ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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175『女好き、レベッカちゃんの事情』

エースの生存は既にシャボンディで気付かれていた事だからか必要以上に騒がしくなる事は無かったけど、それでもやっぱりエースが正体を現す前と後では周りの熱気が違う。

海賊王の息子…というのは置いといても、エースは強いし…そんな彼を倒して名声を手に入れたいという輩が沢山居るって所だろうか。

民間人は知らないけど、このコロシアムに参加している人でエースの父親がどうこうってのを気にしてる人はあんまり居ないみたいだ。まぁ…良くも悪くも世間のはみ出し者が集まってる訳だからそりゃそうだよね。

 

「…で、なんで居るのさ」

 

「ん?」

 

現在はBブロック開始までの待機時間中であり、Aブロックの勝者であるエースはこの選手控え室に戻ってきていた。

対面して話す訳にも行かないので、エースが腰掛ける樽の近くにある柱に凭れ掛かり、隣にルフィを添えて自然に話しかける。

 

「次に会う時は海賊の高みなんじゃなかったの?」

 

「俺もそのつもりだったが…仕方ねェだろ?追いついちまったもんは。たまたま選んだ航路も同じだったってだけで、また会えたんだ、良いじゃねェか」

 

「…大会に出た理由は?」

 

「優勝賞品が妹分の食った悪魔の実と似たようなモンって聞いたんだ。そりゃ兄貴としては気になるだろ?」

 

それだけで大会に出たのぉ…?ノリが軽すぎる…。

私だってエースと再会出来たのは嬉しいけど、まさかこんなに早く会うなんて思ってもなかったから少し混乱してるんだよね…。

 

「他のみんなは?」

 

「この島に来たのは俺だけだ、ルーシーの船が見えたんで小舟で……っと、今のは聞かなかった事にしてくれ」

 

「数秒前の自分のセリフを聞かせてあげたいよ、ホントに」

 

なーにがたまたまだよ、会う気満々じゃん!うきうきでボート走らせてこの島降りたんじゃん!

 

そこでこの大会の優勝賞品を聞いて参加したって所かな。他のみんなはもう先に進んでる…と。まぁエースならあのエース専用炎エンジンボートですぐに追いつけるんだろうけどさ。

 

「ルーシーとアイリスは何ブロックなんだ?」

 

「おれはC!」

 

「私はD」

 

「お、なら決勝は一緒に戦えそうだな」

 

私とルフィが勝ち上がってくる事に微塵も疑いが無いらしい。…そりゃ負けはしないけどね。

 

はぁーあ、Dブロックまでは待つのがちょっとだるいね。エースとはそんなに長く喋っていられないし。

いくら誤魔化しながら自然に話しかけてるとはいえ、いずれはエースと繋がりがある事に誰かは気付いてしまうだろう。こんなタイミングじゃなければ身バレなんて気にしないけど、今は叶の事もある、勘付かれる訳にはいかない。

 

「おい、俺の目は節穴じゃねェぞ」

 

「え?」

 

…だ、だれ?今私達に話しかけてきたの?この人…。

うーん…どこかで見た事ある…誰だっけなぁ…。

 

「いくら変装しようと、俺の経歴に傷をつけた奴の顔は忘れねェ…!!」

 

「……あ!!」

 

こいつ…ジャヤのあいつじゃん!!確か名前は…、

 

「えっと…ベロ…」

 

「ベラミーだ」

 

「そう!ベラミー!…って、ベラミー?なんであなたがここに…あ、いやいや、私はあなたなんて知りませんけど?初対面ですけど?」

 

「惚けても無駄だ、女王。それに、俺がどこに居ようが勝手だろ」

 

メイド服に仮面して、しかも当時とは身長も違うのに即バレするってこの人なんなの?またぶっ飛ばされたいの?

