ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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飴が美味しいです!


158『女好き、“四皇”ビッグ・マム』

とにかく急いで硬殻塔へ向かった私達は、バン!と勢いよく分厚い扉を開いて中を見る。

その瞬間にルフィ達は顔面を蒼白にし、ふいっと目を逸らした。……私から。

 

「んん〜〜っ!!」

 

「ケヒヒヒヒヒィ〜!!そーんなに恨めしい顔しちゃあやだよォ〜、お姫さ〜〜ん!なァに、痛くしねェし苦しくもねェ…財宝頂いて、人魚売るのも面倒になったがお前は特別だよォ〜〜オ。ち〜〜ょっっと気絶してて貰うだァけよォ〜〜う!島の港に弟達が着いたと連絡があったァ!一緒に行こうぜ、“新世界”!!」

 

カリブーが、その姿を泥に変えてしらほしちゃんの口を塞ぎ、自分の体へと取り込もうとしていたのだ。

…てことは、入り江の人魚を誘拐しようとしたのもやっぱりコイツか…、はぁ。

 

「オイ」

 

「あァ〜ん??……げ〜〜ェッ!!?じょ、女王ォムグッ!?」

 

手の平を倍加させてカリブーな顔面を鷲掴みにし、ズルズルと引っ張ってしらほしちゃんから離す。

そのまま硬殻塔を出て腕を振りかぶった。

 

「どっか行けこのクソ野郎ォーーーー!!!!」

 

「あああああああああああ!!!!?」

 

ブン!!と高速で投げ飛ばされたカリブーが、竜宮城のシャボンを突き破って魚人島に落ちてった。

やば、つい投げ飛ばしちゃったけど拘束した方が良かったよね…。

 

「しらほしちゃん、ごめん…気付くの遅れて」

 

「うぅ、イリス様ぁ!え〜〜ん!恐ろしゅうございましたぁ〜〜!!」

 

しらほしちゃんの所へ戻れば、大きな手の平でぎゅっと私の体を握って顔を擦り寄せて来た。

泣かせちゃってごめんね、ほんとに…。

 

「姫〜!何かあったのですか!!?」

 

「あ、右大臣」

 

タツノオトシゴの人魚の右大臣がいつもの様に慌てて駆けつけて来て、私に縋り付くしらほしちゃんを見るなり事情を尋ねてきたので軽く答える。

まー私もよく分かんないから、カリブーっていう泥の海賊がしらほしちゃん襲ってたからブッ飛ばした、とだけ。

 

「泥の…!危なかった、重ね重ね礼を言う!!財宝泥棒め、まだ城内におったとは…!!普段はメダカ1匹侵入不可能の城だが、戦いの最中門は開いたままで…!」

 

「ふーん……、ん?財宝泥棒?」

 

「ああ…泥に変化する不思議な男が人魚誘拐の犯人だと見つかった人魚達から聞いていたのだ。ソイツは城の財宝を全部盗み、人魚達を開放したと…」

 

じゃあ、あいつの体の中にはまだお宝が一杯あるわけか…。せっかくだし、ナミさんへのお土産にその宝も取り返しちゃおうか。

 

「私ちょっと魚人島に降りてくる」

 

「イリス様…何処かへ行かれるのですか…?」

 

「うん、お宝獲りに。ねえ右大臣、カリブーから財宝取り返したら貰っていい?」

 

「ふむ、国を救ってくれた恩人だ、いいとは思うが…一応国王様に確認しておこう。私からもお願いしておく」

 

それは助かる、有能な大臣でネプチューンも鼻が高いね。

しらほしちゃんの頰にちょっと行ってくるね、とキスをしてメガロを連れ竜宮城から飛び出した。

ちなみにルフィ、ゾロ、サンジも同行してくれている。あのまま残っても私1人に行かせたのかとナミさん達に怒られるだろうから、という理由らしい。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「あ、いたいた」

 

「おー!すげーなァイリスの見聞色!」

 

あの後、魚人島に降りてからすぐに全力の見聞色を使ってサーチをかけ、難なくカリブーを発見する事が出来た私達は、投げ飛ばされて気を失っているカリブーの周りに散らばる財宝を袋に詰めていた。

 

「こりゃあスゲェ量散らばってんぞ!?本当に全部俺達にくれるのか!?」

 

「すげ〜!肉いっぱい買えるな!」

 

「あの沼みてェな体にコレ全部入れてたのかコイツ…」

 

空島の時に持ち帰った宝より多いし、素人目で見ても分かるくらい価値が高そうなモノばっかりだ、これはナミさんも喜んでくれるハズ!

