ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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207『女好き、久々の一味集合!……ならず』

ワーニーというおっきなワニの手綱をワンダが握り、その背にルフィとキャロットが乗って進むのを空中組の私達が追う。

その際にワンダから噴火雨についての説明を聞いた所、やはりこれはゾウの水浴びらしく、頻度は1日に2度程度だそうだ。ちなみにゾウの名は“ズニーシャ”という。

 

雨は都市の中心にあるろ過装置で水路に流れ出て国中の生活用水に変わるし、一緒に魚も降ってくるから食料にも困らない。私達能力者にとっては脅威でもミンク族にとっては恵みの雨という訳だ。

 

「おーい麦わら達!おれこの森出られねーから、おれ達の事キャプテンに言ってここへ呼んでくれよ!」

 

「そうなのか?分かった!」

 

ベポは木と木を飛び移りながら移動している。クマだと思っていたけど猿とか、コアラとか……ううん、何のミンクなのか分からない…!

 

「ベポはここの生まれだけど「海賊」だから、今はこの森の親分“ネコまむしの旦那”の預かりになってるんだ!」

 

「へぇ、その辺はしっかり線引きしてるんだね」

 

「形だけかもしれないがな。海賊とはいえベポは同郷の仲間、部外者として扱うのは我らとしても本望ではない」

 

「良いな、それ」

 

ルフィはそれを聞いて満足そうだった。まぁそういうの好きだしね、うちの船長は。

 

やがて森を抜け、私が最初に物見櫓で見た町へとやって来た。

さっきの水浴び、噴火雨に順応しているだけあって水の引きは早く、ボロボロに崩壊した家屋や、バツの形をした磔台──所謂拷問具なども視界に入ってきた。

 

「……台だけではありません、そこを伝い流れ落ち、水の上からでも視認出来るだけの血の跡が地面に残っていますわ。……酷い拷問を受けた証拠です」

 

「流石だね、私には分かんないや」

 

「……イリス様の様に心が美しい方は知らなくて当然の事ですから。この知識は私が人では無かった時、実際に……その、“体験”して得た物ですので…」

 

「……そっか」

 

これもまた、シャルリアが乗り越えるべき試練だという訳だ。

でも、決して己の行いから目を逸らさない彼女は確かに強いとはいえ、震える体は抱き抱えてる私相手に隠せるものでもない。かといって私が変に口出しする事でもないだろうから、今はただシャルリアの心の負担を少しでも一緒に担げる様に強く抱き締めた。

 

「誰だっけ、さっき名前言ってたな…!この国襲った奴の…」

 

ルフィもこの惨状を見て思う事があるみたいで珍しく自分から質問していた。

 

「“ジャック”だ……!先日新聞に死亡記事が出ていた」

 

「死亡…?」

 

「ドフラミンゴを護送する4隻の軍艦を襲撃し、2隻を沈めたが返り討ちにあったと……!」

 

という事はそいつはドレスローザに来てたんだ。

……しまったなぁ、どこかですれ違ってたんだ。それ程に強くて凶悪な気配なら、あの時酔ってなければ気付けてたかもしれないよね。

あ、でも結局死んじゃったんだっけ……。

 

「大将や前元帥の乗る艦を襲うほど頭のネジが飛んでいる男だ…、記事では死亡確認は無し、多分まだ生きてる。私達は……ジャックを許さない!」

 

「死亡記事は出てるのに確認してないってどういう事?海とかに突き落としてそのまま放置してるとか、大規模広範囲攻撃でも頭上から降らせて一片も残ってないとか?」

 

「それは分からないが…1つだけ確かに言える事がある、ジャックという男はそう簡単に死ぬ様な奴ではないのだ。…その事は私達が良く知っている。──そろそろ着くぞ」

 

霧が深くなって来て、辺りの様子が目で見て取れなくなって来た。

……あれ、そういえば…。

 

「ねぇ、ゾロ達って私達の向かう場所知らないよね?大丈夫かな?」

 

「ゾロ達ならさっき森で会ったわ。丁度イリスがそのウサギの子を抱えて飛んでいった時ね」

 

あ、あの時ね。

その事を私に伝えようとはしたらしいんだけど、どうにもタイミングを見失っていたそうだ。実際そんな雰囲気でも無かったし仕方ないと思う。

で、肝心のゾロ達の動向だけど、それに関しても問題無いらしく行き先はワンダが伝えてくれていたみたい。

 

「シャンブルズ」

 

「お?」

 

噂をすればなんとやら、ローの能力で私達の目の前にゾロ達が転移してきた。え?実際は転移じゃなくて交換?何言ってるのか分からないよ王華。

足元の水も随分捌けてきたのでシャルリア達を降ろし私も歩く事にした。

 

「お前ら!どこ行ってたんだ?」

 

「「どこかに行ったのはてめェだろ!!!」」

 

フランキーとウソップがルフィへ突っ込みを入れた。まぁ何はともあれ侍組以外は揃ったし、あとはナミさん達と合流出来れば久し振りの一味全員集合だ!あー!早くナミさんに会いたい!

