サンジ奪還組である私達がワノ国へ到達する為の手段として錦えもんのビブルカードを受け取っているが、それ以外の連絡手段、例えば電伝虫などを錦えもん達が持っていないという話になり、急遽
作るのは簡単だと言っていたが、それを簡単と言ってしまえるフランキーの技術は一体どうなっているのか……。いや、ビームとか撃ってる時点で相当だけども。
で、叶が言っていた様にミンク族からペドロが正式にサンジ奪還組に加わる事となった。何やらペコムズが居るからペドロをつけるって話だけど、その辺はよくわかんないし追求する程でも無いからスルーしておく。
「おっとそうだった、これ、今朝漸く完成したんだ!別行動になるから忘れねェ内に渡しとくよ」
「わぁ、ウソップ、ありがとう!」
何やら思い出した様に自分の鞄を漁り出したウソップが、それをそっと手に乗せてナミさんに渡す。
「おっと、握る際には気を付けろよ?そいつは僅かな力加減で自在に伸縮する新しい“
「ふぅん、こうかしら?」
くるん、とナミさんがバトンの様に
一応周りに気を遣ってか小規模な雷に留めているけど、ナミさん程天候を知り尽くした人が持つのにこの武器程怖い物はない。
「持ち易いし回し易い……流石ウソップね、これこそがウェザリアの天候科学の集大成、私の求めてた
「いやいや!それで、材料費なんだが……」
「
「逃げんなーーー!!!」
コントかな?
しかもナミさんの事だから、この話は上手いこと流して結局材料費は出さないんだろうなぁ。本当に可愛い。
そうやって各々準備しながら待っている事少し、ゾウの治療からチョッパーやミンク族の医者達が戻って来た。
待ち切れないルフィに急かされながらもチョッパーは今後もゾウの治療を継続していく旨をしっかりと伝え、私達は最初にこの地へとやってきた正門へと足を運ぶ。
「よっし、みんな荷物は持った?」
「おう!飯持った!」
うん、ルフィはまぁ、カバンから溢れそうになってる肉を見ればなんとなく分かるよ!
……あと、私の背負うリュックにこっそりと潜り込んで来た“この子”も。
「じゃあワンダ、ちょっと借りてくね」
「ん?ペドロの事か?それならば私に言わずとも……」
「ペドロの事じゃないよ。ま、私が責任を持って面倒見るから心配はしないであげて」
そう言うと、私に気付かれている事に気付いたのかリュックの中身が軽く揺れた。
まぁ、勿体ぶらずに言っちゃえばキャロットなんだけどね。私としてもついて来てくれるのならその方が良い。だって嫁にしたいし。
「じゃあ、行ってくる!ロビン、ミキータ、出来るだけ早くそっち行ける様に頑張るね!」
「ええ、イリスも無理はしないで」
「何かあったら飛んでいくわ!その時は名前を呼んで!」
はは……ミキータの場合だと、本当に名前を呼んだら来てくれそうなのがね……。
後心配なのはカン十郎だけど……。
「イリス殿、拙者達も覚悟は決めている、カン十郎が誰であろうと、拙者達はカン十郎を信じるでござる」
「へぇ、カッコいいじゃん、でも、そこまで言い切った挙句背後から刺されるなんて事はやめてよね」
「その時はその時でござる」
……良くその状況で笑えるもんだよね、ほんと、一体どれだけのモノを背負ってるんだか。
「じゃあ叶、よろしく」
「全く、私は便利屋ではないんですけどね。……『ウインド』」
ふわり、とペローナちゃんを抱く私、ナミさん、シャルリア、それから術者である叶が浮かび上がり、ゾウの上からサニー号の元へと降り始めた。
それを見たルフィも慌てて腕を伸ばしてチョッパーやブルック達を抱き込み、トン、とゾウから飛び降りてくる。おー、すんごい高所からの紐なしバンジーだ、チョッパーもブルックもペドロも口から魂抜けてて面白い。いや、本当は笑ってる場合じゃないんだろうけど!
