ドレスローザ、東の町『カルタの丘』。
そんな丘の、見渡す限りの美しい花々に囲まれた家の中に私達は居た。
ちなみに、ここはキュロスの家らしい。
ああ、キュロスはレベッカちゃんのお父様だ。また私にお父様が増えるね!
現在は夜も更け、海軍の目から逃れる為にここに集まって疲れを取っている。
私達一味以外にも、この家の主であるキュロスは勿論、ローにベラミー、シャルリア、モネ、ベビー5、そしてサボ、エースまで居た。流石に狭く感じる。
サボとエースが居るからか、ルフィは疲れを堪えて寝ずに耐えていた。といっても、何度か船を漕いでいる為起きていられるのも時間の問題だろうけど。ローとベラミー、キュロスとウソップは既に寝ている。
「サボが生きていた理由は分かったし、素直に嬉しい。これでまた兄弟3人……いや、今は4人だな。集まれるって訳だ」
「エースさぁ、その4人目ってもしかしなくても私だよね?私の事は気にしなくていいから、せっかくの再会なんだし3人で仲良くしててよ」
「女王……いや、イリス、そうはいかねェ。俺はお前に感謝したいんだ。エースが今生きてここにいるのは、間違いなくイリスのお陰だからな」
そんな感じの好意を向けられるのは、なんか照れる。
エースを助けたのは、単に私が死なせたくなかったからってだけだし、そもそも、私1人の力でどうにかなった訳でも無い。
「ルフィに3人目の兄弟がいたのにも驚いたが……俺としてはそっちの女も気になる」
「ああ、シャルリアね。もう私の嫁だから、天竜人だからって攻撃するならブッ飛ばすよ?」
「そもそも『天竜人だから攻撃する』って発想に常人は辿り着かねェよ」
サボの呆れた様な、だけど私に希望を見てる様な、うーん、なんとも言えない視線がむず痒い。
そういえば彼は革命軍のNo.2であるらしいから、天竜人をモノともしない私の存在って結構大きいのかもね。
「改めまして、今は、ただのシャルリアです。家名は捨て、2年間各地を転々としておりました」
「花嫁修行みたいなものだよね?」
「……そう、なります、ね。結果的には、ですが」
少し頬を染めるシャルリアを見て微笑む。なんとも幸せそうな顔だ。私の嫁になれたのがそんなにも嬉しいという事なのか。……可愛いなぁシャルリア!
「キャハ、なら、これからよろしくねシャルリア。船には乗るのかしら?それと、そっちのお二人も」
「あー……シャルリアが着いてきていいのかどうかはルフィに聞くよ。船長はルフィなんだし、私の独断では決めらんないから」
「いいぞ」
「いいってさ」
「軽いな……」
ルフィのいつも通りの軽さにサボが苦笑いを溢した。
「でも、モネとベビー5には残ってもらうよ」
「あら、そうなの?」
2人も連れて行くと思っていたのか、ロビンが意外そうな声を出した。
まぁ、私としてはこの地に残る理由がないのなら一緒に来てもらった方が嬉しいんだけど……。
「2人には、この国の王直属近衛兵になって貰うつもり」
「おいおい、大丈夫なのかよ。一応そいつらもドフラミンゴの手下だったんじゃねェのか?間違いなく反感を買うと思うが……」
「それに、普通なら敵だったそいつらをこの国の王が迎えるとは思えねェ」
「フランキーもゾロも分かってないね、むしろ、だから近衛兵なんだよ」
この国の王を説得出来るのかは、確かにまだ分かんない。だけどモネとベビー5が己の中の罪と向き合うにはその立場が1番都合が良いんだ。
きっと最初は周りの人達に冷たくされるだろう。絶対に歓迎されない。危険もあると思う。
でも、それは彼女達が乗り越えるべき壁だ。きっとこのまま私が連れて行ってしまえば、2人はずっと罪悪感に苛まれるだろうからね。私も心を鬼にする必要があるという訳だ。……うん、鬼になれ私!迷ってるけど、鬼になれー!
