ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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166『女好き、グリーンビットの魔女』

ゴミ箱の口まで何とか這い上がってきた私とモモの助は、出口を探す為に研究所内を歩き回っていた。

といっても、モモの助は私が背負ってる為歩いてるのは私だけではあるけど。

 

「それにしても…私が下に落ちてる間に何かあったのかな?外が騒がしいんだけど」

 

「そうか?せっしゃには何も聞こえぬでござるが…」

 

「私はあなたの30倍は耳良いから」

 

何か起きているのなら早くみんなと合流したいってのに…まるで迷路だよここ。

ルフィ達の気配がする所まで壁ぶち抜きながら行ってもいいかなぁ、流石にまずいかな?

 

 

プルプルプル…プルプルプル…

 

 

「あ、ジェット部隊からだ」

 

「誰でござるか?」

 

「この施設の兵士達」

 

モモの助の質問に軽く答えて、ガチャ、と電話に出た。

見つかったのかな?でもシーザーの近くにジェット部隊の気配は感じられなかったんだけどな。

 

「どしたの?」

 

『ハァ…!ハァ…!クソ、やっぱりあんたの言う通りだったよ!俺達が間違ってた!信じる人を誤った!!』

 

「…ちょっと、本当にどうしたの?今どこ?」

 

出るやいなや、かなり焦った様子の電伝虫が大きな声を上げた。

向こう側で沢山の走ってる足音が聞こえる。研究所内にはなんの気配も感じないから外のどこかだろうけど。

 

『外だ…湖の近く…!俺達はM(マスター)…シーザーを見つけたんだ…!」

 

「だったらどうしてその時に電伝虫で連絡して来なかったの?もうシーザーは研究所にいるよ?」

 

『…俺達が見つけるのと同時に、向こうも俺達を捉えた。…そこからは思い出したくもねェ…逃げ出す暇も無い程の一方的な攻撃…!命乞いをする仲間は殆どがやられちまった!』

 

…自分の本性を知って報復に来たと勘違いしたのか?どっちにしても問答無用に攻撃されたって事でしょ…奴の本性をジェット達が理解出来たのは良いと思うけど…。

 

「…誰も死んで無いよね?」

 

『………、それが…』

 

 

どうやら、殆どがシーザーに無力化される中、数人だけは何もされずに放置されていた様で…シーザーは去り際にジェットにこう言ったらしい。

 

ーお前達が死にかけた4年前の兵器暴発事故…あれは俺の仕業だ。シュロロロロ…!そして今からその時の兵器をより強力にした奴を放つ…!お前らゴミクズ共は、精々俺の兵器実験体として死んでゆけ!!ー

 

 

「兵器暴発事故…」

 

『ああ…!それのせいで島中に沢山毒ガスが蔓延したんだ…!奴はその事をずっとベガパンクの仕業だと言っていた…だけど実際は奴の仕業だったんだ!!俺達は奴の手のひらで、良い様に踊らされていただけだ……!!』

 

とんでもないクズだな…最悪のマッチポンプもあったものだ…!

 

『それで、俺達はその“より強力な兵器”に追われてる!!毒ガスだ…この島中を覆える程のな!!奴はガスだから効かねェが、奴以外はみんな死ぬ…!!俺達が間違っていたのは分かった、だから頼む…!お前だけでもこの島からさっさと脱出しろ!!!』

 

そのガスに仲間が何人か既に飲み込まれているらしい。

ガスに触れただけで体が動かなくなり、最後には石みたいに固まってしまうという。

ジェットは自分達も時間の問題だと言って私に逃げろ、と声を張り上げて叫んだ。

 

「…逃げろ?誰に言ってるの、逃げ足の異名はとっくに捨ててるから。…待ってて、すぐ行く」

 

『おい…っ!』

 

有無を言わさずに通話を切り、私は電伝虫の電子機器を握り潰して破壊した。

湖の近く…となるとあっちか。この建物を最終的な避難場所にするなら、穴を空けるのは得策じゃない。

 

「仕方ないね」

 

ふぅ、とため息をついて自らの力を解放する。即ち、女王(クイーン)化だ。

これでより広く、そして正確に辺りの状況が分かるようになった。

 

「お、おぬし…その見た目は…!?やはり忍者の…」

 

「変化の術って?似たようなものだけど違うからね」

 

ふんふん…お、湖近くで確かに沢山の人が走ってるね。島全体を覆う様にガスが広がっているし…ナミさん達は二手…いや、三手に分かれてるのかな?チョッパーも別行動って言ってたから四手になるのか。

 

