「…なんもないなぁ」
ポリポリと頭を掻きながら研究所内を歩く。
私はそれなりに精度の高い見聞色を使えるけど、範囲はそうでも無いからなぁ。
かと言って入口に戻ってもスモーカーやジェット部隊とは別の半獣達と鉢合わせるだけ…という訳で、今は研究所を調べてローの居場所の手掛かりを探している所だった。
ちょいと強い反応もするけど…ローじゃないね。……んん?そいつはローじゃないけど、その近くから感じるこの反応…まさかローじゃないの!?
「いや、でも研究所内には居ないみたいな事を
…や、居ないというか知らないだったっけ。でもさっきまでは全く気配を感じられなかったから、今ここに入ってきたってコトかな。
「んー…同じ研究所内でもかなり遠いトコに居るっぽい…。迷路みたいだから迷うんだよここ!」
いっその事壊してやろうかこの研究所…!でもジェット部隊の住処?でもある訳だし…私的にはあの人達を気に入ってる訳だから?ちょーっとの破壊衝動くらいは我慢してあげるけど?
「……ん?」
結局何も考えずに先へ先へと進み、目についた部屋に入れば、見聞色に新たな気配が引っ掛かった。
だけどおかしい…気配はずっとずっと下…まるで地下でもあるかの様だけど、その気配自体かなり弱ってるっぽいし。
そもそもこの部屋は何?色んな化学薬品が置かれてるし…私じゃ一生理解出来そうもない書類や実験道具がわんさかあるんだけど。
『ここはシ…あ、いや、
「ONE PIECEね…それより急に声出さないでよ、びっくりするじゃん」
『はは…ごめんね』
そんな素直に謝られたら弱いんだけどさ…。
「なら、さっきまでここに
『そうだね、さっきローとあの人の気配を感じたから…多分チョッパーもこの研究所内に居るんじゃないかな、因みにここの床壊せばダクトを通ってゴミ箱に繋がるよ』
あの人…はどうでもいいとして、チョッパーも来てるんだ。確かフランキーの姿だったよね…にしてもチョッパーが何の用だろ?
「ゴミ箱?」
『そ、かなーり広くて深いゴミ捨て場。あのハーピーをイリスが捕らえちゃったから、この下に感じる弱ってる気配の主はイリスが助けに行かないとマズいかも』
「ハーピー美女を?…何でそうなるのかは分かんないけど、私が助けた方が良いなら助けるよ、気配を感じた時点で下には行こうと思ってたけどさ」
それに、助けた方が良いって事は物語に深く関わる人物って事だよね。それか美女…?そ、それなら今すぐ行かなくては…!!
その場に膝をついてしゃがみ込み、手のひらを床に押し当てる。
殴ってブチ抜くのでも良いけど…今はこういう気分だから、
「ふん!!」
ズォオ!と私の体を纏う武装色を手のひらに集中させ、そのまま床に流し込んで粉々に破壊した。
うわ、力加減ミスって私の足場まで壊しちゃった…!っとと!宙を蹴って空を飛べるようになってて良かった…何だっけ、サンジは確か
「ここに飛び込めば良いって事?」
『うん、汚いけど』
宙を飛ぶ私の真下には、直径で2mくらいはありそうな程の大きな穴があった。これがゴミ捨て場に通じるダクトだろうし…その先に弱ってる美女が居るなら行くよ!
