ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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216『女好き、くじらの木の中へ』

「……んぁ……」

 

ぱちり、目を覚ます。隣では乱れた髪のままのナミさんが、私が最後の理性を振り絞って被せた布団にくるまって、私の腕に額をぴったりとくっつけて愛らしく寝息を立てていた。

 

───なんというか、やり過ぎた……。

 

思わず1人大きなため息を吐いてしまった。窓から差し込む朝日は随分と高くなっているから、恐らく今は昼前くらいだろう、最早朝日ではない。何が言いたいかというと、そんな時間まで私は寝ていて、更にナミさんはまだ起きてすらいないという事で。

普段、ナミさんは私よりずっと早く起きて測量室に籠もり、夢である世界地図を完成させる為に机の上に広げた海図と睨めっこをしている。

つまり、昨晩はそれ程“やり過ぎた”という事である。

 

まぁ、ナミさんが気絶したのが確か段々明るくなってきた時だったし。むしろその事を考慮するなら早起きだと取れなくもない、よね?うん。

 

「……ほんと、可愛かったなぁ」

 

形勢逆転なんて事はただの1度も起きず、ずっと私のターンだった事もあって最後の方のナミさんはなんというか……いつもの余裕がない、冷静さを欠いている感じ?そりゃあね?そんな嫁の姿を見せられたら私だって収まりが効かなくなりますとも。しかも昨晩に関しては意図的に理性を取っ払ってた訳だから余計止まらなくなってしまい、そのせいでナミさんが意識を失った後も私は俄然やる気もりもりだったのだけれども。

 

少し手を動かし、私の腕にくっつくナミさんの前髪を梳かす様に撫でる。サラサラで、私のものと比べてもずっと綺麗で絹の様なソレは本当にずっと触っていられそうだ。ナミさんから言わせれば私の髪の方が綺麗だとの事だけどそんな事は絶対にあり得ない。……なんて、相手の事を1番に思う私達じゃあこの話題は平行線だと結論が出てるんだけどね。

 

「ん……」

 

そうしていれば、流石にナミさんも目を覚ましたのかゆっくりと瞼を持ち上げて、

 

「じゃ、失礼して」

 

「……んぅ」

 

まだ寝ぼけ眼なその唇に、挨拶代わりにと軽く口付けを落とした。

別に私としては構わないけど、昨晩に続いて今日までナミさんの体を酷使する訳にもいかないので盛り上がり過ぎない様過度な触れ合いは謹んでおかなければ。

 

「おはよ、ナミさん」

 

「……おはよう、イリス」

 

起きて早々『不機嫌』だと主張する様にジト目で睨まれるけど、これに関してはスルーさせて貰う。呼び方が元に戻っているからなんだろうけど、私の欲の為にも普段は“さん付け”のままで行こうと思ってるし。

 

「もう11時くらいかな?湯船は張れてないけどお風呂入る?」

 

「ええ、何故だか私が最後に記憶しているよりもずっと“痕”が増えている事だし、ね」

 

またしてもジト目で見られるも、それに関して私は絶対に謝罪しないと決めているのだ。

 

「言っておくけど、それはナミさんが魅力的なのが悪いのであって私のせいじゃないからね」

 

「気絶した後の嫁の体を好きにしておいて?」

 

「うん?ナミさんは私のモノなんだから、それは私の権利でしょ?」

 

「それはそうね。そもそも私はあんたに好き勝手されるのは嫌じゃないから」

 

「はは、随分と私に都合の良い女になっているって自覚ある?」

 

「あんたこそ、私をそうさせたのは他ならぬあんた自身だって自覚はあるの?」

 

私が何をやっても肯定し、身も心も全てを私に委ね、好き勝手に弄ばれようとも幸福を覚える。しかもそうさせたのは私で……うん、ナミさんや他の嫁達には悪いけど、なんだか凄く良い気持ちだ。

 

「本当の事を言っちゃうと、あんたの“好き勝手”の中に私達が嫌がる様な事が含まれないって言うのが真実なのだけど」

 

