ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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163「女好き、入れ替わり一味」

「見て見て!このケンタウロス達、あったかそうな服!」

 

「おおお…!助かるぜー!」

 

流石にこいつらも寒いのか、みんなコートを羽織っていた。こんなのが着ていたのをロビンに着せるのは普通にイヤだけど…仕方ないか…凍傷とかになるよりずっとマシだ。

ハーピー美女はこの地に来ても全く体に変化が無い。例えば身の震えだとか、肌が赤く火照るとか…寒さに強すぎでは?一応コートは着せたけど。

 

「あ、おい、ブルックが来たぞ!おーい!ブルック〜〜!!」

 

丁度みんなが奪ったコートを着た時、ルフィが遠くから走ってくるブルックを見つけて手を振る。

ブルックも誰かから奪ったのか、あったかそうなコートを身に纏っていた。まぁ…ブルックは骨に直だからね…あれ?じゃあ逆に寒く無いのでは??

 

「皆さん!ご無事で何よりです…!ヨホホホ!」

 

「ブルックもね。…ただ、ナミさん達が行方不明なんでしょ?…こら、起きろ!」

 

ドカッ!と倒れている茶色いヒゲの下半身が巨大ワニになってる男の腹を蹴り上げれば、呻き声を上げて咳き込んだ。

 

「私の嫁が攫われたらしいんだけど、どこに攫われたか知ってるんじゃないの?」

 

「ハァ…ハァ…、ぐ…黙れ、俺は何も口は割らん…!」

 

「…口を割らない?なんで?誰かに指示されてるから?それともあなたも『CC』って組織の一員で、ナミさん達を攫った奴の部下だから?仲間は売れないから?忠義があるから?……そういうのはどうでもいいからさぁ、早く教えてよ」

 

更に強く蹴りつけ、雪の積もる地面をその巨体が転がっていく。

吐くまで続けるからね…誰を攫ったのか…そうする事で何が起きるのか…その身をもって特と味わえクソ野郎が…!

 

「ま、待てよイリス!何も今そいつから全てを聞く必要なんてねェだろ!ブルックの見たっていう建物に案内だけしてもらおう!」

 

「……それもそうだね。いまいち納得は出来ないけど……、…って事だけど、それくらいはしてくれるんだよね?」

 

顔の横に刀身の長さを倍加させた小太刀を突き刺す。ワニタウロスは真横で光る赤い刃を見てびくっと体を震わせ、額から大量の汗を流した。

 

「私達を…お前らのアジトまで運んで。嫌だって言うのならここでお前らを皆殺しにして探す事にするよ。ついでにそこにいる奴らも全員殺す」

 

「…ウォッホッホ…!俺達はともかく…“あのお方”を殺せる訳がない…!」

 

「殺せる訳が無いのなら、連れて行ってもいいでしょ?」

 

まぁ実際殺せないんだけど。私殺人とか無理だし。

 

「…分かった…連れて行く…!だから部下に手を出すのは止めてくれ…!」

 

「へぇ…部下思いだね、そういうのを本心で言える人は嫌いじゃないよ。ほら、立って」

 

腕を掴んで無理矢理立たせ、みんなでワニの尻尾付近に座る。ルフィだけそいつの肩に乗ったけど。

「なはは、イリスは怒ると容赦ねェからなァ」みたいなコソコソ話が聞こえてきた。前から言ってるけど、私の嫁に手を出さなきゃ別に怒ったりしないっていうのに…。

 

「ほら、早く走って」

 

「ぐ…屈辱だ…!こんなワケの分からない格好をした小娘に…っ」

 

「誰が小娘だこのワニが…!」

 

「だーっ!お前らいい加減にしろよ!おっさん、良いから早く行った方が身の為だぞ!」

 

「わざと道を間違えようとすれば私が許しませんよ、一応ここまで走ってきましたから、道は覚えています!」

 

逃げ道を次々に塞がれ、ワニはようやく走り出した。

ナミさん達…無事なら良いけど…!