「えっと…ナミさん達は…あ、もう研究所の近くまで来てるね。みんな間に合いそうだし…ジェット部隊助けに行っちゃうか。出口は…こっちだね」

 

「分かるのでござるか…!?」

 

「うん、見える様になったって言った方が良いかな?真上から地図を見てる様なイメージで…その地図上で人の位置も確認出来る、みたいな?」

 

見聞色の覇気…なーんかまだ上の段階行けそうなんだけど、私には才能が無いのかイマイチ開花しないんだよね…。武装色と覇王色は自慢したいくらい才能で溢れてたケド。

 

「急ぐからしっかり掴まっててね」

 

「う、うむ……っゥおわァ!?」

 

ゴゥ!!と強烈な突風を巻き起こしながら研究所内を移動していく。

そうなれば出口に辿り着くのはあっという間で、私達の目の前には既に私が侵入する時に斬り刻んだ壁の前に立っていた。

 

 

「な、何が起きたのだ…」

 

「急がないとマズいね、毒ガスそこまで来てる。…行くよ」

 

またもさっきと同じ速度で移動し、湖の方へ駆けていく。

あ、いたいた。……残ってるのは10人くらいか、と言う事は…他のみんなは全員あの毒ガスの……。

 

「……ッ!!お前は…!!」

 

「あなた、ジェットだよね?残ってるのはあなた達だけ!?急いで!ガスは私が止めておくから!あ、ついでにこの子もお願い!」

 

「ぉわぁ!な、投げるでない!」

 

「やっぱり女王か…!止めるなんて出来る訳ねェだろ!何でここに来た!!ってうお、なんだこの龍!」

 

ぽい、とモモの助を投げ渡して手を振った。誰もいない所に放置するのは気が引けたから連れてきたけど、誰かに預かって貰えるならそれが1番良い。

 

100倍灰(ひゃくばいばい)巨大な拳(グランデ・ハンド)!」

 

はい完成〜、両手に特大手団扇!

 

「ほら!早くして!!」

 

「…っ、くそ、何なんだよ俺達は!!助けて貰ってばっかじゃねェか!!」

 

まだ少し躊躇いはあるみたいだけど、逃げてくれたようで何より。

ほぉら!吹き飛べ毒ガス!!

 

「せい!!」

 

ブォン!!と大きく手の平を振るって暴風を発生させる。なかなかの規模だ、竜巻出来そう。

私の生み出した風は毒ガスを上空へ飛ばし、迫りくる時間を大幅に延長させる事に成功した。よーしよし、今の内に私も戻っちゃうか!

 

 

 

 

 

「ーーーーー『ストーム』」

 

 

「っ…!?」

 

それは、突然の出来事だった。

 

まさに暴風…まるで、いきなり災害がこの地を襲ったのかと言わんばかりの風が吹き荒れて、辺り一帯の毒ガスを天高く舞いあげていく。

 

「『フリーズ』」

 

しかもそれだけでは終わらず、天高く巻き上げられた毒ガスの端から端まで…全てが余さずに凍って行く。

やがて全てが凍りついたガスは宙で爆散し、あられになって地面へと降り注いできた。

 

「……、やっと、あなたとお話が出来そうですね、一騎当千の女王、イリス。……メイド服…?…あれ…?女王…ではない?」

 

空からふわりと青髪の美女が降りてきた。魔法使いみたいなローブとトンガリ帽子…風貌は正に魔女って感じだ。

さっきの暴風と凍結はこの人が…?ていうか、私に用があるの?

 

「いや、私が一騎当千の女王とやらで間違いないよ。…でも、悪いけど…私はあなたを知らないよ。あと服に関しては気にしなくても大丈夫」

 

「………、…そ、う…ですか。……では、これだけは聞かせて下さい。あなたは何故麦わらの一味に…?ああ、警戒しないで下さい、私も転生者なんです。だからあなたが転生者、そうでなくともこの世界出身じゃない事は分かっています」

 

「!!……それって…」

 

私や零以外の転生者…!というかこの魔女って感じの風貌、絶対グリーンビットの魔女でしょ!

