申し訳ありませんが、一度目を通してくれると助かります。
「いやー、魚人島、ほんとに来て良かったー!」
「そう言って頂けて嬉しいです。えへへ」
ルリスちゃん達やシャーリーと散々イチャイチャした後、興奮した頭を覚ます為に脇へ引っ込んでゆっくりお菓子を食べていたらしらほしちゃんがひょこっと顔を覗かせた。
少し表情も柔らかいし、頰も火照ってるから酔ってるのかな。
「しらほしちゃんは酔い覚ましでここに?」
「はい、飲み慣れないお酒で少しくらくらするので、お部屋に戻ろうかと思ったのですが、扉近くにイリス様が居たので…」
「ここだと宴の喧騒はあんまり聞こえてこないから、頭を冷やすには丁度良いと思うよ。あー、でも硬殻塔の方が静かだね」
それにしらほしちゃんも落ち着くならあの部屋にいた方が良さそうだ。何だかんだ言っても幼い頃からずっと過ごしてきた部屋な訳だし、居心地は良い筈だろう。
「…で、どう?本当の自由を手に入れた気分は。デッケンのボケは今頃ホーディと一緒に檻の中、命の危険も無くなった訳だけど」
「そうですね……んー…イリス様のお近くだと余り違いが分かりません…」
「えー…なんで?」
自分の命を脅かす存在から解放されてるのに違いが分からないって、鈍感なんてものじゃないと思うんだけど。
「…それは、イリス様のお近くなら…例え誰に命を狙われていても心から安心出来るからです。ですから、分かりません」
「…ふーん、つまりデッケンやホーディじゃなく、私に襲って欲しいって言ってるんだね?」
「えっ?」
そんな私を喜ばせる様なコト言ってさぁ。例えばここが硬殻塔の中で、しかも2人っきりって状況だったら間違いなく襲ってたね、うん。
「せっかく興奮を冷ます為にここに来たのに、しらほしちゃんが可愛いからまた火照ってきちゃった」
「も、申し訳ございません…あ、あの、すぐにお部屋に戻りますから…」
そんな本気で言った訳じゃないのに!涙溜めないで!ごめんなさい!
「…あ、イリス様、最後に1つだけ…」
「?」
「……ん。…、で、では私はこれで…!ま、また後で顔を見せます〜!!」
しらほしちゃんが私に顔を寄せ、頬に軽くキスを落とし…そして逃げる様に硬殻塔へ泳いで行った。
サイズ差のせいで唇を諦めたから頬にしたのか?その辺は良くわかんないけど…。
「あっぶな…」
頰を撫でながら1人呟く。
…体を倍加させて押し倒し、そこからしらほしちゃんの体を隅々まで犯し尽くしたい衝動に駆られたのを抑える事が出来てほんと良かったぁ…こんな場所で盛ってたら、仮にネプチューンにでも見つかったらヤバイ。娘さんを下さい所の騒ぎじゃなくなるよ…。
でも今のはしらほしちゃんも悪いよね、可愛すぎるのも罪だと思うんだよ、私は。
「あら、イリスも休憩?」
「ナミさん!うん、興奮冷ましにちょっとね。まぁ…冷ます所か余計火照っちゃったけど」
少しばかり頰が上気しているナミさんが、ふぅ、と息を吐いて隣に座る。
「?まぁいいわ。私は酔い冷ましで来たの、ちょっと膝借りるわね」
そのままごろん、と私の膝を枕にして寝転がったナミさんが、上を向いて手を伸ばし私の頰をぷにぷに触り始めた。
「どうしたの?何だかいつもより甘えんぼさんだね」
「だって…人魚達を嫁にする邪魔をしたく無くてあんたから離れてたから…今くらいは引っ付いていたいじゃない」
「いつでも引っ付いてていいよ?ナミさんなら」
頭を撫でると、ゆっくりと気持ちよさそうに目を閉じるナミさんを見て口元が緩む。こんな甘えてくれるナミさんは珍しすぎるから今は存分に甘えて貰おう。
今日は魚人島に着くまでの航海の疲労も溜まってたんだろうし、なんならここで一眠りして貰っても構わない所存です。
「イリスちゃんの匂いを辿って来てみれば…これはかなり珍しい状況ね。ナミちゃんは寝てるのかしら?」
「あー…慣れねェモノを飲むんじゃ無かった。頭が痛い…」
ミキータとペローナもここへやって来た。2人とも酔い冷ましかな?
