ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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236『女好きvsジェルマ66(ダブルシックス)

座りながらザッと周りを見渡してみる。正面にはジャッジ、その後ろには兵士達。右はレイジュ、後ろはヨンジ、左はイチジの配置だ。当然、レイジュ達の後ろにもズラリと兵士達は並んでいるが。

 

「言うまでもないが、兵士はこれが全てでは無い。動けなくなってもすぐに補充出来るよう、近くで待機してある」

 

「それとサンジの奴は来ないからな。下で余りの兵達と遊んでもらってる所だ」

 

イチジ、ヨンジの順でそう語るが、別に兵士の数なんてどうでもいいし、サンジに至っては心配するまでも無い。ここに来ている兵士達ですらサンジ1人に蹴散らされそうなのに余りと呼ばれている人達が相手になる筈もない。ただ、足止めにはなるだろうからサンジが来ないと言う事に対しては間違っていないだろう。

 

「レイジュ、あなたはどうしてこんな馬鹿げたオモテナシに参加してるの?あなたなら分かるよね、こんな事したって無意味だって」

 

「……それに関しては何も言えないわね、でも、私にも事情があるのよ」

 

「ふーん……まぁいいや、じゃあこの場においてレイジュは私の敵って事になるんだね?」

 

「ええ、この場におかなくとも、あなたは私の味方では無い筈だけれど」

 

レイジュの事情とやらはともかく、言質は取った!レイジュは今私の敵なのだ。つまり、勝てば私のものになるということ!意味が分からない?はは、敗者が勝者に逆らえないのは当然でしょ?

 

ふひひ、とゲスな笑い声を上げていると、不意に視界の端で影がブレた。

即座に色のついた脳内をリセットさせ、半歩後ろに下がる。

 

「ほう?やるな、女王」

 

「ニジとの戦闘見てたんじゃないの?単独で突っ込むのはどう考えても悪手でしょ」

 

目の前を横切る私の頬を狙った拳から視線を逸らし、攻撃の主であるイチジと視線が交錯した。と言っても奴はサングラスをつけてるからこっちからは目が見えないんだけど。

 

「ふっ!」

 

まずは1人、と脳内でカウントしながら単独になっているイチジに向かって蹴りを放つ。

 

「甘い!」

 

「んっ!?」

 

が、予想以上に反応の良いイチジの腕によって、私の足は彼の腹の前で掴まれる様にガードされていた。

間違いなく今のでやったと思ったんだけど……長男だけあってニジよりは強いって事か。

 

「そのまま押さえていろ、イチジ」

 

「っ……あァ」

 

ジャッジの言葉にイチジは頷くが、その要請に応えるのが厳しいという事は理解しているらしい。掴まれた瞬間から抜け出そうと動かしている足を必死に離さまいとしていて、流石に握り締められ過ぎて少し痛い。

 

「そのままこいつで貫いてやろう!」

 

どこから取り出したのか、ジャッジが突き特化タイプである円錐形をした槍を手に、その場でふわりと浮かんで全速力で突っ込んできた。

 

「そんな単調な攻撃が当たる訳ないでしょ!」

 

この際抜け出すのは諦めて、掴まれた右足を軸に左足で迫り来る槍を横から蹴り込み軌道を逸らす。拘束の意味が無くなったと判断したのか、イチジも足から手を離した。

 

後ろへ飛んで距離を取ろうにも、四方八方を囲まれてるこの状況ではそういう訳にもいかないし……ん?いや、八方は囲まれて無いよね、いざとなれば床をぶち抜いても天井を突き破っても逃げる事は出来るって訳だ。

 

「ま、逃げる必要があればだけど」

 

「はァ!!」

 

今度はヨンジが後ろに流れていったジャッジと交代する形で殴りかかってきたので、見聞色で把握して振り向く事なく避けて見せた。

ヨンジの殴った後に結構衝撃波が出たから、きっと破壊力だけならヨンジが1番高いのかな?

 

30倍灰(さんじゅうばいばい)

 

「ぬおッ!?」

 

殴った後の反動でほんの少し硬直時間が生じているヨンジの腕を掴み、その場でぐるぐると振り回して行く。

 

大旋回(だいせんかい)!!」

 

からのぉ!

 

「せいっ!!」

 

「ッ!?」

 

ゴン!!と近くに居たイチジの頭にヨンジの頭を振り下ろした。ヨンジハンマー、なんちゃってね。

 

それよりもこの2人、まるで鉄と鉄をかち合わせたかの様な感覚だった。ニジを痛め付けた時もそうだけど、こいつらなんかみんな硬いんだよね。

 

「レイジュ!お前も動け!!」

 

「ええ」

 

堪らなく叫ぶイチジの言葉に軽く頷いたレイジュは、ゆるやかな動きで顎付近に手のひらをそっと添えて息を吐き出した。その息は次第に無数の矢となって、私を射抜かんとばかりに飛び出した。

 

桃色毒矢(ピンクホーネット)!」

 

「あいてっ」

 

レイジュに射ち抜かれるならむしろご褒美だと思って避けずに全弾喰らったんだけど、この矢はやっぱり毒矢だったみたい。ホーネットってどういう意味??