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

ブルックの言っていた大きな建物、その近くから激しい戦闘音が聞こえてきたのでまずはそこへ向かえば、何故か陸地でひっくり返って真っ二つに斬られている海軍の軍艦と、その近くに立つ男…えーっと、あ、私やルフィ達の手当てをしてくれた人じゃん!

 

「あれ〜!?お前は〜っ!!おーい、お前じゃんかー!おれだよおれ〜〜!あん時ゃありがとなー!!」

 

「名前なんだっけ…ロー?」

 

「ええ、トラファルガー・ローよ」

 

そうそう、そんな感じの名前。

ローがそこに立っていた。

 

「あいつよー、2年前の戦争からおれを逃がして、傷も治してくれたんだ!」

 

「傷を…!?」

 

ロビンが驚いた様に声を上げる。まぁ…ぶっちゃけシャボンディで会っただけの人の為に、命を懸けて救い出しただけじゃなく傷の手当てまでしてくれたってんだから驚くよね。

 

「ジンベエと同じ様にあいつも命の恩人なんだ!」

 

白ひげや私の事も見てくれたし、目的は分かんないけどね。ただ優しいってだけなら話は簡単なんだけど。

 

「こんなトコで会えるとは思わなかった!あん時ゃ本当にありがとう!…あれ?喋るくまは?」

 

ワニ男から飛び降りてローの所へ駆けていくルフィに私もハーピー美女をロビンに預けてからついていく。

それにしてもこの人、ちょっと雰囲気変わった?大人っぽくなったような気がする。

 

「…よく生きてたもんだな、麦わら屋。だがあの時の事を恩に感じる必要はねェ、あれは俺の気まぐれだ」

 

「気まぐれでも助けてくれたじゃん、ありがとね、白ひげのコトもさ」

 

「…?お前らの船に使用人は居なかったと記憶しているが…俺の記憶違いか…?」

 

ハーピー美女もローも、この服を着てると私を一味に雇われたメイドだと勘違いするんだよね…。

でもこの黒髪と赤目っていう特徴的な見た目で判断して欲しいなぁ!

 

「イリスだよ、私の傷も治してくれたじゃん!」

 

「…!?…お前が女王屋…!?…その見た目じゃ、手配書は役に立たねェ…考えたな」

 

「そんなつもりは無かったんだけど…」

 

そんなつもりも無くメイド服を着るのもおかしいとは思うけどさ…流れで…つい…!!

それにみんなも喜んでくれたし…。

 

「それより、この軍艦は何?海軍居るの?」

 

「………」

 

私の問いに言葉で答える事はなく、視線だけを動かすローと同じ方向に顔を向ける。

…誰か倒れてる?…見た事あるような…でもうつ伏せで倒れてるから顔が見えなくて誰だか判断が付かない。

 

「スモーカーさん!!!」

 

「「スモさーーん!!」」

 

「あっ!」

 

遠くから海兵達が雪埃を上げながら走ってきた。しかも先頭にはたしぎちゃんが居る!…という事は、倒れてるのはスモーカーか、また面倒くさそうなのが居るもんだ。

でもたしぎちゃんが居るからおっけーです!!

 

「おい!マズいぞルフィ、イリス、海軍だ!」

 

「待って!でもたしぎちゃんが居る!お近づきのチャンス!!」

 

「お前はこんな時まで何言ってんだ!」

 

こんな時?美女が近くに居る時だからこそこう言ってるんでしょ!

それにしてもたしぎちゃんも雰囲気変わったなぁ、髪伸ばしてるし、ハーフアップも可愛いね。

 

「スモーカーさん…っ!」

 

たしぎちゃんは倒れるスモーカーに駆け寄り、状態を確認してからローを鋭く睨んだ。

 

「よくも…!!!」

 

刀を抜き、たしぎちゃんは勢いよくローへと突進する。ローもそれに対応しようと刀を構えた。

 

「おいおい、よせ…そういうドロ臭ェのは…嫌いなんだ」

 

 

ガキィンッ!

