「……ふぃー、なんとか忍び込めた〜」
『流石にイリスでもあの監視網を掻い潜るのは容易じゃなかったね』
ふぅ、と再度息をつく。
肉体的な疲れはそうでもないけど、結構神経使ったから精神的な疲れが……。
「……うん、確かにサンジの気配を感じる。ここで間違いなさそう」
現在私が居るのは、『アプリコッ
ちなみにホールケーキ
「にしてもジェルマって凄いね、この船だって大き過ぎて国かと思った」
『実際その解釈は間違ってないよ。ジェルマ王国っていうのは前にレイジュやヨンジと会った時の船がいくつも連結して出来た国だから。ここは王城だし』
船が集まって国になってるって事?それはなんともまぁ、スリラーバークとはまた違った斬新な国だなぁ。ん?スリラーバークはそもそも『国』ではなかったんだっけ?
「……それにしても、なんか良い匂いしない?この部屋」
『流石に五感共有は出来ないから分かんないけど、誰かの部屋っぽいしその人の匂いなんじゃない?』
潜入した際、見つかりそうになって慌てて滑り込んだ部屋がここだ。あんまり物は置いていないのか、簡易的なベッドとタンス、化粧台が置かれている程度。
……そう、化粧台である。
「まさかここ、レイジュの部屋だったりしない?」
『え?うーん……どうだろう、でも確かにジェルマって国民の殆どが男らしいから……いやでも、流石に王女の部屋がこんな質素な訳ない気もするし、見張りくらい居てもおかしくないよね?』
「それはまぁ、そうだけど」
……ごくり、と唾を飲み込む。
いや、その、潜入する時結構気を張って疲れたというかね?慣れない事をしたからちょーっとご褒美が欲しいっていうか。
若い子じゃなくても良いんだ、女の人なら!だからちょっと失礼します!
「とう!」
ぴょーんと軽快に飛び跳ねてベッドにダイブする。途端、鼻腔を擽るこの甘い香り……!!
私だから分かる……この匂いの主は、若い女!!!
『今のイリス、ハーレム女王っていうか変質者じゃない?』
「ハーレム作ろうなんて人間はみんな変質者だよーだ、今はこの匂いを堪能するんだから黙ってて!」
『開き直っちゃった……』
なんていうか、安心する匂い?包み込んでくれそうな感じというか……あ、眠くなってきた……。いや、流石に寝ないけど。
『ちょっと警戒も緩んでるんじゃない?誰か入ってきたらまずいんじゃ……』
「んー、でもさっきから見聞色も発動しっぱなしだったから……覇気って使い続けると疲れるでしょ?女王化してたら大丈夫なんだけど……それに心配しなくても、そんな都合よく部屋に戻ってきたりなんか」
ガチャ
「しないって……、あ」
「え?」
『うん、まぁ……見事に建てて回収しちゃったね……ダメなやつを』
ま、まずい〜〜!!本当に戻ってきちゃった!ていうか、部屋主だよね!?可愛いんだけど!!ちょっと幼い顔にそばかすとか、ぱっつん前髪とか、ローポニーとか!!服装的に使用人なのかな?私専属の使用人になって〜〜!!
「あっ、あのっ……あなたは、どこから……!本日招待されるお客様は居ない筈ですが……!」
「え、えーっと、とりあえず入ったら?あなたの部屋なんでしょ?」
何故か分からないけど場を仕切ってる私に、頭が混乱しているのか何故か素直に従って入ってくる彼女。
とりあえず都合が良いのでサッと起き上がってその子の後ろに回り、開きっぱなしの扉を静かに閉めた。
「……ハッ、こ、困ります!ここは王城で、許可なく入るのは……!」
「しー、あんまり大声出されるとバレちゃうから、静かに、ね?」
ぴと、と彼女の唇に人差し指をくっつけて軽くウインクする。
……決まった、私は自分でも認めるスーパー美少女、これはもうこの子もメロメロになってもおかしくない!
「がぶ!」
「あいたァ!?ちょ、耐性倍化してないから!不意打ちはダメ!ふー!ふー!……ん?ここを舐めれば間接キスなんじゃ?」
普通に噛まれちゃったけど、美少女に噛まれたと思えば悪くないし、口に含まれたと考えるとえっちだ。ぺろぺろ。
「あ、あなたは誰なんですか……!私の部屋に入ってベッドに潜るなんて、何が目的で……!」
「改めて言葉で説明されるとなんだか思う所があるけど、じゃあ自己紹介から。私はイリス、海賊だよ。目的はここに連れて来られたサンジの奪還。あと、レイジュを嫁にする事と、たった今あなたも欲しいって思ったからあなたも」
「い、イリス……!?まさか、女王……!!」
流石に名前を明かすと正体バレるよね。だけど彼女は何故か私の希望通り声のボリュームを落としてくれている。普通、叫んでもおかしくないんだけど。私も覚悟の上だったし。
「私は名乗ったよ、あなたは?」
「……!わ、私は、コゼットと言います、ええっと、この城の料理長を務めさせていただいてます」
「ふふ、確かに私は海賊って名乗ったけど、コゼットちゃんまで役職を名乗らなくて良いんだよ?」
「あ!そ、そうですね……」
ちょっと天然が入ってるというよりは、突然自室に高額賞金首が居た事で混乱している様だ。そんな中でも相手の意を汲んで声を小さくするあたり人が良すぎると言っても良いかもしれない。
「料理長って事は、料理得意なんだ?でもその歳で料理長って凄いね、見た目より年齢重ねてたりする?」
「あ、歳は23です」
「じゃあ私の2個上なんだ!」
「そうなんですね。……?2個?あれ、え、21歳、ですか?」
「そうだよ、あはは、身長の事は結構気にしてるからあんまり言わないでね?」
……でもまぁ、そうやって改めて年齢で比較してみると……。
「……?」
こう……コゼットちゃんは出るとこ出てて引っ込むとこ引っ込んでるけど。
「……くぅ!」
恨めしい!私の寸胴体型……!!でも良いもん!王華を受け入れてからは徐々に成長してるし!
