「じゃあ、ちょっとローに会ってくるよ」
「早くしろ、この体は落ち着かねェ」
ミキータ…じゃなかった、ペローナちゃんが表情を歪めてそう言う。
その顔がなんだか新鮮で、私はついつい軽く吹き出した。
「そのままなのは絶対に良く無いけど、なんだか面白いね」
「他人事だと思っててめェ…!」
「イリス〜、あ・い・し・て・る♪」
「おおおおおおまおまえ!!!何してんだ!?私の体でそんな事言ってんじゃ…!!」
「ぐふ…ペローナちゃんに甘えられるのはダメージが大きい…!」
「落ち着け女王!そいつは私じゃねェ!!」
思わず口元を覆えば、ペローナちゃんが私の肩を掴んでガクガクと揺さぶる。
ロー…あなた、結構良い仕事してるよ…!!グッジョブ…!!
「ぐ…!覚えてろ…お前ら…!!!」
「あ、勿論、私は普段のペローナちゃんの方が好きだよ?当然、ミキータもね」
「!………、だ、だから何だ、下らねェ事言ってないでさっさと行け」
「キャハ、ペロちゃんが照れてるわ」
「お前は!!いちいち!!うるせェんだよ!!!」
ギャーギャーと照れ隠しに騒ぎ出したペローナちゃんに苦笑して、私は軽く手を振って一旦皆の下から離れた。
ハーピー美女はロビンに預け、ローを探す為に来た道を戻る。
…被害にあったペローナちゃんとミキータには悪いけど、ぶっちゃけ私としてはちょっと楽しかった。…ハッ…その能力で私とナミさんを入れ替えて貰えれば…普段とは違った楽しみ方が出来るのでは…!!?
「お」
「あ!」
そんな邪な事を考えながら、さっき逃げてきた研究所の入り口前までやってきた私は、そこで案の定たしぎちゃん達とばっちり遭遇する。
「女王…!何故ここに…!」
「あー、ちょっと用事が。ロー知らない?」
「ロー?海賊のてめェが奴に用があるって事ァ…何か企んでやがるんじゃねェだろうな?」
たしぎちゃんが凄いイカつい顔して私を睨み付けてきた。…あれ、これ…2人も入れ替えられてない?
「私がちょっと目を離した隙に……はぁ、頼む事が増えちゃったね」
確かに…体を入れ替えただけなら“傷も付けてない”し“命も奪ってない”。してやられた…。
「何を…!」
「私の嫁がたしぎちゃんと同じような被害に遭ってね、それで用事があるの。…所でスモーカー、あなたたしぎちゃんの体でなんて格好してるの?シャツのボタン止めて、下着もつけて!」
たしぎちゃんの体だと言うのにタバコは吸ってるし、何故かシャツのボタン解放して下着も取ってるから胸チラッと見えてるし。
「あ…?んなもん引きちぎった」
「はぁ!?引きちぎった!?女の子の体を何だと思ってるの…!?それにその体は将来的に私のものになるんだから、変な事されちゃ困るんだけど!!ていうか、それセクハラだからね!?セクハラ!!やーい変態オヤジ!!タバコまで吸って部下の体調を気遣う事すら出来ない半人前〜!!」
「………チッ」
前半はともかくとして、後半は何も間違った事は言っていない。
いや、おかしくない?自分の性別が女になっただけならまだしも、たしぎちゃんの体を一時的に借りてるだけだって自覚が無いんじゃないの?女の人の下着を引きちぎって、その上シャツのボタンを閉めずに開けてるって、前世ならセクハラで自殺されても仕方ない所業だよホント。
…とまぁ、私の言葉に思う事はあったのか、スモーカーはタバコを放り投げてボタンを閉め始めた。
「……今回の件に関してだけは、助かりましたとだけ言っておきます。ですが、あなたの嫁になる気はありません…!」
「強情だね、たしぎちゃん。でも堕とすからね!…あ、それでローの事だけど、どっちに行ったかとかさ、知らないかな?」
何でローが私達の戦力を削ぐ様な真似をしたのかは分からないけど、たしぎちゃん達の状態を見るに、私との約束は守るみたいだし…ローにはローなりの事情があるって事なんだろう。
「…はァ…、たしぎ」
「…はい。…トラファルガー・ローは恐らくこの建物の中に居るかと…私もついさっきまで気を失っていたので、正確な情報ではありませんが」
建物…研究所のコトかな。
「じゃあ行ってくる」
「ハ…俺から言わせりゃ、てめェも捕獲対象だ。…ノコノコと現れた獲物をみすみす逃す訳ねェだろ!」
「ふーん」
言葉尻に私へと突かれた十手の先を首を傾げて避け、十手を蹴り飛ばす。
「私を捕まえたいのなら、エサはたしぎちゃんにするのが1番効果的だよ。例えばたしぎちゃんを嫁にする代わりに捕まってくれって言うなら大人しく捕まるよ?その後は晴れて嫁となったたしぎちゃんを連れて逃走劇を繰り広げるけど」
「スモーカーさん…っ!」
「止めろたしぎ!…今のは俺のミスだ、こいつにその気があったのなら…俺は今、死んでいた」
死んでいた…じゃないって!殺さないから!!無理だから!!
