ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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21『女好き、禁断の恋に憧れる』

「ありがと、次は新聞と一緒に美人でも運んできてよ」

 

チャリン、と新聞配達の鳥に金を渡す。

ナミさんが正式に仲間に加わってから…そして私達にとって大事な初夜から数日、元々仲間みたいな感じだったから馴染むも何も最初からそこにいるのが当たり前だったかのようにナミさんは自然と一味に溶け込んだ。

 

「はいナミさん、新聞」

 

「ありがとうイリス。ていうかあんたいつまで私のことナミさんって言うのよ、する事したでしょ」

 

「いやー…」

 

ずっと呼んでたら今更変えるのが恥ずかしいと言いますか…。

 

私とナミさんは晴れて夫婦、恋人より更に上のランクへとアップしたのだ。

もともと恋人では無かったとか、そんなこと言わない!

 

そんなナミさんが来て変化があったことといえば、やはりメリー号の一角にみかん畑が出来たことだろうか。

流石に船の上なので大量にあるわけでは無いが、それでも4本は木が生えてる。時々ルフィが手を伸ばしては警備してるサンジが止めている光景を見ることができるぞ!

 

「ルフィは何だか嬉しそうだね」

 

「おう!あともうちょっとで偉大なる航路(グランドライン)だからな!」

 

もうそんな所かー…。

 

「ん?」

 

そんな時、ナミさんが日傘の下でビーチチェアに座って読んでいた新聞からチラシが二枚落ちてきた。

なんかこんな紙どっかで見たことあるな……って。

 

「「あああああっ!?」」

 

ルフィと私が叫ぶ。

どっかで見たことあるとか言ってる場合じゃない…これ、手配書だ!!

 

“麦わら”モンキー・D・ルフィ『3000万ベリー』

 

“女好き”イリス『3000万ベリー』

 

「おおお、ルフィと一緒だ!!」

 

「アーロンを倒したからね、ルフィは今までの実績もあるし、そんな奴の船長だからってとこかしら」

 

「それにしてもお前らなんでこんな笑ってる写真ばっかなんだ」

 

ウソップが言うように、手配書の写真はルフィの場合カメラに向かって手を広げて笑ってるドアップだ。ウソップの後頭部が見えてるのもポイントが高い。

 

私の場合はナミさんに抱きついてる写真かな。笑顔は笑顔だけどなんか下心を感じる…いや実際ナミさんに抱きついてる時は下心100%であります、はい。

 

「はっはっはっは!やったなイリス!」

 

「ね、何か有名になった!って感じ」

 

「あんたら、また見事に事の深刻さがわかってないのね…。これは命を狙われるってことなのよ!?この額ならきっと“本部”も動くし、強い賞金稼ぎにも狙われるし…」

 

「ナミさんは何があっても私が守るよ!」

 

「またナミさんって…まぁ、最初は敬語だったし…進歩はしてるか」

 

私だって色々頑張っているのです。

 

「おい、何か島が見えるぞ?」

 

「んー?」

 

ゾロが指差す方向を見ると、確かに島があった。

 

「見えたか…、あの島が見えたってことは、いよいよ“ 偉大なる航路(グランドライン)”に近付いて来たのね」

 

「おー、ルフィ聞いた!?」

 

「おう!」

 

ナミさんの説明によると、その島には『ローグタウン』という有名な町があるらしい。

別名は“始まりと終わりの町”。何故そう言うのか、それはかつての海賊王ゴールド・ロジャーが生まれ、そして処刑された町だからだ。

 

「海賊王が死んだ町…!」

 

「行く?」

 

ナミさんの提案に、一味は即決で賛成した。

 

 

 

 

「う、わーー!凄い!」

 

その町はかなりの規模を誇り、入口から見る建物の並びや光景はまさにロンドンの街並みだった。

 

「イリス、あんたは誰か女の一人でも引っ掛けてきなさい」

 

「え、それを正妻が言うの…?」

 

「あんた、私が誰の正妻を務めてると思うの?ハーレム女王になるって言ってる人の正妻になってるんだからそれくらいの度量も覚悟もあるわ。それに、初めては貰った訳だしね。…ただし、変な女にだけは捕まっちゃダメよ」

 

「は、はい…」

 

最後は凄く怖い顔で頷くしかなかった。でもナミさん、流石良い女!

 

「はー、でも良い女か〜…」

 

ナミさん達と別れて町を歩く。

辺りを見渡せば、流石に大きな町だ。美人など幾らでもいる。

 

「うーん…手当たり次第に声かけてみようかな。でもどうせなら何かこう…事件でも起こってその中心に美人がいれば一番良いんだけど…」

 

そうすれば助けに入って、そこから始まるラブロマンスだってあるだろうに…。

どこを見てもそんな物は見当たらないし、いや、当たり前だけどね。

精々男二人を斬り倒してるショートヘアの女の子くらいしか居ないし、自分で解決しちゃってるから助けも何も無いよね…。

 

「……んん?」

 

いや待ておかしいぞ、なんで女の子が男二人相手に刀振り回すなんて事になるの!?

