ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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188『女好き、望まれてない救出』

「…案外あっさり入り込めたね」

 

ベビー5の案内で王宮に潜り込んだ私は、その辺の物陰に隠れながら軽く息を吐いた。

何があったのかは知らないけど、王宮内は割とボロボロだった。壁がぶっ壊れて日の光が差している所なんていたる所にある。ていうか、そもそも壁が無くなってる廊下とかあるくらいだ。

お陰で崩れた瓦礫などが物陰になっているのだけど。

それからシャルリアは今も私の側に居る。外に置いてはこれないと判断したからだった。

 

「大変なのはこれからよ、何せあなたのその“圧”を隠しながら若に近づかなきゃならないんだから」

 

…まぁ、そうだよね。女王化並みの持続時間はないが、真・女王化の状態も1時間くらいは保てる。それを解いちゃったら10倍までしか使えなくなるから、モネを助けるのには心許ない…という訳で、この状態のままモネの所まで辿り着く必要があった。それも、ドフラミンゴに気取られぬ様に。

 

「正直、いつ気付かれてもおかしくないわ、あなたのその覇気…若に近付けば近付く程に気付かれるリスクが増してると思った方が良い。…そういう所も、逞しくて素敵だとは思うけど」

 

ぽ、と頬を染めながら言うベビー5に苦笑を浮かべる。なんというか、良い感じに切り替えが早くて心が落ち着くというか…。

 

で、肝心のドフラミンゴとモネはというと、見聞色で探ってみた所この王宮の最上階に居るようだった。…あと、これはベラミー…か?かなり弱ってるみたいだけど、どうしたんだろう?大会のダメージがそんなに大きかったのかな?

 

「…場所は分かったけど、まだちょっと遠いね」

 

「近付いてみるしかないでしょう。…不躾ながら意見させて貰いますと、イリス様の使われているそのハキとやらは、効果を切らない方がよろしいかと。万が一気取られた場合、相手方の動きが分からないのでは…」

 

「それもそうだね、分かった」

 

シャルリアの言葉に素直に頷いておく。最悪、無理矢理にでも突っ切る必要性が出てくるかもしれないって事だ。

ぶっちゃけた話をすれば、今の私ならここから最上階まで、文字通り一瞬で移動できる。当然屋根などぶち抜きながら進む事になってシャルリアやベビー5に危害が及ぶ可能性があるから、それはあくまでも気付かれた際の…要は最終手段。もしこの手を使う事になったとしても、シャルリアとベビー5には傷一つ付ける気はないけどね。やっぱり念には念を、だ。

 

「……んー」

 

でも慎重に行きすぎるのもねぇ…。多分、真・女王化の効果時間がそろそろ切れる頃だろう。詳しくは、後10分くらい。

……あ、そうだ。

 

「王華呼べばいいじゃん…」

 

真・女王化でも王華を呼ぶ事は出来る。まぁ、王華が顕現してる時はその分覇気の消費量も多いのは2年前から変わらないから、後10分って思っていた効果時間もがくっと落ちて5分くらいになってしまうだろうけど。

それでも彼女が出てきてくれたら周りを気にする必要が無くなる。つまり、私が暴れてもシャルリアとベビー5に危害が及ぶ事は無くなる!

 

「という訳で、王華、来て」

 

「はいはいっと」

 

ぴょん、と王華が宙から現れて地に足を付ける。突然現れた彼女に2人は目を見開かせるが、驚いて声をあげるのはなんとか堪えた様だ。

 

「イリス様、彼女は…?」

 

「王華って言って、私の……、…友達?」

 

「いやいや、もう大親友ってレベルじゃない?心が通じ合ってるレベルで」

 

待って?確かに心は通じ合ってるけど、それって大親友だから繋がってる訳じゃ無いからね??

 

「いきなり現れた様に見えたわ…」

 

「まぁまぁ、王華はそういうものだから気にしないで?」

 

「そういう解釈のされ方はちょっと釈然としないんだけどなぁ!」

 

怒ってないけど怒った様に見せる王華をスルーして、私はシャルリアとベビー5を守ってもらう様にお願いした。

まぁ、私の考えを実際に心の中で聞いていた王華だから、私が何を言うでもなく2人の側に控えてくれてたけどね。

 

「じゃあ、ちょっと行ってくるね。…信用はしてるけど、絶対に2人に傷を付けないでね?」

 

「はいはい、分かってるって」

 

軽く返事をする王華だが、私はその言葉を聞いて頷いた。

王華の能力は私とリンクしている。正確には違うとかなんとか王華は言っていたけど、まぁ大体同じだ。

例えば私が女王化を使ってる時は王華の上限も100倍だし、真・女王化を使えば100倍を越えて更に先のステージに立てる。

つまり今の王華も私と同じ倍率を使用可能という訳だ。護衛としてはこれ以上ないくらいに頼もしい存在だろう。

 

ふぅ、と1つ息を吐いて集中する。

今から行おうとしてる事は単純だけど、だからこそ確実だ。

さっきも少し考えた、屋根をぶち抜いてドフラミンゴの居る王宮の最上階へと向かうという方法。これなら辿り着くのは一瞬で済むし、跳躍1つで事足りるから私も楽だった。

 

「はっ!」

 

ドッ、パァン!!!

