ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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174『女好き、早い再会』

「ヘヘヘ…ここじゃ女は珍しいからな、魔女サマも心配で声をかけたって訳だ」

「今までも“無敗の女”くれェしか居なかったからなァ」

 

へぇ…無敗の女か。私を遠巻きに観察しながら零した言葉だろうと、私にかかれば一語一句聞き逃す事なく耳に入れる事ができる。

正直、これだけ甘く見られているのに誰も私に絡んで来ないのは予想外だった。こういう場だから、私みたいな女は試合前から狙われるモノだとばかり…。

 

確か試合はAブロックから順に行われるらしいから…うわ、じゃあ私最後じゃん。暇だー…。

まぁ、Aブロックの試合は既に始まってるんだけど。

 

強者が集まってると言っても、ぶっちゃけた話叶以外は大して脅威でもないだろうから叶を説得した後に適当に優勝して賞金頂いておこう。ナミさんにプレゼントすれば喜んでくれる事間違いなし!

 

「…ん?アレは…」

 

する事もないのでその辺を歩いていれば、戦闘準備室と書かれた部屋の中にルフィが居た。背中にはルーシーと書かれた布を貼りつけてあるから、偽名出場らしい。

 

「やっほー、ルーシー」

 

「………、あ、おれの事か!あ!イリ……むぐ!」

 

「ちょっ…!あのねぇ、私はここではアイリスって名前だから…」

 

ルフィにひっそりと耳打ちして、視線だけで辺りを見渡す。…よかった、怪しまれてなさそう。

ルフィもそうだけど、私も今や悪い意味で有名人だ、名前だけで正体を勘づかれたっておかしくない。…そう考えたらルフィって、今仮面つけてるのに良く私って分かったよね。シャボンディでは全然気付いてくれなかったのに…!メイド服のおかげかなぁ。

 

「わ、悪ィ…」

 

「…それで、ルーシーがどうしてここに?」

 

「ミンゴの偉い部下がここに居るって聞いてよ、工場の場所を教えてもらう為に参加しろってフランキーが」

 

「潜入って事だね、なら尚更正体を気付かれる訳にはいかないじゃん」

 

偉い部下っていうのは、幹部連中だろうか。幹部達に聞けば工場の場所を教えてもらえるとは思えないけど…モネ達と違って無理矢理聞き出せるし、まだ可能性はあるかな。問題はその幹部がどこに居るのか、という事だけど…このコロシアムの運営側なのか、それとも出場者なのか、はたまたそのどっちもなのか。

うーん…分かんない!考えるのやーめた、適当に勝ち上がったり、それこそ優勝すれば自ずと会えるよね。

 

「それよりイ……アイリス!は景品何か知ってんのか?」

 

「優勝の?賞金じゃないんだ、全然知らないよ?」

 

「それがよ、司会のおっさんがさっき言ってたんだ、優勝すれば…」

 

「ーーーー異界の悪魔の実が手に入る、とね」

 

なんか凄い顔の整った人がいきなり話しかけて来た。周りがウォーミングアップをしている中、彼は気負わず薔薇を咥えている程だ。ていうか薔薇を咥えるっていつの時代の人だよ。

 

「異界の悪魔の実?」

 

「言葉の通り、かの四異界レベルの悪魔の実という事さ」

 

はー…つまり、今までの常識ではありえない程に強力な効力を得る事が出来る実って事だね。

 

「あなたは?私はアイリス、こっちはルーシー」

 

「俺はルフィ、海賊王になるおとっ…ごぷッ!?…る、ルーシーだった…たはは」

 

「…フフ、本当にキミが麦わらのルフィだったら…今ここで殺していたよ」

 

殺す?…顔に似合わず物騒な人だなぁ。咄嗟にルフィの後頭部を叩いて止めて良かったかも。声からして男の人だろうけど…女装されたら性別分かんなくなりそうだ。

 

「僕が新世界に入ったのは3年前…2億を超える美しきルーキーの登場に世界がざわめいていた。新聞にも連日登場…手配書という名のブロマイドは全て女性達に盗まれる始末…」

 

「なぬ!?それはダメだよ!私が堕としたいのに!」

 

「うん?どういう事だ?…いや、それより…当時の僕は輝いていた。何人の女性に求婚されたか分からない!…それがどうだ1年後!!全てを掻き消す「頂上戦争」…!湧き出て来る後輩のルーキー達は最悪の世代ともて囃され獅子奮迅の大立回り!!更にそこへ現れた「四異界」!!記者達はもう僕に見向きもしないっ!!だから殺すんだ…目障りな後輩達を全員っ!!」