「じゃあ、ナミさんが私にされて嫌なことって何があるの?」

 

「そうね……みかんの木を伐採されるとか、海図を捨てられるとか?」

 

「なるほど、それは確かに私の“好き勝手”には含まれないね」

 

 

なんて事を話した後で2人揃って浴室まで向かい、お互いの体を洗い合って昨晩生まれた汗などのベタつきを落としていく。その際ついついスイッチが入りそうになったけど、それはなんとか押し込めて無心で手を動かした。

 

体を洗い終え着替えている間も、いちいちナミさんのぽよんが揺れているものだからそこに視線が行ってしまい、頭をブンブンと振って煩悩退散を図る。

 

……ダメダメ!昨日の刺激が強すぎて忘れられないって!意識するでしょこんなの!

とにかくみんなの元へ帰る為にもまずは一旦この煩悩を何とかしないと……!

 

「……はぁ、好きにするんじゃなかったの?」

 

「うぇ?」

 

色々と我慢していた私の手の平に、唐突に何か柔らかいモノが押し当てられた。というか、ぽよんですね……ナミさんの。

私が我慢しているのに気付いていたのか、準備万端とばかりに下着を付けていないっぽいし……。

 

ま、まぁ?嫁にここまでさせておいて何もしないって、主人としてはどうなの?って感じだし?あれだよあれ、据え膳?うん、それ。

 

「……また風呂行こっか」

 

「ええ、お手柔らかに頼むわね」

 

着替えたばかりの服をすぐに汚すのは気が引けたので、2人で服を脱いでまた浴室まで戻っていった。

 

余談だけど、全然お手柔らかに出来なくて結局4時間は浴室に篭りっぱなしだった。

サニー号を出たのも15時を回ってて、みんなと合流する予定の時間を大幅に遅れる結果となった……けど、それもこれも全部ナミさんが可愛いのが悪いと思う。

 

 

 

***

 

 

 

「あれ、みんなどこ行ったんだろ?」

 

ナミさんとイチャイチャした後、私達は俠客団(ガーディアンズ)の居住区に足を運んだ。

でもルフィ達は居ないみたいで、仕方なく見聞色の効果を最大まで広げて探そうとした時、療養所からシャルリアが駆け寄ってくるのが見えたので一旦中断する。

 

「イリス様、ナミ様、お待ちしておりました、他の皆様の元へご案内致します」

 

「ん?みんなどこか行ってるの?」

 

「はい、“雷ぞう”という方に会いに行っております。そちらにお見えになる『くじらの木』にて匿っているとか」

 

このくじらの形をした巨大な木の中に隠してたって事か。

確かにその場所に絞って見聞色で探ったらみんなの反応を感じる事が出来たけど、どうやって入るんだろ、このくじら木の中。

 

「どうやらあの木の『尾』部分に隠し扉があるらしいのですが、後発のイリス様にも分かりやすい様に目印をすると仰っておりましたので迷う事は無いかと」

 

「あ、そうなんだ。ごめんね、私達の為に待たせちゃって」

 

「謝罪などお止め下さい。私はイリス様の『お嫁』ではありますが、同時に『王』である貴女様の忠実なる『臣下』でもあります。あなた様を待つという行為が苦になろう筈も御座いませんので」

 

「じゃあ、王としてシャルリアに謝罪させろって命令すればいいのかな?」

 

そう言うと目に見えて狼狽えだしたシャルリアが可愛くてつい吹き出してしまった。あたふたしている彼女を見ると何故かほっこりするんだよね……ギャップかな?