「まだ寝てないわよ、寝そうだけど」
「寝てもいいのに…」
「今寝ちゃったら夜に寝れなくなっちゃうから我慢するわ」
そんなぁ…私の膝で眠るナミさんの頰をつついたり、こっそりキスしたりするドキドキ感を味わいたかったのに!
「うっぷ…もう入らねェ……」
お腹を膨れ上がらせたウソップがふらふらと歩いて来て大の字で寝転ぶ。やっぱりみんな休憩するならここに来るんだね。
「はァ〜…♡」
今度はチョッパーがサンジを連れてやって来ていた。これは何冷ましだ?私と同じかな。
「ここは楽園だ…オールブルーだ…!」
「それでいいのかサンジ!?」
突っ込みつつも寝かせたサンジを団扇で扇ぐチョッパーを横目で見ながら、ナミさんの髪に指を絡ませたりして感触を楽しむ。
みんなも普段私を愛でる時こんな感じなのかな…そりゃあハマるよね、なんだか尽くしてるーって感じで心が満たされるというか。
「はー…飲んだ飲んだ。…あん?なんだ、お前らもここに居たのかよ」
次はゾロか…じゃあ今度はルフィかな、とか思ってると本当に来た。何やら大量のお菓子を抱えてジンベエと共にやって来たが、休みに来たって感じじゃなさそうだ。
「ここってほんとに人を集めるオーラでも出てるのかな」
「それってイリスちゃんみたいね。ペロちゃんもそう思うでしょ?」
「お前はいつまで私の事をペロちゃんって呼ぶんだ」
まぁ、ペロちゃんが似合う可愛いペローナちゃんの話は今は置いておいて、どうやらルフィとジンベエは、ジンベエがルフィの情報力に不安を抱いたから今現在の世界のアレコレを話そうとここまでやってきたみたいだ。
ゾロは寝ちゃったけど、サンジはトリップから帰ってきてるからみんなで話を聞くとしよう。ロビンはネプチューンに話があるからとこの場には居ない…というのはミキータに聞いた話だ。ブルックは多分まだ宴。
「何から話せば良いか…、ルフィ、お前さん…赤犬と青キジの“大決闘”は知っとるのか?」
「え、赤犬と青キジの大ゲンカ!!?」
「何ソレ、私も知らない!」
赤犬と青キジが決闘ォ?どうして同じ海軍に所属する…しかも三大将の2人が決闘なんて…。
そりゃあ青キジって大将としては…というか海軍全体で見てもおかしな奴だったけど。
「どうしてイリス君も知らないんじゃ、一体どこで修行を積んでおった」
「私はシャンクスんとこ」
「そうか、四皇の……ん?」
私の言葉にジンベエは一瞬固まり、ナミさんやミキータ達もギョッと目を見開く。
因みにナミさんはそれでも私の膝から移動はしなかった。これ、2年間会えなかった分のも含めてくっついてるんだって今気付いたよ。
「なるほど…あの時、シャンクスがくれた服が〜って言ってた理由が分かったわ」
「因みに白ひげも居たね」
「親父さんもか…。お前さんの為に四皇が2人も時間を取ったのか…世界政府がこの事実を知れば卒倒しそうじゃのう…」
ルフィとサンジ、ゾロにはエースを助けてるって話をした時に白ひげの話はついでに言っていたが、シャンクスの話はしてなかったからルフィは珍しく話をきちんと聞いている。
…あ、そうだ、ジンベエにはエースの事も伝えておかなきゃ。
「あと、エースも助けてるから生きてるよ。伝えるの遅くなってごめんね」
「何じゃとォ!!?」
「うわっ!」
グワッと身を乗り出してきたジンベエに驚いて跳ねそうになる体を何とか堪えた。ナミさんの頭が私の膝に乗ってるんだから下手に動けないし。
「本当か!?」
「こんな嘘付くわけないじゃん。多分そろそろ記事にもなると思うよ、シャボンディで暴れてたから」