ていうかスモーカー…自分の体じゃないからか動きが何ともぎこちないし…ぶっちゃけ弱い。その上頼みの海楼石入り十手が無くなってお手上げってところかな。
「じゃあ私今度こそ行くから、邪魔しないでよ?」
「…クソ!こんなふざけた格好の奴に…っ、情けねェ…勝手にしろ…!」
スモーカー1人だけならまだ私に挑んできたかもしれないけど、部下も居るから抑えてるんだね。
さーて、やっと中入れるね、入り口分かんないから壊して行こっと。
「
研究所の壁の前に立ち、腰を落として小太刀の柄に手を添える。
「せいっ」
スパン、という小さな音と、刀を振り抜いた風切り音が響く。
その直後、目の前の壁に数え切れない程の斬り目が網目状につき…ガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
「ふー、開いた開いた!」
「…!…そんな…全く見えなかった…」
「じゃ、またねー!」
手を振って研究所内に侵入する。
…なんだこの広い空間は、上には渡り廊下がいっぱいあって普通に迷いそうなんだけど。
壁には沢山の電気配線が這っており、ちょっと衝撃を与えればすぐにショートしそうだ。
…私が斬った場所もコードが通ってたから、多分何かしらの電源供給は断っちゃったろうね…う、うん、気付かなかった事にしよう。
「見聞色の覇気っと…」
見聞色を発動させて施設内を歩いていく。広いし、しらみ潰しに探すのは骨が折れるからなぁ。
……うーむ…強い気配強い気配…、ん?そこそこの気配が1人…だけど、ローじゃないなぁ。なんか小物っぽい気配だから。
「侵入者が居たぞ!殺せ!!」
「
「ん?」
なんかラッキー、沢山人が来た。人というかケンタウロスとか…他にも体の一部が動物の人とか。
今は体の特徴なんてどうでもいいんだけどね、人が来てくれたってのが大事なんだし。
「俺を知ってるか!?懸賞金1億の風斬のジェット!人の足は無くしたが、代わりに得たこの虎の脚はお前をどこまでも追い続けブホァ!?」
「はいはい、すごいすごい」
とりあえず先陣きって突っ込んできた虎足の男を殴り飛ばし、手首をぶらぶらさせながら言う。
いきなり攻撃をしてきたって事は、少し落ち着いて貰わないと話も出来なさそうだね。
それにそもそもなんだか対応が早い気がする。私はついさっき壁を壊して中に入ったばっかりだというのに既にこうしてケンタウロス達が私を殺そうと動いてるし。
ついでに言えばハーピー美女もその
「
「グハ…ッァ!?」
「だ、ダメだ…!俺達じゃ勝てねェ…!」
「銃が効かねェよ!何モンだコイツ!!」
「銃だけじゃねェ!見ろおれの剣!斬りつけたら折れやがった!!」
銃はともかく、剣に関しては腕が無さすぎる。そんなヘロヘロの太刀筋じゃあ傷は付かないよ。
「おら獣ども、ローはどこに居るの?」
「と、トラファルガーの事か…!?し、知らない!」
「本当に…?ここに入ったって聞いたけど」
「俺達も奴と親しい訳じゃねェんだ!どこに居るのかまで把握してねェよ!」