「コゼットちゃんは料理長って話だけど、仕事は大丈夫?仕込みとか」
「はい、今は頼れる仲間達から休憩を貰った所です。どうもサンジ様が帰ってこられたとの事で……あ、だから奪還って……」
「うん、ごめんね、サンジは連れて帰るよ。後もう1つごめん、あなたも連れて帰るから」
「えっ?」
コゼットちゃんが目を見開いて私を見つめる。
うーん、そんな表情も可愛いね、可愛くて料理上手でスタイル良くて性格も良いとか欠点無いじゃん。
「勿論、無理矢理じゃないけど。コゼットちゃんが自分から私を求める様になるまでアタックするからね!」
「そ、それは難しそうですね。仲間も居ますし、今の仕事を投げ出す訳にはいかないので」
「でもコゼットちゃん、私がこうして侵入してるのに叫んだりしないじゃん。脈アリじゃないの?」
「え!?ち、違います!ただ、なんというか、それをすればあなたが困りそうだなーって思ったというか……その、初めはびっくりしましたけど、悪い人には見えなくて」
そこまでキッパリ否定されると辛いけど……辛いけど!!コゼットちゃんが包容力ありすぎる人物だって事は分かった。
普通、悪い人には見えないからって海賊の肩を持つ?私が困りそうだから報告しないって、謀反と取られても仕方ないよ?
『コゼット……どこかで見たことある気がするんだよね』
原作にも登場してたキャラなんじゃない?ていうかこんなに可愛いし、普通にメインとか、出番の多いサブキャラだったとか!
『いや、流石にそこまで出番あったなら忘れないと思う』
いくらONE PIECEが好きって言っても、あんまり登場しないキャラの名前までは覚え切れてないんだね。その割にはホールケーキアイランドへの道のりとか、細かい事は覚えてるみたいだけど。
『そういうのを覚えちゃうのがオタクなの!例えば何巻の何ページにこういった描写があるとか、そっち系を極めちゃうの!』
な、なるほど?分かった様な、分からない様な?
「それで、イリス、さん?は本当にサンジ様を連れ戻すのですか?それはその、四皇として恐れられているビッグ・マムをも敵に回す行為ですが……」
「例え誰が敵に回ろうとも、サンジは奪い返すよ。大事な仲間なの、それを無理矢理奪われたままで引き下がれないでしょ、私達は『海賊』なんだから」
「……ふふ、イリスさん、普通の海賊はそこまで義理堅くないと思いますよ」
うっ、コゼットちゃんの柔らかい微笑みの爆弾が強烈過ぎる……っ!
布団の匂いを嗅いだ時も思ったけど、なんというか包容力があるというか、安心するっていうか……!
くぅ〜!たまらん!
「コゼットちゃん!毎日私に味噌汁を作って!」
「味噌汁ですか?毎日は難しいのでは……」
ぐふぅ……!意味も伝わらず、伝わっていないにも関わらず振られる……!でも負けない!なんならその調理師仲間達も全員嫁に迎えて……!!……いや普通に考えて男の人も居るよね。
「くぅっ……あれ、でもそういえば、コゼットちゃんって話を聞く限りだと、私がサンジを連れ戻す事に関しては否定しないの?」
私がそう問うと、コゼットちゃんは部屋の中なのにキョロキョロと辺りを見渡し、ゆっくりと私に顔を寄せてきた。
……っといけない!反射的にキスしちゃうとこだった。今無理矢理しちゃったら絶対好感度下がるから我慢して私ぃ!
全力で己の欲望を押さえつけた私だけど、今度は耳付近に唇を寄せてきたコゼットちゃんに翻弄されている。もしかして遊ばれてるのかな、私。
「私個人がどうこう言っていい内容ではないと思いますが、サンジ様も戻りたいと思われているのなら戻るべきだと思います。こんな所まで迎えに来てくれるお仲間なんて、そうそう出会えるものではありませんから。だから私は、サンジ様をここに縛り付ける必要はないのでは、と思うだけです。……あの、でも、私がこう言ったのはどうか内密にお願いします。この事が王族の方の耳に触れてしまえば……」
「……勿論、言いふらしたりなんか絶対にしない」
長いこと耳元で喋ってくれたから気持ちを乱さない様に集中してたけど、コゼットちゃんが会ったばかりのサンジや私の事を気にかけてくれているのは良く分かった。そんな子の立場が悪くなる事なんて絶対に言わないし、ていうかもう絶対嫁にするから立場とか悪くなっても関係ないよほんと!