 

逆恨みじゃん…。あのルフィですら、それは逆恨みって言うんだぞ…と呆れていた。

それにしても私達の1つ先輩かぁ…なんだかんだ言っても新世界を3年生き延びてるって事でしょ?実力は確かなんだろうけど…殺されてやる訳にはいかない。

 

「…ふー、じゃあ、僕は少し風に当たって来るよ。そよぐ風に揺れる僕の髪は、それだけでどんな名画をも超える美となる。困った事に、今は見せる女性達もリングに釘付けだけどね」

 

なんかまたズレた事を言いながら去っていった。

強さもそうだけど、個性的な人も多いよねこの大会…。

…それに気になるのは賞品の悪魔の実…。私達の食べた悪魔の実と同じく、従来では有り得ないというのなら…その実は今までに発見された事のない新種のハズ。それだけで異界の悪魔の実と断定出来るって事は…もしかしたらその実の提供者はレイかもしれない。

ドフラミンゴのバックには彼女も居るんだから、その可能性も充分考えられるだろうし。

 

「このおっさんの像カッコイイなァ〜」

 

「ん?」

 

1人あれこれと考えていれば、ルフィがこの部屋に飾られてある銅像を見てそう呟いた。

えーっと…名前は、キュロス?コリーダコロシアムの歴史上最強の剣闘士で、3000戦全勝、無敗の男。その内敵の攻撃を受けたのはたったの一太刀だけ…か。いや、化け物かな?

 

「その人に興味ある?」

 

「え?」

「誰だ?」

 

銅像を見上げる私とルフィに近寄って来たのは、可愛いお声の美女…だと思う。顔の大半を隠してる黄金の兜のせいで、口元と、後はうっすら目元しか見えない。そこだけ見るとかなりの美人だけど…問題はその装いだった。ビキニですか?と突っ込みたくなるくらい肌を曝け出していて、ぶっちゃけ目のやり場に困る。端的に言えばビキニアーマー。

 

彼女は銅像に書かれている私が読んだ内容を読み上げ、だけどこの国中の誰も、彼の事を知らないと言った。

 

「知らない…?あ、あと嫁になって」

 

「へ?あ、えっと…私はレベッカ、剣闘士よ。この国のお年寄りも剣闘士達も、誰1人彼に会った事がないの」

 

レベッカちゃんかぁ、聞き間違いだと思う事にしたのかな。ふっふっふ、聞き間違いじゃないよ可愛こちゃん!

…く、自重しなければいけないと言うのに自分を抑える事が出来ない…!!

 

「ドレスローザで最も不思議な銅像よ。「剣闘士キュロス」は実在したのか、誰かの空想なのか…いつから、なぜここに銅像があるのか。私達の知っている情報はこのプレートに刻んである事のみ、誰も知らない人だけど…誰もこれを撤去しようとはしない。…それも不思議」

 

「撤去しないのは、この銅像に魅力があるからじゃない?私も不思議とこの像は気に入っちゃうな」

 

「おれも好きだぞ、男らしくて!」

 

「…私も好き」

 

やっぱ嫌いだよこの銅像、レベッカちゃんに好きって言われてるし!私が好きって言って欲しいのにー!!

 

「よォ!大戦士レベッカちゃん!」

「無敗の女!今日も期待してるぜ!」

「さっきはスッとしたろ〜!長年のイジメっ子スパルタンが無様にやられて!」

「バカ、やめてやれよォ、ギャハハ!」

「ギャハハハ!そうじゃねェかよ!!」

「ま、違ェねェがな!!ギャハハハ!!」

 

そう言って去っていく2人を見て、私はすっと目を細める。

…なんだ、この2人組。いきなり現れてレベッカちゃんをバカにしてるみたいだけど…私、キライなんだよね、そういう弄り方。

 

「なに?あいつら」

 

「気にしないで…。…私…今日で最後にするんだ…!異界の実の能力を手に入れて、討つんだ…!ドフラミンゴを…!!」

 

「ドフラミンゴを……?あ、あとさ、これだけは言っておくよ」

 

ぐ、と拳に力を入れる。レベッカちゃんは初対面だからまだまだ私の事を分かってないみたいだ、ルフィは今から私がしようとしている事に気付いてるみたいだけど、それを止めようとはしなかった。

何故なら、もう止まらないのを分かってあるから。

 