…んー…この場でのローの立ち位置が良く分かんないな。
ぶっちゃけ、まだ敵なのか味方なのかも分かってないし…。今までの行動から考えれば、ローは私達と敵対したい訳じゃなさそうだけど。
「ま、その辺は本人に聞けばいっか。
「や、やめ…ッ…うぐ!?」
武器を弾く様に攻撃を飛ばす。無駄に傷を負わす必要も無いだろうからね。
「あなた達が知らないのなら、この研究所内に居る
「ふざけるな!お前みたいな奴に誰が
「うん、ありがと。つまりこの研究所内には居るって事だよね。という事は…さっき感じた小物っぽい気配がそうかな?」
ニヤリ、と笑いながら言うと、そのケンタウロスはしまったとでも言うかのように顔面を蒼白に染めた。
…あ、いや、待てよ?よくよく思い返してみれば、こいつらの口振りって私が一騎当千の女王だって気付いてない?なのに研究所内に入っただけで殺そうとしたって事は、私が一般人だろうがなんだろうが関係なく口を封じようとしている訳で…。
…うむむ…ナミさんでもロビンでも近くにいればなぁ。私の頭じゃイマイチ良く分かんない。
「安心してよ、あなた達は私に向かってきたから攻撃したけど、
「侵入者の言うことなど信用出来るか!!」
ごもっともですね。私でもそう言うよ。
だけど本当の事だし…信じて貰わなくても会いには行くけど。
「くそ…!表の海軍共にも戦力を割かなきゃいけねェってのに…!」
「ん?」
むむ…ああ、確かにさっき私が通ってきた所に沢山の気配がある。戦闘してるっぽい雰囲気も感じられるし…なるほど、私が開けた穴から入ってこようとしたけど、私みたいに邪魔されてるってトコか。
「だったら表に全戦力を集めた方が良いんじゃない?少なくとも私はあなた達に危害を加えるつもりは無いし。…今は」
「最後の一言が怖ェよ!!」
「メイドのクセになんなんだてめェ!!」
「メイドメイドって…つまりコスプレ感は無いって事かな?似合ってるの?」
んふふ…ミニスカメイドなんてカフェかコスプレ以外何処に居るんだよって突っ込みたいけど、私はメイドにしか見えないらしい!つまり似合ってる!…喜んでいいのかどうかは分かんないけど。
「だけどごめんね、私はメイドじゃなくて…どうやら世間では、“一騎当千の女王”って呼ばれてるみたい」
「な……」
「い、一騎当千の…!!?」
私がその異名を名乗れば、半獣達は目に見えて狼狽え始めた。
さっきまで私に向けていた敵意は今は見る影もなく、ただ私を前にして膝を震わせるか、その場に崩れ落ちるか、そのどちらかの反応を見せる。
…女王の異名つっよ…私本人より強いんだけど。
「懸賞金10億だろ…俺達で勝てる訳がねェ…」
「いや…こんな奴に目をつけられた時点で、
「だから何もする気ないっての!私はただローの居場所を知りたいだけだって言ってるじゃん!」
一騎当千の女王って異名のせいで噂が一人歩きしてるんじゃないのこれ!目に入ったモノ全て倒すみたいな?するか!
私が許せないのは嫁達に危害を加えられる事だけだし!身長?伸びたもん!
