状況を整理しよう。
どうやら私達の一味の傘下を希望している集団が沢山居るらしい。終わり。
「……どゆこと?」
「分かんねェ。なんかコイツらが急に言い出してよ〜」
凄いイヤそうな顔をしたルフィが私の隣に立った。お陰で傘下志望の人達の視線が私に集まってくる。
「ルフィはイヤなの?」
「イヤってより、窮屈!おれは海賊王になりてェんだ、偉くなりてェ訳じゃねェ!」
「そっか。じゃああなた達も諦めなよ、船長がイヤって言ってるんだから私達はそれに従うからね?」
「「えェ!?」」
そうは言ったけど……代表として前に出てきている人達はみんな強そうなオーラ放ってるんだよね。
傘下っていうのが無理でも、どうにかして繋がりは持っておきたい。今んとこ男しか見えないけど、知り合いが多くなれば美女との出会いも必然的に多くなる筈!
で、肝心の志望者達の詳細を聞いてみた。
まず、「美しき海賊団」75名。代表は船長のハクバのキャベンディッシュ。
次に「バルトクラブ」56名。船長は人食いのバルトロメオ。
「八宝水軍」約1000名。13代目棟梁、
「
「トンタッタ族トンタ兵団」200名。兵長、戦士レオ。
「巨兵海賊団」5名。船長ハイルディン。
「ヨンタマリア大船団」4千300名。提督、開拓冒険家オオロンブス。
しめて5千600人……かぁ。
今乗っている海賊船もオオロンブスのとこの「ヨンタマリア号」らしい。
「戦力として考えるなら凄いよね」
「なら、そこに私も含めて頂いても構いませんよ」
「「「はァ!!?」」」
いきなり叶が発した爆弾発言に殆どの人間が思わずと言った感じに声を上げた。私も、それに王華もだ。
「名目は、最近名を上げてきている麦わら海賊団に諜報員として潜入。でどうでしょうか」
「いやいや、いいの?そんな私達の味方ですーって発言して。一応叶って海軍側と繋がりあったよね?」
「だからこその名目、建前ですよ。私にとって最優先すべきなのは王華達です。こうして王華と再会出来た今、海軍側とのパイプはそれほど重要じゃないですから。この建前が疑われないのならラッキーってくらいに思っておきますよ」
だからって傘下に入ろうとする?普通。叶は叶で行動力あるよね……。
まあ、そもそもルフィが傘下ってのを否定しているから叶がそこに入る事もなさそうだけど。
「っ、
いきなり飛んできた砲弾に覇銃を当てて消し飛ばした。
なんだ?海軍の軍艦か?
見れば、少し離れた所にいる船から飛んできている様だ。しかも海軍じゃないし……海賊って訳でも無さそうだけど、どこの勢力だろう。
「コロンブスに指揮を執らせろ、我々はまだ取り込み中である。誰であれ薙ぎ払え!」
「は!」
オオロンブスが仲間にそう指示を出した。ちゃんとコロンブスも居るんだ……子供かなぁ。
だけどそのコロンブスが何をするまでも無く、砲弾を撃ってきた奴らの船は空から降ってきた瓦礫によって潰される事となった。
私達の船は避けている……と言う事は、藤虎って大将は何故か私達の味方をしているという事になる。確かに叶の言う通り私達に落ちては来なかったけど、ほんと、青キジといいあそこの大将は良くわからない人が多いね。
「傘下だか何だか知らねェけど、そんなモンにならなくたって良いじゃねェか。困った時はまた呼べ!いつでも行くから!おれ達が危ねェと思ったら、その時は大声でお前らを呼ぶからよ!」
「そうですか、なら良いです」
そう言って叶は王華から盃を受け取り、その中に酒を注いだ。バルトロメオやオオロンブス達など、各団体の代表格も盃を手に持っている。
「バルトロメオ、口上をお願いします」
「んだべ。……ルフィ先輩!誠に勝手ながら口上を述べさせて頂くべ!!」
「ん?」
みんなして盃を持っちゃって、今にも飲むぞーって姿勢になってる。
いやでも待ってよ、それって飲んだら傘下がどうこうって話になるんじゃないの?え、王華もちょっと笑ってるし、こんな強引な流れって原作にもあったって事!?