 

「本当にこれで最後なのかな?まだ出てくるんじゃない?おら!」

 

ボコ!と奴の顔面を殴ると腹からポロン、と金のネックレスが飛び出してきた。ほら〜!まだあるってコレ!

 

「すごい!殴る度にお宝が出てくる!」

 

「「鬼かお前…」」

 

ボコボコと殴る度にポロポロ落ちる宝石。

…あ、出なくなった。

 

「よし!これで本当に最後っぽい!竜宮城に戻ろっか」

 

ずっしりとした重さの袋を背負って、私達はメガロに乗った。おー、メガロも重そうだね。

 

「私達もさ、2年振りの再結集を祝して何か宴やらない?新世界行ってから!」

 

「それいいな、イリスちゃん。金ならここにたんまりとある、良い食材で絶品の料理を御馳走するよ」

 

「酒も忘れんなよ」

 

「肉〜!!!」

 

よし、決まり!新世界に行く前に魚人島で色々食材買って行こうか!

 

「…ん?なんか人だかりが出来てる…」

 

「んん?」

 

メガロの体から身を乗り出して下を見れば、左大臣と…ライオン?が何やらお菓子工場の前で話し合いをしているようで、その様子を見て国民達が集まって来ている様だった。

それにどうもあれは話し合いと言うよりは…脅迫っぽい。左大臣がずっと下手に出てる所から、相手の方が立場が上だと分かるし。

 

「メガロ、降りて」

 

「シャ」

 

ぽんぽん、と頭を叩いてメガロを促し、人が集まるその場所に降りて左大臣に近づいて行く。

この島で知り合った人が困ってるなら、何か力になれない物かと来たんだけど…。

 

「おお!麦わらのルフィ!女王イリス!!」

「イリスさーん!宴は終わったの〜?」

 

「終わった…のかな?キミ可愛いね!どう?嫁に来ない?」

 

キャー、嫁に誘われちゃったー!と頰に手の平を添えて人混みに紛れていく人魚の女の子。ちょ…違う違う!ファンサじゃない!!ガチ!!

 

「ルフィ君達…何故ここに?」

 

二足歩行のライオンと話していた左大臣も私達へと視線を移して尋ねてきたので、財宝泥棒の奪ったお宝を奪い返しにきた、と伝える。勿論、このお宝を貰うってこともついでにね。

 

「それにしても魚人島のお菓子最高だったぞ〜!もうねェのか?」

 

(あ、む、麦わらさん…っ)

(それは言わないでくれ〜っ)

 

すっごい小声で国民達がしーっとポーズを取りながら言って来る。どうしたんだろう?

 

「オイ小僧!お菓子ってのは何の話だ!?」

 

「誰だお前、魚人じゃねェな!お菓子買いに来たのか?おれもたった今腹一杯食って来ちゃったよ!!」

 

「何!!?どういう事だ!お菓子を食ったと言ってるぞ!!」

 

ガオ!と左大臣を問い詰めるライオンがサングラスを外してスゴんだ。でもサングラスの下はなかなかつぶらな瞳…ナミさんが好きそうな可愛さだ。

 

「どういうこと?お菓子が欲しいなら貰えばいいじゃん。丁度ここお菓子工場の前なんだし」

 

「それが無いから困っているのだボン」

 

近くで話し合いを見守っていたライオンの仲間が話に割って入ってきた。なんだこの人の体…タマゴのカラに下半身突っ込んだみたいな…。

 

「失礼、自己紹介が遅れたでジュール。手前、タマゴ男爵と申しまソワール!」

 

「タマゴ男爵ねぇ」

 

帽子を被っているのかと思いきや、頭の上に皿を置いて、その皿に飲み物が入ったマグカップを置いていただけだった。

飲む時だけ頭の上からマグカップを取って飲んでいる。…いっつもこんな感じなのかな、この人。雨の日とか大変そうだけど。

 

「で?お菓子が無いと何が困るの?よそで買ったらいいじゃん」

 

