「…え、シーザーの後ろ盾についてるのって七武海なの?」
「はい、王下七武海の中でも特に異質な海賊…名を『ドンキホーテ・ドフラミンゴ』…!闇の世界のブローカーとも呼ばれ、裏取引ではジョーカーという名を使って戦争などを助長している厄介な存在です」
ハーピー美女を横抱きしながらみんなの元へと走る。たしぎちゃんには自分で走れますと断られた…悲しい。
それにしても、そのジョーカーとやらがシーザーのバックに居るって事は…つまり、ハーピー美女のバックも奴だという訳だよね。
それにしてもたしぎちゃん、結構情報持ってる!何か普通に話してくれたけど、少しは信用されたって事で良いのかな?
「ドフラミンゴか…戦争にも居た様な気がする」
あの時は何かと必死だったから…居た、かな?くらいの記憶しか残っていない。
見かけたら殴っておけば良いって事だよね、能力者だったような気がするけど、きちんと見てないからあんまり覚えてない。
「これってさ、もう私達の後ろには誰も居ないんだよね?」
「ええ…居たとしてもヴェルゴくらいだと」
「じゃ、ここから後ろ吹っ飛ばしとくね、脱出しやすくなるし、シーザーの研究所も壊せて一石二鳥だから。あ、ちょっとお願いね」
「え?」
ハーピー美女を少しだけたしぎちゃんに預けてっと…。
久し振りにド派手に行こう!ヴェルゴは結構タフだから、多分死にはしないでしょ、多分…。
「
立ち止まって、来た道を振り返り指先を向けた。増幅していく私の覇気が、莫大なエネルギーとなって指先へと収束していく。そのエネルギーは光となって可視化され、徐々に大きく膨らみ……、
「
凄まじい爆発音と共に私の指先から特大の弾丸が放たれた。その大きさは比喩抜きで直径5mはあり、辺りに衝撃波を撒き散らしながら前へと飛んでいく。当然その間も覇銃の余波に当たった壁や天井などが無残にも吹き飛び、技を放った私や近くに居るたしぎちゃんとハーピー美女にまでも瓦礫などが飛んできた。当然そんなものを直撃させる私ではないので、覇気を放って壊しておく。
最終的には私達の居る場所から前だけを残して、研究所を内部から木っ端微塵に吹き飛ばしたのだった。
「……うそ…」
「気分爽快!大掃除した後みたいで気持ち良いね」
覇銃が通った地面は半円型に抉られ、未だに勢いを衰えさせずに空へと飛んでいくエネルギーの塊を見てうんうんと頷く。たしぎちゃんは開いた口が塞がらないという感じだけど…ふ、どう?惚れても良いんだよ?…勿論冗談だからね?建物ぶっ飛ばして惚れられるとは流石に思ってないからね??
「え…!?こ、これは…!?さっきの技で全て吹き飛ばされたのですか…!?」
「え?」
何の事?と思い見通しの良くなった周りを見渡せば、吹雪で積もっていた雪などは消えて下の地面が見え、所々にあった岩や廃屋なども全て消えて辺り一面更地になっていた。あー…これは私じゃなくて…。
「叶が必殺技みたいなの放ってこうなったというか…私は何もしてないからね?」
「…連絡してからかなり時間も経っているのにカナエさんが来ないのはおかしいと思っていましたが…まさか、さっき起きた大きな爆発は…」
「うん、叶の技。それで毒ガスが無くなって……って、え?たしぎちゃん、叶を知ってるの!?」
なんか普通に話が通じてビックリ…叶って私の思い浮かべてる叶だよね?
「私が尊敬している方です。…それにしても、これだけの技を何故カナエさんが…」
「……」
それについては色々と理由があるんだけど、話すとややこしいから黙っておこうかな。
たしぎちゃんに預けていたハーピー美女を再度私の腕の中に迎え入れ、現状を探る為に見聞色で周囲の確認をする。…みんなこの先の広い空間に集まってるみたい。シーザーは……あれ、シーザーのやつかなり離れた所に居るね、研究所から出てる…?意識は無さそう…かな。ルフィがブッ飛ばしたのかもしれないね。
「急がないともう終わってるっぽいよ、私達待ちかも」
「シーザーの捕獲は完了したという事ですか?」
「捕獲というか、倒したというか」
どういう流れかは分かんないけど、とにかく終わってるという事は分かる。合流するのにそんな時間はかからないだろうし毒ガスに追われてる訳でも無いから慌てずに行こう。ハーピー美女の美しい顔でも見ながらね!!