「じゃあ、通るね」
「…いや……!それでも、
「ああ…!あの人は命の恩人なんだ…!恩を仇で返せるか!!」
「殺すなら殺せ!肉壁となってでも止めてやる!!」
震える足腰にムチを打ち、恐怖で支配されそうになる心に打ち勝って、彼等は再度私の前に立ち塞がった。
うーん……困ったな…。
何がって…だって私、こういう恩人だからって命を張れる人大好きなんだよね。こうまでされてさ、「だから何?どいて」とか言えないというか…。
「一騎当千がなんだ!」
「おい!誰か
「電伝虫で俺が伝える!少しでもこの場の戦力を増やせ!!」
彼らが私相手に時間を稼いでいる間に増援が間に合ったのか、周りから続々と新たな半獣達が集まってきた。
私が倒した筈の人まで気合で起き上がってきたり…、って、これじゃ本当に私が悪者みたいじゃん!
「だから、
「お前が
「あなた達がローの居場所を知らないから、
「…そうか!確かにそれなら…」
私の提案に納得してくれたようなので、彼等に敵意はないと分かりやすく伝える為にその場に腰を下ろした。
もう…一騎当千って異名も面倒だね…逃げ足よりは良いけどさ。その辺スモーカーと掛け合ったら変えてくれないのかな?彼の発言力がどれほどの物か知らないけど。
「こちらジェット部隊。
『お〜、俺の可愛い部下達…どうした、侵入者を始末出来たか?』
「それが…侵入者はあの“一騎当千の女王”だということが判明しまして…」
『何だとォ!!?』
おーおー…破壊力抜群だね。なんか自分がここまで影響力強いの実感したらちょっと気分が昂ってきたよ。
「女王の要求は1つ、トラファルガーの居場所との事ですが…ご存知ありませんか?」
『そ、そこに居るのか?あの女王が!?…ぐぬ…ついさっきローとは顔を合わせたが、何処に行ったのかまでは知らねェよ!この事が奴に知れればどうなる?研究所が吹き飛ぶぞ!!』
「しかし、我々に危害を加える気は無いと…」
『口では何とでも言えるだろうがカス共!!いいか、俺がここを離れる間に、貴様等使えねェカス共はどんな手を使ってでもソイツを足止めするんだ!』
……なんだ?なんか雰囲気がおかしい。どこからどう聞いてもただの暴言だ、こんな奴が慕われてるの?
いや…言われた部下達は全員固まっている。今言われた言葉の意味を…理解出来ていないのだ。
『てめェら
「ま、
理解するのを拒んでいる様にも見えた。
溢れそうになる涙を無理矢理作った笑顔で堪えている。
「ば、バカ!お前ら何戸惑ってんだよ!そんなの
「そ、そうだよな!はは、その通りだ!俺達の役目は、逃げると見せかけた
「ああ!やってやろうぜ!元よりトラファルガーの位置は分からねェんだ!」
「……、」
「悪ィが、そういう事だ!トラファルガーはここにゃ居ねェよ!!!おらァ!!!」
無言で立ち上がる私に突進してきたケンタウロスが、ガン!と私の頭を棍棒で思い切り殴り付ける。
「
頭部が羊っぽい人が、私のこめかみに銃口を押し付けて発砲する。
「俺達の
下半身がクモの男が、刀の切っ先を私のお腹に突き立てる。
だけど、棍棒は砕け散り、銃弾はこめかみを貫けず暴発し、刀は少しも私の肌に傷付ける事なくパキン、と折れた。
「
「……!!」
私の正面で刀を折られたクモ男が目を見開き、折れた刀から視線を私の瞳に移した。
果たしてそこに映っているのはなんなのか…私の綺麗すぎる赤の瞳かな?…いいや、違うね。
「どれだけ自分に言い聞かせようが、どれだけ強がりで心を無理矢理補強しようが……本当は分かっているんでしょ、裏切られたってさ。その証拠に今、あなたの見る私の瞳には……涙と鼻水で顔を汚す自分の顔がハッキリと見えてる筈だよ」
この人達の事情なんて私は全く知らない。だけどこの人達は
…そして、その
私の言葉を否定したくても、一度そうだと現実を突きつけられ、どう足掻こうとも敵わないと理解してしまった彼らには現実と向き合う時間が否応にも与えられた。