 

「王とか臣下とかはあんまり考えなくていいよ、あなたは私の大切な嫁、重要なのはそこでしょ?」

 

「……ナミ様」

 

「諦めなさいシャルリア、こういう所はルフィに似てんのよ、何を言ったって意見を変えたりはしないわ」

 

私と正妻であるナミさんの意見が同じである以上、シャルリアは何も言えなくなったのか恭しく頭を下げた。でもシャルリアだって私の事を考えてそう言ってくれた訳だし、否定しただけで終わるのも悪いよね。

 

「臣下として扱う事は出来ないけど、シャルリアの言う様に私達の間には明確な“上下関係”があるって教えてあげようか?今夜、ベッドの上で」

 

「!!……はい、是非お願い致します」

 

この場合での上下関係とは即ちタチネコの事だけど、細かい事は良いよね!シャルリアも嬉しそうだし。

それに、私とそういうコトをするのが幸福だと思ってくれてる時点で、私は凄く幸せ者だと実感出来る。今でこそ当たり前の様にキスとか色々出来るけど、普通はそういう訳にもいかないし。

 

 

今夜の楽しみが出来た後、私達はシャルリアの言葉通りにくじらの木の尾までやって来ていた。歩きで向かうのは骨なので私が2人を抱えてひとっ飛びしたのだ。

で、シャルリアが言っていた様に隠し扉があり、その近くを眩い火の玉が飛び回って目印となっていた。私達が近付けばその玉は扉の中へと入っていって薄暗い内部の灯りを担当してくれる様だ。

 

「叶の魔法かな、相変わらず汎用性が狂ってるというか…」

 

私達に反応して行動パターンを変える火の玉って何?そういう風にプログラムする事も可能って事なのか、はたまた叶が見聞色で気配を察知してそういう風に変更したのか。私の読みでは前者だと思うけどね、だって叶だし。

 

「ミンク族は木の内部を加工するのが得意な種族だとは思っていましたが、この様な高所ですらも問題なく加工出来るのは素晴らしいですね」

 

「木の枝の中をトンネル型の通路にしちゃうくらいだし、自然を利用した技術が優れてるみたいだよね」

 

今も隠し扉を潜ってからというもの結構な長さの階段を降りてるけどまだまだ先が見えないし、その上この階段自体もかなり広く作られている。恐らくは大きい体躯のミンク族が数人通っても問題ないくらいの広さにしてあるんだろうけど、それだけにミンク族の技術力の高さが窺えるというものだ。

 

長く続く階段をナミさんとシャルリアに気を配りながら降りていけば、やがてかなりの広さがある空間へと辿り着いた。みんなも居るみたいで良かった…けど、奥の壁に描かれてる変な模様はなんだろ?……あ、その下にあるの、もしかして歴史の本文(ポーネグリフ)!?なんか真っ赤だけど……。

 

「ごめんみんな、お待たせ」

 

「キャハっ、気にしないでイリスちゃん!……んん?イリスちゃん、ちょっと雰囲気変わった?」

 

「あら、本当ね。何かあったのかしら?」

 

「……」

 

あれー、まだ何も言ってない筈なんだけどなーー!!

ミキータやロビンだけでなく、何も言ってはいないけど私を半目で睨んでるペローナちゃんにも気付かれてるんだろうなー!!

何が変わったって、そりゃあもうベッドに入ればすぐ分かる事だけど、今は敢えてスルーさせて貰おう。多人数の前で言う事でもないし。

 

「なんで気づいたのかはともかく、その話はまた夜ね。ところでそっちの初めて見る顔が雷ぞう?」

 

「すげーぞイリス!雷ぞうは忍者で、増えて消えて手裏剣なんだ!!」

 

「とりあえずルフィが興奮してるのは分かった」

 

ルフィでなくとも実際に忍者なんて見たら興奮しちゃうだろうけど。でもなんか雷ぞうって言っちゃなんだけど忍者っぽくない…よね?誇張抜きで二頭身だし、素早い動きとか出来なさそうなんだけど。

 

「あ、叶、火の玉ありがとう。お陰で助かったよ」

 

「いえ、気にしないで下さい。それよりもイリス達が居なかった間に色んな情報が出てきましたよ、聞きますか?」

 

「うん、お願い」

 

昨晩から今日のおやつ頃までずっと居なかった訳だからね。

奥の真っ赤な歴史の本文(ポーネグリフ)も気になるし、ここはじっくり聞いておく事にしよう。

 

 


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