ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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210『女好き、くじらの森への道すがら』

錦えもんとモモの助もブルックとキャロットの案内でここへと辿り着き、積もる話などは後回しにして早速本題の“雷ぞう”の件を錦えもんがイヌアラシに尋ねた。

真剣な話なのでイヌアラシもキリッとしているのだけど、どうもブルックのボーンな体が気になるらしく、表情とは裏腹に涎を垂らしている。どうやらワンダも同じ様にブルックに興味を惹かれているみたいなので、犬のミンクは総じてブルックを気に入るのかもしれない。

私もにんじんぬいぐるみとか全身に着ればキャロットに気に入られるのでは?ははん、私、さては天才か。

 

「雷ぞう殿は無事だ。今すぐにでも案内したい所だが、もうじき日も沈む。急いでいるのは承知しているが、あそこは視界不良で通るのは危険だ」

 

「むゥ…」

 

「なら、今夜はとりあえずネコマムシの旦那に会いに行きましょう。雷ぞうに会うのは明日の朝、その方があなたも都合が良いのでは?」

 

「…その通り。実はそれがし、隠してはいたが疲れているのでござる。そこな女には気付かれてしまった様だが」

 

……まただ。なんか叶、カン十郎に良くちょっかいを掛けている。実はこの2人会ったことあるとか?もしくは……原作知識があるからこそ、叶にとってカン十郎を気にかける必要があるとか。

まぁいっか、分からない事をうんうん唸っても正解が出てくる訳じゃないし。なんだっけ、下手な考え休むに似たり、だったかな。

 

『え、なにその言葉』

 

本で読んだんだよね、ナミさんの測量室って測量に必要なモノだけじゃなくて、本とか結構置かれてるから。

 

『そ、そんな……』

 

ふふん、同じアホでも私は向上心のあるアホなのさ!

 

「じゃあそのネコマムシってミンクの所に行く道すがらにでも話してくれる?サンジがどうこうってやつ」

 

「そうね、分かった」

 

落ち込む王華はスルーして話を次に進める。

イヌアラシは着いてくるのかな?ていってもその重傷体ではキツイか。

……ん?ていうかイヌアラシ、寝てない?

 

「ああ、そうか、もう午後6時を回っているのか」

 

「まだ6時だろ!子供か!」

 

納得した様に頷くワンダにウソップがツッコミを入れる。そこへ、またしても自重を忘れた魔女さんが口を開いた。

 

「正式な国の王はイヌアラシ公爵ですけど、ネコマムシの旦那にも同等の権利があるんですよ。ネコマムシの一族は代々“くじらの森”の守護を務めていまして…あ、くじらの森っていうのはさっきルフィが突撃していた森の事です」

 

「……ほ、本当に味方なんだろうな?幾らなんでも外の者にしては詳し過ぎるとしか…」

 

「いいえ、“外”の者だからこそ詳しいんですよ。まぁ、“外”の次元は文字通り違いますけど。話を戻しますが、イヌアラシ公爵とネコマムシの旦那はとても仲が悪いんです。昔は親友だったそうですけど、今では顔を合わせると殺し合いにまで発展してしまうとか。そうなっても力は互角で決着がつかないから2人はルールを決めました。それこそがこのミンク族の生活サイクルを形作っているモノです」

 

叶さん、ウキウキである。原作知識を披露するのを明らかに楽しんでるよねこの人。私がワンダやイヌアラシの立場なら全力で叶を警戒するってくらい饒舌に語っちゃって、実際ワンダに至っては諦めたのか遠い目をしている始末。

 

「なるほどな、ホロホロ、その生活サイクルがこの時間にデカ犬が寝た事と関係あるって訳か」

 

「はい。『太陽と共に朝6時から夕方6時まで』、そして『月と共に夕方6時から朝6時まで』、喧嘩ばかりの2人が考えついた苦肉の策で、生活時間を分割して暮らす様になったんです」

 

「それはなんというか、随分と仲の良い喧嘩だね」

 

顔を合わせるのは嫌だけど、離れるのも嫌だって事でしょ?話を聞く限りでは当人達は否定しそうだけどさ。

 

そしてそれは当人だけではなく、ミンク族全体にも影響を及ぼしているとか。例えばイヌアラシの部下であるシシリアンやチョッパーと共にいた医者達だけど、彼らもイヌアラシと同じく今は夢の中だ。ワンダが普通に起きてる理由は、彼女が「王の鳥」という昼夜問わず2人の王の間を行き来する役割を担っているかららしい。因みにキャロットも王の鳥なんだとか。

 

 

寝ているイヌアラシを起こさない様に療養所を出て、私達はネコマムシの旦那の元へワンダとキャロットがそれぞれ手綱を引くワーニーに乗って向かい始めた。目的地はくじらの森で、その場所の守護者なんだから当然といえば当然である。

すぐに寝ちゃったからイヌアラシとはあんまり話せなくてとんぼ帰りみたいになっちゃったなぁ。

 

「サンジの話っつっても、あいつが変な手紙残してビッグマムの所へ行ったって事くらいじゃねェのか」

 

初めに口を開いたのは意外にもペローナちゃんで、どう話すべきか考えているのか顎を摘んで斜め上を見上げている。可愛い。可愛すぎて不意打ちちゅーしてやったぜ。叩かれたけど!!