「そうもいかないのでジュール、工場にある大きなマークは我らがボス、大海賊シャーロット・リンリンの海賊旗なのでソワール。その工場で作られるお菓子を毎月10トン我々に渡す事で、この島が「四皇」“ビッグ・マム”のナワバリである事を示している。つまり、魚人島は今ビッグ・マムの名で守られているのだボン」

 

なるほど…用心棒みたいなものか。10トンってどれだけ作らせる気だよ…、

それに、ビッグ・マム……、私が今1番用のある四皇じゃん。

 

「だったら良い考えがあるよ。次のお菓子が出来上がるまでは私がこの島を守るから、それまではビッグ・マムもこの地を守らなくて良い。それでどうかな」

 

「ダメだ!ガオ!今この時もこの国は、島は!ママの名前で生かされている!白ひげの名が意味を持たなくなった年…この島の治安が悪くなったのは島に住む国民達が良く知ってる筈だ」

 

「むう…とりあえずさ、あなた達んトコのサアヤって人に会わせてくれない?」

 

店長呼べよ!みたいなノリで言ったんだけど、タマゴ男爵は頭の上にカップを乗せてため息を吐いた。

 

「多少姿形は変われども、その内に眠る強さまでは変わらないのであるブプレ。黄身が『四異界』の1人…“一騎当千の女王”である事は一目で分かったソワール。しかし、だからと言っておいそれとサアヤ様は表に出る事は無い。ママと同格の強さを持ちながら…欲が無いのか、それともソレ自体が欲なのか人に尽くすのが大好きな彼女は、基本裏で手前達を取り纏めているだけだボン」

 

「どーでもいいよそんな事情は。何ならビッグ・マムんとこ行って暴れたって良いんだよ?負ける気しないし」

 

「慢心し過ぎるのは半熟者の証だボン…ママは黄身に負ける様な女性ではないでジュール」

 

面倒だなぁこいつ!!

 

「みんなも何とか言ってやってよ!」

 

「因みにだがタマゴ野郎、その菓子がビッグ・マムの下へ届けられないとなると、一体どうなるんだ」

 

そりゃービッグ・マムの後ろ盾が無くなって、魚人島がやばいんでしょ?でもそれは私が守るってさっきから…。

 

「魚人島と結ぶ協定の決裂、そして後日…ビッグ・マム海賊団の猛者共がこの「魚人島」を滅ぼす事になるブプレ!」

 

「はぁ?」

 

何ソレ…!そんな事になったら、どうやったって罪もない国民達を巻き込んじゃうじゃん…!

お菓子の為だけにどこまで自分勝手なの…ビッグ・マムは絶対嫁になんかしないって決めたし!!

 

「魚人島を滅ぼす〜!?バカかお前ら!お菓子で国が滅んでたまるか!!この島は今助かったばっかだぞ!!」

 

ルフィが怒りを露わにして2人に詰め寄ろうとした時、タマゴ男爵が持っていた電伝虫が『プルプルプル…』と音を出した。

 

「…!きっとママだ、ガオ。さっき状況を知らせといた」

 

「……おい、ペコムズ」

 

「アンタ出ろよ!俺怒られんのやだ」

 

ライオンの名前はペコムズか…。いや、それよりあの電話の向こうに居るのがビッグ・マムという事が重要だよね…。

 

「ルフィ」

 

「ああ」

 

私が何を言うまでもなく、ルフィはスタスタと電伝虫を前にあたふたしている2人に近付き、そして受話器を取った。

 

「もしもし!お前、ビッグ・マムか!?」

 

「「オイオイオイオイオイ!!」」

 

「はい邪魔しないでねー」

 

そのまま通話を続けようとするルフィを止めにかかった2人の体を掴んで、ずるずるとルフィから離した。私も後で代わって貰わないといけないんだから…邪魔されたら困るんだよ。

 

「ぐゥ…!俺達2人をこうも容易く…!」

 

「これだから『四異界』は厄介なのでソワール…!」

 

はいはい、四異界でも何でも良いから大人しくしててよね。

 

『…誰だい?タマゴでもペコムズでもないね…』

 

「おれはモンキー・D・ルフィ!!海賊王になる男だ!!」

 

『モンキー・D……?ああ…ガープの孫かい、思い出した…。2年前戦争を引っ掻き回した小僧だねェ…』

 

