ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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203『女好き、合同訓練キッス』

「ホワイト──!!」

 

「遅い!去柳薇(さよなら)!」

 

高密度の覇気がスモーカーの拳に集まったのを見逃す事無く、すかさず距離を詰めてその体を後方へ殴り飛ばす。

まぁ、私の拳はすんでの所で手の平に防がれてはいたけど。

 

少し前、意外な事にスモーカーは私達と共に特訓を行う事を受け入れた。広い視野で物事を見て考える事が出来るスモーカーだから、ここで私達が海賊だからと反発するより、強者を利用して少しでも力を付けた方が良いという結論に至ったのだろう。

そして叶の魔法によってこの場だけ光が照らされ、視界良好の中訓練は開始された。

 

「はぁっ!!」

 

「っ…!やるわね、たしぎちゃん!」

 

たしぎちゃんが持つのは自分の得物ではなく、訓練用の刃のない刀。だからかたしぎちゃんも相手をしているミキータも中々遠慮のない戦闘をしている様だ。

それに何だかミキータはたしぎちゃんの攻撃をわざとギリギリまで引き付けている様な気がする。じっくり技を観察している様な、そんな感じ。

たしぎちゃんには悪いけど、今はまだ実力的にもミキータの方がずっと上だろう。だけどミキータはまだ武装色を習得していない筈だから、その点においてはミキータにも得るものがある。技を観察しているのはそういう意図もあるのかもしれないね。

 

それから、シャルリアと叶は……。

 

「私の手は今、あなたの目の前にありますか?」

 

「……、はい」

 

「正解です。では、少し距離を離しましょう。さて、私の手は今、あなたの目の前にありますか?」

 

「…………、いい、え」

 

「ハズレ、です。でも焦る事はありませんよ、これは鍛錬の末に行き着く極地、『覇気』ですから」

 

叶が目隠しをしているシャルリアの顔の前に手の平を突き出してそんなトレーニングをしていた。ああやってまずは誰もが感じ取れる距離からスタートして、徐々に手を離して感覚を広げて行こうとしているんだろうけど、もう覇気を教えているのかぁ。叶がせっかちって訳じゃないだろうから、単純にシャルリアには才能があるのかな。

 

「どーしたのスモーカー、私、まだ20倍も出してないけど?」

 

「ク……!相変わらず出鱈目な野郎だ……!」

 

「野郎じゃないからね?ほらほら、足を止めてると追撃貰うよ?覇銃(ハガン)!」

 

よくよく考えたら、海賊なのに海軍側の戦力アップに手を貸すってどうなんだろうね、これ。

スモーカーもたしぎちゃんもセンスはあるから、今日だけで色々掴んで強くなるだろうし、今後2人に見つかる海賊達には今からごめんと心の中で謝っておこう。

 

 

その後も軽く打ち合って、スモーカーの動きの悪い点を指摘したり、私も倍加をあまり使わない様にして技術面のスキルアップに努めた。

力や速さでは能力的にも私が圧倒的にスモーカーを凌ぐけど、技術に関してはまだまだスモーカーから学べる事も多い。さっき倍加を使用せずに一戦したけど普通に負けたし……。

 

で、今は小太刀を倍加させて刀にし、たしぎちゃんと向かい合ってる所だった。

スモーカーは叶が、シャルリアにはミキータがついている。

スモーカーは私と近接戦闘を訓練したから叶から遠距離戦を学べば更に強くなれる。シャルリアは叶に学んでいた見聞色を今度はミキータに教わっている様だった。

 

「倍加は……5倍くらいにしておこうかな」

 

「その選択、後悔させてみせます!!」

 

力強い踏み込みで距離を詰めてきたたしぎちゃんの腕の動きを見極めて顔を横に逸らせば、さっきまで顔があった場所を剣先が通り過ぎた。いくら刃の無いモノとは言えその攻撃は当たれば普通に怪我すると思うんだけど!

 

「てい!」

 

今度は私の番だとばかりに腰を落として刀を振るうが、たしぎちゃんは冷静に刀の腹で滑る様に受け止め、衝撃を殺して私の体制を崩して来た。シャンクス達に鍛えられたけど、やっぱり私はまだまだ倍加に頼り過ぎていたみたい。

2年前だって私は刀を飛び道具扱いしていた訳だし……。

 

「そこですッ!!」

 

「わわっ!?」

 

崩した所を狙い澄ました攻撃に、慌てて体を捻って強引に躱す。その際足は地面から離れたし、5倍の私では宙を蹴る事も出来ない。正に危機一髪ってやつだ。

 

「これで、一本!!」

 

「そうはさせないよっ!!って、うわっ!?んっ!」

 

「えっ、きゃっ!──っ!」

 

再度振り下ろされた刀にガキン!と自分の刀をぶつけて直撃は防いだ。だけど地に足付いていないのに力が入る訳もなく、私はそのまま地面に背中を激突させ、その上私の抵抗が弱過ぎたせいで大振りとなってしまったたしぎちゃんも私の上に倒れ込んで来た。

いや、それだけじゃない。この唇から感じる柔らかさ、目の前に映る目を見開いたたしぎちゃん、ふわりと香る心地の良い匂い。

そう、ラッキーハプニングである!!要はキス!!

いやはや、やっぱり私は持ってるな、よーしこのままふかーいキスもしちゃおう!では早速失礼して……って痛い痛いっ!!?

 

「いひゃいけど!?」

 

「な、ななな何を考えているのですか貴女は!!」

 

「ちょっと舌を絡ませようとしただけじゃん!噛まれると痛いんだよ!?海兵なのに人を痛めつけてもいいの!?」

 

「どうして私が怒られてるんですか!?」

 

ぷんすかと怒った風でたしぎちゃんに詰め寄る。

でも実際たしぎちゃんとキスしちゃったら行けるとこまで行きたいって思うでしょ?私は何も間違ってないと思うんだよね!!

