ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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201『女好き、口説くか交渉か』

あの後、私と叶は『テレポート』で船へと戻り体を休める事にした。

私達がいない事に気付いていたみんなはプチ騒ぎとなっていて、何も説明せずに出て行っちゃった事は反省しないといけないね。でもあの流れだと仕方ない気もするけど……まあ、心配をかけたのは事実な訳だし。

 

そうして一夜明け、みんなが起きてきたタイミングを見計らって甲板に集まって貰った。理由は昨夜のレイの事や安城さんについて。

色々と衝撃的な内容なので、みんなも半信半疑って感じで話を聞いている。あ、ちなみに私の嫁とルフィに関してはこの話に疑いを持ってないみたいだけど。

 

「──という訳で、“狂神”は割とシャレにならない戦力を持ってるという事だね。万が一1人で居る時にばったり出くわしちゃったら逃げた方が良いかも。確実に倒す為には数で叩くしかない」

 

「そのレイって女は本当に信用出来るのか?」

 

ゾロが当然の疑問を投げてくるが、これには迷わず頷いた。直接面を向かい合わせた私と叶には、彼女の本質がしっかりと見えていたんだ。

みんなを納得させる根拠は無いけど、間違いなくレイと安城さんは別人だと確信しているのだと伝えた。

 

「きっと安城さんはいつか私に……いや、王華に何か仕掛けてくる。ドレスローザでは既に間接的に私達を襲ってきた訳だし、シャルリアは遭遇したんだよね?」

 

「はい、恐ろしいまでの狂気を秘めている方でした」

 

「そういう訳だから、私も安城さん……狂神とは決着をつけたいと思ってる」

 

「……それで、女王屋は何が言いてェんだ、決意表明を聞かせる為に集めた訳じゃねェだろ?」

 

「勿論。みんなにはお願いがあるの。私が狂神をブッ倒すから、協力して欲しい!狂神には4人の配下がいて、きっと全員すっごく強いと思う。私は狂神に集中したいから、みんなにはその配下を相手してもらいたいだけど……」

 

ロー達にまで強制させるのは申し訳ないって気持ちもあるにはある。

だけど、こっちも増やせる戦力は増やせるだけ増やしたいんだ。特にローは強いし、強力してもらえれば凄く助かる筈だからね。

 

「手を貸せば良いのか、それで、いつ仕掛ける?作戦は?」

 

「えっ、いや、それより協力してくれるかどうかが……」

 

「何を言ってやがる、詳細を確認してる時点で答えは決まっているだろうが。ドフラミンゴ討伐での恩もある、それに、狂神に消えて貰うのは賛成だ」

 

ローだけじゃなく、バルトロメオ達も力強く頷いた。

 

「元よりオレたづは麦わら海賊団の傘下だべ!是非お役に立ってみせます!」

 

「……そっ、か。うん!じゃあ、よろしく!ありがとう!」

 

いずれ来たる安城さんとの戦いは、ちょっとやそっとの戦力では挑めない。だから2人が快く受け入れてくれた事は私にとってかなり心強いものだった。

こうなる事が分かっていたのならエース達にも頼んでおけば良かったなぁ、絶対頼りになるのに。

 

「居場所とかは分かってないからこっちから仕掛ける事は出来ないんだよね。でも、必ず向こうから仕掛けてくる筈。だから私達は油断せずにその時を待てば良いだけ」

 

「待つと言っても、相手がどう動くか分からねェのは問題だ。4人の配下の事もある、『その時』になれば誰がどう動くのか、それくらいは決めておくべきだ」

 

ローの言葉に頷いてみせる。みせただけで作戦は何も考えてなかったけど!

 

「キャハ、もう少し協力者を集っても良いかもしれないわね。イリスちゃんが声を掛けたら直ぐに集まってくるわ!」

 

ミキータの中の私はとても人望の厚い人らしい。

それに、相手がどのタイミングで仕掛けてくるか分からない以上は同志を集めるのも難しいんだよね。事前に話しておいて、その時が来たら急いで集まってもらう、それくらいしか出来ないんじゃないかな。事前に連絡を取る手段もないけども。

あ、でもそういえば1人だけ連絡を取れる人が居たんだった。早速連絡して今夜にでも会えるか聞いてみよう。

 

「ねぇ、ゾウってあと何日くらいで着きそう?」

 

「正確な位置は分からねェ……が、先に向かわせた仲間から連絡が届いた日から考えれば、後2日程度だと俺は読んでいる」

 

「分かった。じゃあちょっと私今夜出掛けてくるね」

 

「キャハ、私はついて行っても良いかしら?」

 

「うん、後叶も一緒にお願い。あ、それからシャルリアも」

 

遠いだろうから叶の反則技でも使って行こうかと思う。

シャルリアを連れて行くのは、とりあえず説明しておこうかと思ったから。

肝心の行き先はたしぎちゃんの所だ。パンクハザードの子供達も無事に送り届けられた頃合いじゃないだろうか?

 

みんなに一声かけて寝室へ戻り、荷物の中から電伝虫を取り出してたしぎちゃんにかける。

この独特の呼び出し音にもすっかり慣れて、今ではこれじゃないと落ち着かないかもしれない。

 

ガチャ

 

『はい』

 

「あ、もしもし?私だけど」

 

『……?ええっと……カナエ、さん、ですか?』

 

あ、そっか、たしぎちゃんに電伝虫で連絡入れる女性は大体叶だったから勘違いしてるのかな?声とか電伝虫の見た目とか変わると思うんだけど……。

それにしてもたしぎちゃん、この世界では浸透していないとはいえ見事にオレオレ詐欺に引っかかりそうな流れだよね。

たしぎちゃんがそんな返しをするもんだから、私の中で少しの悪戯心が生まれそうになるのをグッと堪えて……、

 

「そうです、叶です」

 

『あ、やはりカナエさんでしたか』

 

無理です、堪えきれませんでした!だってなんか面白そうだし!