***
私の見立て通りみんなと合流するのはすぐだった。居ないのはフランキーくらいだけど、フランキーはサニー号を移動させる為に外に居るらしい。叶の技に巻き込まれてなければ良いんだけど…。
で、今私達はなんかSAD?っていうものを運び出す為のトロッコに乗って研究所から脱出中である。なんかよく分かんない薬品らしいけど…そういう難しそうな事は苦手なんだよね。ちなみにヴェルゴから奪い取った心臓は既にローに渡してある。
「女王屋、本当に外に毒ガスはねェんだな?」
「ないない、なんなら色々無いよ」
「それより女好き、てめェヴェルゴとやり合ったらしいじゃねェか、奴は何処にいる?」
「質問ばっかだね…グラサンならかなり後ろの方に居ると思うよ、私が研究所を破壊するのに使った技に巻き込まれてる可能性もあるからもっと遠くまで飛んじゃったかも」
可能性というか確実に巻き込んじゃったけど…。
それから、このハーピー美女の名前はモネと言うらしい。ぺろぺろしたい程美しいお顔だ…ぺろぺろ。ついでにペローナちゃんもぺろぺろ。
「うぜェ…」
「ガチトーンは泣くよペローナちゃん、私、泣くよ」
「……し、知らねェよ」
冗談なのにちょっと罰が悪そうに視線を逸らすペローナちゃんほんと可愛い。可愛さの暴力、私への特攻ダメージ…!あ、私に対して強烈な攻撃を放てるのは嫁達全員に共通してるけどね?
「…まさかとは思うが女王屋…モネをお前の部下にするつもりか?」
「部下じゃなくて嫁ね、よ・め!」
「……はァ」
ふふん、と宣言すれば、ローは軽くため息をついてとんでもない事を言いやがった。
内容は…モネの心臓の在り処。どうやらローはここの研究施設を破壊する為、シーザーに協力するという建前で潜入したらしいのだが、その時この研究所を自由に出入りする条件として自分の心臓をシーザーに、そしてシーザーは信用の証としてモネの心臓をローに渡したらしい。
で、私達がこの島にやってきて、スモーカーの心臓を奪い取ったローはその事をシーザーに話して…モネの心臓を返した。
当然スモーカーの心臓を取った、という話をした後に渡されたのだからそれはスモーカーの心臓だと勘違いするだろう。ローは一言も誰の心臓だとは言っていないが…つまり、勝手に勘違いしているシーザーがどう動くか分からないという事だ。
最後にスモーカーを道連れにしようと持っている心臓を潰せば…モネは死ぬ。
「ちょっと…!一大事じゃん!ブッ飛ばすよホントに!」
「仕方ねェだろ…保険だ。それに幸いまだモネはくたばっちゃいねェ、急げば間に合う可能性はある」
「急ぐに決まってる!」
トロッコが走るこの先の道にシーザーが居るのなら、ちょっと先に行ってくる!!
もし意識の戻ったシーザーがその心臓をどうにかしてしまったら終わりだ、全く…!とんでもない事してくれちゃって!!
「ちょっと先行くね!」
「ええ、私達もすぐに追いつくわ」
ナミさんの返事にこくりと頷き、トロッコから飛び降りて走り出した。
全速力で走っちゃったら衝撃で道を崩しちゃうかもしれないし、かと言って急がないとモネが危ない…くそ、どうしても焦っちゃう!
「出た!シーザーは…!?」
とりあえず研究所の出口からは出たし、毒ガスも思ってた通り無いけど…シーザーどこまで飛んだの!!