あの戦争は私も色々やってやったって自覚あるからね。結末まで変えたんだから相当な事してると思う。…自分で言うのもアレだけどさ。

 

「お菓子はねェぞ!!!おれが全部食った!!!」

 

『!…やっぱり本当に無いのかい…!?10トンあったハズだが!?』

 

「10トン全部食った!!!」

 

魚人島を庇ってるのか、ルフィらしい返答の仕方だ。なんだかルフィなら10トンくらい食べれるんじゃない?と思わせるのは普段の食べっぷりのせいだろう。

 

『バカだね、ウソつくんじゃないよ…魚人共を庇ってるねェ、お前』

 

「でも食ったのは本当だ!そんな約束のお菓子だったって知らなかったんだ!あ、おれ達今いっぱい財宝持ってるからよ、これ全部やるよ!お菓子の弁償する」

 

「ええ!?」

 

それは私が困るんだけど!それナミさんへのプレゼントだから!

 

『財宝なんざ食えるか!オレは甘いお菓子を食べたいんだよ!!』

 

よしよし、このままの流れなら財宝は渡さなくて済みそうだね!

……なーんて思ってたら、私に拘束されてるタマゴ男爵が声を張り上げてビッグ・マムに話しかけた。

内容は…どうやら現在、ビッグ・マム海賊団はお金に困っていたらしい。キッドに海賊船を2隻沈められたとかなんとかで。それはまぁ何とも都合の良い事だけど…タマゴ男爵はそのお金と引き換えにお菓子はあと2週間くらい待ってはどうだろうか、と提案した。

 

『フザけんじゃねェよタマゴ!!みっともない発言をよくも!!欲しい物を妥協する海賊がどこにいる!?』

 

「す、すみまソワール!!」

 

『ーーーとはいえ、ハハハ…このオレに盾つくそのガキに興味が湧いた。望み通り今回の件…標的を魚人島からお前達(・・・)に替えてやる!!…来な、“新世界”へ!』

 

このままだと財宝全部持ってかれそうだ…ナミさんには申し訳ないけど、それで魚人島が狙われないのなら…まぁ、良いか。じゃあそろそろ…、

 

「ルフィ、私も」

 

ルフィが持つ受話器を受け取って、徐に口を開いた。

 

「もしもし、私イリス、知ってる?」

 

『ーーー今度はお前かい、女王。ああ…良く知っている、オレの他にも“女王”と呼ばれる女の事だからね』

 

それは光栄だ。

…ん?てことは私の存在って四皇全員に認知されてるんじゃない?割と凄い事になってる…。

 

「言いたい事と、伝えて欲しい事が1つずつあるから、まずは言いたい事を言うよ。…魚人島はあなたのナワバリらしいけど…そんなお菓子1つで私の嫁がいる島を滅ぼされちゃ堪ったモンじゃないからさ。“そっち”に行ったら…あなたをブッ飛ばして、魚人島は私のナワバリにする」

 

『…マ〜ハハ…!!…やってみろよ…!』

 

その言葉には、少なからず緊張が含まれている様な気がする。

私と同じ『四異界』のサアヤが自分と同じ実力だから…私も警戒するのは当然だろうけど。

 

「伝えて欲しい事は…あなたのトコに居るサアヤって人に向けてなんだけど」

 

『同じ『四異界』と呼ばれる存在が気になるって事かい、だが娘がその話を聞くかどうかは分からねェ…マ〜ママ…!何せウチの武、知の両翼を担う女、戯言なんざ無視されて終わりだ』

 

「はは、そうだね。無視されるかも分からないから気軽に伝えておいてよ。内容は……『イリスが王華を連れていく』…でいいかな」

 

ビッグ・マムは『オウカ…?』と疑問符を浮かべていたが、こんな訳が分からない伝言なら、逆にきちんと伝えてくれるだろう。

この言葉を伝える事によって、私に何か利益がもたらされるってのがバレバレの内容になっちゃ伝えてくれないだろうし、これで良いハズ。

 

「じゃあ、お願いね」

 

そのままブツ、と受話器を置いて、私達は背負っていたお宝を詰め込んでいる袋をタマゴ男爵とペコムズの前に置き、左大臣と国民達に軽く手を振ってまた竜宮城へと戻っていったのだった。

 

…サアヤ…やっと掴んだ初めての手掛かり…!お願いだから本人であって下さい〜!!

 

 

 

 


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