ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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ちょっとだけ短いです。


181『女好き、街の状況を知る』

「ぬゥ…!シュガー!早くそいつに触るんだ!!」

 

「やってる…けど…!」

 

トレーボルの焦る様な声とシュガーの必死な声が部屋に響く。

流石に1発では沈んでくれなかったトレーボルと戦闘になり、そこにシュガーも乱入して2対1の状況になっている訳である。

 

「アイリス!私も…!」

 

「大丈夫、そこに居て」

 

慌てるレベッカちゃんを視線だけで制し、腰の小太刀を引き抜いた。トレーボルは自分の体をベトベトだかネバネバだかの能力で大きく見せており、要はハリボテになっている様なのだ。見聞色で探れば細っこい貧相な本体を正確に殴ったり蹴ったりは出来るけど、正直に言うと触れるのすら躊躇うほどに汚いから小太刀に任せるとする。

それからレベッカちゃんを戦わせる気はない。ここで応援なんか頼めば彼女に言った「任せて」の言葉が嘘になってしまう。別にこの2人程度なら何も問題は無いし…。

 

「えい…!」

 

「よっと」

 

無防備にも腕を突き出して体に触れようとするシュガーの手をするりと避け、小太刀を喉元に突き付けた。

 

「トレーボル、動けばこの子を殺すよ」

 

「シュガー!!…く…人質のつもりか貴様ァ!!」

 

「さっきまでの気持ち悪い喋り方はどうしたの?んねーんねーとかべへへとか、もしかしてキャラ作り?」

 

ニヤリと笑って挑発すれば、奴は分かりやすく額に青筋を浮かべはしたがそれ以上動きはしなかった。仲間を大切に思っているのか、シュガーの能力が大切なのか…。一つだけ確かなのは、思ってたより慎重だということだ。

命を私に握られている形になってしまったシュガーは、私の握る赤黒い小太刀の刀身を見て固まっていた。妖刀だと言う事までは理解できなくとも、この刀が普通では無い事を何となく察したのかもしれない。まぁ…当然殺したりはしないけど。

 

「1つだけ、どうしても確認しないといけない事があるんだけどさ…あなた達ってドフラミンゴの仲間?」

 

「…せ、正確には、ファミリーの幹部…よ」

 

「おい、シュガー!」

 

「なるほど、繋がりはちゃんとある訳だ」

 

その言葉を聞いて満足し、シュガーの喉元から小太刀を離す。

その瞬間、私が油断したと見たのか、それとも、もう今しかチャンスが無いと思ったのかシュガーの腕が動いて私の手に近づいてくる。

 

「甘いよ、おやすみ」

 

シュガーの手が私へと届く寸前、30倍の覇王色の覇気をぶつけて昏倒させた。妙に手で触る事に拘っていたから彼女の能力は『自分の手で相手の体に触れる』が発動条件なんだろう。それだけで相手を意のままに操れるんだから中々に強力だが、当の能力者本人がそんなに強くないのなら対処は簡単だ。

 

「シュガーが…!?マズい…!!貴様、良くもやってくれたな!!?」

 

その顔を怒りに染めて、トレーボルは持っていた杖の先端から炎を生み出した。ライターみたいになってたのかな?

 

『イリス、あれマズい、爆発するから早く倒さないとレベッカちゃんを巻き込むよ』

 

「!……オッケー、じゃあ手短に済まそうか!20倍灰(にじゅうばいばい)!」

 

「……な、その、技は……!?」

 

王華の助言に軽く頷き、小太刀の長さを2倍にして居合の構えを取る。

あんまりやり過ぎて真っ二つにする訳にもいかないし…加減が大事だよね。死なない程度に…そう、半殺しだ!

 

「黒刀…去羅波(さらば)!!」

 

「貴様は、女お…ぐはァッ!?」

 

トレーボルの体を縦一文字に衝撃の刃が斬り裂く。王華の言っていた爆発とやらが起きる前に奴は力尽き、私も最悪の事態を避ける事が出来てホッと息を吐いた。

別に直接斬った訳では無いから血なんてついてないけど、気分で血を落とすみたいに刃を振るい刀身の長さを戻して鞘に収めた。

うーん…私としては悪くない流れだけど、流石に上手いこと行きすぎて逆に不安になるというか…。

 

「…お、父さん…!」

 

「レベッカちゃん?」

 

「思い出したの…私の、お父さんを…!!」

 

…!そっか、シュガーが気絶したからオモチャになった人がみんな元に戻ったんだ!となると記憶も全部元通りになるよね…!