「ではルフィ先輩!ここに我ら子分となり、いついかなるとぎも、親分“麦わらのルフィ”先輩の盾となり、また矛となる!此度のご恩に報い、我ら7人、命全霊をかけてこの「
少し早口でバルトロメオはそう捲し立て、ルフィが止めるよりも早く全員が盃内の酒を飲み干してしまった。
叶は王華を見ながら飲んでいるから、あの子が誓うのは王華にって事なんだろう。
「あーー!!お前ら、何してんだ!!」
「──っふゥ!良いじゃねェか!俺達は勝手にお前さんの子分になったんだ。勝手に危機に駆けつける奴らが居たって損はねェだろう?」
この人は誰だっけ、確か……サイ、だったかな。
なんだか叶と王華が彼を見る目が優しいんだよね……合掌したりしてるし、何かあるの、かな?死んだりする様な事では無いのだろうけどね、もしそうならあの2人が止めようとするだろうし。
そんな感じで、なんだかんだで麦わら海賊団には占めて6千万人を軽く越える程の傘下がついた。
オオロンブスの船はこのままドレスローザを離れ、バルトロメオ達の船を待機させてある所まで運んでくれるそうだ。それまでの道のりは宴を行うらしい。
「宴なら私は愛しの嫁達と一緒に楽しんじゃおっかな」
「おう女王!お前も一杯どうだ?」
サイが巨大な盃にお酒を注ぎながら誘ってくる。その瞬間、ルフィとウソップの顔の色が一気に青白くなって慌てて私達の間に入ってきた。
「い、イリスは飲まねェだろ!?」
「おいお前!イリスは酒に弱いから絶対に飲ませるんじゃねェぞ!」
大慌てな2人だけど、そういえばエースやシャンクス達も私にお酒を飲ませようとはしなかったっけ。私自身、耐性を倍加してもどうにもならないお酒は避けてるし。
「安心しろィ!これァ酒じゃねェ、ちんちくりんに酒はまだ早ェだろ?」
「これでも21歳なんだけど」
ムカっとしながらも、酒じゃないならいっか、と盃を受け取った。宴の雰囲気にはこの容器が合うし。
甲板上に沢山設置されている椅子の中でも、私は隅の席を選んで腰掛けた。両隣にはミキータとロビンがやってきて、正面にシャルリアが座る。
うんうん、ここなら気になるのは宴の喧騒くらいでゆっくりと嫁との時間を楽しむ事が出来そうだ。
「今回の宴はドフラミンゴに勝利したから開かれたものだけどさ、私達は別の事を祝して乾杯しようよ」
「別?……キャハ!そういうコトね、勿論、イリスちゃんの願いを私が断る訳ないでしょ!」
「フフ、そうね。音頭はイリスがとってくれるのかしら?」
「え、っと、皆様、私は今一つ理解が……」
シャルリアはどうやら分かっていないみたいだったけど、私は一旦その言葉にウインクだけ返して盃を眼前に掲げる。
「えー、今回の騒動では色々な事がありました!レイの手がかりとか、コロシアムでのあれこれとか、ドフラミンゴの暗躍とか、叶の事とか、本当に沢山!でも、それはまぁ置いといて、やっぱり一番喜ばしい事は……色んな人が嫁になってくれた事!レベッカちゃんにモネ、ベビー5に、シャルリア!特にシャルリアは私達の一味入りという事なので、それを記念して乾杯とさせて頂こうかと思います!」
シャルリアはまさか自分の為の乾杯だとは思ってなかったみたいで目を丸くしていた。その辺はまだ私の嫁という自覚が足りてない証拠だね、うん。
「海賊になるんだから、この先色んな苦難が待ち受けてると思う。だけど私の嫁なんだからそんなモンは私が跳ね除けてあげる!嫁に危機が迫ったなら何が何でもすぐに駆けつける!だからシャルリアも私を、私達を心から信頼してね。……うん、こんな所かな、じゃあ……乾杯!」
『乾杯!!』
拙い音頭も終わり、同じタイミングで盃内のものを呷った。
その、直後。
ピリっと喉に刺激が走って、後味はなかなかに苦い。独特の香りがツーンと鼻を通り抜けて、脳が激しく警報を鳴らしている気がした。
この感じ……マズいかも。え、だってこれ……え?
