ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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206『女好き、豪快な水浴び』

「それでキャロット、ナミさん達はどこかな?」

 

簡単な自己紹介も済んで、少し言葉を交わしてから本題に戻る。視線はちらちらとキャロットのウサ耳を捉えてしまうけど、今はナミさん達が優先だ……!

 

「ナミ?ナミなら──」

 

「キャロット!話途中すまない、“くじらの森”に侵入者が!」

 

何やら慌てた様子のこれまたミンク族が姿を現した。キャロットがウサギなのに対してこの人は犬……なのかな?耳も顔の特徴も犬っぽいし。

 

「くじらの森って?」

 

「クジラみたいな大木の周りの森をそう言うんですよ。ここは周りが木に囲まれていますので見えづらいですが」

 

へぇ、じゃあこの木よりも高く跳べば見えるって事だよね。くじらの形をした木も気になるし、高さを稼いで上からナミさん達も探せるし、よし、跳ぼう!

 

「くじらの森に侵入者……!?」

 

「ええ、マズい事に!俠客団(ガーディアンズ)を怒らせてしまう!!」

 

「……!ちょっと見てみる!!」

 

「じゃあ一緒にどう?」

 

「え?うわっ!?」

 

ぐいん、とキャロットを慣れた手つきで横抱きして勢いよく空へ跳んだ。地面がぶよぶよしてるからトランポリン程じゃないけど跳びやすく……ってこれ跳び過ぎた!30倍はやっぱり過多だったかなぁ…。

 

くじらの形をした大木は発見出来たけど、その高さすらもぐんぐん追い越して遥か上空へと跳んできてしまった。腕の中でキャロットがぽかんとした目で周りを見渡している。

くじらの森に侵入者、だっけ?確かにあの辺で諍いが起きてるみたいだけど、どれどれ。

 

「視力倍加、っと。……あー……ルフィかぁ……」

 

「え!?見えるの!?」

 

「ふふ、凄いでしょ?」

 

「すっごーい!ゆティア、私より高く跳べるし遠くが見えるんだね!」

 

そこまで褒められると少し照れくさいけど、可愛い子によいしょされるのは気分が良いものだよね、あっはっは!…なんて笑ってる場合でもないけど!

ルフィが牛のミンクと思われる大男と何故か戦ってるから、場合によっては参戦しなければいけないし。

ガーディアンズ?だっけ、それが何なのかは分からないけど、ガーディアンという言葉だけ聞けば何かを守ってるってイメージが湧く。これは完全に予想でしか無いけど、あの牛のミンクはこの国を守る役割を担ってるんじゃないかな、だから不法入国のルフィを見過ごせずに戦いが起こった。

 

「ま、行けば分かるか。あとキャロット、私の事はイリスで良いよ」

 

「あ、うん!分かったよイリス!」

 

その返事を聞いてにっこりと頷き、空中を蹴りながら“神背(ヒューマ)”を使用する。

キャロットが当たり前のように現れたもう1人の私に目を見開いていたので、私の能力で増やしたんだよ、と説明しておいた。説明になってない気もする。

 

「ごめん“私”、ちょっとあそこのルフィが暴れてる場所まで向かわなくちゃいけないから、下にいるミキータ達について来て貰うように言ってくれるかな?ミキータとロビンは大丈夫だろうけどまだシャルリアにはキツいだろうからあなたが背負って運んできてね」

 

「はいはい、分かりましたよ。全然良いんだけどね、最近“私”って便利屋みたいな扱われ方しかされてないんじゃない?」

 

「嫌なの?」

 

「……これが嫌じゃないんだよね。まったく…これも役割を全う出来る能力としての性かなぁ」

 

色々とブツブツ言いながら“私”はお願い通り下へと降りていった。

下の事は任せたから、私はこのままルフィと合流するとしよう。

 

力強く宙を蹴り、軽い爆発音を響かせながらミサイルの様にくじらの森へ突っ込んでいく。

中々のスピードを出しているつもりだけど、腕の中のキャロットは臆した様子も無く只々この速度に感心している様だった。

 

「ゴムゴムのォォ!鐘ェ……っぶべらっ!?」

 

「あ、ごめんっ」

 