「しかし、一体あの時どうやって…それにエースさんは確かにわしらの目の前で…」
Mr.3の作った蝋人形なんだけどね、アレ。
説明すると長くなるから、とにかく生きてるとだけ伝えておく。ルフィとサンジもそれについては本当だとジンベエに言ってくれたので、割とすんなり受け入れて貰えた様だ。
「…お前さんは、何というかとんでもない奴じゃのう…。あれ程の戦争の中、エースさんと親父さん2人を命の危機から救っておるとは…」
「いいよ、そういう評価はさ。エースはルフィの家族だし、白ひげは死ねば悲しむ人が沢山居たから助けた、それだけなんだから。それよりさっきの話に戻ろうよ」
「わしとしてはそう簡単に切り替えられる話でも無いんじゃが…」
そうは言われても切り替えて貰わなきゃ…青キジと赤犬の決闘の話は気になるし。
「…とにかく、エースさんは生きておるんじゃな…?」
「うん。ピンピンしてるし、めっちゃ強くなってるからもう捕まらないよ」
「…そうか」
堪え切れなかったか、出てきた涙を指で拭ってジンベエは私に頭を下げた。
「魚人島の件だけではなく、エースさんの事までイリス君には返し切れぬ恩が出来てしまった…!!本当にありがとう…!!!」
「もう…良いってば」
困った様に笑えば、ジンベエはそんな私を見て涙を流しながら軽く声を出して笑った。
「恩を着せない立ち振る舞いは、ルフィにも似とるな」
「ジンベエが男だから何も要求しないだけだよ。美女だったら嫁になって貰ってるトコロ」
美女だったらね?実際は筋肉凄い男性だから興味ないけど。
「シャンクスは元気だったか?」
「そりゃあもう。宴会ばっかりしてたんじゃないかな。あ、でもやっぱり強かったね、飲んだくれってだけじゃない」
「そっか、なら、もういいや。後はいつか会った時に、この麦わら帽子を返す時にでも聞くよ」
ルフィらしい返答に、私もみんなも軽く笑った。
普通はここで根掘り葉掘り聞く所だっていうのに、私達のキャプテンはやっぱり大物だよね。
「大分逸れた話を長引かせてしまって申し訳ない、そろそろ話を戻そうか」
お、やっとか。
私が気になる所といえば…やっぱり決闘の理由よりは勝者が気になる。
青キジと赤犬だったら能力的にやっぱり青キジか不利なのかな?
「赤犬と青キジの決闘じゃが…事の始まりは2年前のあの戦争の直後、センゴク元帥が職を下りてから起こった」
センゴク…戦争で海軍の指揮をとってた人だ。大仏にもなってた気がするから能力者…のハズ。
「センゴクは次期元帥の座には部下からの信頼も厚い青キジを推したが…政府上層部には赤犬を推す者が多く有力になった。普段は特にやる気など見せん青キジじゃが、赤犬が元帥になる事は強く反発した…」
私と戦う時ノリノリだったけどねぇあのヤロ!
「2人は対立し、前代未聞、大将同士の抗争はついにある島での“決闘”にまで発展した。死人に口なし、敗者には一切の口出しは出来ぬ…海軍の指揮は勝者の手に委ねられる」
「……!」
「10日にも及ぶ死闘はもはや世界の語り種、実力はほぼ拮抗したが、決着は…ついた。勝者は「赤犬」!!海軍の“新元帥”はサカズキじゃ…!!」
ルフィが胸の傷を押さえて顔を顰めている。あのバツ傷赤犬にやられたのか…。
「それで、青キジはどうなったの?」
「両者壮絶な深手を負い、目の前で立ち上がらぬかつての同志に流石の赤犬も情けをかけた…。ーーーー赤犬の下になど就けぬ青キジは…海軍を出たわい」
げ…てことは青キジってもう海兵じゃないのか…!