…でもなんだろ、ベラミーからそれほど邪なオーラを感じない。

 

「ドフラミンゴはガキの頃から俺の憧れの海賊だった、“異界の実”に興味はねェが…俺にも優勝しなきゃならねェ理由がある…!」

 

「私が居るのに?」

 

「ハッハハ…!デケェ口叩きやがる!…俺は昔とは違う。女王、麦わら…俺は「空島」へ行ったんだ」

 

!…空島…。

何か心境の変化でもあったのかな…ジャヤで会ったベラミーなら、空島に行こうなんて思う筈ないし。

 

「一応聞くけどさ、当然私の嫁には手を出してないだろうね?」

 

「…さァな。ーーーともあれ俺はもうお前を恨んじゃいない。やがて来るデカイ波を越える為に、俺はドフラミンゴの船に乗る!…もうお前らを笑わない」

 

「…そっか」

 

ベラミーはBブロックなのか、それだけ言って私達に背を向けリングに出る通路へと歩いていく。

 

「待ってよ、アイサちゃん達には手を出してないんだよね?さぁな、なんて言葉じゃ納得しないから」

 

「…ハァ、そいつが誰だか知らねェが、俺は空で騒ぎを起こしてねェんだ。何もしてねェよ」

 

「最初からそう言ってくれればいいのに。あ、もしかしてベラミー、かっこつけちゃった?」

 

「言ってろ」

 

む…ゾロと違って反応がつまんない。

それにしてもベラミー…本当に変わったみたいだ、夢を見る事を覚えたからだろうか…覚悟を背中から感じる。

彼はそのままリングへと出て、観客席から大きく声援を受けていた。

 

『おーーっと!Bブロック開始直前、遂にこの男が姿を見せたァ!!今大会においてその男が優勝した折には、彼の執念は実を結び、晴れてドンキホーテファミリー幹部へと昇格する事が決定している!!大会優勝候補その1人…海賊“ハイエナのベラミ〜〜〜〜”!!!!』

 

「へぇ…人気もあるみたい。ちょっと見て行こうかな」

 

「なら俺はその辺を歩いてくる」

 

エースは散歩か。

それにしても、やっぱりDブロックまでは長そうだ。ルフィはCなんだよね、いいなぁ…もうすぐじゃん。

 

そんな感じでBブロックの試合が始まった。エースは言葉通りその辺を散歩しに行ったし、ここは選手用の観客席だから私はここでゆっくりさせてもらおう。

 

「あのベラミーという男…えらく人気じゃないか」

 

「だねぇ」

 

私とルフィの間に入ってリングを見たキャベンディッシュがそう呟いたので私も適当に相槌を打っておく。ベラミーに人気があるのは事実だし。

 

「おー…これってバトルロイヤルじゃ無かったっけ」

 

リング上では、王様みたいな人を守るように沢山の人が囲いを作って戦っていた。徒党を組んじゃってるけど、アレもアリなんだ…。

 

「フム…あれは厄介だ。君達は知っているかい?プロデンス王国の王、「エリザベローII世」が起こした事件」

 

「事件?さぁ…知らない」

 

そういう情報には疎いからなぁ私…。知らなさ過ぎる自覚はあるけど、ロビンが居るからわざわざ私が詳しくなる必要もないかなーって。

 

「彼の王は、その拳から繰り出されるパンチ1発で敵国の要塞に風穴を開けたんだ。それでついた異名が“戦う王”…つまりあの陣形はその拳で確実に勝利を得る為の物だって事さ」

 

「へぇ…すぐに撃たないって事は何かしらの制限があるって事かな」

 

「それは僕には分からないが…恐らくあの陣形を作り出したプロデンス王国の軍師ダガマは既に結末を見据えているだろう。仮にこのままパンチを撃たせてしまえば…エリザベローの勝ちは確定的だ」

 

中央に居る王様はさっきからシャドーボクシングをして集中力を高めているっぽいから、ああいうルーティーンを踏まないと要塞をぶち壊す程の威力を出せるパンチは放てない…と予想出来る。

 

「君達ならこの試合、どう攻略する?」

 

「あのおっさんぶっ飛ばせばいいんだろ?」

 

「そう簡単にはいかない、エリザベローを囲んでいる者達は皆曲者揃いだ。僕ならまず、軍師ダガマを倒すさ」

 

うーん…見た感じはそのダガマって奴が指示を出してるし、そいつをやってしまえば統率は乱れて王の守りも薄くなりそうではあるけど…そもそもそのダガマも簡単に倒せるとは思えないんだよね。

軍師ってくらいだから自分が攻撃されない手の1つや2つ用意してるんじゃないの?

