ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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180『女好き、2度目のゴミ箱と情報収集』

「どうしてこうなった」

 

えーっと、まずは状況を整理しよう。

確か私はついさっき、叶との八百長バトルで敗者となり担架で医務室に運ばれていた筈だ。なのに医務室のベッドに寝かされた途端、その下の床が開いて地下のゴミ箱施設へと真っ逆さま!わーい!まるでパンクハザードの巨大なゴミ箱みたーい!!

 

「って、言ってる場合じゃない!」

 

「何言ってんだァ?お前」

 

頭をガシガシと掻いた私に近くに居た男がそう話しかけてきた。

この通り、何故かは知らないけど私以外にも沢山の人達がここに運び込まれている。彼ら1人1人に話を聞いて行った訳ではないけど、確認を取った人は全員がこの大会の敗者だった。

負け組の控え室はゴミ箱がお似合いって事?いや…それはいくらなんでも可笑しいよね?

…ん?もしここに敗者が集められているのだとしたら、もしかして…。

 

ふと気になった事があり上を見上げてみた。すると今まさに懸念していた事が起きていた様で、鮮やかなピンク色の髪をした美少女が空から降ってきていたのだ。勿論他にもキャベンデッシュやら何やら沢山降って来ていたが、1番大事なのは当然レベッカちゃんである。

 

「レベッカちゃん!!!」

 

危うくゴミ溜めに叩きつけられそうになったのをすんでの所で優しく衝撃を殺す様に受け止めた。

あっぶな…!気付くの遅れてたらと思うとゾッとする…!

 

「ん…、ぁ……こ、こは……?」

 

丁度目を覚ましたのか、私の腕の中で頭を押さえて辺りを見渡すレベッカちゃんに簡単に状況説明をした。といっても私も良く分かってないんだけどね…そりゃあ出ようと思えば今すぐにでも出られるけど、私1人だけ出て行くのも何だか申し訳ない気もするし。

 

「…私、負けたんだ…」

 

悔しそうに…いや、悲しそうに呟くレベッカちゃんには申し訳ないけど、私としてはレベッカちゃんには絶対勝たせたくなかったから結果としては悪くなかった。だって賞品の悪魔の実を口にしたら最後、ドフラミンゴに突撃するんでしょ?流石に使い慣れない実の能力で勝てる程あの男が甘いとは思わない。レベッカちゃんには無駄に命を散らして欲しくないんだ。

 

「レベッカちゃん」

 

「え?……え!?わ、私、いつからアイリスさんに抱っこされてるの!?」

 

「あ、それは最初から」

 

いや確かにお姫様抱っこをする事で触れる太ももだとか腕とかは最高だけど、私が名前を呼んだのはその話をする為じゃない。

 

「レベッカちゃんさ、ドフラミンゴを討ちたいんだよね?」

 

「は!!?」

「何言ってんだお前!!?」

「頭をイカれてんのか!?」

 

「あ、アイリス!あまりそう言うことは…!」

 

あまりにも無遠慮な私の質問に周りの人達が反応し、レベッカちゃんも困った様に私の顔を見上げてくる。だけどもう今更だ、どうせドフラミンゴは今までの流れから考えて働いて来た悪事がバレるんだろう。そしてルフィにぶっ飛ばされるまでがテンプレ。…つまり、今更レベッカちゃんの反逆心を隠す必要などない。もしも何かあれば私が守ればいいだけだし。

 

「それってさ、絶対にレベッカちゃんが手ずからやらなくちゃいけない事?」

 

「え?」

 

私の言葉の意図が分からないと言った風に目を点にするレベッカちゃんに私は優しく微笑みかけた。

さっきの試合でも思った事だけど、ぶっちゃけレベッカちゃんに剣は似合わない。何なら彼女自身からも戦いに対しては消極的な想いがその戦闘スタイルから滲み出ているのだ。

 

「レベッカちゃんがどうしても自分の手でドフラミンゴをぶっ倒したいのなら、私が手伝ってあげる。だけどそうじゃないのなら…私達に全部任せてみない?」

 

「え、で、でも…な、何でアイリスがドフラミンゴを…!」

 

「私にもあいつをぶっ飛ばしたい理由はあるからね。それにレベッカちゃんにだって何か事情があるんでしょ?だったら任せてよ、こう見えても私、強いよ?」

 

「それは、知ってるけど…」

 

うーん…やっぱりいきなり言っても困らせるだけだったかな。だけどこのままレベッカちゃんが落ち込んでいるのを見ているのはなぁ…。

 

「…ん?」

 

どうしようかと唸っていれば、何かが上から降ってくる気配がした。気配だけじゃイマイチ良く分からなくて上を見れば、見るからにベトベトしてそうな粘液が私とレベッカちゃんの真上に落ちてくる所だった。

ぶっちゃけ意味が分からないが、あの粘液で私達を引き上げる気なのは間違いない。それがこの状況を仕組んだ者の仕業か、それとも私達の現状に気付いた者が助ける為に打ってくれた手なのかまでは判断出来ないけど…どちらにせよ、私はこれをチャンスと見てわざと粘液に気付かないフリをし直撃した。

その際に周りを見れば、私達以外にも沢山この粘液に捕まっていて、続々と上に引っ張り上げられている様だ。あ、キャベンディッシュもいった。

 

「うぇ」

 

「あ、アイリス!?」

 

「わっ!」

 

思ったよりベトベトで気持ち悪いけど、これなら自分1人で抜け出した様には見えないし、何よりこの先に元凶が居るのならそいつを叩けば良い。

目論見通り粘液は周りに続いて私を上へと引っ張り上げ始め、天井に空いてある無数の穴の1つへと吸い込まれる様に入って行く。腕の中のレベッカちゃんを落とさない様に少し力を込めて、この先何が起きても良い様に身構えた。

