ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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前回がプロローグでしたので、今回が一話目となります。


1『女好き、その名もイリス』

あの後、手っ取り早く船に乗ってた海賊達をみな外に放り投げてどんぶらこと海を漂うこと一週間。

 

「……遭難した」

 

船のデッキに大の字で寝転んで呟いた。

この一週間、船の動かし方なんてわかるはずもない私は適当にあっちこっち弄って海上を漂ってはきたが、ぶっちゃけそんな適当な知識で航海などできるはずもなかった。大丈夫だと思ったんだけどなぁ…。

 

嬉しかったことといえば風呂付きだった事とか、食材がふんだんにあったことだ。その中でも特にお風呂は涙が出るほど嬉しかった。何せ石鹸などこの世界に来てからは見てなかったので、当分の汚れを綺麗さっぱり落としてやったのだ!服もきちんとした物を身につけられたし…子供用のがあってよかった。

 

あと、これが重要なことなんだけど、外に出るということで自分の名前を考えてみた。

名は、『イリス』

日本ぽくしようかな、とも思ったけどせっかくだから洒落た名前にしたかったのだ!せめて名前くらいはお姉さんっぽくありたい!!

 

「でも、ずっとこの調子じゃ流石に死んじゃうよね……はぁ、どうしよ…」

 

そういえば、この船にはそこそこの金銀財宝も乗ってたんだっけな。

元は海賊船だし、どっかから奪ったものかも知れないけど…宝はいいよね、お金があれば女の子とのデート資金に使えるし。

 

宝を近くでまじまじ見る機会なんてそうそう無いし、もう一回見てこようかな。

 

「よっ…と」

 

体を起こして宝物庫へと向かう。

……あぁ、これは、『いる』な。

 

宝物庫にたどり着いて扉を開けようとした時、中に人の気配を感じた。

…誰だ?島に置いてくるのを忘れた海賊でもまだ居たのか…?

 

とはいえ、待っていても始まらない。

ここは一つ、腹を括って中に入るしか…。

 

なんて思っていると、ゆっくりと扉が開かれて辺りを伺うように人が現れた。

私はというと咄嗟に天井に張り付いて気付かれず済んだわけだけど、もちろん能力を使って指を天井に突き刺しているから出来る芸当だ。決してゴ◯ブリみたいと思ってはいけない。

 

「変ねぇ…人の気配を感じたんだけど…」

 

中から現れたのはオレンジ色の髪をしたとんでもない美人だった。

その手にはこの船の金銀財宝が袋に入れられており、まぁ一目でわかる、泥棒だろう。

 

「バレてないうちに早く逃げなきゃ…」

 

「いや、バレてるよ、思いっきり」

 

え?と恐る恐る声がした上を見上げる美人泥棒は、天井に張り付いてる私と目があって数秒固まった。

 

「……じゃ、そういうことで」

 

そのまま何事もなかったかのように逃げ去ろうとする美人さんの腕を天井から素早くおりて掴む。

 

「ちょーーっと待った!」

 

「…くっ、天井に張り付いてたのはちょっと意味わかんないけど、こんな小さな子に見つかるなんて!」

 

振り解こうと必死にもがいているようだけど、残念だったな!倍加済みだーー!

 

「なんて力…!?あんたは、一体…!?」

 

「私はイリス、見た目はこんなだけどこれでも19歳だからね、で?あなたの名前は?」

 

「私は…えーっと…」

 

「隠すようなら、このまま犯す」

 

「えっ」

 

ほーれほーれと手をわきわき動かしてみせると美人さんは目に見えて動揺し出して抵抗をやめた。

 

「…私は、ナミ。海賊専門の泥棒よ、…ね?お願い、私を見逃して?」

 

「泥棒の件?」

 

「そう、それ!あなた、私に興味あるんでしょ?ちょっとくらいなら触ってもいいし、どう?」

 

…うーん、なんだこれ?

宝を見に来たと思ったら、まさかの美人さんにお触りチャンス到来だと?それなんてエロゲ?

 

「えー、ど、どうしようかな…」

 

「ね?悪くないでしょう?」

 

「迷うなぁ……、って迷うかぁあーーーっ!!」

 

そのままナミさんをドン!と床に押し倒して馬乗りになる。そのはずみで持ってた袋は手から離れてしまい、彼女は一瞬悔しそうな顔をしたが、彼女は泥棒だ、目的は明確に宝。いくら美人だろうと鼻血くらいしかくれてやるもんはない!