だけど、結局シュガーを捕まえられなかったのは残念だった。時間も無かったし、きっと今頃他の幹部達やドフラミンゴと同じく海兵に捕まってるんじゃないだろうか。
……む、そう考えたら、今後2人に近衛兵になってもらうとしても、海兵に見つかったら結局監獄送りなのでは?
でもあれか、手配書は出来てない筈だから大丈夫なのかな?
「そっちの事情は分かった。それで、そいつが同じ船に乗るっていうのなら、何が出来るのかくらいは知っておきてェな」
「その……申し訳ありませんが、私は戦闘能力はほぼありませんわ。出来る事といえば、一通りの家事や、釣り、簡単な狩りなど。あとは……記憶力には自信があります」
「天竜人が釣りに狩りって、本当なのかァ?」
フランキーの疑問にシャルリアは軽く頭を下げて答える。
「この2年間、金銭が心許ない中で生きていく為に必要な事でしたので」
「へぇ、経験のない事を、誰の手も借りずにこなすのは簡単な事じゃないわ。要領が良いのね」
「それに、戦闘能力がないのなら培えば良いんだよ!大丈夫大丈夫、優しく教えるから!ねっ、ゾロ」
「はァ……別に構わねェが、訓練中に傷をつけても怒るんじゃねェぞ」
「え?それは無理でしょ」
「ふざけんなてめェ!どうやって鍛えるつもりだ!!」
「優しく!!楽しく!!安全に!!」
「鍛える気あるのか!!?」
……と、言うのはまぁ冗談で、多少怪我をするくらいは仕方がないだろう。私達の一味に加入してもらう以上は、当然危険が伴う。
私が守れば良いのだけど、やっぱり自衛能力があるのとないのとでは全然違うし。
私達って、料理人とか船医とか航海士とか船大工とか、更に音楽家に運び屋、果ては考古学者までそつなく戦闘をこなしてしまうトンデモ海賊団だ。うん、これは間違いなく必要だね、戦闘能力。
「それで、サボとエースはどうするの?私達と一緒に行動するとか?」
「ハハッ、それも悪くねェかもな。だが受け取るのは気持ちだけだ。俺には俺の冒険があるもんで」
「俺もそろそろ帰ろうと思っている。「CP0」がここへ引き返して来てるからな。狙いは間違いなく俺達革命軍だろう。お前達も可能な限り早く出航しろ」
「しーぴーぜろ……政府の組織か。良かったら私がブッ潰そうか?」
「それが冗談じゃねェってのは段々分かって来たな。でも止めておいた方がいい。奴らを潰しても意味はねェ、むしろ、余計に刺激を与えかねねェからな」
ふーん、と適当に言葉を流す。その奴らってのが、サボ達革命軍が潰したいものなんだろう。
ま、手を貸すのは助けを求められてからでいっか。考えなしに出しゃばっても得は無いしね。美女が居るなら行くけども。
「じゃ、帰る。これ一応ルフィの「ビブルカード」。作っといた」
「おお、ビブルカードってそんな簡単に作れるもんなんだ」
渡された紙を受け取れば、サボは端の方を破って懐に仕舞った。欠片は貰うって事だね。
ビブルカードって何を素材にするんだっけ?爪とかだったっけな。
「ちなみに、イリスのも作ってる」
「ええ?どうやって……」
「材料は修行中に取っといた」
何やってんのこの人。まぁ、貰うけどさ、一応。
私とルフィのビブルカードの欠片をエースとサボは受け取り、モネとベビー5は私のだけを破っていく。
お、そうか。ビブルカードがあったらとりあえず嫁に渡しておけばいいんだ。一緒にいるナミさん達はいいとして、今度会ったらたしぎちゃんにも渡したいな。