 

瞬間、私が居た所に巨大なクレーターが出来上がった。近くに居たシャルリアとベビー5は王華によって安全圏まで運ばれ、私はというともう目的地に辿り着いている。

あまりにも突然の訪問にドフラミンゴも、そしてモネも驚愕で固まっていた。

 

「…お前、どうやってこの王宮に入った?」

 

流石に胆力が違うのか、モネより早く思考を取り戻したドフラミンゴが疑問を口にする。その疑問には軽い笑みで返し、まず手始めにモネを囲っていた鳥カゴをこじ開けた。

 

「…っ!?な…!若様の鳥カゴを…!?」

 

「何?これ、そんなに凄いの?」

 

そうして中からモネを引っ張り出して、腰を抱いて隣に立たせる。

最初はただただ驚愕していたモネだったが、次第に私への敵意と殺意を瞳に宿していく。

 

「ドフラミンゴ、モネは貰ってく。それと、あなたもぶっ飛ばしていく。…それは私がするか分かんないけど」

 

「そんな事、させる筈ないでしょう!?見てなさい…あなたが私をあそこから出したせいで、私は…!!…ぐぅ!?」

 

私は、死ぬ事になる。

どうせそんな事でも言おうとしたんだろうモネが、分かりやすく自分の舌を噛み切ろうとしたから、メイド服のスカートを少し破って丸めてモネの口に詰め込んでおく。

 

「私こそ、そんな事させる訳ないでしょ?……あ」

 

丁度真・女王化の効果も切れたのか、シュルシュルと体が縮んで元の姿へと戻った。

あー…流石に10倍でドフラミンゴの相手をするのはキツいかもしんないね。みんなに任せるか、ここで足止めだけでもしておくか…。

 

 

ドンッ!!!

 

「…ん?」

 

そんな事を考えていると、突然空から何かが私とドフラミンゴの間、その丁度真ん中に降ってきた。

かなりの勢いで落ちてきた何かは、ドフラミンゴを庇う様に私を睨みつける。

 

「…やっとその変化を解いたわね、女王ォ!!」

 

「…っ…うわ…もう復活したの!?」

 

デリンジャー。

ぶっ倒した筈の男が今、怒りの表情を少しも隠す事なくそこに立っていた。

 

「デリンジャー…そいつの処理、お前なら出来るだろう?」

 

「今の奴なら、すぐにでも」

 

「…!」

 

ドフラミンゴの言葉で戦闘態勢を取ったデリンジャーを見て、私は即モネを抱えて近くの穴へと飛び込んだ。それは私が最上階へと昇る為に開けた穴であり、当然その下にはシャルリアとベビー5が居る。女王化が切れた今王華にも頼れない。なんとか乗り切るしかない!

…とりあえず今は、この方法に賭ける!!

 

「後は、任せた!!!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

下に降りた後、モネを任せて、彼女達が見つからない様にデリンジャーを引きつけ王宮を飛び出した。

思惑通り自分を追って来てくれた事に内心で安堵し、何処へ行こうかと思考を巡らせる。

どうせすぐに追いつかれるだろうけど、どこを目指すのかは大事だ。例えば王宮の外のひまわり畑は、多分王宮を目指すみんなと鉢合わせるだろうから長居は出来ない。

なら街へ戻るのはどうかと言えば、それはそれで民を巻き込む恐れがある。最初にデリンジャーと交戦した時と違って、今は奴を完封出来る術を持っていないのだから特に。

 

「…なら、仕方ない!」

 

花畑や王宮のある4段目よりも2つ下の2段目の台地!そこならあまり人も居ないだろうし、何より広さがある。多少暴れられても被害は最小限で済むだろう。

 

そんな望みを抱いて全力で坂道…というか最早崖となるそこを駆け下り、なんとか2段目の地へと辿り着く事が出来た。

ここもドフラミンゴの手下達と戦ってくれてる人達は居るが、大半は3段目へ辿り着いているのか比較的人数は少なめだ。

 

「キャー!!」

 

「ッぐ!?」

 

状況を確認し終わった直後に背後から頭を蹴り飛ばされて綺麗に吹っ飛んだ。流石に追いつかれるよね…!

 

「…全く、一体どれだけ強化されてるのやら」

 

()()()()()()()()()()()()()()立ち上がり、作戦が上手く行っている事実に“私”はニヤリと不敵に笑ったのだった。

 

 

 

 

 


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