真っ逆さまに下へと降り、着地の為にくるっと体を縦に回転させた時に丁度着地点へとルフィの頭が伸びて来て思いっきり頭を踏みつけてしまった。結構な勢いがあったものだから衝撃で小規模なクレーターが出来上がっていて、ルフィの相手をしていた牛のミンクも突然の出来事に困惑している様だ。

 

「いた……くはねェな。イリス、邪魔すんなよ!今こいつとケンカしてんだ」

 

「ケンカは良いけど、なんで後から来た筈のルフィがこんな所に居るの?道に沿って進めば私達に合流できる筈……ああ、だからか」

 

道に沿って歩いてくるのはあんまり想像出来ないし、単身切って森を突き進んでた所で牛のミンクに遭遇したってトコか。

 

「ロディも落ち着いて!そティアは麦わらの一味だよ!」

 

「むゥ…!?モォ……そうだったのか…!だが、ここは…!」

 

牛のミンクは困った様な表情を作る。不法入国というより、この“森”に侵入したのが悪かったのかな?守ってたのは国じゃなくてこの森だったとか。そういえばさっきの犬のミンクも“くじらの森に侵入”って言ってたっけ。

 

「沢山の気配に囲まれてるみたいだし、早くここから退散して安心させてあげないとね」

 

今この場でルフィと戦っていたのは牛のミンクで、近くにはゴリラのミンクも居る。だけどそれだけじゃ無く森の木々に潜んで沢山の気配が私達を監視する様に囲っているのだ。

正直落ち着かないけど、監視だけで襲い掛かって来ない所を見るに中々理性的な種族だという事が分かる。

それに何故か人族、しかも巨人族までここに居るみたいだった。クマっぽいミンクと一緒に居るし、どこかで見た事あるから多分あの人達がローの仲間、かな? 

 

「キャロット!無事か!?」

 

「ワンダ!」

 

そこへさっきの犬のミンクも合流し、その後ろからはシャルリアを抱えた“私”や、叶、ミキータ達もやって来た。きっちりと役目を果たしてくれた“私”にお礼を言って能力を解除する。

 

「不思議な奴らばっかりいる国だ、チョッパーがいっぱいいるみてェだな」

 

魚人島を経験してるし、この世界は元々多種多様の種族が言葉を用いて意思疎通してるから驚き自体は少ないけどルフィの言う通り新鮮ではある。

小動物的な意味での可愛いもの好きって訳じゃ無いけど、もふもふできるミンクが居るのならそれはそれで気になるよね。なんならキャロットのおしりから出てる丸いもこもこ尻尾に顔埋めたい。

 

俠客団(ガーディアンズ)!すぐに連れ出す、許してくれ」

 

「……ワンダに免じて退くぞ、ロディ、BB!全員退け!!」

 

直後、周りの木々からザザザッと足音が鳴り沢山の気配が遠ざかっていくのを感じた。

牛とゴリラのミンクもそれに合わせて撤退し、ルフィやミキータ達は囲まれていた事に気付いて驚いている様だ。

 

「今が月夜でなかった事に感謝しろ」

 

「?」

 

ワンダがルフィに向けてそう言って、イマイチ理解できずに首を傾げる。

月夜?まさか狼人間みたいな感じで月を見たら強くなるとかそんな力があるって事かな?

 

「で、あなた達はローの仲間だよね?名前なんだっけ」

 

「ベポだよ!女王は覚えてなくてもおかしくないけど、麦わらは頂上戦争の後世話してやったろ!?ショックだぞおれ!」

 

ベポって名前のクマっぽいミンクがそう叫ぶ。

彼の隣には2人の人間と1人の巨人族が居て、やっぱりローの仲間で間違いなさそうだ。

 

「いやー、新聞読んでたよ!驚くニュースばっかりで!おれ達同盟なんだろ?」

「キャプテンも一緒か!?」

 

「うん、ローも居るよ」

 

「良かった!来てくれたんだな!キャプテ〜ン!早く会いてェよ〜〜!!」

 

ローはあんな感じだけど仲間にはしっかり慕われているみたいだ。なんだかんだで義理堅いし、冷たそうに見えて情に熱かったりするもんね、ローって。

 

「ねぇ、少し良いかしら」

 

「なんだ?」

 

「私達はここへ来る途中、破壊された門や荒らされた道を見てきたわ。しかもごく最近の跡……。答えづらいなら無理に話す必要は無いけれど、一体この地で何か…?」

 