 

「変な手紙ってなんだ?」

 

「順を追って説明するわね。まず私達がゾウに上陸した時には既にシーザーの作った毒ガスが辺り一面に蔓延していたのよ。磔にされたイヌアラシやネコマムシ達も居て、この地の毒を中和させた後はとにかく急いでミンク族達の治療をしたわ」

 

「ゆティア達には本当に何度感謝してもし切れない、あの時私達は心から絶望し、生を諦めていたのだ。本当にありがとう」

 

「またそれ?流石に死にかけてる誰かを見捨てられる訳ないじゃない。それに、無償の奉仕が気になるのなら心配しないで?打算で助けたって面もあるから。あんたもそうだけど、キャロットも可愛いでしょ?そういう子達が死んでしまえば落ち込む主人が居るのよ」

 

「……フフ、どっちにしても私達にとっては無償の奉仕と変わらないな。ゆティアの主人とやらにも是非会ってみたい」

 

ここに居るんだけどね!

声高らかに「その主人私です!」って言いたいけど、今はサンジの話が優先だから自己顕示欲さんには引っ込んでおいて貰った。

 

「おれ達が歓迎された理由は良く分かったな」

 

「それにチョッパーが居たのも幸運だったね、仮にそこに居たのが私なら、ジャックはブッ飛ばせてもあなた達は救えなかったし」

 

「そうか…天運にも助けられたか。だが、ジャックを倒すのは容易では無いぞ。悪い事は言わない、仮にこの先の船旅で出くわす事になったとしても逃げた方が身の為だ」

 

「ですが、ジャックは『死亡記事』が…」

 

ブルックの当然の問いにワンダは力無く首を横に振った。実際にその意思ある邪悪な災害を目の当たりにした彼女にとっては、死亡未確認の死亡記事などただの紙切にも等しい。

 

「まぁ、ジャックの事は見つけたら殴っておくよ、再起不能ってとこまでは持っていくから安心してね」

 

「安心出来るか!戦うのはやめた方が良い!この国の2人の王ですら奴を倒す事は叶わなかったのだぞ!」

 

そう言われても、そんな危ない奴を放置するのもね。もしかしたら私の嫁や、今後嫁になってくれる人達を傷付けるかもしれないし。

 

「それで、サンジはどうなったんだ?この国の連中を助けた時はまだサンジもシーザーも居たって事だろ?」

 

「…この出来事、実はこの国の人々にはあまり話してないのです」

 

ウソップの続きを催促する言葉にブルックがそう前置きする。国を滅ぼされた人達にこれ以上心労を掛けたく無かったのだと言うが…一体何が起きたのだろう。

 

「これは、こっそりと起きた大事件…!たった2日前の出来事…どうか覚悟してお聞き下さい、サンジさんはもしかしたらもう……私達の下には、戻って来ないかも知れません……」

 

「え?」

 

「えええ!!?」

 

いきなりの事に理解が追い付かず思わずぽつりと声を漏らす私と、大きく驚愕の声を上げるルフィ。

 

…ナミさん、ウソップ、ロビン、それから私に続いて今度はサンジか。何が起きたのかは今から話してくれるし、それを聞いてから今後の動きを決めるとして、その話がどんな内容であれサンジを連れ戻すのは確定しているけど。

 

「ここは“幻の島”、島自体が生物である為に記録指針(ログポース)でも辿り着けず、普通なら見つける事も出来ない場所。──ですが我々には“失態”と“盲点”がありました…!」

 

「失態と、盲点?」

 

「はい。完全に引き離した“ビッグ・マム”の艦に目的地を聞かれてしまった事。…そしてその艦に、“幻の島”の「出身者」が居た事……!」

 

「……!!」

 

つまり、2日前の出来事っていうのは……この地にビッグ・マム海賊団が降り立った事か…!そりゃあ、そんな話を疲労困憊なこの国の住民に話せる訳も無いだろう。

 

 

この地にやってきたビッグ・マムの勢力は、意外な事に2人だけだった。1人はペコムズ、魚人島でタマゴ男爵と一緒にいたカメライオン。そしてもう1人が“カポネ・ギャングベッジ”、あの最悪の世代のメンバーだった。

あの、とか他人事みたいに言ってるけど、知っての通り私も最悪の世代だけどね。ルフィもゾロも、それにナミさんも。

 

ペコムズは最初、国の悲惨な姿を目にした時に麦わらの一味の仕業だと勘違いしていたらしいけど、ミンク族の説明でナミさん達とペコムズが敵対する様な事態にはならなかったそうだ。てっぺんがあんなお菓子狂いでもペコムズには故郷を思いやる気持ちがあるみたいで、私の中で彼の評価が勝手に上がって行く。

 

勝手に私からの評価が上がったペコムズは、その後ベッジと共に“ビッグ・マム”の指令を伝える為にサンジ達を人目のつかない森の中へと誘い、あまりにも襲われるシチュエーションだったが為に警戒しまくりだったサンジ達ですら拍子抜けする様な行動に出た。

簡単な話、麦わらの一味に恩が出来たからビッグ・マムの指令は無視をするとの事で、シーザーの身柄さえ渡してくれれば構わないと言う。

 

「そこで彼が語ったのは、ビッグ・マムからの指令は1つだけではないということ。元々シーザーを捕獲しようとしたのは()()()に過ぎなかったのです」

 

「率直に言うが、ビッグ・マムの目的はサンジを取り込む事だ。なんで四皇がアイツを狙ってるのかってのは分からねェ…だが、アイツにも事情がありそうに見えたな」

 

「つまりペローナちゃんはサンジが心配って事?流石私のゴーストプリンセスは可愛いね!」

 

「特ホロォ!!」

 

「おおオイやめろお前ら!おれ達までフッ飛んじまうだろ!!」

 

飛んできたホロウは掴んで遠くに投げ飛ばし爆発させました。

 

……でも、ビッグ・マムがサンジをねぇ……。

もしかして、手配書が生捕のみになっていたのってこれが原因……?政府の出す手配書にまで介入出来るって、それはもう海賊としての域を超えてるよね??

 

 


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