなァしらほしィ〜!!やはりノアはお前をどこまでも追っていく!どこまでもだァ!!…だが!俺はこう見えても紳士…!お前が俺と結婚すると言うのなら…」

 

「まだ言うか!妹はお前なんかに…」

 

「…デッケン様!!」

 

ガシ、とマンボシの体を掴んで言葉を遮ったしらほしちゃんが、珍しく力強い瞳でデッケンを見据えた。

王子達もいつもの様子とは違うしらほしちゃんに戸惑っているようだ。

 

「おォ…!俺の嫁になる決意を固めたか!!バホホホホホ!!」

 

「わたくしは、あなた様のお嫁にはなりません…!!」

 

「バホ!?」

 

ほら見ろ、いい加減しらほしちゃんも我慢の限界だったんでしょ。タイプじゃないって言われてるのにいつまでも自分を変えようともせずアタックするからだよ。

私はここを出る頃にはしらほしちゃんを嫁にしてウハウハする予定だけど!

 

 

「…わたくしは…っ、もう、イリス様のお嫁です!!!!」

 

 

「……へ?」

 

「「何ィ!!?」」

 

「バホォオオ!!!?」

 

ええええ!!?何この急展開はー!?し、しらほしちゃん…一体どうしたの!?堕としにいく前に堕ちたの!?

 

「こ、これから先…わたくしはきっと、大きく成長しなければならないと思います…!いつまでも泣き虫のままではいられない、怖がってはいられないと…!…ですが、そんな私を…臆病で、弱くて…何も為せないと思っていたわたくしを…イリス様は強いと、そう仰ってくれました…!わたくしの事を…言葉で、態度で…優しく包んで下さいました…!わたくしは、お嫁に行くのならイリス様が良いのです!ですから、あなた様のお嫁には、なりません!!!」

 

「そ、そんな風に思ってくれてたの…?私はただ、思った事を言ってただけで…」

 

「言っただけ、ではありません…。わたくしはイリス様に…そう“言って頂いた”のです…!…ですから…そのぅ…、わ、わたくしも……イリス様の夢に…お入れになってくれませんか……?」

 

ゆ、夢かな…何も意識せずにしらほしちゃんがこんな風に思ってくれるなんて…流石に思ってもなかった…。

…でもさ、そんな…そんな告白されちゃって…断れる私って存在すると思う?多分どの世界線の私を覗いても断ってないと思う、断言する。

 

「…勿論、当然…大歓迎だよ!!ね、お兄様!」

 

「うぐぐ…しらほしから告白するのは予想外ラシド…!」

 

「い、妹の幸せを願うのが兄としての務め…!だけど本当にこれで良いのか…!?いきなり過ぎて状況が…!」

 

うん、それはほんとにそうなんだけど…まぁいいじゃん、しらほしちゃん嬉しそうだし。

 

「…ば…ばっギャヤロー!俺の前でイチャついてんじゃねェぞ、しらほしィ!!お前は俺の物だろォ!?」

 

「はぁ…何年想い続けてたんだっけ、10年?はは、残念…寝取っちゃったねェ」

 

「き、貴様ァ!!…もう、いい…っ!!しらほし!!俺の物にならないお前など俺は耐えられねェ!!つまり死ね!!死んで俺の物になれェ!!しらほしィ!!!」

 

勢いよく投げてくる斧を蹴り飛ばし、しらほしちゃん達にノアのシャボンを出て横に逸れる様指示を出す。

護衛はリュウボシとマンボシに任せるよ…デッケンを私が見ていれば、残る驚異はホーディだけだし。なんならそのホーディもルフィが絶賛ボコり中だ。

 

「どこへ行くしらほし!!」

 

「おっと…お前の相手は私だよ」

 

再度投げつけた斧に覇銃を当てて弾き、デッケンとノアの上で向き合った。

 

「貴様…!貴様さえいなけりゃ、しらほしはこの俺の物になっボファ!?」

 

デッケンを蹴り飛ばしてノアの甲板へと飛ばし、私もそこに立った。

おっとと…しらほしちゃんを追ってノアが軌道を変えたからか、足場がぐらついてバランス取りづらいな…。

 

「そうやってさ、女のケツばっか追っかけ回してるから、あなたはいつまで経ってもしらほしちゃんに見向きもされない魅力皆無の人なんでしょ。…愛がどうとか、好きがどうとか熱い言葉を語るくらいなら…好きな女の幸せを願って、腕引いて前を歩くなりすれば良かったんじゃないの?」

 

しらほしちゃんやリュウボシ達のお陰で、ノアはゆっくりと進路を横に逸れて行く。

 

「…愛…!?そうだ、俺はあいつを愛していた!そりゃァ初めはしらほしの中に眠る“力”や竜宮城の金銀財宝が目当てだったが…10年の月日を得て!俺はしらほしに恋をしていたと気付かされた!!分かるか!?恋に気付いたと同時に失恋した俺の気持ちが!!そうなりゃもうしらほしには死んでもらう他ねェだろ!?何もおかしな事は言ってねェ!!」

 

「ーーーじゃあ、お前には分かるのか」

 

私に蹴り飛ばされた事で尻餅を付いているデッケンの下へ、ゆっくりと歩みを進めて行く。

必死に溢れ出そうになる覇王色を押さえ、それでも溢れて私の周りの空間がねじ曲げて揺らしながらも、1歩ずつ。

 

「10年も命の危険に怯えて」

 