それに、今まで嫁になってくれた人達に渡したい。ていうか、ワンピース見つけたらどこかの無人島開拓してみんなで住んじゃうか。うん、それがいいね。1人で勝手に決めて、みんなの承諾を得ないのもなかなか乙だよ!!……うん、ハーレム女王とは傍若無人の意もあるから仕方ない、という事にしよう。
「ほんじゃ、またな。ルフィにゃ手ェ焼くだろうが、よろしく頼むよ」
「ルフィ、イリス、困ったらいつでも呼べよ」
「そっちこそ」
「本当に困った時はお互い様だ!海賊は自由だからな!しししっ!」
自由だから、別の海賊団だろうと助けたいと思ったら助ける。ルフィが目指す海賊王とは、この海で一番自由な海賊だからね。やりたい事をやりたい放題するって意味では、ルフィはもう海賊王かもしれないけど。
そうして、エースとサボは家を出て行った。まだまだルフィと積もる話とかあるだろうに、立場とは面倒なものだ。
そういえばエース、今回は次に会う時は〜って言わなかったよね。はは……変なとこで学んでるみたい。
***
翌日、私は朝早くから外に出て来ていた。
海軍に見つかると面倒だから、こっそりと目的地を目指す。
「目的地は大体どこからでも見えるんだけど……さて、どうやって侵入したものか」
目的地とは、ずばりこの国の王宮だ。理由は、レベッカちゃんの嫁の件とか、モネやベビー5の件。つまり王様に用があった。
この国の英雄的立場にいる私達だけど、立場は海賊。堂々と正面から入場出来る訳がないからどうにかして侵入するしかないのだ。
といっても、ドフラミンゴのせいで見張りの兵士達の数はかなり少ない。なんとかタイミングさえ見極めれば侵入自体は出来そうだ。
「こっそりこっそりと……」
「何をしているのかしら、女王サマ?」
「うひぃ!」
突然真横から声をかけられて飛び跳ねてしまった。ま、まだ侵入してないけど!?まだ何もしてないけど!?
「って、あなたはヴィオラ!」
「おはようございます。王宮に用事でも?」
「あ、あはは……ちょっとね、ちょっと」
「……はぁ。いいわ、案内しましょう。今更海賊だからとあなたを拒んだりはしないわよ」
「!あ、ありがとう!」
ヴィオラはそう言ってこっそり裏から私を王宮内に招いてくれた。懸念していた侵入が予期せぬ形で成功してぐっと拳を握る。
あとは王様に会うだけだね。
「それにしてもヴィオラ、良く私を見つけられたね、気配は消してたんだけどなぁ」
「私も能力者なのよ。例えあなたであろうとこの“目”からは逃げられないわよ?それで、要件は?」
「ああ、王様に会わせてもらおうかと」
「へぇ、どうして?」
「ここで雇ってもらいたい2人の話と、レベッカちゃんを嫁にもらう事についてちょっと、ね」
「……雇う?」
今更レベッカちゃんの件については突っ込んでこなかったけど、ヴィオラにとっては初耳の言葉に首を傾げていた。
「あれ、アイリス?」
「お!レベッカちゃん!」
と、そこに丁度レベッカちゃんが姿を見せた。
うわ、ドレス着たレベッカちゃん可愛い。いや、ビキニアーマーも可愛かったけどそうじゃなく。うん、可愛い。
「レベッカちゃんも来たし、ちょっくら王様のとこまで案内してよ」
「そうは言っても、恩人とはいえ易々と会わせていい方でも」
「アイリス、おじ……リク王様に会いたいの?良かったら案内するわ」
「良いの!?ありがとうレベッカちゃん!」
レベッカちゃんに遠慮なく飛び付いて、その綺麗なドレスに皺を作ってやった。
ヴィオラは額に手を当ててため息を吐いている。常識人ポジは大変だよね……私は振り回す方だから、とりあえず心の中でごめんなさいと謝っておく事にしよう。