 

「…私も、まずはあなたの名前を教えて貰いたいんだけど。ほら、私だけ一方的に知られてるなんておかしいでしょ?」

 

「それはまだ言えません。あなたが何故麦わらの一味に居るのか、その目的を聞くまでは信用が出来ない」

 

「…少しくらい信用してくれないと、私としても警戒を緩める事は出来ないんだけど?それに、あなたの目的って王華の事でしょ?…叶」

 

「…!!!」

 

私の言葉に叶が目を見開かせる。彼女が本当に叶なのだとすれば…ぶっちゃけこれ以上警戒を強めても意味が無い。とっとと王華を呼んで、感動の再会をさせてあげないといけないんだから。

 

「…あなたには色々と知られているみたいですね。そうです、私の名前は叶…この世界ではグリーンビットの魔女、だなんて呼ばれたりもしています」

 

その目にまだ警戒の色を宿した叶が、無駄のない動作で華麗に一礼をした。長いツバの帽子を脱いでしまえば、魔女というよりはどこかのお姫様みたいにも見えるかもしれない。

 

「信用…とあなたは言いますが、正直な所を言わせて貰えば、それは難しいと言わざるを得ないでしょう」

 

「それは、私の正体や目的が分からないからだよね?あなたが叶だって事は間違いなさそうだから、私が知ってる事は余さず話すよ」

 

「…嘘をついたら」

 

「もー!そんな事言ったら私何も言えないじゃん!」

 

私が叶を警戒する理由が無くなっても、叶が私を警戒する理由は充分にある。王華と叶では転生時の流れが違うからだ。王華は転生後、まずは自身の記憶を閉じ込めた。そこから生まれたのが私という人格…なんだけど、叶にはそういった経緯は無かった筈だ。

つまり、ONE PIECEに登場していないキャラでもあり、かつ王華と同じ名前の私に対しては警戒しない方がおかしいのだ。

 

「まずは…そうだね、自己紹介から行こうかな。知ってると思うけど、私の名前はイリス。王華とは別人だよ…って言うのもおかしいかもしれないけど」

 

「…?」

 

「あー…じゃあまずは王華を呼ぶよ」

 

「呼ぶ…、王華は今、どこに?」

 

「今は私の中に居るよ」

 

ぴく、と叶の眉が跳ねた。…よく考えたら、私の中に居るとか訳の分からない事を言ったのはマズかったかな…。事情を知らない人が聞けば余計に警戒心を強めそうな事を言っちゃった気が…。

 

「あ、えっと、今のはちょっと言い方が悪かったというか…よ、呼ぶから!今すぐ!王華ー!王華ー!!」

 

「………」

 

い、痛い!叶の疑いの目が痛い!!

元々委員長気質のある叶のジト目はちょっと興奮…もとい気分が高まるけど、今はダメだからね!

 

…………。

 

「あれ?王華?王華ー!!」

 

え、なんで…いつもなら……、……あっ。

 

「…どうしたんですか?中に居るだのと言ってから彼女の名前を口にするだけ…もしかして私、バカにされてます?」

 

「ち、違うから!ホントなんだってー!こっちにもハプニングがあったの!ホントだから!信じてよぉ!!」

 

ハプニングだよ…忘れてたけど、王華…今寝てるじゃん…っ!!

しかも運の悪い事に本日はかなーり熟睡している様子!…ま、マズい…!!

 

「…はぁ。本当にそちらに何かしらのハプニングがあったとして、現状ではそれを私が信用出来ないというのは…あなたも分かりますよね?」

 

「う……い、今までの事とか全部話すからさ!」

 

「そこに嘘偽りが無いという証明は出来ますか?王華を一目見せてくれれば…それだけで済む話。それが出来ないと言われれば、信用出来ないのも当然の事では?」

 

そうですね!もー!なんで今来ちゃうの叶!夜に来てくれたらいいじゃん!

 

「…この世界で私は、ある程度海軍と縁があります。今から私はあなたを捕らえますが、海軍に突き出したりはしません。私はあなたから、真実を聞きたいだけですから。…信じて、とは言いませんが」

 

「と、捕らえる?ちょっと待ってよ!あなたの事は信じるから、今ここで全部話すから!」

 

「どうして慌てているのですか?王華も見せられない、信じていると言いながら私に着いて来るのは拒否をする。…あなた、私の警戒を解く気は本当にあるんですか?……はぁ、本当に、調子狂います…ね!」

 

ビュン!

 

「うわっ!?」

 

高速で飛んできた火球を首を捻って避ける。ほ、本当にマズい流れになってきた…!だって、今私は叶に捕まる訳にはいかないから…!シーザーも居る、ハーピー美女も居る、たしぎちゃんも居る、そしてローにみんなの精神の入れ替えを戻して貰わなくちゃいけない…!する事が沢山あるんだ、だから捕まる訳にはいかないんだけど…!