 

「ね、1回したんだからもう1回してもいいよね?たしぎちゃんもしたいでしょ?」

 

「どうしてそう思うんですか!?嫌ですよ!!」

 

「……てめェら、真面目にする気はあるのか?」

 

特訓も大事だけど、こうなったらキスも大事じゃん!私は昔から夢に対しては真面目で真っ直ぐだよ!!

 

「そうだ!見聞色の練習しない?私がキスしようとするから、たしぎちゃんは目を瞑って躱すとかどう?」

 

「はい!!それ、私がやりたいわ!!」

 

「お、いいね!じゃあミキータもやろうよ!シャルリアも!」

 

「はい、承知致しました」

 

「私はやりませんよ?……あの、聞いてますか!?」

 

逃げ出そうとするたしぎちゃんを『神背』を発動させて押さえ込み、たしぎちゃん、シャルリア、ミキータが私の前に立ち並んだ。

叶とスモーカーはもう気にするのはやめたみたいで、お互いの訓練に戻って集中している様だ。

 

 

えー、ここからはなんというか、怒涛の私得な展開だった。

まずシャルリア。彼女は真面目に見聞色を覚えようとはしているけど、失敗して私とキスをした時はとても幸せそうな表情を浮かべるのだ。襲われたいのかな?

次にミキータ。……うん、これは私の予想通りだけど彼女は避けようとしなかった。そもそも見聞色を習得しているミキータは目を瞑っていても私の動きが分かる筈なんだけど、唇を近付けても避ける素振り所か寧ろ近付いてくるのだから流石ミキータと言わざるを得ない。私も調子に乗って盛り上がり過ぎてしまったけど……。

最後にたしぎちゃん。最初は意地でも目は瞑らないって感じだったけど、シャルリアやミキータと訓練(キス)している私を見て、避ければ良いのだと思い至ったのか観念して目を瞑ってくれた。

まあ確かにたしぎちゃんも見聞色を習得してるし、シャルリアやミキータに迫るキス程度は目を瞑っていても簡単に躱せるだろう。だから敢えて私のわがままに付き合って早々に終わらせたいという考えは分かる。

という訳で、たしぎちゃんの時だけスピードを上げました。簡単に言えば『女王化』を使用しました。絶望顔のたしぎちゃんも可愛かったです。

 

「……もう、いっそ殺して……」

 

「弱い奴は死に方も選べないそうですので、残念ですけど生きて下さい」

 

特訓後、倒れて放心しているたしぎちゃんに叶がそう声を掛けた。死に方を選べたとしても死なせはしないよ?

それはそうと、この特訓だけでたしぎちゃんと何回キスしたんだろう?何回か舌も入れたし、最後の方はたしぎちゃんも受け入れてた様な気もするんだけど……。

 

「スモーカーは叶と手合わせして何か掴めた?」

 

「何故んな事をてめェに言わなきゃならねェんだ」

 

「ふむふむ、その言い方は何か得るものがあったみたいだね」

 

スモーカーは普通に強いし、強者と戦えばそりゃあレベルアップ出来るだろうと思ってたけど。叶も教え方上手いし、今後もシャルリアの先生として指導を継続して貰おうかな?

 

「キャハ!たしぎちゃんもイリスちゃんの魅力に気付いたかしら?遅すぎるけど、これでようやく私達は同志だわ!」

 

「な、何を馬鹿な事を……!少しの接吻で揺らぐほど私は軽い女ではありません!!」

 

「つまりは、より多くの接吻を繰り返せば良いという事でしょうか?イリス様、お聞きになられましたか?」

 

「もっちろん!!」

 

「違いますっ!!」

 

あはは、と呑気に笑う私にむくれるたしぎちゃん。あれだけキスをしただけあって、口ではそう言ってもたしぎちゃんは意識せざるを得ないみたい。私がチラリと唇に視線を移せば顔を赤くして目を逸らしてるし、うん、今回会ったのも大成功だね。

 

「キスの件も私としては重要だけど、真面目な話をするとたしぎちゃんはもう少し見聞色を鍛えた方が良いよ」

 

「何故見聞色なんですか?同じ覇気なら武装色も重要では?」

 

「たしぎちゃんは“目”に頼り過ぎてるからね。戦闘中は当然激しい動きをする事になるし、付けてる眼鏡が何らかの拍子に落ちないとも限らない。そうなったら今のたしぎちゃんじゃどうする事も出来ないでしょ?」

 

それは……と瞳を伏せるたしぎちゃんに、私は握り拳を作って胸に当てた。激励だと思った?違うんだよね、ぽよんを自然に触りたかっただけだよ!!はっはっは!!!

 

「大丈夫、たしぎちゃんならすぐに見聞色を極められるよ!だって本気で強さを求める事が出来てるんだし、ね?」

 

「女王……、分かりました、当分の間見聞色を鍛えてみようと思います。……それから」

 

「それから?」

 

「いい加減、胸を触るのやめてくれませんか!?」

 

なぬっ!?自然に触ってた筈なのに何で!?

……そもそも触るのがダメだという事に気付くべきかもしれないけど、私はそんな事で挫けたりはしない!!

 

後から思い返した時、この時たしぎちゃんは文句は言っても私の腕を無理矢理払い除けようとはしなかったのだと気付いた。

海賊と海兵、壁は高いけど、少しずつ近づけてる気がする!!今回はまた無理だったけど、次に会う時こそはたしぎちゃんを嫁にしたい!

 

 


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