「…そういう訳で、彼は私達の直属の上司にあたるヴェルゴ中将なんです…。…私はいつも、誰かに助けられてばかりで…!!今回も、部下に手をかけるヴェルゴを止める事が出来ずに、その上海賊であるあなたに助けて貰って…!!」
「ああー…そういうのやめにしない?たしぎちゃんだって充分に私が到着するまで時間稼ぎしたじゃん。勝てないのは仕方ないよ、それが今のあなたの強さなんだから」
せっかく自分達の危機を乗り越えたんだからもっと喜んで欲しいんだけど。周りのチンピラ崩れの海兵達は全員喜んでるよ?
「オイオイてめェ!なんだその言い方はァ!!」
「大佐ちゃんが弱いみたいな言い方じゃねェか!!」
「いや、そういうつもりじゃなくて…」
まだまだ強くなれるから気にしないで〜みたいな感じだったんだけど…。
「それにさ、別に良いじゃん、助けられたって。私が助けたくて助けたんだしさぁ…」
「…あなたは、どういうつもりなんですか…?女が好きと言いながら、1番女性を口説くのに適さない“海賊”になり、今では一騎当千とまで呼ばれて恐れられている…!!あなたは確かに強い…ですが…その強さは本当は、何の為の強さなのですか…!?」
……え、何この流れ。どうして海賊に…?そりゃ、当時の私に言わせればONE PIECEの世界に来て海賊にならない方がどうかしてるってもんだよ。…って説明するのは簡単だけど、多分その話を信じてもらえる様な仲にもまだなってないだろうなぁ。
「…海賊になったのは、ナミさんが居たからかな。まー流れだよ流れ。今ではその流れに乗って正解だったと胸を張って言える。強さを求めたのは嫁を守る為かな、何かを守る為に強くなりたい…それは誰だって同じでしょ?」
誰かを守る為だったり、例えば自分を守る為だったり…強くなる理由っていうのは大体何かを守る為だから。
私はそれが嫁だったってだけで、強さは後から付いてきた結果に過ぎない。
「私の異名で沢山の人を怯えさせてるのは、それは本当に申し訳なく思うけど…私も譲れないモノはある。あなたにだってある様にね。それから今度私とお茶してよ?約束は守ってもらわないと困るんだからね」
「お茶……?…あ、初めて会った時の…」
たしぎちゃんは思い出した様に声を上げ、まじまじと私の目を睨み付けてきた。睨み付けると言っても悪い意味ではなく、私の言葉の意図を確認しようとしている様な感じだけど。
「海賊と海軍だし、そりゃ当然たしぎちゃんが私に対してアレコレ言いたい気持ちも分かる。だけど私は初めて会ったあの時から…あなたを嫁にしたいって気持ちは何一つ変わっちゃいないよ。絶対に惚れさせてみせる」
今は無理でも未来で必ず!
…さて、私はそろそろ先に進もうかな。
「…なんだか、上手く言えないんですけど、私の尊敬する方に似てる気がします。…ですが勘違いはしないで下さい、あなたは海賊…!その様な言葉に私は惑わされません…!」
…尊敬?スモーカー…では無さそう。スモーカーなら名前を出してるだろうし…。
「惑わすってか、直球で口説いてるんだけど?あと、この先のシーザーは私達が捕らえるからたしぎちゃん達は船に戻ってて良いよ」
「シーザー・クラウンを捕らえるのは海軍の役目です!あなた達、動けますか?」
「ああ、ヘでもねェぜ!」
「たしぎちゃんに手を出したらブッ飛ばすぞ女王!」
「ざんねーん手は別の意味で出しまーす!」
…と、話はここら辺で終わっておこう。急がないと、私はハーピー美女も捕らえなきゃいけない訳だし。
「ついてくるなら止めないけど…よっと」
「きゃ…!な、何を…!」
たしぎちゃんを軽く横抱きする。ヴェルゴって奴にやられた傷はまだ痛んでるだろうから走らせる訳にはいかないし。かと言ってチンピラ共に任せたくない、私の嫁だからね!!
「よし、行こう!」
「お、下ろして下さ……ッ!?」
抵抗されない様にそれなりの速さで走り出した。先を走るみんなにもこれならすぐに追いつける!