…あれ、これって完全にドフラミンゴ詰んだんじゃない?シュガー任せ過ぎでしょ…。

 

「レベッカちゃん、とりあえず外に出よう。きっと外は混乱してるだろうけどお父さんを探さないとね」

 

「うん…っ」

 

…奴らのした事は許せないけど、とにかく今はレベッカちゃんにお父さんだけでも取り返してあげられて良かったと思う。

涙を止めどなく溢れさせるレベッカちゃんを見て、私は早くお父さんに会わせてあげようと決意した。

 

「……」

 

トレーボルは別に良いとしても、シュガーを放置していくのは少し気が引けるというか…。

まぁ、仕方ない、今は他に優先すべき事柄が多すぎるし私もたまには自重しよう。

 

「…あ、そうだ」

 

地下の人達を何とかここまで連れてこないと!あそこにはオモチャも沢山転がってたし、仮にあれらもシュガーの能力でオモチャにされてた人なら今頃地下は混乱を極めているかも。

うーん、でもなぁ…私の能力じゃあ1度に運べる人数が限られてくるんだよね…。急ぎで行動したい今、正直そんな事をしている時間なんてない。

 

「…よし、ここは素直に助けを呼ぼう」

 

現在地が分からないけど、彼女ならなんだかんだで来てくれそうな気がして電伝虫を取り出した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ここね!!」

 

数分後、バン!と扉を強く開ける音と共にミキータが入ってきた。

私が応援を呼んだのは見ての通りミキータだ。少し息切れしているが、この短い間で私を探す為に走り回ってくれたのだろう。

 

「流石ミキータ、良く分かったね!」

 

「キャハ!当然よ、イリスちゃんの天にも昇る程心地良い匂いを私が突き止められない筈が無いわッ!!」

 

「そ、そっか」

 

ぐわっ!と目を見開かせるミキータに軽く苦笑して、私はここに呼んだ要件を手短に伝える。

ミキータの能力なら彼らを運ぶのも楽だろう。空も飛べるから、地下からここまでの往復についても問題ない。

 

「あ、それから…ここに来るまでの間、何か街で変わった事は起きてなかった?あ、オモチャが人に変わった事以外で!」

 

「あ、そう!その事でイリスちゃんに伝えなくちゃいけない事があるのよ」

 

「伝えたい事?」

 

やっぱりサンジが言ってた様に何か街で異変でも起きているのかな…。ミキータは大丈夫として、後は姿を見れていないロビンが心配だ…。

 

「オモチャが人に変わっていくのも驚いたけど…今街ではそれ以上の異常事態が起きているわ。…私も目を疑ったけど、何故か人が人を襲っているのよ」

 

「え?」

 

「海賊とか、強盗とかじゃなくて、普通に道を歩いていたこの街の住人がいきなり同じ住人を襲い出したのよ。隣同士で仲睦まじく歩いていた恋人達もいきなり争い始めたわ」

 

…え?どういう事?それは、確かに異常事態だ。ハッキリ言って状況が掴めないというか、どうしてそんな事になっているのかがサッパリ分からない。

サンジは勘が良いから、きっと詳しくは分からなくともこういう事態が起こる雰囲気を肌で感じ取ったんだろう。悪寒がするとか、そんな感じで。

 

「…王華、分かる?」

 

『……ドフラミンゴ、かな?でも、それだと早すぎる……、ごめん、記憶に無いね。つまり……』

 

「ーーー…レイ、か」

 

『狂神』レイ。原作に無いデタラメな異常事態がこの国で起きたのなら、ドフラミンゴのバックに居るというレイが今回の件に噛んでいるのは間違いない。

…ただ、この事態をレイが引き起こしたのだとするならば、奴の悪魔の実の能力がよく分からない事になってしまう。

私と王華の読みでは“良くも悪くも身体強化系”だと思っていた。だというのにここに来てこの様な事態を起こせる能力である可能性も出てきたと……。

……はぁ、もう何が何だか…。

 

「イリスちゃん、私がイリスちゃんに伝えたいのはそこじゃないわ」

 

「え、そうなの?」

 

こんな異常事態が起きてるのに、それ以上に大事な事があるって相当だよね…。ミキータの表情も何だか本当にそれを口にしようかしまいか迷っているかの様で、その情報に対して何か思う所があるかの様だった。

 

「……、それが、その暴動を起こしている人達はある1人の人間を追っているらしいのよ」

 

「へぇ……?じゃあ国民を操っている人の狙いはその人なんだ?」

 

「それが……その人が自分を狙う様に引き付けているらしいんだけど……」

 

だとすると、他の人に危害が加えられない様に囮になってるって事……!?そんな事が出来るってことは、その人は相当の手練れか、もしくは…心の優しい人か。

 

「その人は自分の名前を叫びながら走っているらしくて、その名を聞いた暴徒達はみんな彼女を追っていくわ。私も名前を聞いた時は驚いた。多分、イリスちゃんも凄くビックリするとは思うけど……」

 

あのミキータがここまで言葉を濁しているんだから、相当驚く人物なのだろう。

ミキータと私の共通の知り合い、もしくは知ってる人…うーん…候補が多すぎて分かんない!

 

「誰?」

 

「…ロズワード・シャルリアよ」

 

「………はぇ?」

 

驚きすぎて思考が停止した瞬間だった。

 

 

 

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