 

「私の見た目に惑わされてるようだけど、さっきも言ったように私は19なの、それと…もっとあなたが抵抗する気力すら失うことを言うとするならば、悪魔の実の能力者でもある」

 

「悪魔の…実の…!?」

 

「あなたは見たところ、か弱い美人さんってところだけど?この状況からどう逆転を狙うのかな?」

 

私が嫌味たらしく笑いながら言うと、ギリっと歯を噛み締めて睨んできた。美人さんは何しても美人だな、なんて呑気に思ってる私はやっぱり女が絡むとどっかネジが飛ぶのかもしれない。

 

「…一生、私の隣で生きていくって誓えるなら助けてあげるけど、どうする?」

 

耳元でそっと囁いてみる。あ、あかん、言ってる私が興奮して倒れそう。美人さんに言いたい言われたい言葉を消化できるなんて幸せすぎる!!

 

「なーんちゃって!!」

 

散々楽しんだので彼女の上から体を退けると、突然のことに思考が追いついていないのか目をぱちくりさせるナミさん。

泥棒である彼女への罰は、今ので十分だ、何せまだ盗まれてないし、何なら元はと言えばこの船も宝も私が先に海賊から盗んだものだし!

 

「あんたね…その趣向というか、強さとか、まぁ19歳って言うのは信じてあげるわ、でもどういうつもり?普通、海賊がこんなあっさり泥棒を見逃す?」

 

「見逃した訳じゃないんだけどね、ただこの船は私のじゃないし、もちろん宝もね、盗まれても困るものじゃないから」

 

「どういうこと?」

 

もう中途半端に説明するのも面倒なので、転生云々は伏せて事情を全て説明した。海賊じゃないですよ〜。

途中からナミさんの私を見る目が変わったんだけど、どうしたんだろ。

 

「って言うわけで、今に至ると……っわぷっ、な、ナミさ、ん?あの、息が苦しいのですが…いやまぁ、私としてはかなりのボーナスタイムと言いますか!はは…」

 

なんと、話が終わった瞬間に私はナミさんに抱きしめられその豊満な胸に顔を埋めているのです!

あぁ…ここが天国か…。

 

「まっっったく…。私は、これでも忙しい身なの。将来の夢だってあるし、その為に泥棒稼業に手を染めている。だから、もし、そんな私でもいいって言うなら…胸くらい、貸してあげるから」

 

「え?」

 

「会った時から何か変だとは思ってたのよ、そっか…あんた、泣きたかったんだ?」

 

泣きたい?私が?

 

「あのね、普通、ずっっと一人で生きてきた人が、やっとの思いで一人から解放されたら…嬉しいでしょ?」

 

一人から…解放。

 

「そんなこと、考えたこともなかったな…」

 

前世の記憶は、朧げだ。

そんな中で二度目の人生を送った私にとって、一人というのは当たり前のことだった。

明日を生きるための術を磨く幼少期の頃なんかは、たしかに地獄だったかもしれないけど…まぁ、それもいい思い出なんじゃない?

強くなってきたら一人でも問題なく命の危機に陥ることも無くなったし…私にとってはそれが当たり前だから。

 

「そんなことより、美人の女性に抱きしめられてるこの状況が今は至福です!それに一人なんて当たり前でしたからね、ヘッチャラだから!」

 

ニッと笑って見せる。

あれ?おかしいな、なんかぼやけて視界が……。

 

「…ねぇ、あんた、気付いてる?」

 

それでもナミさんは優しく私の頭を撫でてくれた。

 

「当たり前、当たり前って、その言葉があんたを縛ってるんだろうけど…あんた、泣いてるわよ」

 

「え…?」

 

驚いてナミさんから少し体を離すと、既にその服は私の涙やら鼻水やらでぐちゃぐちゃになっていた。

 

「あ、あれ…?おかしいな、一人は、当たり前なんだけど…な」

 

「じゃあ、これからは誰かと一緒にいるのを当たり前だと思えるようになりなさい、今度は一人になった時、寂しくて泣けるように」

 

この世界に来てから、人と話したのも海賊ガリオンとその取り巻きくらいで、しかもこうも的確に私が抱いてる負の感情を優しく癒してくるとは…。うむ、やはり美人はいいな。

 

「っ…ぅ」

 

もう、あれだよね、泣くっていったって、ほんとに十数年ぶりだし、こうやってふざけておかないとなんか恥ずかしいっていうか。

なんて思ってるとナミさんの抱き締める力が強くなった。

勝手な妄想かもしれない、だけどその行為に泣くのを躊躇う必要はないと言われた気がした。

 

「…っ、ぐ、うぅ……うわわあーーーーッッ!!」

 

さっき会ったばかりの泥棒なのに、その言葉は、その行為は私を油断させるために言っただけかもしれないのに…。

それでも、私の胸の、あの島で雁字搦めに縛ってきた何かを優しく解いていった。

一人が当たり前の私は、どこか遠い日の思い出のように感じた。




あとがき書かないとか言いつつ書いてるやつ。
ナミさんはめっちゃ優しいんだよって話。
ついでにイリスにはナミさんをめっちゃ好きになってもらって、今後の展開に生かします。

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