うわぁ…青キジを縛る物が何もないとか恐怖でしかないんだけど…!…まぁ、生きてるなら良かったけどさ。
「政府にしてもでかい戦力を失ったといえる。…じゃが、その穴を埋める為に政府の取った“策”は「海軍」に思わぬ力を与えた…!!ええかお前達…この2年の“新世界”で最もデカイ変化を2つ覚えておけ。1つはサカズキ元帥率いる「海軍本部」はより強力な正義の軍隊になっておるという事。ーーーもう1つは、“狂神海賊団”の進撃じゃ」
「狂神……。レイ…!」
「奴は大将“黄猿”をも凌駕する強さを持ち、気分で1つの島を滅ぼした事もある…まさに狂人。奴の仲間も全員が全員厄介な力を持っておる…奴に狙われれば終わる、そう噂が広まり…やがては“狂神”と呼ばれるまでに至った」
安城さんめ…せっかく黒ひげを倒したってのに、何でそんな世界を引っ掻き回す様な事をするの…!
「狂神の起こした事件は謎が多く、政府も狂神の能力を特定出来ておらん。1度…この事件も気分で国を潰そうと考えた狂神からその国を救おうと海軍が派遣されてな…黄猿もこの時任務に居たんじゃ」
「じゃあ、黄猿はその時に…?」
「ああ。海軍が国へ突入した時…何故か国民達は全員武器を持っていたらしい」
「レイ達に…自分達だけで突撃しようとしたの?」
命知らずにも程がある、と思って口にした言葉は、ジンベエが軽く首を振った事で否定された。
「国民達は…武器を持ってこう叫んだんじゃ。ーーー『出て行け海軍!』」
「はぁ?」
これには私だけじゃない、他のみんなも驚いて目を見開いていた。
だってそうだ…訳が分からない。助けにきた海軍を追っ払うメリットがあるのか?しかも国を壊されそうになってる国民達が。
「脅されている訳でもなく、国民達は進んで海兵達へと突撃し、武器を振るった。ただの国民が暴れ出した所で海軍の兵士は脆くは無い、普通ならば拘束するのは容易いだろうが…奴らは強かった。女子から老人まで、皆達人の様に強く…1人、また1人と倒れていく兵士達。やがて狂神がその場に現れた時には国民達からの熱い歓声を浴びていたという」
つまり…何故か国民全員がレイの味方をしていて、しかも1人1人がめっちゃ強く…更にはレイまで登場したから黄猿も負けたって事か。
…荒唐無稽な話でいまいち良く分かんないんだけど…つまりレイにはその短期間で国民全員を味方に付けるカリスマ性…もしくは、そうさせた“何か”があるという訳だ。
「今ではその危険性の高さもあり、『四異界』…そして『四皇』の1人でもある」
四皇…シャンクスや白ひげと同じ…!
「四皇という立場にはおるが、実力は未知数…。お前さんらも新世界に行くのなら、この狂神には気を付ける事じゃ」
…でも、そいつは前世から来てしまった私の…王華の知り合いだ。
奴がこの世界を狂わせているのなら…いずれは相見える事もあるだろう。その時は……倒さないと。
「………、ん?」
不意に、しらほしちゃんの居る硬殻塔から何かの気配を感じた。
…嫌な感じ、ちょっと様子を見てこようかな。
「ごめんナミさん、ちょっと用事できた」
「…まだここに居ちゃダメなの?」
「ぅ…そ、そんな目で見るのは…ズルイ…」
ナミさんの普段はお目にかかれない上目遣いは私に刺さるからぁ!
「なんてね、冗談よ。はい」
「もう…ありがとう」
ナミさんの頭が私の膝から離れるのはかなり勿体なさを感じるけど…見聞色に引っ掛かったこの気配が気になるんだよね…。
ルフィとサンジも気付いたらしく、ゾロを引っ叩いて起こし一緒に硬殻塔へと向かう。
…何事も無ければ良いんだけど。
申し訳ありません、今まで2日に1話更新していた所を、次の話から4日に1話の更新とさせて頂きます。
ずっと、という訳ではなく、多忙の為執筆をする余裕が無くなり、ストックが足りなくなって来たからなので、またどこかで更新速度は元に戻ります。
出来るだけ早く通常運転に戻れる様努力しますし、靴も舐めるので許して下さい。