「ほっ」
そのまま穴の中に飛び込み、長い滑り台を滑り降りる様に下へと降っていく。
ゴミが穴の中で詰まってるなんてアクシデントも無く、ダクトを抜けた私は王華の言う通り広い空間へと飛び出た。
宙を蹴って飛ぶ事もなく、重力に従って下まで落ち、鉄屑の瓦礫の上へ派手な音を立てて着地を決めて辺りを見渡す。
『じゃあ、私はこの辺で』
「どうせ私にしか聞こえないんだから気にしなくて良いのに」
『いやー、ちょっと眠たくてさ。昼間はイリスの邪魔しない様に寝てる事が多いじゃん、私』
「…前から思ってたけど、なんで王華って眠たくなるの?睡眠欲あるの?」
『うーん…寝なくても大丈夫なんだけどね…なんというか、眠たくはなるんだよね。多分前世の癖かなぁ。お腹も減るし、えっちな事も考えるよ?最近では美咲とのあれやこれ…』
「ああはいはいおやすみ」
王華部屋は相変わらずダラける事に特化した仕様になってるとはいえ、最近の王華は特にリラックスしている。
それが悪い事だとは言わない。むしろ気が休まるなら良いんじゃないだろうか。でも自分の下事情は心の内に秘めておいて欲しかった。
「で…結局さっきの気配の主はどこだーっと…」
とは言っても場所はもう分かってるんだけどね。
端の方で縮こまってるみたい。…というか、今目に入ったんだけど…、
「また龍じゃん」
「ま、またとは何でござるか…!?おぬしは何者か…!?」
龍だし、喋ってるし…。
ルフィ達と一緒に見たのは西洋風だったから、龍じゃなくて竜って感じだったけど、今目の前に居るのは生前、某国民的漫画だった作品の願いを叶えてくれる龍のミニサイズみたいな風貌をしている。下半身が引っ付く様な大きさでも無さそうだし…見た感じ今回は本当にこの龍が喋ってるっぽい。
「私は海賊で、ハーレム女王を目指してる者だよ!ぶっちゃけ美女が弱ってると思って助けにきたから、あなたみたいな龍だと分かって落ち込んでるトコ!」
「そんな情報知らぬわ!…ハァ…ハァ、それに、おぬしがかいぞくな訳無い。かいぞくなるは目方百貫もある大男にて…もっと、狂暴で強そうな者にござる。おぬしの様なひらひらした装いをしている者の筈がなかろう!」
「メイド服のコト?この服の名前知らないなんて世間知らずにも程があるよ、その喋り方からしてワノ国関係者かな?」
「ハァ…そうでござる…!せっしゃモモの助と申す…ハァ…!」
モモの助…なるほど、今まで出会った人達とは名前の感じからして違うね。
そういえばイゾウもワノ国出身なんだっけ、あんまりそういう話しなかったのは、今思えば勿体ない気もするなぁ。
面倒見も良かったし、私もあの人は結構好きだった。ワノ国に対して比較的良いイメージを持っているのはイゾウのお陰だ。
なんて1人浸っていると、突然モモの助の腹が盛大に空腹を訴え鳴り響いた。
「相当お腹空いてるんだね、お昼抜いた?」
「ばかを申せ…ハァ…10日ばかりの断食で、武士がハラなど…空こうものか…ハァ…」
「え、10日!?」
お昼抜いたとかのレベルじゃなかった…、そりゃ気配も弱る筈だよ、餓死してもおかしくない。
「モモの助はいつからここに居るの?」
「ここにとは…この施設の事か?それも10日前からでござる」
「ふーん…ならこの施設と関わりは無いんだね、だったら助けてあげるよ」
ジェット部隊とはああ約束したけど、私はぶっちゃけ
「助けなど必要ない!誰がおぬしの様なおなごに…!」
「そういうの良いから。上に行ったらまずはサンジと合流しよっか、10日断食した後にサンジのご飯食べたら美味しすぎて死んじゃうかもよ?」
「…おぬしもよそ者か?」
断固として施しを受ける気は無いとでも言うのか、無理矢理話を逸らしてきた。
なんだこの龍…訳ありっぽいけど。
「よそ者だよ、この施設がどんなモノなのかすら知らない」
「…せっしゃも、ここが病気の童がおる施設としか知らぬ。ここがどの様な島で、自分に何が起きたのかも知らぬ…事の成り行きでとある船に“密航”した事が始まり……」
で、その船に乗ったら、そこには沢山の子供達が居たという事らしい。
どうやらみんな重い病気らしく、親にも挨拶出来ないまま船でこのパンクハザードまで連れて来られているのだとか。
ジェット部隊には悪いけど、私はこれで
親に何も告げず連れてこられるなんて事があってたまるか、どう考えても誘拐で、その
部下の命が無くなる事に何ら抵抗が無い奴が企む事だ、どうせ碌な事では無いのだろう。
「あまり関わろうとしなかったせっしゃにも童達は親切にしてくれたが…気が立っておったゆえ…」