私とたしぎちゃんの会話に入らずに見守ってくれていたサンジまで置いてきちゃったのは申し訳ないけど、海兵達の護衛として近くに居てくれれば不足の事態にも対処できるだろう。
それより頼みの毒ガスが無くなったシーザーがどう動いてくるのか検討もつかないって事だけがちょっと不安だけど、奴がどう動いても心配はいらないか。
「見えた!みんな…あれ、全員は居ない…?」
子供達とナミさん、ミキータ、ロビン、そしてゾロとチョッパーはいるけど、ペローナちゃん達が居ない…ジェット部隊も…!もう…この島みんなと一緒に居られないから早く出たいんだけど!!
「…っ…女王……ッ!?」
「イリス!いい所に!!」
ハーピー美女の能力でかは分からないけれど、吹雪が吹き荒れて一面真っ白に染まった大きな部屋に入る。ナミさん達も無事そうでなにより!
「ゾロ、ナミさん達を連れて先に行ってて。よろしく…と、その前に状況説明お願い」
「別に構わねェが…あの女にお前は勝てんのか?刺し違えても良いって覚悟が見える」
「大丈夫だって、逆に何を心配してるの?」
「そりゃそうだな。状況は見ての通りだ、あの女が暴れ出したからお前を待っていた」
なるほど…もうこんな風に強硬手段に出るしか道が無くなった訳だ。
ハーピー美女からしてみれば、毒ガスも無くなって、自分も捕まり、そしてジェット部隊を含む殆どの人が反乱を起こしている現状は最悪と言ってもいいだろうし。
「…それより、コイツが何でお前に抱かれてんだ?」
ああ、たしぎちゃんの事か。
…コレ、反抗出来ない様に走ってきた際の風で髪の毛が乱れ、服もちょっとはだけかけてるから私が何かアレな事しでかしたみたいな絵面になってない?これ。
「色々あってね。ね、たしぎちゃん」
「…っ、は、早く下ろして下さい…!」
「えー」
「キャハ!イリスちゃん、気をつけてね?」
「あんまりやりすぎちゃダメよー?」
「はーい」
2人は私じゃなくてハーピー美女の心配をしているみたい。最悪怪我はさせちゃうかもしれないけど、出来るだけそうはならない様に頑張る!
…完全に敵に回ってる時点で厳しいかもしれないけどね?
「平気なら俺はもう行く」
そう言ってゾロは先に続く出口へと走り出した。ちょっと、ちゃんとナミさん達を護衛してよね!
「おーーい!大丈夫かイリスちゃーん!」
「サンジ!うん、平気ー!ここは私が引き受けたから先行ってて!」
「大佐ちゃんはこっちに渡せ女王!」
「そうだそうだ!!」
「やだ」
ぷい、とそっぽを向いて断固拒否の姿勢を取る。たしぎちゃんだってもう諦めてるもんね!というか降りようと頑張ってたけど無駄だと気付いて諦めたって感じ!
「わ、私の事は心配要りません、構わず前へ…!シーザーの身柄の確保を優先して下さい!」
「…オイ!頼むぞ女王!」
「女好きってんなら大佐ちゃんを傷付けんじゃねェぞ!」
「当然!」
少し後ろ髪を引かれながらも先へ行ったチンピラ海兵達を視線で追って、部屋を出たのを確認してからハーピー美女に向き直る。
「お待たせ、大人しく待っててくれてありがとね」
「…あなたの前では下手に動けない。…まさか、そんなバカげた格好をしている女があの女王とはね…」
「可愛いでしょ?それより、どうするの?まさか戦う気?」
戦ったって万に一つの勝ち目すら無い事は彼女も分かっている筈だ。
例えば今ここで、私が彼女に覇気を一点にぶつけてやればそれだけでカタが付く…要はそれくらい実力に差があるのだから。
「いいえ、戦いはしない。正直…どうやったってあなたには勝てる気がしないもの。だけど、戦いだけが全てじゃないわ…!私は私の役目を果たす!カマクラ
「お」
ゴォオ…!と私の周りの雪が盛り上がり、私を囲う様にカマクラが出来上がった。なるほど、とりあえず全力で足止めするって事か。
「たしぎちゃん、ちょっと下がってて」
「いえ、私も一緒に…」
「いいから」
刀を抜こうとするたしぎちゃんを無理矢理その場に座らせ、私は小太刀を腰から引き抜いた。
