ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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204『女好き、到着、ゾウさん』

「という訳で〜、たしぎちゃん達に協力を取り付ける事は出来たよーん!」

 

「イリス先輩、何か嬉しそうだべ!」

 

「分かる?はっはっは!目標に近づけたからかな?」

 

たしぎちゃんとスモーカーとの海賊海軍合同訓練も終わりを迎え……と言ってもたったの数時間だったけど、私達は叶のテレポートでバルトロメオの船に帰ってきていた。

ロー達に説明するのは私が引き受けて、シャルリアとミキータは特訓を継続するらしく、2人は船内に居る私や叶とは分かれて甲板上に居る。

まぁミキータはシャルリアの付き添いだけどね。シャルリアが1日1秒でも早く力を付けて私達の足手纏いにならない様になるのだと意気込んでいるから、ミキータもあの手この手で教えてくれるだろう。

叶もシャルリアの事は気にしているらしく、後で自分も面倒を見に行くとか言っていた。シャルリア自身が強さを身に付ける事に貪欲とはいえ、なかなか豪華な先生役が揃っているんじゃないだろうか?

 

そうそう、叶のテレポートだけど、なんと使えば世界各地どこへでも飛んでいける優れもの。回数制限や人数制限はあっても距離の制限がないのだ。頭おかしい。

つまり何が言いたいかというと、叶にお願いすればいつでも私の嫁に会いに行けるという事!勿論テレポートはいざという時の為にとっておく必要もあるから、そうそう私個人の都合でホイホイ使えるものでもないけど、余裕がある日なんかはお願いしてもいいかもしれない。

『リベラシオン』……だっけ?それを使えば回数制限も増やせるらしいし、予め連絡をしておけば各地の嫁達を一気に集めてプチお泊まり会とか、お買い物とか、すっごく魅力的な事が出来る様になる!これは本当の意味で革命だよね!!

 

「それにしてもバルトロメオ、この船には航海士が居るのですね。海軍基地に行く前から思ってはいましたが船体が安定しています」

 

「何を言ってるんだべ、海に出るんだから航海士を乗せるのは常識だべ!」

 

「……それをあなたに言われるとブン殴りたくなりますね」

 

ピキ、とこめかみに青筋を浮かべた叶が拳をワナワナと震わせている。

……まさかバルトロメオ、原作だと航海士乗せて無かったの?新世界なのに?いや、新世界じゃなくても偉大なる航路(グランドライン)前半だって相当ヤバい海なんだけど。

私達はナミさんっていうすっごい優秀で美人で優しくてスタイルの良い完璧航海士が居たから航海で困る事は少なかったけどね。なんたって空も飛んだし。

 

「ゾウまでまだ後2日くらいかかるんだっけ、正直ちょっと暇だよね……よし、ロビン、ちょっと海上デートしよ!」

 

「ええ、楽しみね」

 

「船の上で海上デートもクソもねェだろ」

 

ゾロのツッコミは無視しよう。デートだと思えばどこでもデートなんだから!それに私は海の上を歩く事だって出来るし、ただの海上デートとは一味違った刺激を味わえると思うんだけど。

 

「いえ、イリス、出来ればあなたは船に残って下さい」

 

早速出発だ!と準備していれば、そこに叶が口を挟み、すみません、と一言入れて何も無い空間から杖を顕現させる。

 

「今からゾウまで2日かかるのなら、それを1日短縮します」

 

「魔女屋、お前の事は疑ってねェ、が、そんな事が可能なのか?」

 

「はい、ですけど私1人の力では足りないのでイリスに協力してもらいます。イリス、この船の強度を上げて下さい」

 

「……あ、そういう事?分かった、でも2倍が限界だからね、酔ってる時の色々おかしい私を基準には考えない方がいいよ?」

 

そう言って私は邪魔にならない端の方へ寄って座り込み、床に手を添えて船の強度を倍加させた。それを見た叶は1つ頷いて杖を掲げる。

 

「『ウインド』『プロテクション』」

 

「お?」

 