 

「あなたにどの様な事情があれ、私にも心の余裕が無くなるだけの理由があります。…正直、あなたの言動は何もかも怪しい。だというのに…、はぁ〜〜…」

 

額に手を当てて困った様に首を振る叶に首を傾げる。イマイチ叶の言っている事の意味が分からない。叶が私を捕らえようとしている事も、その意味も理解したけど、どうして困っているのかは全く見当も付かなかった。

 

「…そういう仕草もそうですが、あなたからは敵意が一切感じられない。その上、撒き散らす雰囲気は柔らかく…端的に言えば、善人としか感じられません」

 

ですから、と叶は言葉を紡いで手の平を前に突き出した。

 

「…その疑惑を確かめる為にも、まずはあなたを拘束します。ああ、話を拷問等で伺うつもりはないので安心して下さい。抵抗のない相手には軽い催眠をかける事も可能です。なので、あなたが何一つとして後ろめたい事もなく、かつ王華にとって害のない相手だと分かれば、傷一つつける事なく解放する事を約束します」

 

「…えーっと、たしぎちゃん達を嫁にしたいから、今はちょっと待ってほしいというか…」

 

「その辺の事情も拘束後に伺います!!」

 

「ちょっ、と!待って!!」

 

身体強化でも使ったのか、地面に足跡が強く残る程の勢いで接近してきた叶の拳を手の平で受け止める。

魔女とか言われてるのに肉弾戦も出来るんですかそうですか!

 

叶は勢いよく手を振り払って払う様に蹴りを放ち、私はそれを跳んで躱す。跳んだ後の硬直を狙われたくないから、宙を蹴って距離を取った。

 

「叶にとって私が無視できない存在なのは分かってる!だけど、私にだって今ここを離れたくない理由があるの!!」

 

「パンクハザードの件なら、あなたが居なくとも麦わらの一味だけで解決が可能です!その上この世界だとペローナやミス・バレンタインまで一味入りを果たしているそうじゃないですか!何を心配する事があるんですか!」

 

パキパキ…と周囲の空気が凍っていくつもの尖った氷の礫が私を囲む様に現れる。

 

「私だって麦わらの一味だよ!仲間の心配をして何が悪いの!!それに、あそこには嫁になって欲しい人が居るから!!」

 

「…嫁…!イリスという名前をし、女好きで有名なあなたを私は王華本人だと確信していたのですけどね。…お互い譲れないなら、押し通るのみです!!」

 

「もー!…じゃあ私が勝ったら、きちんと話を聞いてね!!」

 

武装色の覇気を放出させ、衝撃で氷の礫を消し飛ばして接近する。私の速度に軽く目を丸くさせる叶を視界に捉え、小太刀の鞘を取り出して叶の横腹を殴り飛ばした。

あまり傷をつけたくは無いし、勝負も一瞬で終わらせたい。…1番良いのは、彼女に覇王色をぶつけて昏倒させる事。でも恐らくそれは無理だろう。叶も相当な実力者だろうから、まず覇気で倒すなんて事は無理な筈だ。

 

「『セイクリッド・ファイア』ッ!!」

 

「あぶなっ!!」

 

いきなり地面から噴き出てきた巨大な炎柱を後ろに飛んで回避する。服が焼けちゃうじゃん!

…くっそ…さっきの攻撃は防がれてたのかな、全くダメージ入ってないっぽいけど!

 

「『セイクリッド・スピア』!!」

 

「わっ!?」

 

青キジが繰り出す氷槍の光版みたいなのが高速で飛来してきたのを避け、再び後ろへ飛び退いて距離を稼ぐ。

周りに漂っていた毒ガスは彼女の力で殆ど消えてるし、動く事に関しては何も不都合は無い。

私が早く勝負をつけたい様に、あちらも同じ考えの筈だ。だからさっきから大技っぽいのが連続で放たれているんだろう。

 

「この…!ちょこまかと!『ヴァント』!」

 

「っ…おっと…!」

 

ボコ、と私の足場が盛り上がり、そのままぐんぐん上昇していく。

とりあえず飛び降りようとすれば、まるで土の塔みたいに聳え上がった足場からツルの様な草が生えてきて私の体を拘束した。

 

「その蔓は簡単には千切れませんよ、逃げられたくはないので。このまま催眠をかけたいところですが…やはりあなたも相当な実力者の様です。このままかけても効き目は悪いでしょう。…ですので、『シャドウ・ミラージュ』」

 

私と同じ目線になるまで宙を浮かび上がって来た彼女がそう唱えれば、私を中心にして、ぐるりと辺りを包囲する様に叶の分身が現れた。数は…ぱっと見100人くらいかな?