 

「躱さなくて良かったのかしら?その毒矢はあなたが苦しめられたヨロイオコゼのよりももっと強烈なのよ?」

 

「そうなの?多分毒だろうと思って毒耐性倍化してたし、実際体内に入ってきたのって微々たるものだったから分かんなかった。その毒ももう消えてるけど」

 

「あら……」

 

「あの時の毒も、実際レイジュにキスされたかったから治療しなかっただけだし、基本私に毒系は効かないよ」

 

シーザーがパンクハザードで使ってた、シノクニだっけ?あれとかマゼランの本気の毒なら今でも効くと思うけど、それも本気の本気で治療に意識を回せば問題ないだろう。

 

「じゃあそろそろ私もカウンターだけじゃなくてしっかり攻撃に移ろうかな」

 

「っ、させねぇぞ!」

 

「うわっ、危ないなぁ!」

 

ハンマーにされた頭のダメージから復活したのか、ヨンジが少し離れた距離から腕を伸ばしてパンチを繰り出して来た。腕が伸びるのは予想外だったけど、なんとか首を倒してやり過ごす。

 

「舐めてんじゃねェ!!」

 

「っ?」

 

更に、伸びた腕を元に戻す際に私の肩を掴み、ぐっと力を入れて飛びかかってきた。腕の伸縮がフランキーと同じ鎖タイプなので耳元でジャラジャラと少し鬱陶しい。

 

「らァ!!!」

 

ゴン!!と腕を戻す力も利用したヨンジの右ストレートが私の頬に突き刺さった。ぐらりと視界が揺れ、少なくないダメージを感じる。

 

「好機だ!これを逃すな!!」

 

火花(スパーキング)フィガー!!」

 

ジャッジの叫び声の様な指示でイチジも私のお腹に火花散る全力の拳を叩き込む。

 

「これでトドメだ!女王ォ!!電磁(デンジ)シャフトォオ!!」

 

最後にジャッジの電気を纏う槍が私の心臓部目掛けて突き出され、勢いよく胸に激突する。

顔面殴られて、腹を殴られて、挙句の果てには心臓一突き。そりゃあ、対象を無力化するコンビネーションとしては間違ってないのかもしれないけど。

 

「女の子にする事じゃなくない?」

 

「な……ッ!?ごッ……がァ!?」

 

足の裏でスタンプをする様な、通称ヤクザキックをジャッジの腹に叩き込み、即座に足を引き抜いてその場で右にくるっと回転し、コメカミに踵蹴りを喰らわせた。

 

イチジにお腹を殴られる直前に『女王化』を使用したので、腹部と胸部に関してはそう痛くはない。だけど頬に関しては未だズキズキと小さくない痛みが残っている。

 

「くっ、私達は一旦引くぞ!兵士達は銃を構えろ!近付かずに放て!!」

 

「それ、私相手に絶対使っちゃダメな武器なんだけど」

 

「ならばこう言おう!兵士達の中には数人だけ、海楼石を加工した銃弾を含む銃を持っている!」

 

うぐ、そう来たか……!

そうこうしてるうちにも倒れたジャッジを連れてイチジ達は後ろに引いてるし、銃口は四方から全部私に注がれてるし。

 

「……ちょっと舐めてたかな、結構厄介かも」

 

拳を倍化させてこの城ごと殴り潰してしまえば苦戦する事はないけど、それをしてしまえばコゼットちゃんは勿論、シエルとメーアにも被害が及ぶ。出来るだけ他の階に衝撃が伝わらない様に無力化するとすれば、やっぱり下手に大技は使わない方が良いだろう。

 

となれば、覇王色の覇気も使わない方が良い。あれを発動させれば間違いなく周りの有象無象は全員倒れるけれど、あの覇気って衝撃も結構あるし、万が一コゼットちゃんの部屋に伝わってベッドから落ちたなんて事があれば……、うん、覇王色は止めとこう。

 

「となると……最適はこうかな?」

 

音もなく、出来るだけ衝撃を生じさせずに右側の兵士の群れに突っ込み、銃口を握り潰して使えなくしていく。ついでに一発入れておき、意識も奪っておいた。

 

四方を兵士に囲まれてはいるが、そのどれか一方に突っ込んでさえすれば銃は使えない。何故なら味方ごと撃ち抜くハメになるからだ。

 

……と、思っていたのだけど。

 

「……うっそでしょ」

 

バタバタと倒れる周りの兵士達と、私に向かって降り注ぐ弾丸に頬が引き攣った。

ジェルマってのは、味方ごと攻撃するのになんの躊躇いもないらしい。クローン兵だから?だけど彼らだって1人1人生きてるんじゃないの……?

 

「人の心は無いみたいだね……!」

 

「そんなものは邪魔なだけだ。私達は生まれる前から戦闘に邪魔になる感情は消去してある」

 

……今なんかイチジが凄い事言わなかった?

 

「感情を消去?」

 

「ああ、私達は生まれながらの改造人間。骨格は人を超え、精神は無駄なモノを削ぎ落としている。誰かを思いやり、時に悲しみ涙する──こんなモノは戦闘において必要ない、判断を誤る可能性が生まれるだけだ」

 

「……なるほど、ぶっ飛んでるね」

 

生まれる前の我が子にそんな訳の分からない改造を施す所もそうだけど、そんな改造を物ともしてないサンジやレイジュも凄い。あの2人はどこからどう見ても誰かを思いやってるし。

 

というか、ニジがコゼットちゃんをあんな目に遭わせたのはそう言った事情もあったんだろう。だからと言って許したりはしないし、次会っても顔面殴るけど。……まぁ、次は1発で堪えてあげなくもない。

 

「私が慎重に動けば動く程兵士達は巻き込まれてしまうって事だよね」

 

かと言ってちょっと力を出し過ぎれば衝撃が城全体に伝わりかねないし。

……よし、手数を増やそう。1人で厳しくても私には頼りになる人が付いてるし!

 

「てな訳で、よろしく、王華」

 

「はいよ、コゼットちゃんの体に響かせない為にもちゃっちゃと終わらせちゃおうか!」

 

さぁ、緊張感のカケラもない、結末の分かりきった乱闘戦、第二ラウンドと行きますか!

 




この主人公、困ったら王華出してね?

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