叶がそう呟いた瞬間、一瞬だけグラリと船体が揺れた。

やっぱりそういう事だったみたいで、この船は帆船だから風を操ってしまえばスピードは自由自在って訳だ。だとすると今の揺れは加速の衝撃かな?そんでもって私に強化を頼んだのは無理矢理上げた速度に船が耐えられる様にってとこだろうね。

 

「でも叶、コレ、外のミキータとシャルリアは大丈夫?いきなり凄い風に曝されてたりとか……」

 

「ああ、大丈夫ですよ、『プロテクション』で帆から下の船体を囲っていますから、最初の衝撃以降は逆に無風になっている筈です」

 

「へぇ、流石だね」

 

何回も言うけど、本当に叶の能力は汎用性が高い。どんな場面でも使い所がある正にチート級悪魔の実だ。そりゃあ異界の実とか呼ばれたりする筈だよ。

……あ、異界の実といえば。

 

「叶、優勝賞品の悪魔の実ってどうしたの?」

 

「それでしたら今も私が所持していますよ。少し、思う所がありまして」

 

「……思う所?」

 

叶の瞳に憂いが宿る。

 

「この実は“異界の実”としてドフラミンゴが安城 零から受け取った物。異界の実と呼ばれるモノを口にしているのは、全員が転生者ですよね?これは偶然ではなく、転生者である私達の目の前に現れる様になっているのではないでしょうか」

 

「じゃあ、その叶の持ってる実は、もしかして……」

 

「はい……本来であれば、美咲が口にする筈だった物かもしれない、という事です」

 

その推測に私の中で王華が息を呑んだ。

でも、確かに可能性としては十分に考えられる。美咲は今、安城さんと共に行動しているらしい。いつからなのかは分からないけれど、悪魔の実を食べる前に捕まったのだろう。勿論、異界の実が私達の前に現れるという前提がそもそも間違っているのかもしれないし、私達が知ってる人以外にもまだ転生者がいるのかもしれない。美咲の物だと決め付ける事も出来ないから、叶は“思う所がある”などとハッキリしない言葉を選択したのだろう。

 

まぁでも、そう言う事ならその実はまだ叶が保管しておくべきかな。悪魔の実は小さくないのに何処に持ってるのか、なんて聞くまでもないし。どうせ空間魔法とかよく分からないものがあるんだろうからね。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

そして、1日が過ぎた。

叶と私が合同で行なっている無理矢理スピード上げよう作戦のお陰で、私達が眠る時以外はグングン距離を進めて行ったゴーイング以下略号。その甲斐あってついに今、私達は目的地──『ゾウ』へ辿り着いたのだった。

 

「……『ゾウ』って言うから一体どんな島なのかと思えば……」

 

目の前に聳える『ゾウ』を見上げて私は「ほへー」と抜けた声で嘆息を漏らす。バルトロメオ一派やウソップなんかは『ゾウ』を見て慌てふためいているけど、それも仕方がないだろう。だってこの島、島というよりかは……。

 

「“象”じゃん……」

 

「あァ、「ゾウ」は巨大な象の背に栄えた土地の名だ」

 

頭の中にぞーさんぞーさんと有名なメロディが流れ出したのを頭を振って掻き消した。流石ONE PIECE、こんな生物もアリらしい。

いやでも、この象、本当にかなり大きいよね?私が100倍大きくなったとしてもこの象の足よりまだ小さいと思う。

 

「聞いた事があるわ、常に動き続けて、一定の場所には存在しない幻の島があると」

 

「そうだ。“陸”じゃねェから記録指針(ログポース)じゃ辿り着けねェ、俺も来るのは初めてだ」

 

このサイズで生きてて、しかもずっと歩いてるらしい。このゾウが人の住む島に近付けばそれだけで大津波が起きそうなモノだけどね……。それこそウォーターセブンのアクア・ラグナ並みのやつが。近くどころか上陸しちゃったらどうなるのか……怖っ!