 

「本体は私1人ですが、全員が質量を持った必殺の一撃を放てます…!私の最大にして最高の技です。あなたの得意とする倍加も、この技の前では無力!!…降参するなら、これが最後ですよ?流石にあなたが強いと言えども、この技を耐えられるとはとても思えない」

 

「…なるほど」

 

勝ちを確信している叶に向かって、私は臆する事なくニヤリと笑みを浮かべて口を開く。

 

「あなたの“最高”の技とやらで、もし私が倒れなければ…ここは一旦引くか、大人しく私の話を聞いて。どう?ああ、大丈夫大丈夫、絶対死なないから」

 

「……言っておきますけど、私は当然あなたの能力を知っています。最大が100倍だという事も、海軍大将の技をそれでも防げないという事も。…2年の年月で、あなたがどれ程の成長を遂げたのかは未知数ではありますが。それでもまだ、降参をするつもりは…」

 

「大丈夫、全力で来ていいよ」

 

変わらない私の瞳の色に、叶が少し唇を噛んで手の平を前に翳した。それは周りの影達も同じで、手の平を中心に直径2m程はある1枚の魔法陣が展開される。まさかこの世界にきてこんなの見るなんて思っても無かったなぁ。

 

「『エレメントーーーーー』」

 

更にその魔法陣の前に同じ様な少し小さい陣が展開され、それを何回か繰り返して合計で5枚の魔法陣がタワーケーキみたいに重なっていた。

1番手前の魔法陣に光が宿り、収束して2枚目の燃える様な魔法陣へと移る。その光は2枚目の魔法陣を包み込み、光り輝く炎の様になる。3枚目の魔法陣では水の力を取り込み、徐々に属性を増しながら力を溜めていく。5枚目まで辿り着いた時、そこから必殺技ってのが放たれるんだろうね。

4枚目では電気…かな、なんかバチバチしてるし、5枚目は…闇?なんかもやっとした霧みたいなのが魔法陣を覆っている。

 

「いきます…!!『バースト』!!!」

 

「ーー!!」

 

最終的に、炎、水、雷、光、闇の属性を一点に凝縮させた様な光が出来上がり、一斉に放たれる5属性の光線おおよそ100本が、一切の手加減なく一直線に私の元へ降り注いできた。

その衝撃は計り知れず、一点にエネルギーが集中した為か直後に大爆発を起こし、ソニックブームが発生する。上空の雲は掻き消され、遠くに見えていた毒ガスも遥か上空へと舞い上がって消えた。

空気も震え、地面に幾つか亀裂が走っている箇所がある。積もっていた雪なども吹き飛び、茶色い土が見えていた。

 

 

「…はぁ……はぁ………っ!大丈夫、です、よね…!あれだけの覇気を…ふぅ…持っているのですから…気絶程度で済んでくれれば…」

 

「いやー、凄かったね」

 

「……は?」

 

「どーも」

 

ぽん、と息切れしている叶の背後から肩に手を置き、ニッと笑って見せた。

 

「な、なんで……」

 

「確かに、アレは当たってればそれなりにダメージ受けてたろうね。…でも私、受けるなんて一言も言ってないよ?」

 

その技を撃っても死なないよ、避けるから…という意味ね、さっきのは。

 

「さ、私は死んでないし、気絶してもないよ。さっきの話覚えてるよね?」

 

「……あなたがそう言うのなら、私だって、あなたの提案を受け入れたとは一言も言っていません」

 

「あ、確かに…」

 

「でも……、あなたからはやはり少し、王華に似た何かを感じます。…今回は、私も冷静ではありませんでした。結論を急ぎ過ぎた、という事でしょう。…ですが、今回の件を謝罪する程、私はあなたを信用出来ない」

 

叶はそういうと、私の手を振り払って距離を取った。

 

「あなた達が次に向かうのは、間違いなく“ドレスローザ”という国です。そこで開かれる武の大会に出場して下さい、私も出ます。……決着はそこで着けましょう」

 

「優勝商品が美女なら出てもいいけど」

 

「……あなたは、本当に女性が好きなんですね」

 

叶が確認する様に静かに尋ねてくるのを、間をおかずに頷いておく。それが私であり、王華との共通点だ。

 

「………、ではまた、ドレスローザでお会いしましょう。大会の件、よろしくお願いします」

 

トンガリ帽子を深く被り直し、叶はフラフラと飛んで行った。まだ必殺技の反動が取れ切って無いんだね。

…大会か……新たな美女との出会いもあるかなぁ。それに叶もそこで私の事を見極めてくれるみたいだし……うん、出よう。

 

さて…じゃあ私は一旦研究所内に戻るとしますか。

 

 

 

 

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