しかもその女の子、転んで眼鏡落としてるし…あ、これドジっ子属性だな。

 

「はい、眼鏡」

 

「ご…ごめんなさい。あ、ありがとうございますっ」

 

「お、イリスじゃねェか、こんなとこで何やって……!!?」

 

そこにゾロが来て、女の子の顔を見るなり目を見開いた。

 

「何?一目惚れ?やめてよー、私の夢知ってるでしょ、それに誰か一人は捕まえないと私がナミさんに怒られるの!」

 

「違ェよアホかてめェは!!」

 

「?」

 

そんな私たちを、眼鏡を掛け直した女の子が不思議そうに見ていたのだった。

 

 

 

 

「それで、たしぎちゃんは何してたの?」

 

「えっと、それが私の刀を武器屋に預けてまして、それの引き取りに…」

 

あの後、軽くたしぎちゃんから自己紹介を受けた私達は流れで同じ道を歩いていた。

 

「なに?武器屋だと?俺もそこに用があるんだが…案内してくれねェか」

 

「じゃあ私も行くよ、せっかくなら可愛い子と同行したいもんね。何ならゾロがちょっと邪魔かも…」

 

「俺の武器を見に行くんだろうが!!」

 

「ふふ、はははっ」

 

私達のやり取りを見てたしぎちゃんが笑うので、少し気恥しくなったのかゾロは反論をやめた。

 

「笑った顔も可愛いね、たしぎちゃん」

 

「えっ、はぁ、ありがとうございます…?」

 

やっぱり初見で口説くなんて無理だって…。助けてナミさん…カヤ…お姉さん…。

 

そうこうしてる間に武器屋に辿り着く。

うーん、武器屋に用は無いんだけど…そうだ、ナイフでも見て行こうかな。

最近ではサブウェポンに成り下がってしまった我が得意武器を思い心の中でほろりと涙を流す。無人島時代はあんなに愛用していたというのに…。

 

中に入ると媚びた態度の店主が出迎えてくれたが、ゾロが10万ベリーで刀を2本要求した事で顔色を変える。

 

「はっ、10万で2本?そんなんじゃナマクラしか買えねェぞ!」

 

「ナイフは?お金はいくらでもあるよ!」

 

「子供に売る武器なんざウチにはねェよ、帰んな」

 

何か最近子供扱いされても許せるようになってきたよ。こうもみんなが言ってくるなら、子供扱いされる事が自然なんだよね…仕方ないよね。でも涙を流すのは許して…。

 

「俺が代わりに買ってやろうか?金は出せよ」

 

「ありがとう〜、お金ないから出して〜!」

 

「今いくらでもあるっつってたろが!」

 

「お、おいちょ、ちょっと…その刀見してみみ…な?」

 

ゾロの腰の刀を見た途端に、店主が明らかに動揺して狼狽えだす。

 

「あ、あー!?それ、それはもしや…!!」

 

たしぎちゃんも目を輝かせて店主に渡したゾロの刀を食い入るように見ている。

 

「これっ!“和道一文字”でしょう!?」

 

「和道…?」

 

「一文字…?」

 

なんだそのかっこ良すぎる名前の剣は。

くぅ〜、そういうネーミング好きなんだよね!私も今度取り入れてみようかな!?

 

「これは“大業物21工”の一本!名刀です!これをもし買おうとするのなら1000万ベリー以上は下らない代物です!」

 

「私3分の1ってところか」

 

「え?」

 

たしぎちゃんが私を見るので、とぼけて何?と返しておいた。

 

「てめェの価値で測られちゃこの和道一文字とやらも浮かばれねェな。まぁナマクラでもいいから売ってくれ」

 

「そこの樽に入ってるのが全て5万ベリーの刀だ、何ならその刀を売ってくれるならただでこの店一番の刀をくれてやるがな」

 

「悪りィ、この刀だけは幾ら積まれようがやれねェんだ」

 

ゾロが断るので、店主もそれ以上は突っ込んでこなかった。

たしぎちゃんはメンテナンスに出していた自分の刀“時雨”を受け取る。

 

時雨(しぐれ)って言うんだ、刀ってどれもこれもかっこいい名前してるね!」

 

「わかります!あなたも大きくなったら剣士になるのもいいかもしれませんね!」

 

たしぎちゃんにも子供だと思われてたのか…泣いてないし。いや泣いてるかも。

 

「あなたも、刀お好きなんですね!3本揃えるなんてどっかの賞金稼ぎ(・・・・・・・・)みたい!知ってますか?」

 

「賞金稼ぎ?知らないよね、ゾロ?……あっ、ゾロウ!」

 