 

 

「な…っ」

 

「……何故止める、女王屋」

 

そのままたしぎちゃんへ突き技を繰り出そうとしたローの攻撃を、腰から抜いた小太刀で受け止める。

…何故止める?私に聞くのか、それを。

 

「たしぎちゃんは私の嫁になる人、手出しはさせない」

 

「…嫁…?…まさかあなたは女好き…!?」

 

「そうだよ、あと前からずーーーっと言ってるんだけど私はイリスね?イリスって名前で呼んでよ」

 

ペローナちゃんだって未だに女王呼びだもんなぁ…はぁ…ペローナちゃんに名前で呼ばれたい…おいイリス、私の胸を揉め、って言われたい…。

 

「…ま、そういう事だから、彼女に手を出せば私が許さな…ってうわっ!」

 

後ろからいきなり横薙ぎに振られた刀をしゃがんで躱し、軽く跳んでルフィの隣に並ぶ。

 

「女好き…いえ、女王…!あなたは今や10億の賞金首…私など今みたいに不意を突こうと勝てる相手ではない事くらい分かってます…!ですが、だからと言って海賊の伴侶に成り下がるつもりは毛頭ありませんっ!守られるなど以ての外…!屈辱です…っ!!」

 

「何〜!?へーんだ!今は別にそう言ってても良いけどさ、絶対いつか嫁にするからね!あなたみたいな美人を逃したくないし!」

 

海軍と海賊の間にある溝は面倒だなぁもう!たしぎちゃん自身が正義感の強い優しい子だから特に堕とすのが難しいというか…。

 

「お前ら急げ!ここを離れるぞ!」

 

「…むぅ、分かった」

 

下手にここにいるスモーカーとたしぎちゃん以外の海兵を全滅させちゃったらそれこそ敵対しちゃいそうだし、わざわざ倒す必要も無いし…言う通りにしよう。

 

「そうだ、おいトラ男!ちょっと聞きてェんだけど!」

 

「研究所の裏へ回れ、お前らの探し物ならそこにある、また後で会うだろう。互いに取り返すべきものがある」

 

ルフィがナミさん達について確認しようとすればそう返ってきた。理解が速いのは助かるけど、知ってるって事はお前も関係者かこら。

 

「言っとくけどね、ロー。たしぎちゃんに手を出したら、幾ら恩人と言っても許さないから」

 

「……はァ、今はお前を敵に回したくはねェ…。傷一つ付けない、命も取らない。…これでいいな?分かったらさっさと行け」

 

「…約束だからね?ちゃんと守ってよ?」

 

…まぁ、今はナミさん達が最優先…か。たしぎちゃんは心配だけど、この様子だと酷い目に遭うことも無いだろう。ていうかそもそも、ローってそんな無意味に誰かを傷付ける様な奴には見えない……と思う。勘!

ワニ男に飛び乗ってハーピー美女を抱き、たしぎちゃんに大きく手を振りながらその場を離れていく。

その際、私の腕に抱かれているハーピー美女を見てローが目を見開かせていたけど…それも今は気にしないでおこう。

 

 

 

ローに言われた通り研究所の裏までやってきた私達は、何故か大勢の子供達を引き連れていたナミさん達の姿を見つけた。

しかもその子供達、大きさはそれぞれだけどみんな体格が大きい。中には巨人族の子供かと疑ってしまいそうな程巨大な子も居た。

 

そんな状況に違和感は感じるけど、何はともあれナミさん達が無事で良かった!

 

「おーい!みんなー!」

 

 

「……!!!」

「…あ…みんな…」

 

 

……???