「ッ…や、止めろ…!ま、待て!いくらノアが横に逸れたと言っても、こんなバカでかい船が下に落ちれば衝撃は魚人島まで届く!お前らが守ろうとしている物を結局壊すハメに…」

 

「大好きな母の、お墓参りにすら行けず」

 

ドン!と言葉を遮る様に強く足を前に出せば、ノアの甲板に私の足跡がつき、

 

「こ、壊れてるぞ!オイ!お前ら、その船守りたかったんじゃ…!」

 

「年頃なのに、行きたい場所にすら行けない…!!!」

 

「ヒィ…!!」

 

やがてデッケンの前に来た時、ノアは完全に魚人島の真上から逸れ、最早こいつに遠慮してやる必要など無くなった。

陽樹イブの光もノアの巨大な体躯が遮蔽物となり、暗闇が支配するその世界に、私の赤の瞳だけが鋭くデッケンを射抜いて離さない。

 

「私は分からない…!しらほしちゃんの苦しみも…そんな不幸を、あんな純粋な子に背負わせたお前の身勝手さも!!!」

 

押さえ込んでいた覇王色が爆発したかの様にあたりに衝撃が吹き荒れる。ノアを包むシャボンがその衝撃で震え、辺りに小さな海流が幾つも出現してすぐに消えた。

 

「しらほしちゃんは私が幸せにする。お前はもう、二度としらほしちゃんと関わるな。いや…私が、関わらせない…!!良く覚えとけネコ面、結局最後に泣くのは…私の嫁に、手を出した奴だって事を…!!10倍灰(じゅうばいばい)!!」

 

腕を後ろに振りかぶり、言い慣れたフレーズを口にした。デッケンは私の覇王色の圧で身動きが取れず、ただ体を震わせて私の瞳を見つめるだけだ。

これで終わりだ…しらほしちゃんの耐えた10年間も、こんな、クソ野郎も…!私が、終わらせてやる!!

 

「もう二度と、そのツラ見せるな…!去柳薇(さよなら)ァ!!」

 

「ッブボォ!!!!?」

 

2年前とは比べ物にならない威力で、10倍の別れを告げる拳がデッケンの顔面へと吸い込まれる様に刺さった。

まるで重さなど感じさせないスピードで吹き飛ばされたデッケンは、そのままの勢いでノアの船内へと通じる扉に激突し、それでも勢いが弱まる事はなく壁をぶち抜いて奥へと飛んでいく。

何枚も壁を破る音が聞こえ…やがて音が聞こえなくなった時、同時にしらほしちゃんを追っていたノアが落下を始めた。

 

「……だー!!スッキリしたーー!!!!」

 

ブン殴ってやったわ!みたかこのネコ面4本足野郎が!!バァーーカ!!!やっとブッ飛ばす事が出来たぁ!ふーー!!!きもちーー!!

 

「イリス様!!ノアが…!」

 

「…あ、うん!後は私に任せて!お疲れ様、しらほしちゃん」

 

ノアのシャボンに入ってきたしらほしちゃんが私を手の平に乗せる。

このまま下に落ちれば…私達が最初に流れ着いた海底に落ちるね、落ちた衝撃で魚人島のシャボンは結局割れそうだ。

 

「任せてとは言ったけど…」

 

しらほしちゃんの肩に掴まり、サンゴからシャボンを生み出して中に入りノアを覆うシャボンから出る。

 

「情けない事に私じゃ落下するノアに追いつけそうにないや、しらほしちゃん、全速力でノアの落下地点の海底までお願い!」

 

「は、はい!」

 

流石、速いね。ノアをすぐに追い抜き、魚人島も通り過ぎて私としらほしちゃんは海底に立った。

真上を見ればなかなか壮観、超巨舟が真っ直ぐ急降下してくるんだから笑いが出てきた。しらほしちゃんは涙目だけど。

 

「今のままじゃ流石にキツいな…。じゃ…… 女王(クイーン)化、と」

 

「わぁ…」

 

ぶわっ、と私の姿が一変した事にしらほしちゃんが声を上げた。驚きもあるけど、なんだか瞳が輝いてる様に見える。

 

私もこの変化は久しぶりだ。頭のティアラも、マントも、体格の変化も2年前と変わらない。

ただ…その内から出ているオーラは2年前と比べ物にならないけど。

 

「100倍で行こうか」

 

私の両方の手の平が巨大化し、真っ黒に染まった。

ノアはもう目と鼻の先…行くよ!!!

 

「よいしょォオ!!!」

 

グン!と腕を伸ばして落ちてくるノアを受け止めた。おお…!結構…重い…!!

でも…!!

 

「ふぐぐ…!止ま、れェ!!」

 

ノアの落下が遅くなる。よし…、けどまだまだ!!

 

「おりゃぁあああ!!!」

 

うおおおおいしょォオ!!!と全力で掛け声を上げ…そして、ついにノアは私の腕に支えられて落下を止めた。

 

「…さて、これをどこに下ろしたものか……って、あれ?」

 

あれ?何で?私が押さえた筈のノアが、今度は逆に上へ上がってる。

もう1回落ちてくる感じ?……いや、違う…!

 

「おおお…海王類…!!!」

 

ノアの船底から出る鎖をくわえて3頭の海王類がノアを持ち上げていた。これは…しらほしちゃんの力…?ここに来て覚醒したんだ…!しらほしちゃんの凄い力が!!

 

確かにこう見ると圧巻…いや…想像より大きかった…大丈夫だよねノア、丸呑みされないよね???

 

 

 

 

 


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