優しく話しかけてくれたりしたのに、全て冷たい言葉で突き返したと…。
その時に渡される食事すら一口も食べていなかったらしく、ふらふらと研究所を彷徨ってとある部屋に入り込めば、その部屋の中央に何やら見た事もない不思議な模様の果物が置いてあったそうだ。
モモの助は空腹に耐えかね、結局その実を口にしてしまったそうなのだが…。
「…それって、絶対悪魔の実じゃん」
「悪魔の実?」
「あなた、元は人間だったんでしょ?その実を食べてその姿になったのならそれは悪魔の実だよ。その見た目からしてヘビヘビって事は無いだろうから…リュウリュウかな?かっこいいじゃん」
「…さっきはああ言ってしもうたが、せっしゃはこの穴から出たい!…そして、童達に伝えたい!聞いてしまったのだ…あのシーザーという者の話…!」
「シーザー?」
ここに来て新キャラか…しかも強そうな名前だし。
「あの男は当初、せっしゃや他の童達を優しく施設に迎え入れてくれた。医者かと思っていれば…実は童達を死なせる気でおる悪い男だったのでござる」
「ふーん…どうしてそう思ったの?」
「この姿になったせっしゃは、情けなくも少々混乱してしまい施設内を駆け回っておったのだが…その時に通ったある部屋の前で聞いてしまったのだ。あの男の真意…!非道な胸の内を…!知らせようという行き道で、屑入れに隠れるつもりがここへ…」
モモの助の話によれば、シーザーは子供達を使い人体の巨大化実験を行なっていたそうだ。しかしその実験は薬物投与の限界を知る実験…5年後には全員この世には居ないと断言していたと言う。
実験には失敗が付き物だと笑いながら、次を貰わねばとも口にして。
「…なるほど、それは確かに……どうしようもないクズだね」
私も巨大化した子供達は1度この目で見ている。あの子達は全員…その実験の被験者だったのか。被験者って言っても本人達は何も知らされてない訳だから被害者って言い方が正しいんだけど。
「そのシーザーってのは何者なの?」
「せっしゃも良く知らぬが…
「…へぇ、
はいクロ確定、と。そんな事をする奴が、あの場面でジェット部隊を助けに来ようとする筈がない。アレは間違いなく見捨てたと見て良いね。
…うーん、だけどこの事を私から彼らに伝えるのはなんか違う気がする、彼らは彼らで自分の目で確かめようとしてるし…やっぱり電伝虫を使うのは
「しかし生憎とここの出口は高く…壁に手や足を引っ掛ける出っ張りも無くよじ登る事も出来ぬ…何故か力も出ない事も相まって行き詰まっておったのでござる……」
「何故かって空腹でしょうが、いい加減認めたらどうなの?…ま、いいや、すぐここ登るよ」
モモの助の首を引っ掴んで持ち上げ、私の体に巻き付かせる。それくらいの力は残ってるでしょ。
「子供達の事なら心配しないで、私の仲間も嫁もついてるし…それにルフィがシーザーのやってる事を知ったのだとしたら、シーザーも終わりだね、何せ奴はルフィの1番嫌いなタイプだし」
「ルフィ…?仲間、嫁…?おぬしはおなごであるのに、嫁がおるのか?」
「そうだよ、私は女好きだし」
「…そうか、…それは普通の事では無いと言うのに、その堂々とした物言い…童達を気遣ってくれる心…見ろ、やはりおぬし、かいぞくなどでは無い…」
何が普通かなんてどうだって良いっての。
…モモの助はその辺分かってくれてそうだけど。
「じゃ、上に行こうか。でもごめんね、先にローを探さないと…シーザーはまた後で」
「上に?何を言っておる…上を見ても先の見えぬ暗闇、出口がいかに高い所にあるのか察しが付くでござろう」
「もう、ここを出たいのなら黙って私に掴まってて」
そう言って、私は宙を蹴って飛び上がった。その事にモモの助が驚いた様な表情を浮かべるが、これくらい出来ないとここから脱出しようなんて言わないよ。
「おぬし、まさかくノ一でござったのか!?」
「海賊だって言ってるでしょうが!ほら、ダクト入るからじっとしてて」
1番上までやってくれば、そこには多くの穴が空いていた。多分それぞれが別々の場所のゴミ箱に繋がってるんだろうけど、どれが良いかなんて分かんないし…とりあえず適当に目についた穴へと入って上っていく。
ローの気配は……感じるけど、なんか他にも沢山感じる…。ルフィやスモーカーも一緒に居るのかな…?たしぎちゃんやフランキー…ロビンも…?
私の見聞色が間違ってないのなら、これだけのメンツが何故か同じ場所に固まってるっぽい…何で??…とりあえず行ってみようかな。