ロビンの質問にワンダが軽く目を伏せた。……そういえば、さっきの牛のミンクもゴリラのミンクも体に包帯を巻いていたっけ。荒らされたのは住処だけじゃない、彼女ら自身も当然の様に被害者なんだ……。

 

「……ゆティア達には話す、恩人の仲間達には知る権利もあるだろう。だけどここに長居するのは良くない、移動しながらでも良いだろうか」

 

「ええ、ありがとう」

 

そういって先導するワンダに着いていきながら、シャルリアの隣に移動して疲れていないか確認を取る。スモーカー達との特訓は短い時間ながらも彼女に少なくない影響を与えている。だけどまだ私達程に体力がある訳でもないからやっぱり心配してしまうのだけど、案の定というべきかシャルリアは美しく微笑んで大丈夫だと返してきた。

そうは言っても心配なものは心配で、とりあえずシャルリアの左手をギュッと握っておく事にした。そんな事をしていれば今度は私の左手がロビンに握られ、まるで両親と散歩する子供の様な感じに……って、誰が子供じゃい!!

 

「この国は、半月前に滅んだのだ」

 

「滅んだ……!?」

 

「数百年の歴史ある国の名は「モコモ公国」。つい半月前の記憶を辿れば皆の幸せな顔が浮かぶ……!!」

 

……酷いね、それは。

今までも私は色んな国の危機に何度も立ち会って、仲間達と力を合わせながらそれを乗り越えてきた。

でも今回は……。

 

「その、原因は……?」

 

「…この国を滅ぼした者の名は、“ジャック”……!!」

 

悲痛な面持ちで語るワンダは当時の事を思い返しているのか少し肩を震わせていた。

さっきルフィと戦っていた牛のミンクに、包囲していた俠客団(ガーディアンズ)、彼らは1人1人が洗練された戦士の気配を放っていた。

そんな国を滅ぼせるんだからジャックとやらの強さは窺い知れるというものだ。

 

「っ、わ!何だ、地震!?」

 

「噴火雨が来るぞ!木に登れ!」

 

突然足場が揺れ始めベポ達が騒ぎ出した。噴火雨とやらが何なのかは分からないから対策のしようが無いのだけど……。

 

「ワーニーに乗れ!「右腹(ウバラ)」へ案内する。仲間達の元へ!」

 

「良かった、サンジ達いるんだな!!」

 

「……っ」

 

「…?」

 

ルフィの声に苦い顔をするワンダが気になるけど、今は追求している暇は無さそうだ。

 

「イリス、ロビンとシャルリアを抱えて空へ。ミキータは1人で大丈夫ですよね?」

 

「え?わ、私空は飛べないわ!イリスちゃんに抱っこして貰わないと!」

 

「はいはい、じゃあ行きますよ。『ウインド』!」

 

さらりと流されたミキータはしくしくと残念そうに空へ舞い上がり、私もロビンはおんぶ、シャルリアは横抱きして宙を蹴った。

直後、頭上から“雨”と呼ぶにはあまりにも凝縮された水の塊が落ちて来て──。

 

「『ウォーター・プロテクション』!!」

 

が、その水の塊が私達に直撃する事は無く、叶が発動させた『プロテクション』の水版によって防がれた。

今回は丸い球体では無く半円のドーム形で足元はガラ空きだ。これは多分ミキータの噴射風が外に逃げる様気を使ってくれたのだと思う。

通常の『プロテクション』とは違い、なんだか降ってくる水を吸収して更に硬度を上げている様にも見えた。水に対して高い防御と吸収力がある防壁……多分、水だけじゃなく火とか電気バージョンもあるんだろうなぁ。

 

にしてもこの『噴火雨』とやらは一体何なんだろう?下は洪水みたいになってるし、ここはゾウの背なのに……。……ん?ゾウの背??

 

「まさか、水浴び……?」

 

「へぇ、頭の回転は王華より速そうですね」

 

『ちょっと叶!それ酷くない!?』

 

中で王華が何やら叫んでるけど無視しよう、うん。

ゾウの水浴びといってもこれだけ大きなゾウだからね……そりゃこんな規模にもなるか。でも、そんなの頻繁にされちゃ私達能力者からすればたまったもんじゃないけどね…。

 

 

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