 

「もう面倒くさいし、私なら纏めて全員倒すかなぁ」

 

「フ…君のような華奢な体のレディは特に、この大会においては頭を使わなければ勝てないとだけ言っておこう。纏めて倒せるのは雑魚だけ…つまりそれより上の選手には通用しない話だろう」

 

「そうかな?私はあの陣形、範囲攻撃に弱そうに見えるけどね」

 

軍師ダガマって奴は指揮官としてかなりの腕を持ってそうだけど、それでも部隊を完全に操れている訳では無さそうなのだ。恐らく…この国に来てからお金か何かで買い取っただけの関係…連携が上手く取れていない。

個々の実力がどれほどのモノだろうが、一斉に叩けばいずれ穴は空く。要はそこを突けば良いんだ。

 

「……って事だけど」

 

「…なるほど…。今の言葉は訂正する、その戦い方も間違ってはいない…いや、範囲攻撃の手段があるのなら正解の1つだと思う。それなりに戦い慣れてる様だね」

 

「あ、あー……まぁね」

 

これ以上余計な事を口に出すのはやめておこう。流石にバレないとは思うけど…万が一という事もある。

 

「あいつなんだ?寝てるぞ!」

 

「彼を知らないのかい?人を食った行動ばかり取るから…「人食いのバルトロメオ」と呼ばれている男さ。彼も生意気な後輩の1人…」

 

リング上で横になれるくらいだから、その実力も相当なモノなんだろう。そんなにめちゃくちゃ強いって気配は感じないから…能力が特殊なのかな?

 

「ひやはや…ここが観覧席ですか…。試合がよく見える」

 

「…?」

 

なかなか、強そうな気配の爺さんだ。いきなり隣に立ってきたんだけど何の用だろうか。

 

「ひやや…ところでガープさんは元気かな…?“麦わらのルフィ”君」

 

「え?おっさん爺ちゃんと知り合いなのか?……あ!!」

 

「え!!?」

 

「……あちゃ」

 

まずい…まさかそんな自然に話しかけてくるとは思ってなかったから、今のは私も油断してた…!確かキャベンディッシュは最悪の世代に対して並々ならぬ逆恨みを抱いてたし、ここで戦闘が起きる可能性がある…!

 

…よし、逃げよう。だって私はまだバレてないもん!

 

「え、えー!あなたがあの!?びっくり!きゃー!」

 

適当な事言ってその場をそそくさと離れ出した私に、助けてくれ、と視線を送ってくるルフィだがスルーする。

悪いねルフィ、今は逃げるのが1番なんだよ!

 

うわ、後ろから戦闘音が聞こえ出した…本当に暴れちゃってるよあの人達!

 

「災難だったなァ嬢ちゃん!にしてもさっき麦わらって聞こえなかったか?」

「麦わら!?奴もこの大会に出場してんのか!?」

 

「き、聴き間違えじゃないかな、はは」

 

とりあえず誤魔化してはみるけど、あまり効果は無いだろうなぁ…。

 

…とまぁ、ルフィ達が試合前に戦闘を繰り広げてる中、Bブロックの試合が終了した。

司会の声を聞くに、勝者はさっき聞いた「バルトロメオ」という男らしい。どんな能力か見たかったんだけどなぁ。

…ていうかベラミー負けちゃったのか、大丈夫かな…。なんて、私が心配する事じゃないよね、ベラミーも望んで無いだろうし。

 

それよりもうCブロックかぁ…いいなぁルフィ、私Aブロックが良かった。そしたらエースとも戦えたし、出番も早かっただろうから。

 

「あ、アイリス!やっと見つけた…!」

 

「レベッカちゃん?どうしたの?」

 

なんだか私に用があるらしいレベッカちゃん。可愛い女の子に誘われちゃったら何処にでもついて行くよー!

ルフィの活躍とか見てあげたいけど、物事には優先順位ってのがあるからね!悪いねルフィ!