 

『“女王”の件ですか?申し訳ないですけど、私も今は女王がどこに居るのか……』

 

「そ、そうではないです」

 

『え?違うんですか?カナエさんが女王に関する事以外で連絡を取るなんて初めてですね』

 

「そ、そうかもしれないですね、あはは……」

 

叶……一体どれだけ王華が好きなの……!王華も私の中で恥ずかしがってるし、たしぎちゃんにそう思われてしまうくらいには王華の事ばかり考えていたみたいだね、あの子。

 

『私も最近は女王の事を良く考えてしまいます。あの人、強引だとは思いませんか?私とあの人の立場は敵同士なんですよ?』

 

「はは……」

 

『それなのに嫁とか何とか……カナエさんも気を付けないと直ぐに目をつけられてしまいますよ』

 

「肝に銘じておきます」

 

色々とね。自重はしないけど!

それにたしぎちゃん、言葉は私を非難しているみたいだけど、なんというか声質が優しげなんだよね、気付いてるのかな?

 

『あ、すみません、私ばかり話してしまって』

 

「気にしないで下さい。それで要件ですが、強敵との戦闘で負傷してしまいました。治療費が1億ベリーだと医者に言われてしまって……今も寝たきりなんですよ。申し訳ありませんが、必ずお返しするので急ぎでお金を出してもらっても良いですか?」

 

『えっ!?カナエさんが、負傷!?そこまでの相手となると……まさか狂神……っ!分かりました、それほどの額です、今も相当苦しいのではないですか?直ぐに上に掛け合って──』

 

え、これは流石に騙され過ぎでは?ど、どうしよ……ネタバラシしないととんでもない事に……っ!これじゃ本当に詐欺になっちゃう!

 

「あ、あのっ!私、イリスだからね!?えっと、今夜会えないかなと思って連絡したっていうか……その、ごめん!全部嘘だから1億とかいらなくて!」

 

まさかここまで引っ掛かるとは思っても無かったから凄く申し訳なく思ってしまう。

やっぱり冗談にならない嘘はついちゃダメだよね……反省しないと、だなんて考えながらあたふたしていれば、電伝虫の向こうでたしぎちゃんが軽く笑った声が聞こえた。

 

『気付いていますよ、女王』

 

「え、い、いつから!?」

 

『最初は本当にカナエさんだと思っていたのですが、明らかに声が違いますから』

 

……と言う事はアレかな?悪戯しようとしたけれど、実は私がされてたっていう事かな?

ぐぬぬ……なんかちょっと悔しい!だけどあのたしぎちゃんがそんな返しをしてくれる程には心を許してくれてるって事だよね!?

 

「むぅ……じゃあ1億は諦めるからたしぎちゃんを下さい」

 

『1億を諦めたのなら私の事も諦めてはどうですか?』

 

「それだけは無理!!それで今夜なんだけど、どう?あと子供達は大丈夫?」

 

無理矢理切り替えて本題に入る。目的はたしぎちゃんと会って対狂神の為の戦力増強をお願いする事だけど、折角たしぎちゃんと会うんだから猛アタックしたいよね!

 

『子供達は問題なく保護出来ました。……一応、遅くはなりましたが言っておきます、ありがとうございました』

 

「あはは、良いの?海兵さんが海賊にお礼なんか言っちゃってさ」

 

『あなたがそれを言いますか?あなた相手にそんな事を気にしていても疲れるだけだと学んだんです。それと今夜ですが、大丈夫です、問題ありません』

 

「ほんと?じゃあ空けといてね!今どこに居るの?」

 

『今はGー5支部ですけど……当たり前の様に居場所を尋ねるのはやめて下さい』

 

と言いつつも答えてくれてるんだけどね。

私の他にも後3人そっちに行く事を伝えようとした時、電伝虫の向こうで誰かがたしぎちゃんを呼ぶ声がした、と同時に電伝虫も切られてしまった。

多分スモーカーかな?たしぎちゃんの事を「たしぎ」って呼び捨てにしてたし。

 

 

 

***

 

 

 

そうして夜がやってきた。幸いにもまだゾウには到着していないし、私の目にもそれらしきものは見当たらないからまだ到着しないだろう。

 

「ごめんねロビン、留守番頼んじゃって……」

 

「大丈夫よ、気にしないで。それよりあの海兵の女の子、遂に捕まえてくるのかしら?」

 

「そうしたいけど、まだ厳しいと思うなぁ。とりあえずアタックはグイグイする!」

 

「キャハ!その意気よイリスちゃん!」

 

「あなた達は何をしに行くつもりなんですか……?」

 

呆れ顔の叶が杖を顕現させ、私達の足元まで広がる魔法陣を展開させる。隠している様で分かりづらいけど、未知の体験にシャルリアの顔が強張っているのが見えたので腰に腕を回して引き寄せた。驚いて少し目を見開かせるシャルリアだけど、すぐに落ち着きを取り戻して私に微笑んだ。すっごい美人。

 

「さ、行こう!たしぎちゃんを口説きに!!」

 

「戦力増強の交渉ですけど!?『テレポート』!」

 

交渉もするけど、私には譲れない事がある!!折角会えるんだから何も行動を起こさないなんて勿体ないよねぇ!!はっはっはぁ!!

 


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