「私はね」

 

「…?」

 

ポツリと呟いた私の事を、レベッカちゃんが首を傾げて見てきたのでさっきの2人組を指さした。

 

「自分が嫁にすると決めた相手が侮辱されるのだけは、どうしても我慢出来ないタチなの。気にしないで?ごめん、ムリ」

 

 

「ぐォはァ…!?」

「ギャブッ!?」

 

「…え?」

 

次の瞬間、突然さっきの2人組が吹き飛んで壁にめり込んだ。その顔には強く殴られた痕がある…というか、勿論やったのは私なんだけど。

遑期道(いとまごい)という、スリラーバークで1度使った技を奴らにお見舞いしてやったのだ。まぁ…当たり前だけどあの時より技の精度は上達しているから、私が攻撃したなんて誰も気付かないだろうけど。

 

「そんな訳で、私がやったって事は黙ってて貰えると助かるよ」

 

「…今のは、あなたが?」

 

レベッカちゃんの問いに小さく頷く。試合中じゃないのに攻撃するのは絶対反則行為だろうけど、どんな反則もバレなきゃ大丈夫!!

 

突然大の男2人が吹き飛んだ事に周りは騒めき、係の人がすっ飛んで来て調査を開始していた。距離も離れてるし、バレる事はまず無さそうだ。

 

「アイリスはブロックどこなんだ?」

 

「私はDだよ」

 

「!!…私もD」

 

うわ、レベッカちゃんと被ってる…。そのブロックには叶も居るってのにぃ…。

レベッカちゃんも無敗の女って言われてるんだからそこそこ戦えるんだろうけど、流石に私達の戦闘について来れるとは思わない方が良いだろう。巻き込まない様に…守りながら戦おうかな。

 

「…お互い、悔いの残らない戦いにしよう」

 

「うん、よろしく」

 

「……じゃあ、これで」

 

そう言ってレベッカちゃんは手を振り去っていった。少し表情が暗く見えたのは…私と同ブロックと知ったから、だと思って間違いなさそうだ。

彼女にも色々事情がありそうだけど、それはこの大会が終わってから聞くとしよう。何か大変な事に巻き込まれていたとしても必ず私が助けてあげるから。

 

 

「勝負がついたぞォー!!」

「え!?もう!?」

「誰だアレ!化け物みてェに強かった…!!」

 

お、Aブロックの勝者が決まったらしい。

誰だろう……って、あれぇ?なんかすっごく感じた覚えのありすぎる気配が…ていうか少し前まで常に一緒に居た気配がするんだけど!?

 

『Aブロックの勝者は「仮面の男」!!“トップ”!!』

 

「嘘でしょ…!いつの間に追い抜かれたのぉ!?」

 

「お、おいイリ…じゃなかった、アイリスどうしたんだよ!」

 

急いでリングを見下ろせる場所まで走って行き、仮面の男とやらをこの目で確認した事で疑問は確信に変わった。

私が彼の気配を感じ間違えるなんてあり得ないけど…いくらなんでも早すぎるんだよ!!

 

『おっと!その男が今仮面を取ったァ!!』

 

してやったり、と言った風に口角を上げて、彼は外した仮面を右手から発生させた“炎”で炭にしてみせた。これにはルフィも驚き、あんぐりと口を大きく開かせている。

いや、ルフィだけではない。大会の司会役や観客達、そして私と同じように勝者を見にきた待機中の選手達も皆…驚愕に目を見開いていた。

 

『な…何ーーッ!!?何故ヤツがここに居る!?2年前、世界を震撼させたこの男を、我々は良く知っている!!そしてこの異常な強さにも納得せざるを得ない〜〜っ!!ていうか、本当に生きていたのかァ〜〜!!!?』

 

ざわつく観客達に、わりとノリノリな司会者。そんな中で男は私とルフィを見つけて手を振ってきた。

…こっちは変装してるってのにバレバレか。ていうかこっちに向かってアピールされたら繋がりを疑われて正体気付かれやすくなるからやめてよ!

 

『波乱の幕開け!意外な出場者!!Aブロック「バトルロイヤル」勝者は…あの全世界を騒がせた「戦争」の中心人物!海賊王ゴールド・ロジャーの実子にして、元白ひげ海賊団2番隊隊長!!火拳のエースだァ〜〜〜!!!』

 

いやほんと、なんでココに居るの?早くない?あと、次に会う時は海賊の高みとか言ってたじゃん!Aブロックの高みだけど!?

 


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