 

それなりに長い穴の道、頭上から光が射して出口が近い事を悟り、粘液を無理矢理引き剥がしてから宙を蹴って外へ飛び出した。

そこは何というか…かなり豪華な部屋だった。豪華、とは少し違うかもしれないが、子供部屋を煌びやかにした様な感じ…と言えば良いだろうか。プリン型の椅子に、何故か部屋の中にあるメリーゴーランド。そしてどこかへ歩いて行くオモチャ。うん、訳がわからん。

それよりも私が驚いているのはそんな部屋の内装などではなく、この部屋に居る1人の女の子の事だ。エメラルドグリーンとでも言えばいいのか、それに近い髪色のちっちゃな幼女がブドウ…かな?それを口に放り込みながら出口から飛び出した私を見つめている。

近くには粘液を出したのであろうなかなか汚らしい外見の男も居たが、こっちはどうでもいいのだ。

 

「君、可愛いね!名前は?」

 

「……」

 

「ブッヘッヘ〜!何か面白いヤツが釣れたんね!」

 

いくらなんでもその子くらいの歳の子をどうこうしようとは思わないけど、アイサの様に将来の約束は出来る訳ですよ!…ま、流石に冗談だけどね。

可愛い女の子を見たら反射的に言っちゃうだけで、誰でも良いって訳じゃない。特に今の状況なら特に。

 

「んん〜!?まさかその女は、レベッカか〜!?」

 

「え…?」

 

「ん?」

 

あれ?なんかこのおっさんはレベッカちゃんの事を知ってるっぽい?

 

「べへへ…!これはいいドフィへの手土産になりそうだ!!シュガー、オモチャにするのはそっちのメイドだけにするぞ!」

 

「別にいいけど」

 

なるほど、彼女はシュガーって言うのかぁ……じゃなくて!今結構重要な事言ってなかった!?オモチャにするとか何とか…。

もしかしてだけど、私が外で見てきたオモチャ達って元は人間だったって事!?じゃあ、さっき歩いて行ったオモチャ達って下で引き上げられたキャベンディッシュ達か……!

 

「…レベッカちゃん、ちょっと下がってて」

 

だとしたら、やっぱりこの人らは敵の可能性が高い。だってオモチャにさせるのは確定〜みたいな話になってるし、普通に考えてオモチャになりたい人間なんてそうそう居る訳がない。

…だけど私が彼らを敵だと断定出来ないのは、そのオモチャ達がそれなりに人と馴染んでいたからだ。普通無理矢理オモチャにされたら反抗しない?それもあれだけのオモチャ達がいれば反乱くらいは起こせそうな物だ。

それすらも未然に防ぐだけのカリスマがドフラミンゴにあるのなら話は別だが、そもそもそんなカリスマがあるやつは人をオモチャにはしない。

 

という訳で床に降り立った後、私はレベッカちゃんを自分の背中に隠した。…隠れ切れてないのは仕方ないでしょ!ね!!

 

「えーっと、色々聞きたい事はあるんだけどさ、まず…ここはどこ?」

 

「べへへ、ここは「幹部塔」!だが〜〜!!何故かオモチャが次々と生まれてくるこの工場の様な部屋には「幹部塔」とは別の呼び名がある…!シュガー、またの名をォ?」

 

「幹部塔」

 

「ちギャ〜〜〜う!!!べっっへへへ!!」

 

…とりあえず確定なのは、この人達が私達を助ける為にここまで引き上げた訳じゃないという事。何というか…話の内容から考えてそれはあり得なさそうだ。

敵だと断定する情報は無いとしても、ぶっちゃけほぼ敵で間違いないだろう。

 

「まぁ、親切にどうも。じゃあついでにさ、そのオモチャについても教えてくんない?」

 

「どうせオモチャになれば何も出来ねェし、それくらいは構わねェ!べへへ…!お前も見ただろう、この国のオモチャ達を!」

 

鼻水男の言葉に軽く頷いておく。ここでこいつらを倒すのは簡単だが、情報は少しでもあった方が助かるのも事実だ。

早くみんなと合流したいという気持ちもあるけど、少し耐えて話を聞き出してみよう。

 

「あれらは皆、ここにいるシュガーの能力でオモチャにした元人間だ〜!オモチャになった者は人々の記憶から消える!シュガーとの契約で幾らでもコキ使える手駒にもなる!んね〜!便利なんだなァこれが!」

 

「…なるほど」

 

その鼻水の言葉に、後ろのレベッカちゃんの肩が跳ねた気がした。何だろう…何か気になる事でもあったのかな?

 

「それに、レベッカ!母親も居ねェのに良く今まで生きてこられたな〜!んっべへ!あの日ディアマンテがお前の母を殺して以降、どうにか食い繋いで来たってかァ〜?」

 

「…え」

 

「……あ?」

 

レベッカちゃんの、母親…?え、それに…殺した…?

 

「父親はオモチャになったからなァ〜!もう記憶にも居ないだろうにねェ!哀れな人生だとディアマンテも笑って……ぐべェ!?」

 

「と、トレーボル…!?」

 

シュガーがさっきまでの無表情とは違い、少し驚いた様に吹っ飛んでいったトレーボルを見て声を張り上げた。

事情は良く分かんないし、こいつらが結局何なのかもハッキリ分かってないけど…。

 

「私の嫁の敵だって事はハッキリした。…もう許さないから」

 

そのディアマンテって奴もすぐにぶっ飛ばしてやる…!シュガーは…覇王色で眠らそう。

30倍しか倍に出来ないのは痛いけど、多分シュガーならそれで昏倒させるには十分だろうし。

 

 


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