「これ、お酒……じゃん……」
手から盃が溢れ落ちて甲板に飲み物──お酒を撒き散らした。ミキータ達の焦った表情が、揺れる視界に微かに映る。
とりあえずもう手遅れだから、声は出なかったけど口の動きだけで「ごめんなさい」とだけ伝えておいた。特にシャルリア、本当にごめん。
***
「イリスちゃんっ!!」
「イリス様!?どうされたのですか!?ま……さか……毒盛り!?」
「天竜人さん……いえ、シャルリア、これは毒じゃないわ。命にも別条は無い」
「どうしてその様な事が分かるのですか!?現にこうしてイリス様は苦しそうに……んぅ!?」
揺れるイリスの体、今にも倒れそうなその人を支える為に一歩近付いたシャルリアは、勢いよく後頭部を引き寄せられて唇を塞がれた。勿論、イリスの唇でだ。
その瞳は元から赤いにも関わらず、今では熱っぽさも感じる程に爛々と煌めいて見える。
理性などとっくに無かった。今のイリスは……正しく己のやりたい事だけをやる怪物だ。それを邪魔するものは誰であろうとブッ飛ばす、傍迷惑な嫁狂である。
突然キスをかまされまシャルリアはというと、最初こそ驚いたもののすぐに身を委ねる方向にシフトチェンジした様だ。
そもそもシャルリアはイリス信者な所がある。イリスが求めるなら何だって差し出してしまうかもしれない。
「ロビン、このままイリスちゃんをどこか落ち着ける所まで移動させましょう。流石にこの場で“そういうコト”は出来ないわ」
「ええ、分かったわ」
ミキータとロビンは軽く頷きあって、まずは近くにいる人達に離れる様指示を出した。
その際に異変に気付いたサイが声をかける。
「どうした、何があった?」
「イリスちゃんの盃にお酒が入っていたのよ」
「何だと?俺は確かにここに置いてあった普通の……」
「そこの樽なら酒入りのと入れ替えておいたぞ。宴な席でお子様ジュースなんざ飲んでられっかてんだ!げはは!」
と、かなり酔っている下っ端海賊が陽気にその様な事を口にした。ミキータとロビンは軽くため息をついて、サイは怪訝そうに眉を寄せる。
「すまねェ、酒を飲ませちまった事は謝る。だがそこまで深刻になる事か?」
「……そうね、見た方が早いわ。あなた、ちょっと良いかしら」
「ああ〜ん?」
樽を入れ替えた下っ端海賊を呼んだロビンは、彼にイリスの所まで行くように指示を出した。サイに現状を伝えるのと同時に、勝手な事をした彼に罰を与えるという意味もあっての事である。
フラフラと千鳥足でキス中のイリスに近付く下っ端海賊。やがてその距離が1メートルを切った時、彼は空を飛んだのだった。
「は?」
最初に素っ頓狂な声をあげたのはサイだった。イリスへと近付いた男が、気が付けば宙を舞っている。
血飛沫が上がっている所を見るに、恐らく何者かから攻撃を受けたのだろう事は間違いない。そして、それがイリスだということも薄々気付いてはいた。
サイとて強者だ、己の腕にはそれなりに自信があった……というのにも関わらず、その攻撃動作が全く見えなかった。
「オイ、何が……、は?あいつ酒飲んでねェか!?」
「何ィ!?おいルフィ、ヤベェ事になった!」
「げェ!?イリスに酒飲ませたやつ誰だ!」
「キャハ、今空を飛んでる人よ」
ゾロ、ウソップ、ルフィの順で顔を青に染める。この3人はイリスに酒を飲ましてはいけない事をよーく理解していた。特にルフィとゾロはウイスキーピークでの出来事もあってそれだけは絶対にやってはいけないと心に刻まれていたのだからその心境も推し量れるというものだ。
かくして今、嫁以外の人物に対しては容赦の無い怪物をどうにか抑えるべく、ここに『何とかしてイリスを嫁と一緒に寝室へ放り込もう』作戦が決行されたのだった。