「こっちか…!」
見聞色で探ってシーザーが倒れている場所まで急ぐ。
やがて奴の姿を捉えれば、丁度ローの能力で取り出されたモネの心臓にナイフを突き刺そうとしている場面だった。
「こんの…ボケがァ!!」
「ボゲヘェ!!?」
一瞬でシーザーの所まで移動し、ナイフを蹴り飛ばして顔面をブン殴った。
あっっぶない…!後少し遅れてたらと思うとゾッとするよ…心臓は私が預かっておこう。
「アウ!やっと来たか、シーザーの捕獲は終わったのか?」
あ、フランキー。
魚人島で見せた合体ロボに乗ってるのか。毒ガスがあったからかな?
「このとーりね。それより…そこの美女は誰!?」
ボロボロだけどすっごい美女が合体ロボフランキーと対峙してる!あと、隣におまけのプロペラ男。
その美女はなんか今の私の様な格好…つまりメイド服を着ていて、頭にはカチューシャも付けている。私が着ているソレよりかは動きやすそうだけど。あと、目元だけを覆う仮面もつけていた。とにかく綺麗な人だという事だけは伝えたい。美しい!!
「そこのお嬢さん、私の嫁になって!」
「えっ…!私、必要とされてる…?」
「今ソレはやめろベビー5!とにかくシーザーを回収するのが最優先だ!」
先制で軽く口説いとこ、と思って口にした言葉に思ったより食いついてくれた…。頼まれたら断れないのかな…いや、流石の私もそんな軽いノリでOKされたら驚きを通り越して心配するよ?
「どこのメイドだか知らないが、その男を渡せば命だけは見逃してやる!」
「あなたも、どこのプロペラだか知らないけどその美女を差し出せば見逃してあげるけど?」
でもこの2人、雑魚ではなさそうだ。負けるなんて事はありえないだろうけど…どうしてシーザーを回収しようとしているのかは気になる所だね。
「出ェたァ〜〜!!!」
「おお!あれ見ろ!」
「うおお〜!!ショーグンだァ!!」
「ロ・ボ・だーーーっ!!!」
「お」
みんなも到着したみたい。ルフィ達や海兵、子供の男連中は殆ど合体ロボに目を光らせている。反対に女性陣は子供も含めて全く興味なさそう…私は少し興味あるんだけど…私がおかしいの?
「イリス、どうだった?」
「危なかったけどこの通り!」
ナミさんの質問に、じゃーん!と倒れ伏すシーザー、そして奪い取ったモネの心臓を見せた。心臓は間違って傷付けないよう慎重にモネの胸元へと戻しておく。ついでにぽよんを一揉みしておいた。やわらかかった。
「イリス…!?まさかこのメイドが女王…!!?」
「流石にコレは分が悪いだすやん…!く…ロー、この裏切り者がァ!ジョーカーはお前の為にまだハートの席を…」
「ハートの席?この人達仲間なの?」
「いや…敵だ」
私の言葉に即答し、ローは2人を見据えた。
仲間…というにはローと2人の空気感は自然過ぎる。まるで小さい頃からの知り合いだけど、仲は良くない…みたいな感じ。わかんないけどね?
「敵だってさ。じゃあ悪いけど…」
「ッ!!?」
フッ…とプロペラ男の前まで移動し、顎を上空に蹴り上げた。この程度の敵なら一撃でKOするのは訳ない話だよ、それにフランキーが弱らせてくれてたから余計にね。
「あなたは…こうだっ!!」
「ぅ…!」
さくさく過ぎて笑っちゃいそうだけど、ベビー5の方はモネの時の様に覇王色をぶち当てて意識を飛ばしておいた。いやー、みんなと離れ離れになるから早く出たいとは思ったけど、モネにベビー5といい…この島に来てほんと良かった!叶にも会えたし…たしぎちゃんとも話せたし。
いい加減たしぎちゃんのガードも緩くなってくれても良いのになぁ。嫁にしたいかどうかに海軍とか海賊とか関係ないじゃん!
こんな感じで心臓は無事でした。シーザーの手に渡ってはいましたが、まさかローもイリスの女に手を出す早さがここまでだとは思ってもなかったということですかね。