 

「上陸の準備をしろ、ゾウが俺達に背を向けてるって事は、“黒足”達はもうだいぶ早く着いた可能性がある。おい、食糧を分けてくれるか」

 

「何でおめェに!!」

 

「麦わら屋に分けてくれるか」

 

「食糧庫の全てを持ってってくれ!!」

 

バルトロメオの動かし方を早くも理解したローがそう言って、私達もせっせと準備を始めた。準備と言っても荷物は少ないけど。

 

「おい!「ゾウ」には人を嫌う種族が住むとか……」

 

「えっ、そうなの?」

 

錦えもんが助けた侍であるカン十郎の心配気な問いにローが頷く。

ローが言うにはその種族の名は「ミンク族」というらしく、人を寄せ付けず、その国の歴史は1000年近いとか言われてるらしい。

象の背中で1000年って凄いなぁって呑気に考えてたけど、よくよく考えてみたら1000年も生きてる象の方が余程おかしい事に気がついた。寿命1000年超えてるってなに……。

 

「色々気になる事はあるけど……まぁ、いいや!」

 

考えても仕方ないしね!それに、もうすぐナミさん達に会える事を思えばその程度は些細な事だし!

 

更に船をゾウに近付ければ、その巨大な足元にサニー号の姿が見えた。

常に動いてて錨を下ろせないから足に紐を括り付けて固定してある様だ。見聞色で調べても船内には誰も残っていなさそうだし、みんな上陸したんだろう。ペローナちゃんも居ないなんて珍しいよね、流石にゾウの足元じゃ落ち着かないって事かな?

 

「これが…!麦わらの一味のご神体を運ぶ“偉大なる船(グランドシップ)”!「サウザンド・サニー号」先輩!ありがたやー!ありがたやーー!!あ、先輩方、こちら食糧ですだべ!!」

 

「え、こんなに良いの?」

 

「持ってって下さい!!どうせオレたづ少食ですんで!」

 

絶対嘘だろうな、と思いつつもありがたく受け取っておいた。私の身長よりも高くパンパンに食糧が詰まった袋を持ち上げ、軽くサニー号へと跳躍する。

バルトロメオ達以外のみんなも次々にサニー号へ移ってきて、短かったけどここでバルトロメオ達とはお別れだ。

 

「じゃあね、船、本当にありがとう、バルトロメオ」

 

「またな!ロメ男!」

 

「っ、れ、連続でオレの名前を……!!もう、死んでもいいべ……!!」

 

「それくらいで死なないでね〜」

 

名前を呼んだくらいで大袈裟な反応をするバルトロメオに手を振って、私は巨大なゾウを見上げて軽く息を吐く。ここを登るにしても、私は問題ないとしてみんなはどうしようかな。

ちょっと危ないけど、私が気を付ければ問題ない方法はあるけど……。

 

「出でよ!!“昇り龍”!!」

 

「おお?」

 

「……」

 

考えてたから見てなかったけど、カン十郎が甲板に描いた絵が実体を持って浮かび上がって来た。龍というにはあまりにゆるい見た目だけど……。

 

「あのな……」

 

「目には目をと申す」

 

何やら呆れ顔の錦えもんにカン十郎は笑ってそう返した。更にそのやり取りを叶が苦い表情で見ているんだけど……何か気になる事でもあるのかな?

 

てっきり空を飛んでいくのかと思ってたけど、カン十郎作の龍は飛ぶ事が出来ないみたいでゾウの足にしがみついている。この背に乗って上を目指すって事なんだろう……でも、龍には悪いけど、それは私の嫁を乗せるには些か危ないよね。

 

「ロビン、ミキータ、シャルリア、3人は私と一緒に行こ?」

 

「キャハ!ええ、私はシャルリアを抱えて行くわ」

 

「あ、ううん、今回は私達の運び屋にはお休みしてもらうつもり。上にはこれで行こうと思ってるんだけどどうかな。──巨大な手(グランデ・ハンド)

 

両手を30倍大きくして、右手にシャルリアとロビンを、そして左手にミキータを優しく乗せ、トン、と空へ飛んだ。

これなら仮に落ちそうになってもすぐ助けられるし、安定もしてる。何より私の手のひらに座ってるみんなのおしりの感触……うへへ。

 

「みんな、私の手を離さないでね」

 

3人が頷いてくれたのを確認して、私は少しだけ加速し上へ駆けて行った。

叶も『ウインド』を使って私の後ろを着いてきているみたいだから、ゾウの背中に辿り着くのもそう遠くはなさそうだ。

 


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