いつまで経っても現れない
そもそも、本気で
涙を流し、鼻水を垂らし、武器を落とし、そしてその場に崩れ落ちる。やがてこの広い空間で立っているのは私だけとなり…彼らの嗚咽だけが悲しく溶けていく。
「全く、見る目無いね、あなた達は」
「…っ…!」
「恩人だかなんだか知らないけど、結局良い様に使われてるだけじゃん。そのクセあなた達全員男とか、もー勘弁してよ」
信じていた恩人に呆気なく裏切られて、その命すらも駒として使われた彼らの悲しみ、絶望は計り知れない。
全員の瞳から光は消え、今にもそこら中に落ちている武器で自決を図りそうな雰囲気も出ている程である。
「…もういっそ、殺してくれよ」
「え?やだ」
「…なら、自分で…!!」
「それもダメ。
拾おうとしていた銃に
男は私の顔を意味が分からないと言った風に見つめてきた。
「あのさぁ、あなた達が悲しいのは分かるよ?絶望するよね、信じてた人にあんな事言われてさ。私が人殺しに躊躇しないやべー人ならあなた達は本当に死んでたし。…だけど、私はそうじゃない」
「……何が言いたい…!ここから乗り越えろって言うのか!俺が!俺達が!一体あの人の事をどれ程慕ってきたのか知って」
「知らないし、興味も無い。…あなた達は今殺されたんだよ、その
恩を返した。…つまりどういう事なのか、分からない程盲信的だって訳じゃあるまい。仮にそうなら私はもう知らない、男だし、これだけ言って自決するなら勝手にしてろって感じ。
「もし、まだあなた達に自らの意思があるのなら…そんな下らない意味の涙は流さないで。そうすれば……その
「……どうして、見ず知らずの俺達にそこまで…。お前は一騎当千の女王だろ…!四異界だろ!!最悪の世代だろ!!俺達の命なんてその辺の石ころみてェなもんだろ!!」
「…石ころ?人間の命の価値に……差なんて、あるか!!」
ガン!と地面を踏みつけた。
人の命に、価値なんて付けられる訳がない!!誰だってみんなそこに生きているんだ!
どんな悪人だって、生まれてからずっと、自分だけの人生を歩んでいる。そこには自分だけの物語があって、感情があって、出会いがある。
…そう考えられる様になったのも、エニエス・ロビーでみんなが私を受け入れてくれたからだけど。
勿論、死んで償うべき罪人というのも居るだろう。だけどその人だって、別に命の価値が無くなったから死ぬんじゃない。むしろ、死んで償えるって事はその命に価値があるという事だ。
…ちょっと脱線したかな。
「私も、あなたも!そして
どんなに絶望しようとも、生きることだけは諦めちゃダメだ。
…私はその事を、ナミさん達に教えて貰ったから…だから、この人達を見捨てる事がどうしても出来ないから…!
「だから……、いや、私が言うのはここまでにするよ。後の決断はあなた達に委ねる。…じゃあ私はもう行くね、ローを探してる最中だし、
ひらりと振り返って私は歩き出した。…さて、ローを探しに来ただけのつもりがまさかここまで不愉快な気持ちにさせてくれるなんて…流石新世界だ。
…ナミさんの胸に飛び込んで癒されたい。
「……、ま、……待ってくれ……!!」
「ん?」
よろよろ、と1人の虎タウロスが立ち上がった。…あいつは確か、ジェットだっけ。
「…俺達は、本当にあの人を慕っていたんだ…!だから、きちんとこの目で、耳で、直接確かめたい…!1度
「……、強いね、あなた。良いよ、気に入ったし…電伝虫ちょうだい。…ほら早く」
「え、あ、はい」
近くで座っていた男をつついて催促し、1匹の電伝虫を受け取った。
「あなた達が
「ああ。…さっきは襲って悪かった」
「気にしないで、石ころに襲われたって何とも思わないから」
「「「石ころ言ってんじゃねェか!!!」」」
はは、と小さく笑って手を振り、今度こそ私はこの場を後にした。
最後は何とも息の合ったツッコミで安心したよ、あの調子じゃ自殺は無さそうだ。
…さーて、仕事が増えちゃったね。
ローに