 

「にしてもここは霧が深ェなァ」

 

「と、遠くが見えねェのは危険だ!いつどこで誰に狙われてるか分からねェ…!よしイリス君、霧を晴らしてくれたまえ!!」

 

「え、やだ」

 

「即答かよ!!…で、でもよ〜、こうも辺りが見づらいと咄嗟の行動が出来なくねェか?お前の嫁も危ねェだろ、な?」

 

「大丈夫だよ、絶対守るから」

 

ウソップの希望通りに霧を晴らす事は出来るけど、それは止めておく事にした。

ナミさん達の場所へ私達を案内しているのだとしたら、今向かっている場所はミンク族の隠れ家みたいな所だろう。何やら恩人とまで言われているナミさん達をその辺で野宿させてるとは考えづらいし、住んでいた町はジャックによって破壊されてしまっている。だとしたらこの霧を払う訳にはいかないよね、ミンク族にとって姿を隠すのにうってつけのロケーションだし。

 

「着いたぞ、ここが目的地だ」

 

そういうワンダの視線の先には、霧で見えづらいけど薄らと門の様なものが見えた。その近くに強そうな気配が2人程居て、門の向こうからは沢山の気配を感じ取る事が出来……、っああ!?この気配は……!!ま、間違いない……っ!!

 

「ナミさんっ!!」

 

「おい待てイリス!いくらお前でも人嫌い集落に単身突っ込むのは危ねェぞ!!」

 

「大丈夫!!だってナミさんの気配を感じたし!!お、これはペローナちゃん!!」

 

他にもチョッパーが居るみたいだけど、どこか出歩いているのか近くにサンジやブルックの気配だけ感じ取れなかった。でもあの門を越えたらやっとナミさん達に会えるんだ!!ああ、興奮してきた!!

 

「叶!私先行くからミキータ達をよろしく!!とう!ちょっと失礼ッ!!」

 

「は…っ?ま、待て!入るのは構わないがそこには門番が……!」

 

何か聞こえるけど無視!この門の先にナミさんが居るんだ!ペローナちゃんが居るんだ!へへ〜、2人にはシャルリアの事を紹介してちゃんと知って欲しいし、モネやベビー5、それからレベッカちゃんとの話も聞いてほしい!!

 

「っ、ワンダ、侵入者か!?」

「止まれ!そガラ何者か!?」

 

「私?私の名前はイリス!!未来のハーレム女王なんでよろしくお願いしま────すっ!!」

 

流石にテンションが上がっているとはいえ、この状況で理不尽に門番である彼らを攻撃しようとは思わない。腰から剣を抜いたライオンっぽいミンクの攻撃を誘って、水平に薙ぎ払われた剣の上にタイミングよく足を乗せて場を作り大きく跳躍する。その勢いのまま宙を蹴って速度を増し、一瞬の出来事にぽかんとしているみんなにごめんなさいと手を合わせてその高い門を飛び越えた。

 

「おお……!」

 

その先の光景は外と違って霧も無く、森の中に何戸も家が建てられている、そんな圧巻のものだった。

家はなんだかパイナップルの形だし、巨大な木の根に巨大船が挟まってたりしてるけど、雰囲気で言えばエルフの里って感じかな?道が整備されてる訳でもないし、なんなら自然に出来る樹洞とは違って「自分達で木をくり抜いて作りました」みたいな木の中を加工する事で生活拠点としている家もある。

 

「イリスッ!!!」

 

「っ、ナミさん!!」

 

幾つもある家の中でもかなり豪華な造りになっている建物……というか木なんだけど、そこからナミさんが飛び出して私の元まで走ってきた。って、ええ!?何その服!?スレンダーラインのドレスっぽいけど、丈は足首までしかないしその太ももからさっくり開けてるスリットは何ですか!?えっちが過ぎるッ!!!

 

むぎゅ!と力強く抱き締めて胸に顔を埋めれば、なんと素晴らしき匂いだろうかと昇天しそうになる。ペローナちゃんとチョッパーも出てきたし……あれ?なんかぞろぞろと一杯出てきたけどどうしたのかな?まさか勝手に入ったから怒ってるとか……。

 

とかなんとか思っていると、背後の門が開いて外からルフィ達が入って来た。

叶は私を見るなり呆れた顔だが、シャルリアはナミさんを視界に納めるとどこか緊張した面持ちを見せていた。ナミさんは私の正妻だし、自身の過去に負い目があるシャルリアとしては最初の挨拶をどうするかとか考えてそう。

 

「皆の者!先立って門を飛び越えた者も含めて大切な客人達だ!大恩人達の仲間にもてなしの準備を!!」

 

ワンダがそう声を張り上げれば、家の中から次々に姿を現したミンク族達が『ガルチュ〜!!』と挨拶?をしてきた。

ようこそ麦わらの一味ー!

とか

そガラ達の仲間のお陰で助かったぜ!!

とか。

 

ミンク族は人嫌い。そう最初は言っていたローも驚愕の表情を浮かべている。ていうかロー、あなたは仲間にあれだけ人懐っこそうなミンク族が居るじゃん!!

 

「あれ〜!?なんだ!?明るい雰囲気だぞ!!ガルチュー!」

 

「ナミ達も元気そうで何よりだぜ!いやァ、お前らが無事で本当に良かった!にしてもこりゃどういう事だ?ミンク族は人嫌いな種族の筈だろ?」

 

「種族か…、それは他のミンクを知らぬ者達の怯えかもな、私達から見ればゆティアらは毛の少ない“サルのミンク”、同族の一種だ。嫌うなら個々を判断する」

 

へぇ…“他のミンク”って言い方が気になるけど、まぁ今は良いか。

なんたって今はナミさんの胸の中だし!ああ、嬉しすぎて体が震えて来ちゃった!……ん?いや、これ震えてるのナミさんじゃん!

 

「イリス……ルフィ、みんなも、ごめん……!」

 

「え?ナミさん、一体どうしたの……?」

 

歓迎ムードで明るい雰囲気の周りとは対照的に私の心はスッと冷たくなっていく。だって……ナミさんが泣いてる。

更に強く抱き締めて背中を撫で続けて数分、ナミさんは落ち着きを取り戻して口をゆっくりと開いた。

 

「サンジ君が……!!」

 

 




ホールケーキアイランドももうそろそろですね。

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