***
ホールケーキアイランド ホールケーキ城『謁見の間』。
普通ならば玉座があるであろう周りよりも高い床の上には、常人では上るのにすら苦労しそうな程大きなベッドが置かれ、その上には巨大なベッドに見合う程の巨体の主が寝転がっている。
そんな巨体を前にして、『侵入者』は怯えるでも無く薄く笑みを浮かべている。謁見の間ではあるが膝を付かず、頭も垂れず、あくまでも大胆不敵な態度を崩さない。
素人が見ても一目で分かる程質の良い赤絨毯を我が物顔で歩き、傍に配下を数人引き連れた女は、不遜な表情を崩さずに口を開いた。
「初めまして、『四皇ビッグ・マム』。早速だけれど、私の駒になって貰えるかしら?」
「……オレを前にして、大層な妄言を吐くじゃねェか、『狂神』……!!」
視覚化される程の“覇王色”が『狂神』に対して吹き付けられようと、彼女は涼しい顔をして目を細めただけだ。まるで、気持ちの良い風が頬を撫でた──程度の反応。
「……『狂神』レイ、ここは俺達のホーム、つまり、貴様は敵地のど真ん中に居るって訳だが……それが何を意味するか分からねェ程狂ってる訳じゃねェだろう?ペロリン」
「ゼハハハハ!!てめェらこそ分かってねェな!逆を言えば俺達は今、敵地のど真ん中まで辿り着いているんだぜェ?」
「阿呆が、この部屋に大将と重鎮が揃い踏みしているんだ、誘導されただけに過ぎん」
シャーロット家の長男であるペロスペローの言葉に、無精髭の小汚い男が得意気に返す。それを隣に立っていた紳士“風”の男が手の平でメガネの位置を調節しながら呆れた声で正した。
「駒と言っても、私の配下につけという意味ではないわ。ただ、良い様に操られて欲しいだけなのよ。それも、別にあなたじゃなくてもいい。そこに居る『ペロスペロー』でも、『カタクリ』でも、『スムージー』でも良いわ。もっと言えば、彼らでなくともあなたの配下ならば誰でも良いのだけど……私としては、出来るだけ素体が良い方が有難いのよ」
普段のビッグ・マムならば、この様な態度を取る者は誰であろうと攻撃の対象になる。が、戦いの火蓋を切れば恐らく双方ともかなりの被害を受ける事となるだろう。近くに大事な“お茶会”が控えている事もあって、長く続くと思われる戦いを起こす訳にも行かないのだ。
だからと言って、素直にハイそうですかと受ける事が出来る筈も無いが。
「誰でも良いってのかい?それならオレの子供達じゃなくとも、お前の部下でも使えば良いじゃねェか」
「駄目、私達の誰を操った所でレイの目的は完遂されない」
『狂神』に代わり、傍に控える金髪の女が同じく不遜な態度で答えた。
「……」
その姿を、狂神側の最後の1人である赤髪の少女が虚な瞳で捉えている事には気付かない。
「これから先、あなた達の元に巨大な脅威が訪れるわ。恐らく、このままだとあなた達は壊滅ね。その展開も上々に盛り上がりそうだけれど、入州さんへの嫌がらせとしては物足りないのよ」
「あァ?」
「要は、能力の向上を手伝ってあげるの。あなた達の誰かのステータスを大幅に上昇させてあげる代わりに、これから来る『侵入者』へその力をぶつけて欲しい。拒否するもしないも自由だけれど、良い返事を貰えないと癇癪を起こすわよ?」
「それは自由とは言わねェよ、小娘。……だが、聞けば悪くねェ話じゃねェか。その能力向上とやらは眠っている力にも影響を与える事は出来るのか?」
ビッグ・マムがそう問いかけても『狂神』は答えない。彼女は常に一方通行、言いたい事を言うだけで相手の言葉に耳を傾けたりなどはしない。常にそうという訳ではないが、今はそういう気分だというだけの話である。
代わりに、金髪の女が口を開く。
「可能」
「……マ〜ママ〜マ、そうか、それは良い事を聞いた!良いぜ、誰でも良い、そうだな?」
「ええ」
「だったら────」
ここに、決して表沙汰に出る事は無い取引が1つ成立された。
大きな野望につけ込んだ悪意は、近い内にこの地を訪れる『海賊達』へと牙を剥く事となるが……種を仕込んだ狂気の神は、ただただ愉快に顔を染めるのみであった。
***
「こちょこちょ〜」
「あふっ、ひっ、んふっ!」
「ここかぁ〜??ほれほれ〜!」
「きゃんっ、や、やめっ、ぁっ!」
「たまらん!!」
どうも、うさ耳っ娘にこちょこちょ中、幸せ真っ只中のイリスです!
尻尾の付け根に耳の中、勝手について来た罰、という建前の元触りまくれる至福の一時!
「ほーらこちょこちょ、おっとこっちもこちょこ……」
「オイ、いつまで遊んでんだ」
「ぐぇ」
こちょこちょする為に一回降りて貰ったペローナちゃんの限界が来てしまったみたいだ……!どこにそんな力があるのか、首根っこを掴まれて引き摺られて行く、多分寝室まで。
こうなったら止められそうも無いし、そもそも止める気もないのでナミさんにアイコンタクトで『後はよろしく!』とウインクを飛ばしておいた。同時に、シャルリアには着いてくる様に合図を送る。
そうして私達は3人で寝室まで足を運び──と言っても私は引き摺られていたんだけど──明かりの無い真っ暗な部屋の中、いつもの感覚だけでベッドまで辿り着いた。
「は……?」
「きゃっ……!」
と同時に、唐突に起き上がってペローナちゃんとシャルリアをベッドに突き倒した。そして、2人の体を踏まない様に四つん這いのまま覆い被さって暗闇耐性を強化する。
ペローナちゃんは何が起こったのか理解していない顔で、シャルリアは顔を赤くして狼狽えているみたいだった。
「外はまだ明るいけど……明日の朝までは寝かせないから」
ナミさんを散々鳴かせたシラフで攻め攻めな私……いざ参る!!