 

「ちょっと…あなたと2人でゆっくり話がしたくて」

 

「え!ホント!?私も〜!」

 

「こっちよ、ついて来て」

 

おお〜、なんかラッキー!一体なんの用なのかは知らないけど、2人きりで話せるなら何だっていいや!

 

そんな感じで、ついでに軽く軽食を購入しつつレベッカちゃんに連れられて来たのは、レベッカちゃん達コロシアムの剣闘士の宿舎…だそうだ。獄舎って呼ぶ人も居るらしいが、そこの前にある通路に来ていた。ゲスト選手はここに来ることは無いから出番までゆっくり話そうとの事。

というかここ、宿舎にしては檻に近い見た目をしてるよね。ぶっちゃけ牢屋にも見える。

 

近くのベンチに腰をかけ、まるで檻みたいな宿舎を背もたれにここへ来る途中購入したみかんを剥いて口に放り込んだ。うむ…ナミさんのみかんのが美味しい。

 

…ていうか、2人きりって聞いてたのにこの檻…じゃなかった、宿舎の中に人の気配がかなりするんだけど!

カブトを脱いだレベッカちゃんが想像を遥かに超えて可愛かったからもう何でもいいけどね?うん。

 

「レベッカちゃんは何も食べ物買わなくて良かったの?何も食べずに力なんて出なくない?」

 

「私は…お腹空かないから平気」

 

「もう、そんな事言わないでさー。なんなら私が何か買ってあげるから一緒に食べ……、っと」

 

背後の檻から出てきた何人もの腕が、後ろから私を掴まえて拘束した。

いきなり、という言葉を使わなかったのは気付いていたからで、気付いていたのに何も行動に起こさなかった理由はとても簡単な事だ。

 

「オラァ!捕らえた!」

「レベッカ!やるならやれ!」

「その気で連れて来たんだろ!!?」

 

「……っ!」

 

ゴク、と唾を飲み込んだレベッカちゃんが剣を持ち、霞の構えをとった。その手は震え、額から流れる汗の量も尋常ではない。

対して私は、ただジッと彼女の目を見つめるだけだ。これといって暴れる事もなく、何なら普段と変わらないくらいには落ち着いている。

 

「手が震えてるよレベッカちゃん、しっかり狙わないと、一撃で殺せないかも」

 

「…!!やあ!!!」

 

剣の腕はなかなかのモノで、高速の突き技が私の眉間へと一直線に迫って来た。だけど私はピクリとも動かない。剣先すらにも目を向けず…ただ変わらず彼女の綺麗な目を見つめるだけだ。

 

私の眉間を貫く瞬間…ピタ、とレベッカちゃんの動きが止まった。目と鼻の先にはレベッカちゃんの構える剣先が突き付けられており、よく見なくても震えているのが分かる。

当然仮面には剣先が突き刺さったので多少欠けているけれど、欠けただけで壊れてはいないし、額だから顔を隠す役目はまだ果たせそうだ。

 

「どう、して……っ…、私は今、あなたを殺そうとしているのに…!!動かなければ、あなたは死んでいた!!避けられる筈でしょ、あなたの腕なら!!」

 

「だけど私は動いてないのに死んでない」

 

「それは私が…っ!」

 

「そうだね、私を殺さないでいてくれた。私はそれを信じてたから動かなかった。理由はそんなトコだよ」

 

ほらね、私が動かない理由は簡単な話だ。レベッカちゃんが人を殺す様な人ではないと信じていたから、避ける必要が無かった。

会って間もない彼女だけど…私は彼女を嫁にすると決めた。私は例えどんな理由があろうとも…嫁にすると決めた人の事はなにがなんでも信じると決めているんだ。

 

「…ハァ、そんな余裕で相手されちゃァ、どうも出来ねェな」

「1人でもここで実力者を消しておけりゃ…少しくらい希望も持てるってのに」

 

檻の中から声が聞こえ、私を拘束していた腕が離れていく。

私を亡き者にするのは諦めたのか、レベッカちゃんも剣を床に落としてその場に力無く座り込んだ。

…絶対何か事情があるよね…、あとレベッカちゃん、動くたびに揺れるその豊満なぽよんはかなーり危ないから今着てるビキニアーマーは止めてくれないかな!!

 

 


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