「………」

 

ゾロにすっごい呆れた目で見られた。誤魔化す為に話しかけて自爆するバカとは私のことであった。

 

「まるでその賞金稼ぎのような名ですね。名前をロロノア・ゾロというのですが…。刀をお金稼ぎの道具にするなんて許せません!」

 

確かに、たしぎちゃんは正義感強そうだもんな。海軍とかに居そうなタイプだよね。はは。

 

「どうしてこの時代は悪が強いんでしょうか…!名のある剣豪達はみんな海賊だったり賞金稼ぎだったり…世界中の名刀だってほとんどそいつらの手にあるんですよ?刀が泣いてます」

 

「まぁ、今は大海賊時代だからね、時代だと思うよ。だから海軍がいるんだしね」

 

「!!」

 

私は話の流れでそう言っただけなのだが、たしぎちゃんは少し思ってた反応と違った。

 

「おれァ悪党大歓迎だぜ、店が繁盛するからな。だがあの化け物がこの町を仕切る様になってからはこの店も閑古鳥が鳴いてらァ」

 

「スモーカーさんは化け物なんかじゃないですっ!」

 

「“悪魔の実”の能力者だ!充分化け物さ!!」

 

「へぇ」

 

どんな実かは知らないけど、この町を仕切ってる人は何かしらの悪魔の実を食べてるのか…。

そんでたしぎちゃんはその人のこと知ってるのか…。

……これたしぎちゃん海軍だよね。

 

…海軍…それってつまり…。

 

禁断の恋ってやつだよねーーーーッ!!

 

海賊と海軍…、二人の間にある壁は果てしなく高く、分厚く硬い…!だけどそれを乗り越えた時…二人は強く結ばれる!的な!!

 

「たしぎちゃん…今度二人でお茶しない?」

 

「え…?はい、今度休みでも取れたらどこか行きましょうか、でもご両親にはしっかり挨拶させて貰いますよ」

 

そうじゃねぇよ!!完全に保護者役務める気満々じゃん!!デートだってば!!

 

はぁ…まぁ、引っ掛けるのは無理でもたしぎちゃんと出会えただけでも収穫だよね…。

 

「これ、“三代鬼徹”!!どうしてこんな物が5万ベリーの樽に!?」

 

樽を見ていたたしぎちゃんが驚いたように声を上げる。

 

「そんなに凄いの?」

 

「凄いですよっ!歴とした「業物」です、普通は100万はする品で、この前代の“二代鬼徹”は「大業物」で“初代鬼徹”は「最上大業物」に位列してます!」

 

確かにそれだけ聞くとすんごい刀なんだろうけど、そんな物を間違えて5万の樽に入れたりはしないだろう。

 

「妖刀か」

 

ゾロが鞘から刀身を抜いて言う。

妖刀…この世界にはそう言ったカテゴリの物もあるのか…。

 

「そうだ、お前の言う通り初代鬼徹を初め鬼徹一派の刀は優れてはいたが尽く妖刀だったのだ…!名だたる剣豪達が腰に差し、その度死ぬ。悪いが置いておいて何だが…それは売れねェ」

 

「ほう…。気に入った!これをもらう!!」

 

話は聞いていた筈なのに貰うとか言い出した。

確かに、私も呪われた美女とか居たら欲しいかもしれん。あなたの呪いなんかじゃ死なないよ…とか言って!ぐへへ…。

 

「バカ!売らねェぞ!それで死んだら俺が殺したみてェじゃねェか!」

 

「じゃあこうしよう、俺の“運”と三代鬼徹(コイツ)の“呪い”…どっちが強ェか試してみようか…」

 

そう言ってゾロは刀を上に回転の力を加えて放り投げた。

そして刀が落ちてくるであろう場所に腕を伸ばす。

 

「…凄い」

 

結果は、まるで刀がゾロの腕を避けるかの様な軌道を描き店の床を貫いただけに終わったのだ。

素人の私が見ても心を打たれたのだ、たしぎちゃんや店主の衝撃は物凄いようでたしぎちゃんに至っては腰が抜けて床にへたり込んでいた。

 

店主の方は店で保管していたこの店最高の刀、良業物の“ 雪走(ゆばしり)”を、三代鬼徹と共に無料で譲ってくれた。

 

そして私とゾロは店を出る。

勿論私のナイフもちゃっかり新調しました。その名も小太刀!……そうです、そのまんまです!名前なんてありませんでした!

 

「あの女はいいのか?」

 

「これ以上攻めても無理な気がする…また次の機会にアタックするよ」

 

さて、それじゃ私はナミさんを探そうかな。せっかく大きな町に来たんだから、デートしたいし!!

 

「じゃねゾロ!私ナミさん探してくるからー!」

 

「迷うなよ」

 

「いやあなたが言うな!!」

 

 


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