ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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192『女好き、数の暴力』

去柳薇(さよなら)ァ!!!」

 

「ッ!?」

 

なんか知らんけど、私が来たら黒髪の美女にこいつ攻撃してやがった!!おのれドフラミンゴ!美女は世界の財産なんだけど!!!?

 

ルフィとの戦闘で既に満身創痍なドフラミンゴではあるが、それでも今の私の不意打ちを躱すのは訳ないのか簡単に躱されてしまう。

ま、この人を守れたから良しとしよう。

 

「あ、アイリス…!?」

 

「あれ、レベッカちゃん?」

 

少し離れた所にはレベッカちゃんも居る様だ。さっきはひまわり畑に居たのに、いつの間にこんな所まで来ていたのだろう。

ロビンと叶、それに片足の人は大丈夫なのかな…?

 

「…ん、なんだ、イリスも来たんですか」

 

「あ、叶」

 

そこに叶まで合流してきて、ここからでもドフラミンゴの顔が顰められたのが見えた。ここからでもって言うか、私の視力ならそりゃあ見えるんだけどさ。

 

「お?なんだ結構先客が居るじゃねェか」

 

「俺らが出る幕も無さそうだな、エース」

 

…えっと、誰だろ?さっきエースと共闘していた人と、そのエース本人までも現れた。

エースと普通に肩並べて戦えてたくらいだから相当強いんだろう。

…というか、コレ、ドフラミンゴ詰んだよね?

 

「…うじゃうじゃと、何処までも目障りな連中だ…!」

 

「あ、そうそう、『嫁ぎ先が決まったのでファミリーを抜けます、今までお世話になりました』ってモネから伝言預かってるんだけど」

 

「は?ちょっと待って下さい、モネってあのモネですか…?ドフラミンゴファミリーの!?あの忠誠心の塊の!!?」

 

私の言葉にドフラミンゴは固まり、叶まで騒がしくなった。

そうだよ?と普通に返せば叶から呆れる様な目が……って、嫁を増やしただけなんだけど…。…いやこの発言は割と屑っぽいね…。

 

「…そうか」

 

叶に反して、ドフラミンゴの反応はそれだけだった。

何も感情が動いていない訳ではなく、怒りだとか失望とかを押し殺した結果の反応。少なくとも私にはそう見えた。

 

「で?ドフラミンゴ、あなたはこの状況でもまだ戦う気?」

 

「…この状況でも?フッフッフ…女王、お前は1つ勘違いをしていないか?」

 

クイ、とドフラミンゴが指を動かす。それだけで鳥カゴの縮小が目に見えて早くなった。

…この速度じゃ、5分保ちそうにないね。早くしないと被害が拡大するし、何より嫁が危ない!!

 

「後5分だ、俺はその時間…お前達に倒されなければいい」

 

「とかなんとか言って、口元引き攣ってるよ?分かってるんでしょ、そんなの無理だって」

 

私がドフラミンゴの立場でも厳しいって。

エースだけなら何とかなりそうだけど。

 

「アイリス…!」

 

「レベッカちゃんはそっちの黒髪お姉さんと下がっててね」

 

かと言って、あんまり離れ過ぎるとそれはそれで困るんだけど。

ドフラミンゴの能力…もうここまで来れば糸が関係している事は理解出来た。しかも自分だけじゃない、周囲にまで影響を及ぼすレベルだ。

 

これは能力の覚醒ってやつで、2年間の修行でエースが会得したものだ。

因みに白ひげがドンドコ地震起こしてるのも、アレは覚醒しているからである。

 

「…まぁ、関係ないか」

 

ドフラミンゴが生み出した糸は、その次の瞬間には炎に包まれて焼き切れていた。

糸なんだから、そりゃあエースの炎とは相性最悪だろう。焚き火の中に放り込んだ糸織物がどうなるのかなんて誰にでも分かる事だ。

 

「叶、あのぷろてくしょんってやつでチャチャっと終わらせられない?」

 

「ごめんなさい、それは出来ません、あまり強力な魔法は今は使えなくて…」

 

なるほど、私の真・女王化の様な能力制限にでもかかってるのかな?