あれ、無事に会えたというのに何だろうその反応は。

ナミさんが困った様に笑っているけど、何かあったのかな。

 

「と、とにかく吹雪をしのげる場所まで移動しよう!な!この子供達や…えーっと、他の事は後で説明するから!」

 

「フランキー…?どうしたの、なんか喋り方変じゃない?」

 

「そ、その事について後で大事な話がある。だけどまずは移動しよう、子供達にこの吹雪は酷だよ」

 

なんかチョッパーみたいなフランキーだなぁ。…いやいや、まさかね。

 

私は頭の中に湧いた考えを即座に否定し、フランキーの言う通り移動を開始した。

少し歩いて、崩壊した建物の一部が突き出て屋根の様になっている所の下に辿り着いたんだけど…ここに来るまでナミさん達はずっと無言で、私だけではなくルフィ達も首を傾げていた。

因みにルフィが背中にくっつけていた下半身、その持ち主である頭部はナミさん達と行動を共にしていたらしく、今では下半身の上に首をくっつけたよく分かんない生物になっていた。本人は下半身が戻ったと泣いて喜んでいた。あと、どっからどう見ても侍!

 

「で…大事な話って?」

 

「イリスちゃん、落ち着いて聞いて」

 

「…うん。……えっ」

 

一瞬ミキータに言われたと思って頷いたけど、どう見ても喋ったのペローナちゃんだよね!?え、今私の名前読んだ?しかもちゃん付けで!?

 

「み、ミキータ、ペローナちゃんに私の事をそう呼ぶようにってお願いしてくれたの?」

 

「バカじゃねェのか、お願いされたって呼ばねェよ!」

 

ひぇ…今度はミキータに罵倒されたんだけど…!ど、どうなってるの…?…ええ…まさか本当に、本当にさっきの仮説が当たってるとかそんな事…。

 

「私がミキータよ」

 

「私はペローナだ」

 

「うそん…」

 

「ええっ!?」

 

ミキータが自分の事をペローナと言い、ペローナちゃんが自分の事をミキータだと言う。

そんな…何でそんな事に…?私だけじゃない、その事実にはルフィ達も全員驚いていた。

 

「おれはフランキーじゃなくてチョッパーだ」

 

「俺はフランキーだ、がっはっは!無事で何よりだぜおめェら!」

 

フランキー姿のチョッパーに、チョッパー姿のフランキー…。

 

「な、ナミさんは?」

 

「私は平気。あとサンジ君もね」

 

…??どうしてナミさんとサンジだけ無事なんだろう。いや、でもこれ…何かしらの能力が原因…だよね?人の精神を入れ替えるって…なんじゃそりゃ。

 

「流石に能力者の仕業でしょ?犯人は?」

 

「えっと…覚えてる?シャボンディで会った海賊…」

 

「“死の外科医”、トラファルガー・ローだ。…自分の体じゃねェのは落ち着かねェな」

 

「ミキータなペローナちゃんもペローナちゃんなミキータも新鮮でいいね!…けど、ローか」

 

よりにもよって…恩人じゃん。

…元に戻すとすればとりあえず…んー…もう一度ローに会ってみるしかない…かな。

 

「でも不思議だね、どうしてナミさんとサンジの2人だけ、能力にかけられなかったの?能力のキャパオーバー?」

 

「それはねェ…と俺は思ってる。想像しか出来ねェが、ナミさんはイリスちゃんの正妻として有名だ。下手に刺激したくなかったんじゃねェか?」

 

「そうね、私もそう思う。あんた、もし私がサンジ君と入れ替わってたら…それはもう荒れてたでしょ?」

 

「まぁ…正直」

 

ミキータとペローナちゃんは2人とも嫁だからまだ良いけど、サンジとナミさんが入れ替わってたら…か。まぁ…サンジだからまだ……いや、でもなぁ、ちょっとムカムカするというか。

 

……すみません嘘です。すっごい暴れます。この島無くなります。

あっ、それに確かさっき…ローもあんまり私を敵に回したく無いとかなんとか言ってたっけ?

 

「トラファルガーの奴もその辺は理解していたって所だ。俺達としてもイリスちゃんが我を忘れて暴れる事は望んじゃいねェ」

 

「我を忘れて暴れるとか無いから!!…多分!!」

 

…た、多分!!!

 

 


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