このカマクラの強度は知らないけど、私の攻撃に耐えられるとは思わないし、軽く斬り刻んで足止めする気すら起こさないであげよう。
「ーーーあなたに1つ、いい事を教えてあげる」
「ん?」
クルクルと小太刀を回してれば、カマクラの内側にハーピー美女の上半身がスポ、と生えてきた。なんか可愛い…。
「私は
「……そう来たか」
私が彼女の能力を
「あなたはもう、このカマクラを攻撃出来ない。私が女である以上…そこから逃げる事など」
「よっ」
「…え?」
ボコッ!とカマクラを蹴破って普通に脱出した私に、ハーピー美女もたしぎちゃんも目を見開いた。
なーんか勘違いされがちなんだけど…私って別に女の人に手が出せない訳じゃないっていつも言ってるよね。攻撃しなきゃダメな場面は躊躇しないよ、私は。
「私を閉じ込めるには…ちょっと愛が足りないね。あなたが裸になって突撃してきた方がまだ足止めになると思うけど」
「…ふ、ふふ…、その手に持った刀でカマクラを破壊しなかったのは何故…?傷は付けたくないって事でしょう?」
「まー…その通りだけどさ」
斬り傷を付けちゃうのは流石に抵抗あるかな…殴ったりするのも出来ればしたくはないけど、仕方ない場面っていうのはあるし。
「だけどお陰で私もあなたが
せっかく抜いたのに出番の無くなった小太刀を戻し、体から強大な覇王色のオーラを噴出させる。
最初と違って今は
「…っ…まさか、2年でこれ程まで…!!」
「じゃ、おやすみ」
暴れる覇気を纏めてハーピー美女へと放出した。このオーラに呑まれればまた気絶するだろうから、たしぎちゃんを横抱きで彼女は背負うとしよう。
「フフ…確かに私はあなたには敵わない」
「……ッ…!?」
覇王色の覇気がハーピー美女へと届く直前、彼女は武器である巨大なピックの様な物を構えてそう言って、私は驚愕に目を見開いた。
構えた…と言っても、私に向けてじゃない。羽根で掴んで、自身の喉元に向けているのだ。そんな事をすれば、覇気に当たって昏倒する衝撃で突き刺さるのは目に見えている。
なぜ?何の為に?決まってる…私に対して絶大の効果がある…捨身の精神攻撃だからだ…!私との戦闘中に自殺なんてすれば、私がその事で気に病んで戦力がダウンすると思ったから彼女は行動に移しているんだ…!!
……舐めてんじゃないっての…!!私の目の前で、そう簡単に死ねると思うな!!!
「っ…え…!?」
私は放った覇気を即座に取り消し、かつ彼女がそれを認識して自分の力で喉に突き刺すよりも早く、私は彼女が持つピックを蹴り飛ばして覇銃で粉々に粉砕した。
あまりにも一瞬の出来事に驚愕の表情を浮かべるハーピー美女に、私は憤りを隠す事なく詰め寄って覇王色の覇気をぶつけ昏倒させる。
あのままなら、今度は自分で舌を噛んで死のうとするかもしれなかったからね。ハーピー美女には申し訳ないけど、自殺出来ない様にタオルを噛ませるくらいの処置はしないとマズイかもしれない。
「…自分の死で私を弱らせる理由が、この人にはあった…?」
残っているのはシーザーだけ…つまり、私を再起不能にしようが勝ち目などある訳がない。だというのに命を投げてまで行動に出た理由は……つまり、まだバックに何か居るって事だ。
そいつと万全の私をぶつけない為に彼女は命を捨てようとした…、…まだ、分かんないけど。
「倒した…んですか?」
「うん、何とかね…」
…でももし、本当にそうなのだとしたら………、…めちゃくちゃ腹が立つ…!!
こんな簡単に命を捨てさせる様な奴って事でしょ…?そんなの、許されていい筈がない…!!
「命を粗末に扱うのは許せない…たしぎちゃんもそう思うでしょ?」
「え?……はい」
海賊の私に言われたからか反応が少し遅れたけど、たしぎちゃんも返事は力強かった。やっぱり正義感が強いだけあって、今起こった出来事を見て何か思う所もあったんだろう。
バックに何かが居るかもしれないという事に気付けただけでもまぁよしとしよう。彼女を嫁にするのは今はまだ厳しいかもしれないけど…すぐその腐れ切った価値観を正して、私に惚れさせてやる…!!