じゃあ仕方ない、ここはもう単純に…!

 

「物理で!ゴリ押す!!10倍灰(じゅうばいばい)!!」

 

ドン!と地面を踏み込んで、ドフラミンゴとの距離を一気に詰める。

このまま真正面から殴ってしまえば、後に続ける人が居なくなるから…!

 

「ほいっ!」

 

「!!」

 

奴の目の前まで到達した瞬間に、サッカー選手のドリブルみたいにクルッと体を回転させながらドフラミンゴの横を通り過ぎ、その勢いのまま脚を振り上げた。

 

去鷹嫺(さようなら)!!」

 

「ぐ…ッ、ゴフ…!」

 

フェイントを交えた背後からの一撃がドフラミンゴを襲う。流石に今の私の攻撃程度なら見切れている様で、腕でガードはされたものの血を吐き出していた。

私の攻撃でそうなった訳では無さそうだから、ルフィとの戦闘で予想以上のダメージを負っているみたい。

こりゃ…ルフィが復活する前にドフラミンゴを倒しちゃうと後で機嫌が悪くなるかもしれないね。

 

竜爪拳(りゅうそうけん)魔爪(まそう)竜辻(りゅうつじ)!!」

 

盾白糸(オフホワイト)!」

 

地面が糸に変化して、覚醒したドフラミンゴの能力によって巨大な盾が作られた。

だけど残念!それは盾にはならないんだよね!

 

「火拳!!」

 

「『ファイア』!」

 

「ッ…!がフ…!」

 

エースの火拳と叶の魔法によって盾は呆気なく燃え散り、防げる筈だった金髪の人の攻撃をモロに受けてドフラミンゴはその場に膝をついた。

金髪の人の攻撃は2本の指を立てて、それを武装色でガッチガチに強化し、切り裂くというモノだから威力も半端ではない。

 

「これで、終わらせる!!」

 

ドフラミンゴはかっなりタフな野郎だ。それは今の奴を見れば誰もが分かる事。……普通、あんなボッロボロで意識なんて保てないからね?

 

だからこそ、終わらせる為に私は飛んだ。ドフラミンゴの真上へ、両の腕を10倍大きくして。

 

「トドメを掠め取るみたいで気は乗らないけど……!!10倍灰(じゅうばいばい)っ!」

 

「っく!?」

 

「『アイス』」

 

指から糸を出そうとしたドフラミンゴの手が氷に包まれる。

氷を出したり炎を出したり、汎用性の鬼みたいな能力だよね、ホント!

だけど、あの氷では奴を拘束出来る時間は数秒も無いと思う。

 

ーー数秒あれば、十分だけど!

 

去柳薇(さよなら)ぁぁ!!銃乱打(ガトリング)ッ!!!」

 

「ッ!!?」

 

ドゴォン!ドゴォン!!

 

防御も出来ないドフラミンゴへと、拳の雨が降り注いだ。

声を上げ、全力で乱打を続ける。

 

「はぁああああっ!!」

 

いかにドフラミンゴがタフだろうとも、流石にもう限界だったのだろう。時間にしてたったの5秒程度。落ちた拳は30発程度。

遂に、鳥カゴは消え去ったのだった。

 

「よっし!!一丁上がり!」

 

腕をぐるんと回して満足気に頷く。少し離れた場所にいたレベッカちゃんへと視線を向ければ、ドフラミンゴを討った事実に感極まってか涙を流していた。

レベッカちゃんはドフラミンゴに対して恨みとかもあっただろうし、私も手助けが出来て良かった。

それに、レベッカちゃんだけじゃない。国中から歓声が湧き上がっている。

ここに居る私達を讃える声も多いが、一番はやっぱりルフィに対してだ。あそこまでドフラミンゴを追い詰めたのはルフィだから当然っちゃ当然だけど。

 

「みんなもありがとう!多分、私一人じゃ厳しかったかも」

 

「いえ、被害を最小限に抑える事が出来たんです。加勢した甲斐がありました」

 

「エースと、そっちの人もありがとね」

 

そっちの人、と言うと、エースから説明が入った。

どうやら彼はルフィのもう1人の兄貴分らしい。昔に死んだと思っていたらしいのだが、革命軍に拾われて、現在ではその革命家トップでありルフィの父でもある「モンキー・D・ドラゴン」に次ぐ、革命軍のNo.2なんだとか。普通に凄い。

 

「あの“四異界”の1人がエースの妹分か。だったら俺の妹でもある訳だ」

 

「じゃじゃ馬だが、可愛いトコもあるんだ、これが」

 

「誰がじゃじゃ馬だってぇ?……おっと、海軍が近づいて来たみたい。そろそろ離れるよ」

 

これは冗談抜きでルフィも含めた4人兄弟という事になってしまうのでないだろうか。……嫌って訳じゃ無いんだけど、そこって私が入り込める隙間あるの?無さそうに思えるんだけどな。

それに私はどうせ入り込むなら美女の谷間が良い。うん、そっちの方が私らしいし。

 

今すぐこの場を離れる前に、まずはレベッカちゃんの近くに寄った。隣に居るナイスバディ黒髪美女さんも気になるけど、私はレベッカちゃんに言わなきゃならない事があるのだ。

 

「レベッカちゃん、大会中にも何度か言ったけど……私の嫁になってくれない?」

 

「え?」

 

「……女王イリス。悪いけど、レベッカはこの国の王女。確かに、国を救ってくれたあなたならその“報酬”も悪くはないと思うわ。だけど、この国は度重なる障害で疲弊している。王女を差し出す事は出来ないのよ」

 

レベッカちゃんに代わって隣の美女がそう返してきた。レベッカちゃんが小声で「ヴィオラさん」と呟く。

 

「あなた、ヴィオラって言うの?」

 

「ええ。……それで、分かってくれたかしら?それ以外なら、あなたが望む事は何でも叶えるわ。国を救ってくれた英雄に対して申し訳ないとは思うけど……」

 

「うーん……じゃあ、あなたも一緒に嫁になってよ」

 

「ちゃんと話聞いていたのかしら!?」

 

レベッカちゃんの肩を抱く様にして、ヴィオラは私から1歩後ずさった。ふっふっふ…疲弊しきった国だろうとなんだろうと関係ないね!私はレベッカちゃんが欲しいんだ!それに、私だってこの国を潰そうとは思っちゃいない。

 

「レベッカちゃんとあなたを嫁に貰ったとして、別に今すぐ私と行動を共にしてもらいたい訳じゃない。落ち着くまではこの国で復興に力を注いでもらいたいし、それが終わってもこの国で居たいならそうしてもらっても構わない。会いたい時には私から会いにくるし、ね?」

 

「アイリス……。だけど私、まだそういう事、考えた事もなくって…」

 

「うん、答えだってそんなに急いで出さなくても良い。そうだね……この国を出る前にもう一度だけ会いにくるよ。その時にまた、返事を聞かせてくれない?」

 

まぁ、その時は全力で口説き落とさせて頂きますけど??

そりゃあ私だって、今この状況で強引に口説くのはちょっと空気的にどうかと思ってるよ?だからこれくらいで一旦引くんだけどさ!一旦ね!ここ大事!

 

「……うん、分かった」

 

真剣に頷くレベッカちゃんを見て、私も頷いて返した。

いきなりこんな事聞いて、それを真剣に考えてくれるっていうんだから彼女はやっぱり良い人だ。

 

「……なんですか、今の強引な求愛は」

 

「私は悪くないよ?レベッカちゃんが可愛いのが悪い。世の女性達が魅力的なのが悪い」

 

「何言ってるんですか……」

 

「あ、王華が『叶も魅力的な女性だよ』だって」

 

「んなっ……!」

 

お、顔を真っ赤にさせて口をパクパクさせてる叶のレアな表情ゲットだぜ。なんちゃって。

王華が自由の身になれば、叶や沙彩、それに今はどこに居るのか分からない美咲も含めて嫁にしてそうだよね。むしろ彼女達の幸せの為にもそうなって欲しいと思う。

 

ちょっとゆっくりし過ぎたかも。そろそろ移動しないと、ドフラミンゴを捕らえに来たのだろう海軍と鉢合わせちゃうと面倒な事になるだろうし。

 

 

 


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